資金調達のメリット・デメリットを各種方法ごとにわかりやすく解説

資金調達は、会社経営において欠かせないことですが、種類によってメリット・デメリットが異なります。

何の目的で資金調達するかによって選ぶ方法は異なるため、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で決定することが必要です。

手元のお金を増やすための資金調達において何を重視するべきか、適切な方法を選ぶためにも種類や方法ごとのメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。

資金調達とは

「資金調達」とは、会社経営において必要な資金を調達することです。

人間の身体は、酸素と栄養で満たされた血液が全身を巡っています。

もしも血液の循環が悪くなり、正常に流れなくなったり詰まったりすると、生命を脅かすような大きな疾患を発症してしまいます。

会社経営で「資金」は人の血液と同じ役割を担っており、流れなくなれば会社も機能しなくなってしまい、ショートすれば倒産します。

手元の資金を枯渇させ、会社が倒産してしまうことのないように、資金調達は会社経営において最重要課題であるといえるでしょう。

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資金調達の目的

資金調達する目的は様々ですが、主に次のタイミングにおける資金需要に応じて調達することが多いといえます。

  • 開業
  • 新規事業開設
  • 事業拡大
  • 設備投資
  • 企業買収(M&A)
  • 運転資金不足

上記の目的のうち、「運転資金不足」による資金調達とは、たとえば売掛金の入金までに支払いに充てるお金がないときなどです。

いずれにしても資金調達で大切なのは、目的を達成するためにお金を集めるからであり、調達することが目的ではないことといえます。

資金調達を目的にしてしまうと、いつ・どのくらいお金が必要であるかを無視して、どのくらいの金額を調達できるか考えてしまいます。

その結果、たとえば銀行融資を頼る場合には多く借入れしすぎてしまい、後に返済負担で苦しむことになるでしょう。

調達可能な金額で事業を考える姿勢の場合にも、明確なビジョンや将来的な収益の見込みなどを提示できず、融資を受けることも出資してもらうことも難しくなります。

何のために資金を調達するのか目的を明確にし、その目的を達成するために必要な金額や、最適な調達先を選ぶことが大切です。

資金調達の分類

資金調達の分類として、主に次の3つが挙げられます。

  1. デットファイナンス
  2. エクイティファイナンス
  3. アセットファイナンス

それぞれの内容や、メリット・デメリットについて解説していきます。

デットファイナンス

「デットファイナンス」とは、融資を受けたり社債を発行したりするなど、負債を増やして資金を調達する方法です。

別名「借入金融」と呼ばれるなど、資金を調達した後は元金と利子を返さなければならないなど、返済義務を負うことになります。

デットファイナンスとは?メリット・デメリットや種類ごとの違いを解説

メリット

デットファイナンスによる資金調達のメリットは主に次の3つです。

  • 数多い候補先から選べる
  • 節税効果が見込める
  • 経営に関与されない

デットファイナンスの場合、調達する候補先は民間銀行だけでなく、政府系金融機関や消費者金融などいろいろ選べます。

資金調達後は元金だけでなく利子も支払うことが必要ですが、損金計上が可能であるため節税効果につながります。

調達先から会社経営や事業に関して口を出されることもなく、自由な経営が可能です。

デメリット

デットファイナンスによる資金調達のデメリットは次の3つです。

  • 返済義務を負う
  • 利子を支払うことが必要
  • 信用力が低下する

デットファイナンスによる資金調達は負債を増やすため、返済義務を負うことや金利に応じた利子を負担しなければなりません。

また、借金が増えすぎれば信用力を低下させるため、後の資金調達や事業取引などに影響が及ぶ可能性もあります。

エクイティファイナンス

「エクイティファイナンス」とは、株主資本を増やして資金調達する方法です。

増えるのは自己資本であるため、外部から悪印象を抱かれることはなく、むしろ返済義務のない資金を調達できるため、スムーズな経営につながります。

エクイティとは?デッドファイナンスとの違いやメリット・デメリットを解説

メリット

エクイティファイナンスで資金調達するメリットは、主に次の2つです。

  • 返済義務を負わない
  • 財務基盤安定につながる

発行した株式の購入など、主に出資してもらう方法のため、返済義務のない自由に使える資金を調達できます。

また、返済義務を負わないことで、財務体質強固につながることもメリットです。

デメリット

エクイティファイナンスで資金調達するデメリットは、主に次の3つです。

  • 自由な経営ができなくなる
  • 経営権を脅かされる可能性がある
  • 配当金負担が必要

発行する株式と、投資家の保有割合によっては、会社の経営権を脅かされる可能性があります。

また、投資家によっては経営に口を出してくるなど、経営者の経営方針を貫きにくくなる可能性もあり、利益が出れば配当金を支払うことも求められます。

アセットファイナンス

「アセットファイナンス」とは、資産を売却し現金化する資金調達の方法です。

不動産や自動車などの資産以外にも、有価証券や特許、売掛債権など売ってお金に換えることができる資産はいろいろあります。

メリット

アセットファイナンスによる資金調達のメリットは、主に次に2つです。

  • 返済義務がない
  • オフバランス化が可能

保有する資産を売ってお金に換えるだけなので、当然返済義務を負うことがなく、資産売却によるオフバランス化で財務改善につながる場合もあります。

デメリット

アセットファイナンスによる資金調達のデメリットは、主に次の2つです。

  • 換金できる資産が必要
  • 調達金額は資産価値の範囲まで

資産を売ってお金に換える方法なので、そもそも所有していなければ資金調達できません。

また、資産の価値や信用力に依存する方法のため、調達できる金額はその価値に留まります。

デットファイナンスの資金調達

デットファイナンスの資金調達方法は、主に次の5つです。

  1. 銀行融資
  2. 制度融資
  3. ビジネスローン
  4. 社債発行
  5. 手形割引

それぞれの資金調達方法について、メリット・デメリットもあわせて説明していきます

銀行融資

デットファイナンスによる資金調達として、「銀行融資」が挙げられますが、種類としては次の4つがあります。

  • プロパー融資(銀行独自の責任で融資を受ける)
  • 信用保証協会保証付き融資(信用保証協会に保証してもらう前提で融資を受ける)
  • 証書貸付(金銭消費貸借契約書(借用証書)を差し入れて融資を受ける)
  • 当座貸越(自動的に定期預金口座から貸越可能とする仕組み)

中小企業の場合には、メガバンクよりも地域に根差し活動する地方銀行・信用金庫・信用組合のほうが頼りやすいといえるでしょう。

銀行融資のメリットは、主に次の3つです。

  • 多額の資金調達が可能
  • 経営に介入されず自由な経営が可能
  • 顧客紹介や情報提供を受けることができる

ただし次の5つのデメリットには注意しておきましょう。

  • 審査が厳しく時間がかかる
  • 提出書類が多い
  • 実績がなければ利用しにくい
  • 利子負担が必要
  • 担保や保証人を求められることが多い

ファクタリングと銀行融資の違いを徹底比較!メリット・デメリットについて解説

日本政策金融公庫の融資

デットファイナンスによる資金調達として、「日本政策金融公庫」の融資が挙げられます。

日本政策金融公庫とは、国が100%出資・運営する政府系金融機関の1つです。

営利目的でない金融機関のため、創業前後の中小企業にも積極的に事業資金の貸し付けを行っています。

ただし提出する書類などが多く、準備するまで手間や時間がかかることはデメリットです。

日本政策金融公庫から融資を受けるメリットは、主に次の2つです。

  • 創業前でも申し込みが可能
  • 無担保・無保証で借入れできる

ただし次の3つのデメリットには注意が必要といえます。

  • 審査に時間がかかる
  • 提出書類が多い
  • 利子負担が必要

コロナ融資の借り換えとは?公庫と民間銀行それぞれ対応できる制度を解説

制度融資

デットファイナンスによる資金調達として、「制度融資」が挙げられます。

「制度融資」とは、地方自治体・金融機関・信用保証組合の3つが連携して行う資金の貸し付けであり、自治体によっては保証料や利子の一部を負担してくれる場合もあります。

調達金額の上限や設定される金利は、自治体や準備しておく自己資金・事業計画などで異なるものの、3千万円を金利2.1~2.7%で借入れ可能となることが多いようです。

制度融資による資金調達のメリットは、主に次3つです。

  • 創業前でも申し込み可能
  • 無担保・無保証で借入れできる
  • 保証料・利子補助がある

ただし次の3つのデメリットには注意してください。

  • 審査に時間がかかる
  • 提出書類が多い
  • 保証料負担が必要

ビジネスローン

デットファイナンスによる資金調達として、「ビジネスローン」が挙げられます。

「ビジネスローン」とは、一般的な銀行融資で資金調達しにくい中小企業や小規模事業者がお金を借りて資金調達しやすいように作られた金融商品で、審査のハードルが低いものの金利は高めに設定されることが特徴です。

一時的なつなぎ資金として利用する場合は便利である一方、長期利用すれば資金繰りが悪化してしまいます。

ビジネスローンによる資金調達のメリットは、主の2つです。

  • 審査のハードルが低い
  • 無担保・無保証で借入れできる

ただし次の3つのデメリットには注意が必要です。

  • 金利が高め
  • 多額の借入れは難しい
  • 長期利用は資金繰りを悪化させる

ビジネスローンとは?銀行融資との違いやメリット・デメリット等について解説

社債発行

デットファイナンスによる資金調達として、「社債発行」が挙げられます。

「社債」とは、証書を発行して出資者に債務を負うことですが、「公募債」と「私募債」の2種類があります。

このうち私募債は、限られた投資家のみに購入してもらうことを目的とするため、幅広く投資家を募集する公募債よりも比較的利用しやすいといえます。

償還期限になると一括返還が必要になる方法で、債券は借用書の役割を担います。

非上場企業は金融機関や信用保証協会に保証してもらった上で私的に行うことが特徴であるため、一定の格付けがなければ利用できません。

私募債で資金調達するメリットは、主に次の2つです。

  • 金融機関や保証協会からのお墨付きで信用力が向上する
  • 有利子負債でありつつ期間中は疑似資本として活用できる

ただし次の2つのデメリットは留意しておく必要があります。

  • リスケジュールできない
  • 調達コストが融資対比で高い場合がある

資金調達の手法の1つである社債を発行する方法とは?

手形割引

デットファイナンスによる資金調達として、「手形割引」が挙げられます。

「手形割引」とは、期日到来前の手形を、銀行や手形割引専門業者に売って現金化する資金の調達サービスです。

手形は決済期日にならなければ現金化されないものの、前倒しできることが最大のメリットといえます。

ただし融資を受ける扱いになるため、財務状況なども加味した審査が行われることや、不渡りになったときの責任は利用者が負わなければなりません。

以上のことから、手形割引による資金調達のメリットは次の2つです。

  • 期日前に前倒しで現金化できる
  • 銀行融資より審査のハードルが低め

ただし次の2つのデメリットには注意しておきましょう。

  • 手形取引がなければ利用できない
  • 不渡りの責任は利用者が負う

ファクタリングと手形割引に違いとは?メリット・デメリットをそれぞれ解説

エクイティファイナンスの資金調達

エクイティファイナンスによる資金調達は、主に次の5つです。

  1. ベンチャーキャピタル
  2. コーポレートベンチャーキャピタル
  3. エンジェル投資家
  4. 公募増資
  5. クラウドファンディング

それぞれの資金調達について、メリット・デメリットもあわせて解説していきます。

エクイティとは?デッドファイナンスとの違いやメリット・デメリットを解説

ベンチャーキャピタル

エクイティファイナンスによる資金調達として、「ベンチャーキャピタル」に出資してもらうことが挙げられます。

「ベンチャーキャピタル」とは、未上場の新興企業に対し資金を投じ、購入した株式を上場後に売ってキャピタルゲインを得ることを目的とした投資会社です。

多額の資金調達が可能になる方法ですが、経営に関与されがちであり自由な経営をしにくくなってしまいます。

ベンチャーキャピタルから資金調達するメリットは、主に次の2つです。

返済義務のない資金を調達できる
経営アドバイスを受けたり取引先など紹介してもらえたりする

ただしデメリットとして、次の3つには注意が必要です。

  • 自由な経営ができなくなる
  • 出資に見合うリターンを上げることを要求される
  • 株式保有数によって経営権を脅かされる可能性がある

ベンチャーキャピタルからの投資で資金調達する方法とは?

エンジェル投資家

エクイティファイナンスによる資金調達として、「エンジェル投資家」に出資してもらうことが挙げられます。

「エンジェル投資家」とは、起業して間もないスタートアップのベンチャー企業などを対象に、資金を投じる個人投資家です。

もともと実業家や経営者だった方が活動していることが多く、自身の経験をもとにアドバイスしてくれたりノウハウを伝えてくれたりします。

また、人脈を使ったビジネスパートナーの紹介など、経営が円滑に進むようなサポート設けることが可能です。

純粋に起業家を応援することを目的としたエンジェル投資家もいれば、ベンチャーキャピタルのように上場後の売却益を目的とした方もいるので、相性や目的など理解した上で出資してもらいましょう。

エンジェル投資家から資金調達するメリットは主に次の2つです。

アドバイスを受けたりビジネスパートナーを紹介してもらえたりする
出資まで時間がかかる

ただし次の3つのデメリットは注意しておきましょう。

  • 保有株式比率が低下する
  • 多額の資金調達は難しい
  • 経営に関与される場合もある

エンジェル投資家とは?出資を受けるメリット・デメリットや探し方を解説

公募増資

エクイティファイナンスによる資金調達として、「公募増資」が挙げられます。

「公募増資」とは、新たに株式を発行するにあたって、不特定多数の投資家に幅広く購入を募集・勧誘することです。

証券会社を通じて投資家を募る方法ですが、価格は通常であれば時価に近い多少割安な水準に決められるなど、既存の株主の利益を損なうことのない配慮がされています。

ただし上場企業が利用する方法であるため、中小企業には適さないといえます。

以上のことから公募増資のメリットは、

  • 不特定多数の投資家を募集するため多額の資金調達が可能

であることです。

ただし次の3つのデメリットがあります。

  • 有価証券届出書の提出が必要など厳しい管理がされる
  • 手数料が高く手続きも複雑
  • 資金調達までに時間がかかる

クラウドファンディング

エクイティファイナンスによる資金調達として、「クラウドファンディング」の利用が挙げられます。

「クラウドファンディング」とは、インターネットを通してビジネスやアイデアを公開し、賛同した不特定多数の個人から少額資金を集める方法です。

その形態は寄付や購入などいろいろあるものの、個人からお金を募るため、1人ひとりの金額は少額です。

ただ、他にはない魅力的な商品やサービスを提示することができれば、多くの方から共感を得ることができ、多数の賛同者を集めることで多額の資金を調達することにつながるといえるでしょう。

クラウドファンディングで資金調達するメリットは主に次の3つです。

  • 大きなリスクを負わずに挑戦できる
  • ファン獲得につなげることができる
  • テストマーケティングに利用できる

ただし次の3つのデメリットには注意してください。

  • 多数の賛同者を集めることが必要
  • 公開したアイデアやビジネスを盗用される可能性がある
  • 目標金額達成に至らないこともある

クラウドファンディングとは?やり方やメリット・デメリットを簡単に解説

アセットファイナンスの資金調達

アセットファイナンスの資金調達方法は、主に次3つです。

  1. ファクタリング
  2. 資産売却
  3. リースバック

それぞれどのような資金調達か、メリット・デメリットもあわせて解説していきます。

ファクタリング

アセットファイナンスによる資金調達として、「ファクタリング」の利用が挙げられます。

「ファクタリング」とは、商取引で発生した売掛金をファクタリング会社に売却し、現金化することで資金を調達できるサービスです。

商取引では、商品やサービスを売ってもすぐに代金を受け取らず、後日請求書を発送して期日までに入金してもらう掛け取引が主流といえます。

売上として計上したものの、まだ代金を受け取っていない間に売掛金が発生しますが、売掛金は売掛先に代金を請求できる売掛債権という権利です。

ファクタリングではこの売掛債権をファクタリング会社が買い取り、手数料を差し引いた残りを現金化します。

期日を前倒しできることがファクタリングのメリットであり、審査でも売掛先の信用力が重視されるため、融資審査に通らない赤字経営や債務超過の会社でも利用可能です。

最短で即日現金化が可能であるファクタリング会社もあるため、すぐにお金が必要という場合に利用しやすい方法ですが、手数料は銀行融資よりも高めに設定されます。

ただし手形割引と異なり、貸し倒れリスクは売掛債権の譲渡とともにファクタリング会社に移転されるため、売掛先が倒産してもその責任を負う必要はありません。

売掛金管理の手間を削減することにもつながるため、経理の専門部署を設けていない会社などは、ファクタリングを利用することで事務作業軽減にももつなげることができるでしょう。

以上のことから、ファクタリングのメリットとして、主に次の5つが挙げられます。

  • 最短即日で資金調達が可能
  • 審査のハードルが低い
  • 貸し倒れリスクを回避できる
  • オフバランス化が可能
  • 借金が増えない

ただし次の2つのデメリットには注意が必要です。

  • 手数料が高め
  • 調達額は売掛金額までに留まる

ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説

資産売却

アセットファイナンスによる資金調達として、「資産売却」が挙げられます。

所有する資産を売ってお金に換える方法ですが、対象となる資産は次のとおりです。

  • 土地
  • 工場・ビル・社宅・保養所などの建物
  • 車両
  • 設備・備品
  • 権利など無形固定資産
  • 在庫

土地や建物など、固定資産を売却して現金化するのはは時間がかかりがちであるものの、資産の種類によってはスムーズに資金調達につながります。

使用していない建物などは、固定資産税だけでなく管理コストも発生するため、現金化することでコスト削減にもつながります。

在庫も同様に、保有し続けることで保管する場所や管理費用がかかり、商品価値も低下する一方です。

そのため売って現金化することにより、コスト削減やスペース確保にもつながるといえるでしょう。

ただし希望する金額で買い取ってもらえない可能性もあることや、調達できる金額は資産の価値の範囲に留まることは理解が必要です。

以上のことから、資産売却で資金調達するメリットは、次の2つといえます。

  • 価値の高い資産を売ると多額の資金調達が可能
  • コスト削減やスペース確保につながる

ただし次の3つのデメリットには注意しておきましょう。

  • 固定資産などは現金化まで時間がかかる
  • 買いたたかれ安値の売却になる場合がある
  • 調達金額は資産価値に留まる

リースバック

アセットファイナンスによる資金調達として、「リースバック」が挙げられます。

「リースバック」とは、家を売って資金調達するとともに、売却後の家の賃貸借契約を結び引き続き住むことができる手法です。

自宅を売る(Sell)ことと賃貸(Lease)することを合わせ、「セールアンドリースバック」と呼ばれます。

通常、不動産を売却する場合には、買い手を探すために募集を掛けることが必要であり、手続にも時間がかかります。

売却代金を獲得できるまで数か月かかることが一般的ですが、リースバックでは不動産会社やファイナンス会社などのリースバック業者が現金一括で購入するため、資金調達まで時間がかかりにくいことがメリットです。

リースバックを利用することで、家の所有権はリースバック業者に移転するものの、契約の種類によっては売却後に住まいを買い戻すことができる場合もあります。

資金調達まで時間がかかりにくく、引っ越しする必要がないことはメリットといえますが、リースバックの賃貸借契約は賃貸期間が限定される「定期借家契約」のことが多いことがデメリットです。

定期借家契約であっても、更新できれば引き続き住むことができますが、更新を断られれば住み続けることはできません。

以上のことから、リースバックのメリットは次の3つです。

  • 短期間で資金調達できる
  • 引っ越しする必要がない
  • 固定資産税や管理費などコスト削減できる

反対に次の3つのデメリットには注意しておくようにしましょう。

  • 安く買いたたかれる可能性がある
  • 家賃が発生する
  • 賃貸契約を更新できると限らない

その他の資金調達

デットファイナンス・エクイティファイナンス・アセットファイナンスのいずれにも該当しないその他の資金調達方法は次の2つです。

  1. M&A
  2. 補助金・助成金

それぞれの資金調達方法について、メリット・デメリットもあわせて説明します。

M&A

その他の資金調達として、「M&A」が挙げられます。

「M&A」とは、「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の頭文字を省略した呼称で、合併・買収のことを意味します。

資金調達の方法としての「M&A」は会社や事業の「売却」であり、経営権・事業資産・権利・義務などを売ってお金に換えることです。

会社を丸ごとまとめて売る場合には「株式譲渡」、事業のみの売却は「事業譲渡」という扱いになります。

成功すれば多額の資金調達につながりやすい方法ですが、仲介会社に依頼すると手数料が数百万円などかかることや、買い手がすぐに見つからなければ資金調達につながらないことはデメリットです。

以上のことから「M&A」による資金調達のメリットとして、次の2つが挙げられます。

  • 成功すれば多額の資金調達が可能
  • 事業や従業員の働き先を残すことができる

ただし次の2つのデメリットには注意してください。

  • 仲介会社に対する手数料が高め
  • 買い手が見つからない場合もある

補助金・助成金

その他の資金調達として、「補助金」「助成金」が挙げられます。

国や自治体の支援制度であり、どちらも返済義務を負わない資金調達方法です。

安心して手元のお金を増やすことができる一方で、手元に資金を受け取るまで労力や時間がかかりがちといえます。

特に補助金は、採択されなければ資金調達につながりません。

そもそも募集要項や支援目的に合っていなければ申請できず、複数の面倒な手続だけでなく、審査にも時間がかかります。

制度によって募集は1度きりという場合もあり、比較的短期の募集となるためタイミングが合わなければ間に合わないケースもめずらしくないといえます。

どのような制度があるか、変更の有無など確認するなど、最新の情報を常に収集することが必要です。

なお、補助金も助成金もどちらも後払いで資金を受け取ることになるため、一時的に立て替えによる支払いが必要です。

以上のことから、補助金や助成金で資金調達するメリットは、主に次の2つです。

  • 返済不要の資金を調達できる
  • 制度によって多額の資金調達につながる

ただし次の3つのデメリットには注意しておきましょう。

  • 申請条件を満たすことが必要
  • 資金調達まで手間や時間がかかる
  • 後払いであるため立て替えが必要

資金調達方法の選び方

資金調達方法の選び方を検討するのなら、お金を必要とするタイミングに合わせて次の4つに分けて考えるとよいでしょう。

  1. 創業・開業の資金調達
  2. 事業拡大・設備投資の資金調達
  3. 運転資金の資金調達
  4. 急を要する資金調達

それぞれの資金調達方法について説明していきます。

創業・開業の資金調達

創業・開業のタイミングでの資金調達は、主に次の4つの方法が候補として挙げられます。

  • 日本政策金融公庫の融資
  • 制度融資
  • エンジェル投資家
  • クラウドファンディング

実績がなければ、民間銀行から融資を受けることは難しいものの、日本政策金融公庫や制度融資なら可能性はあります。

また、ビジネスやアイデアに自信があるのなら、収益性や将来性など魅力をアピールしてエンジェル投資家に出資してもらうことや、クラウドファンディングで賛同者を集めることによる資金調達も可能となります。

事業拡大・設備投資の資金調達

事業拡大・設備投資の資金調達は、主に次の2つの方法が候補として挙げられます。

  • 銀行融資
  • ベンチャーキャピタル

事業が軌道に乗ってきたタイミングで、さらに多額の資金が必要であれば、信用力を武器に銀行から融資を受けることも検討しましょう。

魅力ある事業で将来的に上場できる勢いがあれば、ベンチャーキャピタルに出資してもらうことも夢ではないといえます。

大型の資金調達に成功すると、社会的な信用も上がり、さらに資金調達できることや優秀な人材を獲得しやすくなるなどの副次的なメリットもあります。

運転資金の資金調達

事業が難航し、資金繰りに苦労している状況で運転資金が必要なときには、次の3つの資金調達方法を検討しましょう。

  • 日本政策金融公庫の融資
  • 補助金・助成金
  • ファクタリング

補助金・助成金は種類が多いため、申請条件や支給額などを確認しておくことが必要です。

また、日本政策金融公庫なら、様々な事業者に対する資金の貸し付けを行っており、制度も多岐に渡り準備されています。

一時的に業績が悪化している企業向けの貸付制度もあるため、相談してみるとよいでしょう。

そして審査のハードルが低く、赤字決算や債務超過などが影響しないファクリングなら、借入れの審査に通らなくても利用できる可能性があります。

急を要する資金調達

急いで資金調達しなければならないときには、次の3つの方法を検討しましょう。

  • ビジネスローン
  • 手形割引
  • ファクタリング

ビジネスローンは、早ければ即日融資が可能になるなど、審査のハードルが低めで必要書類の少ないことが特徴です。

手形取引があるのなら手形割引、掛け取引ならファクタリングを利用すると、決済前の代金を現金化できます。

ただし手形割引は融資という扱いであり、貸し倒れリスクは利用者が負います。

ファクタリングであれば貸し倒れリスクはファクタリング会社が負うことになり、最短で即日現金化が可能であるなどスピーディであるため、その点も踏まえて選ぶことが必要です。

まとめ

資金調達は会社経営において欠かせないことといえますが、種類や方法は数多く存在し、それぞれメリットやデメリットも異なります。

負債や資本を増やす方法や、所有する資産を現金化する方法など、どの方法を選ぶべきか慎重に検討が必要です。

何のために資金を調達することが必要なのか、いつまで、どのくらいの金額を調達しなければならないかによって、選ぶ方法は異なります。

資金調達の方法ごとのメリット・デメリットを理解した上で、最適な方法を選ぶようにしましょう。

なお、手元の資金が枯渇すれば、たとえ黒字でも会社は倒産します。

すぐに手元のお金を増やすことが必要でも、借入れの審査に通らないという場合には、保有する売掛金を現金化するファクタリングの利用を検討してみてください。