ゼロゼロ融資で倒産の危機に…。完済するための方法とは

ゼロゼロ融資は、新型コロナウイスス感染拡大の影響で倒産してしまう企業を救ったといえる制度です。

しかし本来であればすでに倒産していた事業者も、ゼロゼロ融資で延命していたケースもあり、初回返済までの据置期間が過ぎて返済が始まることで追い込まれる企業が続出することが懸念されています。

ゼロゼロ融資で抑制されていたといえる企業倒産が増加するリスクが高まってきたといえますが、倒産しないための対処方法について解説していきます。

ゼロゼロ融資とは

「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売上減少した事業者に対し、実質無利子・無担保で事業資金を貸し付ける制度です。

日本政策金融公庫など政府系金融機関が主に貸し付けしていた融資制度ですが、対応が間に合わなくなったことにより、2020年5月から民間銀行なども融資対応することとなりました。

通常、融資を受けたときには、元本に利子を加えた額を返済します。

しかしゼロゼロ融資の場合、融資後3年間の利子を負担するのは都道府県で、経営状況悪化により返済困難に陥ったときには元本の最大8割または全額を信用保証協会が肩代わりする仕組みです。

実質無利子・無担保でスタートした融資制度ですが、最長5年間という返済開始までの据置期間を経て、ついに利払いを含めた返済がスタートします。

多くの事業者が据置期間を3年間で設定していたことから、返済開始のヤマ場となるのはは2023年春から夏にかけてと推測されています。

まだ事業を抜本的に立て直しできていない状態で、物価上昇や円安などの影響を受ける中、積み上がった借金以外に新たな債務返済が始まることは大きな打撃となるでしょう。

政府による新たな借り換え保証などで資金繰りの下支えをする構えも見られますが、借り換え保証利用には経営計画策定が前提となるため、倒産件数が増えることに拍車をかけることが懸念されています。

ゼロゼロ融資利用後の倒産の実態

信用調査会社である株式会社東京商工リサーチの発表によると、2023年8月時点におけるゼロゼロ融資利用後の倒産は57件です。民間銀行でゼロゼロ融資を対応しはじめた2020年からの累計では、1,025件に達しました。(出典:株式会社東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」)

業種別では、全体の4割程度をサービス業が占めています。サービス業は、コロナ禍で大打撃を受けた業種のひとつです。ゼロゼロ融資で一時的に解決できた資金繰りの問題が、返済の負担によって新たに過剰債務を生み出してしまったことが原因といえます。

コロナ禍による影響が収束しつつある現在(2023年度後期)も、物価上昇や人件費高騰などにより、ゼロゼロ融資返済の負担を大きくしています。対策として政府は「コロナ借換保証」を新設し、ゼロゼロ融資の返済負担軽減を図っていますが、いくつかの要件があるため、すべての企業が利用できるとは限りません。

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倒産抑制から倒産増加に変わる理由

ゼロゼロ融資は、多くの事業者の資金難を救い、企業の倒産を抑制したといえます。

しかし今後は、このゼロゼロ融資が倒産増加の要因となると考えられています。

そもそも実質無利子・無担保で事業資金の借入れを可能としたゼロゼロ融資は、企業が倒産することを抑え経済の下支えとなり貢献したといえるでしょう。

しかしその半面で、本来ならすでに事業を継続できなかった状態の企業まで存続させてしまったともいえます。

2023年夏以降に返済開始となる企業が増えるとされていますが、物価高などがすでに追い打ちをかけている状況であり、返済困難な状況に陥り事業継続を断念する動きが増えることが懸念されます。

もともとゼロゼロ融資の影響もあり、東京商工リサーチの調査によると2020年度の企業倒産件数は前年度から2割近く減少し、2021年度の倒産件数も57年ぶりの低水準にまで抑えられていました。

コロナ禍で多くの企業が疲弊してしまった中、倒産件数は抑えることができていたといえます。

しかし帝国データバンクの推計では、借入金の利子を利益で賄うことのできない企業は2021年度にはコロナ禍前から3割増加したとしており、融資を受けても抜本的な事業改革に踏み出せていない企業も少なくないようです。

倒産が増えると予想される時期

ゼロゼロ融資の初回返済が開始するまでの据置期間は最長5年間で、利払いについては3年間に渡り実質免除となります。

すでに7割程度の事業者が元金返済を開始しているものの、本格的な返済開始は2023年3~7月がピークで、民間銀行が実施したゼロゼロ融資については2023年7月から2024年4月に集中すると推測されているようです。

据置期間中に業績を立て直すことが必要だったものの、実際には進まないまま調達した資金を使い切っている企業が多く、返済原資確保や追加融資が難しければ事業継続は断念するしかない倒産が相次ぐことが予想されます。

業績回復が進まない中、ゼロゼロ融資の返済が重荷になることは予測されるため、今後も原材料価格上昇などで収益を圧迫し続ければ倒産件数は増えてしまうことになるでしょう。

コロナ倒産が多い業種

すでに多くの企業が新型コロナウイルス感染拡大の影響で倒産していますが、2022年度にコロナ倒産した企業で多い業種は以下のとおりです。

  • 建設業
  • 卸売業
  • 製造業

この中で、卸売業ではニーズが低下しているアパレル産業の企業が多く倒産しており、製造・卸売では食品に関連した業種の企業倒産が目立っています。

ゼロゼロ融資を利用した約7割の企業が2022年12月末までに返済開始となっており、2023年以降に返済が開始する企業約3割も2023年夏をピークにいよいよ返済がスタートします。

収益力が戻らないまま返済原資も確保できなければ、企業の倒産増加は避けられないといえるでしょう。

コロナ倒産を防ぐ方法

ゼロゼロ融資の据置期間が終了したことにより、返済が開始してしまうことで窮地に立たされる企業も増える可能性があります。

返済が厳しい状況の中、コロナ倒産を防ぐためには次の5つの対処法を検討しましょう。

  1. 融資以外で資金調達する
  2. 借り換えを利用する
  3. リスケジュールを相談する
  4. 私的整理で交渉する
  5. 法的整理を手続する

それぞれの方法について説明します。

融資以外で資金調達する

ゼロゼロ融資の返済開始でコロナ倒産してしまうことを防ぐためには、融資以外で資金調達することを検討しましょう。

お金を借りたくても、赤字経営や債務超過、税金滞納などがあれば金融機関の審査に通りません。

しかし融資以外の方法であれば資金を調達できる可能性はあります。

たとえば「クラウドファンディング」などは、インターネットを介して不特定多数の個人から資金を募ることができます。

ネット上にビジネスプランなどを掲載し、

「応援したい」

「モノやサービスを試したい」

と感じ共感してくれた支援者から少額の資金を調達する仕組みです。

手軽さや拡散性の高さなどで、テストマーケティングにも活用できるだけでなく、ファンを獲得することにもつながるでしょう。

また、まだ回収していない売掛金があるときには「ファクタリング」も利用できます。

ファクタリングとは、保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金化することで資金を調達できるサービスです。

利用する際に審査も必要ですが、売掛先の信用力が重視されるため、銀行の審査に通らない場合でも利用できる可能性は高いといえます。

業績回復が遅れてしまった業界で銀行から資金を借りたくても審査は厳しくなる恐れがありますが、ファクタリングであれば赤字決算や債務超過でも利用できることがメリットです。

借り換えを利用する

ゼロゼロ融資の返済開始でコロナ倒産してしまうことを防ぐためには、「借り換え」を利用しましょう。

政府もコロナ禍で打撃を受けた事業者に対し、積極的な支援など配慮をするよう要請しているため、返済が厳しいときには相談してみることをおすすめします。

なお、日本政策金融公庫などコロナ貸付や商工中金の「危機対応融資」について既往債務の借り換えも可能としています。

危機対応融資とは、災害や金融危機などで一時的に経営難に陥った企業に対し、低利で融資する制度です。

さらに2023年1月10日からは、「コロナ借換保証制度」などもスタートしているため、政府系金融機関だけでなく民間銀行のゼロゼロ融資などの借り換えに対する保証としても利用できます。

リスケジュールを相談する

ゼロゼロ融資の返済開始でコロナ倒産してしまうことを防ぐためには、「リスケジュール」を相談しましょう。

リスケジュールとは、借入金の返済が厳しい場合において、返済金額や返済方法を変更したり見直したりすることです。

ただし条件変更により、融資を受けた金融機関から新規で融資を受けることは難しくなってしまいますので、その点を踏まえた上で相談するようにしてください。

私的整理で交渉する

ゼロゼロ融資の返済開始でコロナ倒産してしまうことを防ぐためには、「私的整理」を検討しましょう。

私的整理とは、債権者である金融機関と直接交渉し、双方の合意だけで次の内容などを成立させます。

  • 毎月の返済額の減額
  • 弁済期間の繰り延べ
  • 債権の縮減

金融機関と直接交渉するため、一般的に債務整理を行っていることが公表されず、取引先などに知られず手続できます。

また、債権者との間のみで行う手続であるため、進行の自由度が高いこともメリットといえるでしょう。

私的整理を担当する機関が関与した上で行うケースや、金融機関と直接交渉して進めるケースなどいろいろありますが、債務超過の程度や再建・返済計画の内容などで適切な方法を選ぶことが必要です。

私的整理ガイドライン

私的整理とは、裁判所を通さずに行う債務整理です。債務者と債権者の両方が、共通の認識のもと私的整理を円滑に行えるように、私的整理ガイドラインが設けられています。

私的整理ガイドラインには対象企業の選定基準や再建計画などの要件がまとめられているほか、関係者間の調整手続きの考え方についても書かれています。たとえば、債務超過におちいっている企業や再建の可能性がある企業に加えて、法的整理では再建に支障をきたす場合も私的整理の対象トなっています。

ただし、私的調整ガイドラインそのものに法的な拘束力はありません。あくまで、参考とすべきガイドラインとして設けられています。

私的整理ガイドラインは、金融界と産業界が協同で作成したものです。法的拘束力はなく、最終決定権は債権者側にあると言いつつも、国内の金融機関は基本的に私的整理ガイドラインを尊重する姿勢を示しています。

特定調停

特定調停は、裁判所の調停委員に間へ入ってもらったうえで債務者と債権者それぞれの金銭債権の利害関係を調整し、企業の再建を目指す方法です。債務者側が裁判所へ申し立てを行うことで利用できる制度であり、厳密には私的整理とは言い切れません。

一方で、対象債権者を「金融機関のみ」と限定できる点は、私的整理と同じです。特定調停を利用すると、取引先には再建中であることを知られずに債務整理できるというメリットがあります。

任意整理

任意整理も特定調停と同じく、再建を前提とした債務整理方法です。裁判所を通さず、債権者と直接交渉を行います。現在の返済スケジュールを見直し、長期の分割払いを新たに設定してもらう方法です。一般的には、弁護士に債権者との交渉を任せます。

任意整理を利用するメリットは、返済スケジュールに余裕ができることのみではありません。利息制限法で定められている利率以上の利息を支払っている場合、交渉によって減額を求められ、うまくいけば返済総額を減らすことができます。

法的整理を行う

ゼロゼロ融資の返済開始でコロナ倒産してしまうことを防ぐためには、法的整理を検討しましょう。

先に述べた手段で倒産してしまうことを防いだり防ごうとしたりしたものの、効果が期待できないときや資金繰りが改善されないときには、裁判所の関与の下で債務整理することになります。

会社を清算し、残っている借金を整理することとなりますが、裁判所の関与の下で手続するためゼロゼロ融資だけでなくすべての債権者がその対象です。

債務の弁済はいったん停止することになるため、法的手続を進めていることは一般に知られることとなることは避けられません。

取引先や顧客が離れるリスクはあるものの、最終手段として検討しなければならない場合もあると留意しておきましょう。

再建を前提とした倒産手続きは、民事再生と会社更生の2種類に分けられます。

民事再生

民事再生法にもとづいて行われる倒産の裁判手続きを、民事再生と呼びます。債権者をはじめとした利害関係者の同意のもと、策定した再生計画に沿って事業の再建を図る方法です。

民事再生の最大の特徴は、担保の有無によって債権者の権利が制約されることです。無担保債権者の場合、基本的に権利を行使することができません。担保を有する債権者のみが権利を行使でき、再生計画においても無担保債権はカットされます。

また、会社更生が株式会社のみとしているのに対し、民事再生は企業のほか個人も利用できる点も、特徴のひとつです。

民事再生は、大きく分けると自力再建型・スポンサー型・清算型の3種類があります。自力再建型とスポンサー型が既存の会社を残す前提で行われるのに対して、清算型は受け皿会社へ事業譲渡し、旧会社を畳む方法です。

会社更生

民事再生と異なり、株式会社のみを対象とする債務整理方法です。利用できるのは、必然的に上場企業や大企業のみとなります。

会社更生法にもとづき裁判所から選任された更生管財人によって、債務者の財産・債務が管理されます。更生管財人が策定した更生計画案に沿って、債務の弁済を行います。

ただし、更生管財人が策定した更生計画案にも、民事再生と同じく債務者や利害関係者からの同意が必要です。

民事再生に比べると、ルールが厳密に定められています。手続きも複雑となる反面、担保の有無に関係なく債権者の権利を制約できるメリットがあります。

まとめ 

ゼロゼロ融資の据置期間が終わり、返済開始となる企業が倒産することが懸念されています。

政府もゼロゼロ融資からの借り換えに加えて、ほかの保証付き融資から借り換えたり事業再構築の資金需要に対応したりを可能とする新たな保証制度を創設し、すでに取り扱いも始まっています。

ただし制度を利用する上で経営行動計画書作成や金融機関の伴走支援など必須となるため、黒字化目標などに関する具体的な計画も求められます。

まずは運転資金を確保し本質的な課題は先送りということは難しく、計画策定段階で実現可能性が低いと判断されれば制度を利用できない可能性も出てくるでしょう。

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