契約書に貼る収入印紙の金額はいくら?課税文書の種類と貼り忘れの罰則を解説

契約書に貼る収入印紙の金額はいくら?課税文書の種類と貼り忘れの罰則を解説

契約書が収入印紙を必要とする文書の場合、指定された金額の印紙税を納めることになります。

ただし収入印紙を必要とする文書の場合でも、契約書に記載されている金額によっては、不要なケースもあるため確認が必要です。

反対に契約書へ収入印紙を貼らなければならないのに、貼り忘れていた場合には罰則が科されることもあります。

そこで、契約書に貼る収入印紙の金額や、必要とする課税文書の種類と貼り忘れたときの罰則について解説していきます。

収入印紙とは

印紙税のアイキャッチ

「収入印紙」とは、租税・手数料・その他収納金を微収するために政府が発行する証票です。

契約書や領収書など、一定要件を満たす文書に貼って割印をし、印紙税を納めます。

ただし収入印紙はどのような文書でも貼り付けが必要なわけではなく、印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられる20種類の課税事項に該当する文書に貼らなければならないとされています。

契約書の割印とは?ルールや適した印章の種類・訂正したいときの対処法を紹介

収入印紙が必要な契約書

収入印紙を貼り付ける必要があるのは、印紙税法による課税文書です。

ただしすべての課税文書に収入印紙が必要になるわけではなく、契約書に記載されている金額によっては、印紙税がかからない非課税文書に含まれる場合もあります。

そのため収入印紙が必要な契約書なのか判断するときには、まずは以下に該当するかにより、課税文書に含まれるか確認しましょう。

  • 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)の記載がある
  • 当事者間で課税事項を証明する目的で作成されている
  • 印紙税法第5条(非課税文書)の規定で印紙税を課税しないとされている非課税文書に含まれない

なお、上記の課税物件表は、国税庁の「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」と、「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」で確認できます。

収入印紙が必要な契約書とは?種類や金額・貼る上でのルールを解説

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収入印紙を必要としない契約書

契約書

収入印紙は、作成する契約書が課税文書に該当しない場合は不要です。

また、印紙税法上、非課税文書に該当する場合も貼る必要はありません。

以上を踏まえ、収入印紙を必要としない契約書は以下のいずれかに該当するケースです。

  1. 非課税文書
  2. 不課税文書

それぞれ説明します。

非課税文書

「非課税文書」とは、印紙税法で印紙税が非課税とされる以下に該当する文書です。

  • 印紙税法別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書(契約金額が一定額以下の契約書など)
  • 国・地方公共団体・印紙税法別表第二に掲げる者が作成した文書(公共性・公益性の高い半官半民の法人作成の契約書など)
  • 印紙税法別表第三の上欄に掲げる文書で同表下欄に掲げる者が作成した文書(公共性・公益性の高い貸付けに関する契約書など)

国や地方公共団体などが作成した課税文書は非課税とされているため、個人(納税義務者)と国または地方公共団体などが課税文書による契約を交わしたときは、個人側の契約書の収入印紙は不要です。

しかし国または地方公共団体側の契約書は課税対象となるため、収入印紙を貼らなければなりません。

契約書が非課税文書の場合、種類は課税文書に該当するケースでも、印紙税は非課税となるため収入印紙は不要です。

収入印紙が不要な例として、以下の文書が挙げられます。

  • 5万円未満の領収書・レシート
  • クレジットカードで支払ったことを明記した領収書
  • PDFやFAXで発行した領収書
  • 請求書
  • 注文書
  • 注文請書
  • 契約金額1万円未満の契約書
  • 電子契約書

不課税文書

「不課税文書」とは、課税文書に指定される1~20号文書に該当しない文書です。

本来は課税文書でありながら印紙税が課税されない文書が非課税文書であるのに対し、課税対象に該当しない文書が不課税文書といえます。

たとえば自動車・コピー機・複合機などのリース契約について、収入印紙は不要です。

賃貸借契約書は不課税文書に該当することが理由といえますが、借りるだけでなくたとえば自動車の運送契約を結ぶケースや、コピー機や複合機の保守点検の請負契約を結ぶときは契約金額に応じた印紙税を納めなければなりません。

雇用契約書や労働者派遣契約書、一定の時間のみ事務処理を委託する委任・準委任契約書も不課税文書に該当するため収入印紙は不要です。

ただし建物の賃貸借契約書に収入印紙は不要であるものの、土地の賃貸借契約書は課税文書として扱われるため収入印紙が必要となるため注意しましょう。

契約書に貼る収入印紙の金額

 

契約書

契約書が課税文書の場合、記載された契約金額に応じた収入印紙を貼ります。

収入印紙が必要となる契約書の種類は以下のとおりです。

  1. 第1号文書(不動産売買契約書・金銭消費貸借契約書など)
  2. 第2号文書(工事請負契約書など)
  3. 第5号文書(合併契約書・吸収分割契約書・新設分割契約書)
  4. 第7号文書(取引基本契約書・業務委託契約書など)
  5. 第12号文書(信託契約書)
  6. 第13号文書(保証契約書)
  7. 第14号文書(金銭・有価証券の寄託契約書)
  8. 第15号文書(債権譲渡・債務引受けの契約書)

それぞれの金額を説明します。

第1号文書

第1号文書に該当する契約書等と、契約金額ごとの印紙税額は以下のとおりです。

  • 不動産・鉱業権・無体財産権・船舶・航空機・営業の譲渡に関する契約書(不動産売買契約書・不動産交換契約書・不動産売渡証書など)
  • 地上権・土地賃借権の設定・譲渡に関する契約書(土地賃貸借契約書・土地賃料変更契約書など)
  • 消費貸借に関する契約書(金銭借用証書・金銭消費貸借契約書など)
  • 傭船契約書を含む運送に関する契約書(運送契約書・貨物運送引受書など)
契約金額 印紙税額
10万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円
50万円超100万円以下 1,000円
100万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円
1億円超5億円以下 100,000円
5億円超10億円以下 200,000円
10億円超50億円以下 400,000円
50億円超 600,000円
契約金額の記載なし 200円

なお、不動産譲渡に関する契約書は、印紙税の軽減措置により税率が引き下げられています。

軽減対象は、不動産譲渡に関する契約書のうち記載金額が10万円を超えるケースであり、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される契約書です。

契約金額 印紙税額(軽減後)
10万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000万円
5,000万円超1億円以下 30,000万円
1億円超5億円以下 60,000万円
5億円超10億円以下 160,000万円
10億円超50億円以下 320,000万円
50億円超 480,000万円

不動産譲渡に関する契約書に記載された契約金額が10万円以下の場合は軽減措置の対象にはなりません。

契約書に記載された契約金額が1万円未満の場合は非課税であり、収入印紙は費用です。

第2号文書

第2号文書に該当する契約書等と、契約金額ごとの印紙税額は以下のとおりです。

  • 請負に関する契約書(工事請負契約書・工事注文請書・物品加工注文請書・広告契約書・映画俳優専属契約書・請負金額変更契約書など)
契約金額 印紙税額
100万円以下 200円
100万円超200万円以下 400円
200万円超300万円以下 1,000円
300万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円
1,000万円超5,000万円以下  20,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円
1億円超5億円以下 100,000円
5億円超10億円以下 200,000円
10億円超50億円以下 400,000円
50億円超 600,000円
契約金額の記載なし 200円

ただし建設工事請負契約書に記載された契約金額が100万円を超え、令和9年3月31日までに作成される場合は以下のとおり軽減措置の対象です。

契約金額 印紙税額(軽減後)
100万円超200万円以下 200円
200万円超300万円以下 500円
300万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下  10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円
1億円超5億円以下 60,000円
5億円超10億円以下 160,000円
10億円超50億円以下 320,000円
50億円超 480,000円

第5号文書

第5号文書に該当する契約書等と、印紙税額は以下のとおりです。

  • 合併契約書のうち会社法や保険業法に規定される文書や、吸収分割契約書や新設分割計画書のうち会社法に規定される文書(合併契約書・吸収分割契約書・新設分割契約書)
印紙税額 一律 40,000円

第7号文書

第7号文書に該当する契約書等と、印紙税額は以下のとおりです。

  • 継続取引の基本となる下請基本契約書・代理店契約書・保険特約書などの文書(売買取引基本契約書・特約店契約書・代理店契約書・業務委託契約書・銀行取引約定書など)
印紙税額 一律 4,000円
※契約期間3か月以内で更新の定めがない契約書は非課税

第12号文書

第12号文書に該当する契約書等と、印紙税額は以下のとおりです。

  • 信託行為に関する契約書で、特別の法令に基づく信託契約を証明する文書を含む、信託法第3条第1号に規定の信託契約を証明する文書(信託契約書・信託証書)
印紙税額 一律 200円

 

第13号文書

第13号文書に該当する契約書等と、印紙税額は以下のとおりです。

  • 債務の保証に関する契約書(主たる債務の契約書に併記する金銭消費貸借契約書に定められる連帯保証条項などを除く)
印紙税額 一律 200円
※身元保証契約書は非課税

第14号文書

第14号文書に該当する契約書等と、印紙税額は以下のとおりです。

  • 金銭または有価証券の寄託に関する契約書(主に金融機関と関連のある契約書)
印紙税額 一律 200円

第15号文書

第15号文書に該当する契約書等と、契約金額ごとの印紙税額は以下のとおりです。

  • 債権譲渡またはは債務引受に関する契約書(債権譲渡契約書・債務引受契約書)
契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上 200円
契約金額の記載のないもの 200円

契約書以外に貼る収入印紙の金額

領収書と収入印紙

契約書以外で収入印紙が必要となる文書は以下のとおりです。

  1. 第3号文書
  2. 第4号文書
  3. 第6号文書
  4. 第8号文書
  5. 第9号文書
  6. 第10号文書
  7. 第11号文書
  8. 第16号文書
  9. 第17号文書
  10. 第18号文書
  11. 第19号文書
  12. 第20号文書

それぞれの金額を説明します。

第3号文書

第3号文書に該当するのは、約束手形・為替手形などです。

10万円未満は非課税となりますが、約束手形や為替手形で一覧払・金融機関相互間・外国通貨での表示・非居住者円表示及び円建銀行引受手形表示に該当する場合においては、10万円以上一律200円・10万円未満は非課税として扱います。

契約金額 印紙税額
10万円以上100万円以下 200円
100万円超200万円以下 400円
200万円超300万円以下  600円
300万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 2,000円
1,000万円超2,000万円以下 4,000円
2,000万円超3,000万円以下 6,000円
3,000万円超5,000万円以下  10,000円
5,000万円超1億円以下 20,000円
1億円超2億円以下 40,000円
2億円超3億円以下 60,000円
3億円超5億円以下 100,000円
5億円超10億円以下  150,000円
10億円超 200,000円

第4号文書

第4号文書に該当するのは、株券・出資証券・社債券・投資信託・貸付信託・特定目的信託・受益証券発行信託の受益証券です。

日本銀行や特定法人などの出資証券・譲渡禁止の特定の受益証券・額面株式無効手続による株券で、一定要件を満たすものは非課税となります。

契約金額 印紙税額
500万円以下 200円
500万円超1,000万円以下 1,000円
1,000万円超5,000万円以下 2,000円
5,000万円超1億円円以下 10,000円
1億円超 20,000円

第6号文書

第6号文書に該当するのは、株式会社などの設立で作成する定款の原本です。

ただし公証人が保存するものは含みません。

印紙税額 一律 40,000円

第8号文書

第8号文書に該当するのは、預金証書・貯金証書です。

印紙税額 一律 200円

第9号文書

第9号文書に該当するのは、倉荷証券・船荷証券・複合運送証券です。

印紙税額 一律 200円

第10号文書

第10号文書に該当するのは、保険証券です。

印紙税額 一律 200円

第11号文書

第11号文書に該当するのは、信用状です。

印紙税額 一律 200円

第16号文書

第16号文書に該当するのは、配当金領収書・配当金振込通知書です。

契約金額 印紙税額
3,000円以上 200円
契約金額の記載なし 200円

第17号文書

第17号文書に該当するのは、金銭または有価証券の受取書です。

受取代金以外の金銭または有価証券の受取書で、5万円以上および金額記載のないものは一律200円となります。

受取金額5万円未満で、営業に関係しない特定文書に追記した受取書は非課税の扱いです。

契約金額 印紙税額
5万円以上100万円以下 200円
100万円超200万円以下 400円
200万円超300万円以下 600円
300万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 2,000円
1,000万円超2,000万円以下 4,000円
2,000万円超3,000万円以下 6,000円
3,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 20,000円
1億円超2億円以下 40,000円
2億円超3億円以下 60,000円
3億円超5億円以下 100,000円
5億円超10億円以下 150,000円
10億円超 200,000円
受取金額の記載なし 200円

第18号文書

第18号文書に該当するのは、預金通帳・貯金通帳・信託通帳・掛金通帳・保険料通帳です。

印紙税額 1年ごと 200円

第19号文書

第19号文書に該当するのは、消費貸借通帳・請負通帳・有価証券の預り通帳・金銭の受取通帳などの通帳です。

印紙税額 1年ごと 400円

第20号文書

第20号文書に該当するのは、判取帳です。

印紙税額 1年ごと 4,000円

契約書に収入印紙を貼らなかった場合

レッドカードを出すビジネスマン

契約書が印紙税が課税される課税文書の場合において、収入印紙を貼らなかったことが税務調査などで発覚すると、以下の罰則等の対象となります。

  1. 過怠税
  2. 刑事罰

それぞれ説明します。

過怠税

「過怠税」とは、印紙税を課税文書の作成において正しく納付しなかったときに課される税金です。

印紙税は、作成した課税文書に所定の額面の収入印紙を貼り付け、消印をして納めます。

本税とは別で課される過怠税の金額は以下のとおりです。

① 賦課決定を予知せずに自らが税務署長に印紙税を納付していない旨を申し出た場合 本税額の10%
② 上記①以外で課税文書作成までに印紙税を納めなかった場合 本税額の2倍
③ 収入印紙に消印がなかった場合 本税額と同額
④ 上記①または③の過怠税が含まれる場合の合計額が1,000円に満たないとき 1,000円

刑事罰

契約書への収入印紙の貼付を怠ったときや、消印をしていない場合は、以下の刑事罰の対象となる恐れもあります。

① 偽りその他不正で印紙税を免れようとする場合 3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または併科(印紙税額の3倍が100万円を超える場合、情状で印紙税額の3倍を限度に罰金を科すことが可能)
② 上記①以外で貼付すべき収入印紙を貼付しない場合 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
③ 貼付した収入印紙に消印を行わない場合 30万円以下の罰金

まとめ

契約書が課税文書の場合、契約金額に応じた収入印紙が必要です。

貼り忘れや消印忘れなどは、罰則などの対象となる恐れもあるため、必ず必要な収入印紙を貼付してください。

なお、本来契約書の原本は当事者数と同通数を作成しますが、その通数分の収入印紙が必要です。

収入印紙を節約したいときは、1人の当事者に1通のみ原本を作成し、残りの当事者は写しを保管することもできます。

また、電子契約では収入印紙を貼る必要がないため、印紙税の金額を気にする必要もありません。

紙媒体の契約書は課税文書であれば印紙税が必要となると踏まえ、契約書締結の頻度が高いときは電子契約を導入することにより、収入印紙代の節約につながります。