ファクタリングの審査落ちには、原因があります。
資金調達や資金繰り改善にファクタリングを活用したくても、審査落ちすれば利用できません。
審査落ちしないためには、通過できない原因や、ファクタリング会社の審査基準を事前に把握しておくと安心です。
そこで、ファクタリング審査に落ちてしまう12の原因と、審査基準となる3つの項目を詳しく解説します。
ファクタリング審査の基準ポイント
ファクタリングはお金を借りる方法ではないため、銀行融資など借入れの審査とは異なる基準で審査が行われます。
主にファクタリング審査では、次の3つを基準に買取可否や買取金額が決まります。
- 売掛先の信用力
- 回収の確実性
- 利用者の信用力
それぞれ説明します。
売掛先の信用力
ファクタリング審査では、売掛先の信用度を特に重視します。
銀行融資など借入れの審査では、利用者の信用度が重視されるため、税金を滞納していたり債務超過だったりすれば審査に通りません。
赤字決算の場合にも、一過性の赤字で黒字化が見込める場合以外は、評価が下がり審査には通りにくいといえます。
しかしファクタリングの場合、売掛先の信用力を重視するため、利用者の税金滞納・債務超過・赤字決算が審査落ちの直接的な理由にはなりにくいことが特徴です。
回収の確実性
ファクタリング審査では、売掛金回収の確実性も重視されます。
買い取った売掛金が貸し倒れになれば、ファクタリング会社は大きな損失を負います。
そのため指定された期日に確実に入金される売掛金であることや、2社間ファクタリングにおいて利用者が回収業務代行後に遅れず支払われるかなどが重視されます。
仮に売掛先の業績が良好で信頼性が高くても、利用者の資金繰りが極度に悪化していれば、回収した売掛金を使い込む恐れが高いため、審査落ちする恐れはあります。
利用者の信用度
ファクタリング審査では、売掛先だけでなく利用者の信用度もある程度は重視されます。
もっとも重視されるのは売掛先の信用度であり、売掛金の回収の見込みであるものの、信頼できない利用者と判断されれば審査落ちします。
横柄で不誠実な態度を取る人物や、自転車操業でヤミ金融業者から借金がある場合などは、審査落ちする可能性が高くなります。
仮に利用者の信用度が低い状態で契約できたとしても、リスクの高い取引と判断されれば、売買手数料は高めに設定されると留意してください。
ファクタリング審査に落ちる12の原因
ファクタリング審査に落ちてしまうのは12の原因が関係しますが、その原因の背景・所在は以下の3つです。
- 売掛先が原因のケース
- 売掛金に理由があるケース
- 利用者に理由があるケース
それぞれの背景・所在ごとに、審査落ちする原因について解説します。
売掛先が原因のケース
ファクタリング審査に落ちてしまうケースとして、売掛先に理由がある場合です。
審査で最も重視されるのは売掛先の信用力のため、以下に該当する売掛先の債権では審査落ちの可能性が高いといえます。
- ①経営難の会社
- ②財務状況が悪化している会社
- ③売掛先が個人事業主
- ④ペーパーカンパニーと疑われる会社
それぞれ説明します。
①経営難の会社
ファクタリング審査に落ちてしまう原因が売掛先の場合、その会社が経営難である場合や経営状況が悪化していることが関係します。
仮に売掛先が倒産した場合、ファクタリング会社は売掛金を回収できず、大きな損失を被ります。
ファクタリング審査では売掛先が信用できる会社かが重要であり、信用が低いと判断されれば審査落ちする確率が高くなるでしょう。
業種・規模・利益など、売掛先の経営状況などを総合的に判断した上で、売掛金の買取可否をまず決定し、リスクの高さに伴う売買手数料が設定されます。
そのため経営状況に不安がある売掛先の債権は避けた方がよいといえます。
②財務状況が悪化している会社
ファクタリング審査に落ちてしまう原因が売掛先の場合、財務状況が悪化している売掛先は避けましょう。
今は経営状況に問題がない場合でも、過去に金融事故を起こしている会社や税金滞納などある会社の場合、審査落ちする恐れがあります。
信頼性の低い取引を行っている売掛先の債権はできるだけ避けたほうが、ファクタリングの審査落ちを避けやすいです。
③売掛先が個人事業主
ファクタリング審査に落ちてしまう原因が売掛先の場合、そもそもその売掛先が法人ではなく個人事業主であればファクタリングの審査落ちします。
ファクタリング会社の多くは、売掛先が法人であれば買取可能であるものの、個人事業主では社会的な信用度が低いため買取不可としていることがほとんどです。
法人であれば商業登記簿や信用情報機関を使った情報調査もできますが、個人事業主では調査も難しくなるため、売掛先の事業実態や信用度の確認できません。
仮に事業が好調な個人事業主だとしても、審査落ちの原因になってしまいます。
④ペーパーカンパニーと疑われる会社
ファクタリング審査に落ちてしまう原因が売掛先の場合、売掛先が「ペーパーカンパニー」と疑われるケースが挙げられます。
ペーパーカンパニーとは、登記上は設立済の会社ではあるものの、事業活動の実態がない会社です。
ダミー会社やゴースト会社と呼ばれることもあり、課税逃れや犯罪利用のためなどに設立されるなど、リスクの高い存在といえます。
そのためペーパーカンパニーと疑われる場合には、審査落ちしてしまいます。
売掛金に理由があるケース
ファクタリング審査に落ちてしまうケースとして、売掛先には問題がなくても「売掛金」が関係する場合もあります。
売掛金が理由で審査落ちする場合は以下の5つです。
- ⑤入金サイトが長め
- ⑥額面の金額が低い
- ⑦債権の性質に問題がある
- ⑧架空債権の疑いがある
- ⑨二重譲渡が懸念される
それぞれ説明します。
⑤入金サイトが長め
ファクタリング審査に落ちる原因が売掛金にある場合、「入金サイト」が長めであることが挙げられます。
売掛金が入金されるまでの期日が長めの場合、入金までの間に売掛先が倒産すれば、ファクタリング会社は売掛金を回収できません。
入金までの期日は短いほうが審査では有利であり、長くても2か月程度が目安です。
それ以上の入金サイトの売掛金では、審査落ちする可能性が高くなります。
⑥額面の金額が低い
ファクタリング審査に落ちる原因が売掛金にある場合、ファクタリング会社指定の売掛債権額面の下限に満たない債権である可能性があります。
ファクタリング会社によっては、買取可能とする売掛債権額面に下限を設けています。
たとえば300万円が下限の業者に、50万円の売掛債権買い取りを申し出ても断られます。
⑦債権の性質に問題がある
ファクタリング審査に落ちる原因が売掛金にある場合、「不良債権」の疑いがあるときも審査落ちします。
不良債権とは、財産的な価値を失って回収できなくなった債権です。
すでに貸し倒れとなった状態の債権であるのにも関わらず、ファクタリング会社に買い取りを申し出ても、当然審査には通りません。
⑧架空債権の疑いがある
ファクタリング審査に落ちる原因が売掛金にある場合、その売掛金が「架空債権」であると疑われるケースも含まれます。
架空債権とは存在しない債権です。
売掛金は目に見えない資産のため、請求書を偽造・捏造したり決算書を粉飾したりなど、架空の債権を作ることはできます。
ファクタリング会社の審査でも、架空債権ではないか確認するものの、手口が巧妙で見抜けない場合もあります。
しかし架空債権でファクタリングを利用すれば、ファクタリング会社から詐欺罪で訴えられます。
請求書や決算書を偽造・捏造すれば私文書偽造罪、期日までに支払いできなければ横領罪などの罪で告訴されると理解しておきましょう。
⑨二重譲渡が懸念される
ファクタリング審査に落ちる原因が売掛金にある場合、「二重譲渡」が懸念されれば審査には通りません。
二重譲渡とは、1つの債権を異なる2つ以上のファクタリング会社へ売却する行為です。
仮に二重譲渡に成功すれば、2社から不正に現金化した代金を受け取ることになります。
この二重譲渡は違法行為であり、詐欺行為です。
ファクタリング審査落ちを免れ、資金調達に成功したとしても、売掛金回収段階に発覚すれば告訴され罪に問われます。
利用者に理由があるケース
ファクタリング審査に落ちてしまうケースとして、売掛先・売掛金以外に、利用者に問題がある場合です。
審査落ちする原因として、主に次の3つが挙げられます。
- ⑩人柄や態度が悪い
- ⑪取引実績がない・浅い
- ⑫社会的信用度が低い
それぞれ説明します。
⑨人柄や態度が悪い
ファクタリング審査に落ちてしまうケースとして、利用者の「人柄」や「態度」に問題がある場合が挙げられます。
ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者の信頼関係が成立することが大切です。
不誠実で横柄な態度での対応や、提出書類を揃えないなどの場合、信頼性に欠けるため審査落ちする可能性が高いといえます。
清潔感のある服装などを心掛け、信頼関係を損なうことのないように意識しましょう。
⑩取引実績がない・浅い
ファクタリング審査に落ちてしまうケースとして、利用者と売掛先の「取引実績」がない、または浅い場合が挙げられます。
売掛先が新規の取引相手の場合、期日に売掛金が遅れず支払われるか確認できません。
取引実績が浅い場合も同様です。
審査落ちを防ぐためにも、継続した取引があり、遅れず期日に売掛金が入金されている売掛先を選びましょう。
⑪社会的信用度が低い
ファクタリング審査に落ちてしまうケースとして、利用者が個人事業主であるなど、社会的信用が低い場合が挙げられます。
個人事業主の場合、取引相手も個人事業主や中小零細企業のことが多く、廃業リスクや突然の資金難に陥るリスクが高いといえます。
ファクタリング会社は、売掛金が確実に回収できないことや回収遅れなどを懸念します。
どれほど事業が好調で人柄がよい事業主でも、個人経営では審査落ちする可能性があるため、必ずしも利用できるわけではありません。
ファクタリングで審査落ちを回避する6つのポイント
ファクタリングで審査落ちを回避する次の6つのポイントを押さえておけば、事前に対処できます。
- ①信用度の高い売掛債権を選ぶ
- ②入金サイトが短めの売掛債権を選ぶ
- ③売上とバランスが取れている売掛債権を選ぶ
- ④譲渡禁止特約なしの売掛債権を選ぶ
- ⑤架空債権でないことを示す
- ⑥丁寧な対応や態度を心掛ける
それぞれのポイントを説明します。
①信用度の高い売掛債権を選ぶ
ファクタリングで審査落ちを回避するポイントとして、信用度の高い売掛債権を選ぶことが挙げられます。
信用度の高い売掛債権なら、ファクタリング会社も回収遅れや貸し倒れなど心配することなく、安心して契約できます。
たとえば売掛先が公的機関や上場企業の場合、売掛金が未回収となるリスクはかなり低いと考えられるため、審査落ちする可能性も低くなります。
しかし売掛先が中小零細企業ですでに業績が悪化している状態の会社の場合や、売上は好調でも評判が悪い会社のときには審査落ちリスクが高くなるといえます。
②入金サイトが短めの売掛債権を選ぶ
ファクタリングで審査落ちを回避するためには、支払期間である入金サイトが短めの売掛債権を選びましょう。
先に述べたとおり、入金サイトが長い売掛債権は、万一売掛先が倒産すると貸し倒れするリスクを高めます。
そのため支払期日までの期間は、長くて2か月程度の債権を選ぶことが審査落ちを防ぐポイントです。
③売上とバランスが取れている売掛債権を選ぶ
ファクタリングで審査落ちを回避するためには、売上とバランスの取れている売掛債権を選びましょう。
売上と売掛金のバランスが悪いと審査落ちしやすいといえます。
たとえば月売上300万円程度であるのに、3,000万円の売掛金買取を申し込むケースなどが審査落ちしやすいケースです。
売上と売掛金が見合っていないと、偽造や捏造された請求書を使っているリスクが懸念されます。
④譲渡禁止特約なしの売掛債権を選ぶ
ファクタリングで審査落ちを回避するには、「債権譲渡禁止特約」なしの売掛債権を選びましょう。
債権譲渡禁止特約とは、債権を第三者に譲り渡すことを禁止する特約であり、債務者の権利保護の特約です。
近年では、債権譲渡禁止特約がついた債権でも譲渡可能になるなど、民法の改正もありました。
しかしそもそも売掛先が債権譲渡を禁止しているのに、その特約を無視してファクタリング会社が買い取っても、後々何らかのトラブルが予測されます。
法律では有効とされている場合でも、債権譲渡禁止特約のついた場合には審査落ちする可能性が高いため、債権譲渡禁止特約なしの売掛債権を選んでください。
⑤架空債権でないことを示す
ファクタリングで審査落ちを回避するポイントとして、売掛金が架空債権でないことを示すことが必要です。
申し込みの際に、売掛金の存在を証明するため、以下の書類を提出しましょう。
- 売掛先との基本契約書
- 売掛先からの入金が確認できる通帳
- 個別契約書
- 請求書
- 見積書
- 受注書
- 納品書
特に新規の取引先との間で発生した売掛債権の売却においては、契約の存在とそれによる請求・売掛金の発生を証明することが重要です。
複数の書類を多く提出し、存在が認められれば審査落ちを回避できる可能性は高くなります。
⑥丁寧な対応や態度を心掛ける
ファクタリングで審査落ちを回避するポイントとして、ファクタリング会社との対応中、丁寧に信頼してもらえる態度を心掛けることが挙げられます。
審査では売掛先の信用度が重視されますが、利用者の人柄や人間性なども重要です。
ファクタリング会社からの質問に誠実に回答し、矛盾などないことが大切といえます。
疑念を抱かれれば、架空債権や二重譲渡ではないかなど疑われ、審査落ちのリスクが高くなります。
時間や約束を守ることや嘘をつかないこと、面談の際には身だしなみを整えておくことなど、ビジネスマナーの基本を守れば問題ありません。
審査落ちを避けるファクタリング会社選びのコツ
ファクタリングによる資金調達を成功させるためには、審査落ちを避けることが必要です。
そもそもファクタリング会社選びが正しくなければ、本来なら通ったはずの審査にも落ちやすくなってしまいます。
そこで、審査落ちを避けるために次の2つのコツを押さえた上でファクタリング会社選びをしてください。
- 独立系のファクタリング会社から選ぶ
- 複数社に申し込む
それぞれのコツを説明します。
独立系のファクタリング会社から選ぶ
ファクタリングの審査落ちを避けるためのコツとして、独立系のファクタリング会社から選びましょう。
独立系のファクタリング会社とは、銀行や大手企業子会社などではなく、ファクタリング事業を専門として独立したファクタリング会社です。
銀行系列や大手企業系列のファクタリング会社のほうが、知名度も高いため安心して契約しやすいといえます。
しかし審査のハードルは高くなるため、審査落ちリスクも上がります。
銀行系列のファクタリング会社は、個人事業主や中小企業を利用者として想定した運営をしておらず、査落ちするリスクは高めです。
独立系のファクタリング会社なら、中小企業を利用者と想定した運営をしているため、個人事業主の少額債権も積極的に買い取るケースも見られます。
中小企業の資金の悩みや解決するべき方向性など、独立系のファクタリング会社の方が理解していることが多いといえます。
複数社に申し込む
ファクタリングの審査落ちを避けるためのコツとして、複数社に申し込むことが挙げられます。
一社だけに見積もりを提示してもらうのではなく、複数社から相見積もりを取得すれば、売掛金の買取相場を知ることができます。
ファクタリング会社も営利目的で営業している以上、事前に相見積もりと伝えることで他社との競争に勝ちたい競争心を高めます。
契約条件や担当者との相性なども比較できるため、信頼できるファクタリング会社探しにおいても、相見積もりの取得はメリットがあります。
複数社に相見積もりを依頼する場合でも、提出する書類は基本的にほぼ同じのため、事前に複数枚準備しておけば慌てず申し込みできます。
審査なしのファクタリング会社を利用しないほうがいい理由
審査に落ちてしまった際や、資金調達を急いでいる場合、審査を行わずに利用できるファクタリング会社を選びたくなるものでしょう。
しかし審査を行わないことは、高額な売買手数料を提示される恐れや、契約書を交わさないまま償還請求権付きの契約を締結してしまう恐れも否定できません。
償還請求付きの契約では、万が一売掛先の倒産などで売掛金が回収できなかったとき、ファクタリング会社から債権を買い戻すことになります。
法律上、金銭の貸し付けとして扱われる取引のため、銀行免許や貸金業免許がなければ扱うことができないファクタリング契約です。
銀行や貸金業者ではないのにもかかわらず、償還請求権の付いた契約を締結する業者は、悪質なヤミ金融業者の恐れがあるため絶対に契約しないでください。
まとめ
ファクタリングで資金調達したくても、審査落ちでは利用できず、資金繰りを改善させることもできません。
審査では、売掛金が本当に実在するのか、遅れずに回収できるのかなど、いろいろな項目を確認します。
特に2社間ファクタリングは、早ければ即日現金化が可能になるほどスピーディであるものの、短い審査時間の中で信頼できる相手か判断されます。
そのためファクタリングで審査落ちを防ぐためには、審査がスムーズに進み安心して契約してもらえる根拠を示すことが大切です。
提出書類はできるだけ多く、信用するに値すると判断されることを意識して準備することで、審査に通る可能性は高くなると考えられます。