「成長企業」とは、成長する余地のある「伸びしろ」が高い特徴のある会社のことです。
すでに成長して規模が大きくなった大企業ではなく、成長している段階にある会社のことといえますが、判断する際の定義もあります。
また、成長企業と呼ばれる会社は全体的に風通しがよく現場のモチベーションも高い状況をキープできる環境が整備されているなど、特徴などが共通しています。
そこで、成長企業について、共通する法則や特徴、目指す方法についてわかりやすく解説していきます。
目次
成長企業とは
「成長企業」とは、成長段階にある会社であり、発展や能力発揮の余地が十分にある会社といえます。
大企業を指して使う言葉ではなく、利益や事業規模が継続して拡大している中小企業などを対象とした用語です。
日本の企業の99.7%は中小企業であると言われており、高い成長性を示す企業は少なくありません。
創業期から5年以内が会社の成長期といわれますが、経験の積み重ねと課題解決により、成長期を超えた後でも会社や事業規模が拡大し続ける会社もあります。
成長段階にある企業こそが成長企業といえますが、主に次の2つで判断できます。
- 定義
- 指標
それぞれ説明していきます。
定義
成長企業とは、2年以上連続して売上や純資本が増えている会社です。
ただし成長の継続性が見込まれ、社会が成長を実感できていなければ成長企業と定義されません。
指標
成長企業は上記の定義どおり継続して売上や利益を上げているかで判断されますが、次の割合を指標とするとよいでしょう。
売上高成長率={(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高}×100超優良水準 利益成長率={(当期利益高-前期利益高)÷前期利益高}×100 売上高増加率={(当期売上高 – 前期売上高)÷ 前期売上高}×100 経常利益増加率={(当期経常利益 – 前期経常利益)÷ 前期経常利益}×100 総資本増加率={(当期総資本−前期総資本)÷前期総資本}×100 |
成長企業の法則
成長企業に該当する会社は、次の3つの法則に沿った会社経営を行っていることが多いといえます。
- 目的意識が高い
- 無駄遣いをしない
- 顧客視点に立っている
それぞれ説明していきます。
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目的意識が高い
成長企業に該当する会社は、組織全体の目的意識が高いといえます。
仮に社員の多くが優秀でも、組織全体の目的意識が低ければ会社は成長できません。
組織全体の目的意識が高ければ、確立されている企業理念や経営目標に真っすぐ向かうことができます。
そのためにも企業理念や経営目標を設定するだけではなく、組織全体に浸透させ、社員一人ひとりの個人単位に落とし込むことが必要です。
無駄遣いをしない
成長企業に該当する会社は、投資を見誤ることなく、無駄遣いはしません。
また、無駄な経費は削減できているといえますが、特に広告費と従業員の残業代を過剰に発生させない取り組みができています。
成長企業では広告は博打的要素があると捉えることが多いため、可能な限り抑えようと努力します。
また、プロセスを改善し、業務システム基盤を見直すことで、徹底して残業排除を行うのも成長企業の特徴です。
顧客視点に立っている
成長企業に該当する会社は、ターゲット層の顧客の視点に立った経営ができています。
ターゲット層の顧客が何を求めているのか、現在市場に提供できる価値について模索し、事業戦略の策定と製品開発、マーケティングを徹底しているのが成長企業です。
顧客視点に立つこととは、顧客の御用聞きになることではありません。
お客様は神様として扱い、相手の無理難題にすべて応えていれば、利益を生むどころか損失しかないと留意しておくべきです。
一部の顧客のわがままで他の優良顧客の対応が遅れることはあってはならないため、常に客観的視点から顧客を見極め、取引の可否を選択することも必要といえます。
成長企業の特徴
成長企業と呼ばれる会社は、共通して次の7つの特徴が見られます。
- 経営理念が浸透している
- ビジネスモデルが確立している
- 競合との差別化ができている
- 顧客を大切にしている
- 積極的に営業をしている
- 経営陣に行動力がある
- 教育環境が整っている
それぞれ説明していきます。
経営理念が浸透している
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、社員に経営理念や高い目的意識が浸透しています。
同じ理念で目標に向かって突き進んでおり、一丸となって邁進できていることが特徴です。
その結果、社員のモチベーションが高いまま維持でき、成長企業として躍進を遂げるといえるでしょう。
ビジネスモデルが確立している
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、ビジネスモデルが確立していることが挙げられます。
売上により得たお金はすべて経費に充てなければならず、設備などに投資できない会社は少なくありません。
投資用の資金がある程度残っていても、上手に活用できる人材が不在という会社もあります。
しかし会社の成長に向けては、売上を伸ばし得た利益を、プロジェクトや人材へ投じることが必要です。
そのために必要なことがビジネスモデルの確立であり、今後何にお金を投じていくべきか適切な判断が求められます。
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競合との差別化ができている
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、競合との差別化ができていることが挙げられます。
自社の強みを正しく把握できていなければ、競合と差別化に失敗し太刀打ちできなくなります。
その結果、成長どころか衰退してしまうでしょう。
強みによってはターゲット層も変わり、経営方針も大きく変化するため、正確に把握しておくことが必要です。
競合他社との徹底的な差別分析を行い、他社にはない強みを見つけ、強化していくことが求められます。
顧客を大切にしている
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、顧客を大切にしていることが挙げられます。
ただし顧客の言動に振り回されるのではなく、できることとできないことを区分し、可能な範囲で親身に誠意をもって対応できています。
想定したターゲット層の顧客に、最適な商品やサービスを提供できる体制が整備されていることも特徴です。
競合との商品やサービスとは違った魅力をアピールし、選ばれるためにどうすればよいか常に顧客ニーズと向き合うことができています。
積極的に営業をしている
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、積極的に取引先の新規開拓など、営業活動をしていることが挙げられます。
取引先が増えれば業績も上がり、会社の安泰にもつながりやすくなります。
反対に一部の会社の下請け業務のみに依存している会社の場合、親会社の経営が傾き倒産したときには連鎖倒産するリスクが高くなるでしょう。
一定規模の企業であれば倒産するはずはないと高を括るのではなく、万一に備えて取引先を増やしておくことが必要です。
経営陣に行動力がある
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、経営陣に的確な判断力とスピーディな行動力があることが挙げられます。
市場は常に動いており、時代の流れで変化しています。
秒単位で動くといえる状況の中、的確でスムーズな決断力や行動力がない経営陣のもとでは、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。
仮に可能性の高い戦略を策定しても、経営陣から承認を得ることができなければ、アイデアを活かすことはできず競合他社に後れを取ってしまいます。
教育環境が整っている
成長企業と呼ばれる会社の特徴として、人材の教育環境が整っていることが挙げられます。
社員教育を充実させることのできる独自制度を導入し、培った技術やノウハウを次世代に引き継ぐことのできる環境が整備されています。
また、中小企業で多く見られがちなのが、経営者の高齢化と後継者不足です。
しかし成長企業の場合、経営者がワンマン経営を行わず、次の後継者を育てることをしっかりと行っています。
それにより、現場の社員のモチベーションも向上し、会社の成長に貢献しようという意識が高まります。
離職率の低下と定着率の向上にもつながり、新たな人材の採用・育成にかかるコストも抑えることができるでしょう。
成長企業を目指す方法
成長企業を目指すためには、利益や事業規模を継続して拡大させるために、次の5つの施策に取り組むことが必要です。
- 経営ビジョンを設定する
- 現状把握と課題解決に取り組む
- 優秀な人材を獲得する
- コミュニケーションを円滑にする
- 人事評価制度を整備する
それぞれの方法について説明していきます。
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経営ビジョンを設定する
成長企業を目指すためには、明確な経営ビジョンを設定しましょう。
経営ビジョンとは、企業の掲げる目標を達成する上で設定しておく方針・行動基準です。
常に同じ方針や基準で事業を運営するのではなく、業績や市場の変化で変えていく必要があります。
経営ビジョンがない会社では、経営陣と現場の社員の方向性がずれており、一貫性がありません。
その結果、事業は低迷し経営困難に陥りがちです。
確固たる経営ビジョンを掲げ、組織の力を一点に集中させることにより、同じ目標に向かって組織が一丸となって進むことができます。
現状把握と課題解決に取り組む
成長企業を目指すためには、現状把握と課題解決に取り組みましょう。
現在、どのくらい売上や利益が上がっているのか、抱えている負債についてまずは現状を把握しましょう。
その上で、何が問題なのか、解決が急務とされる課題を洗い出しましょう。
また、経営陣の気がついていない潜在的な問題が発生している場合もあるため、システム導入などを通じて状況把握に努めていくことが必要です。
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優秀な人材を獲得する
成長企業を目指すためには、優秀な人材獲得に向けて取り組みましょう。
どれだけ優秀な経営者でも、一人で会社経営することは大変です。
会社の規模が大きくなれば人材を雇用することも必要となります。
ただ、組織の肥大化で経営者が全体を見渡すことは難しくなるため、ほころびを発生させないためにも優秀な人材を獲得することが必要です。
新たな人材の獲得で、社内に新しい風を吹かせることもでき、膠着化していた現場に刺激をもたらすこともできます。
特に優秀な若手人材を獲得することで社内の雰囲気に変化を生み、環境をアップデートすることにつながります。
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コミュニケーションを円滑にする
成長企業を目指すためには、現場のコミュニケーションが円滑になる環境を整備しましょう。
現場の上司と部下のコミュニケーションが取れてなければ、ある程度までは売上を伸ばすことはできても、継続した成長は期待できません。
否定的な意見が言えず、イエスマンばかりの職場は、社員の不満を蓄積させ、モチベーションも低下させます。
人事評価制度を整備する
成長企業を目指すためには、正しく公平と判断できる人事評価制度を整備しましょう。
どれほど業績を向上させる仕事をしても、適正な評価を得ることができなかった社員は辞めてしまいます。
そのため社員を正しく評価できる人事評価制度を導入し、設定した目標を意識・達成できる環境を整備しましょう。
目標達成に向けて取り組んだプロセスも評価の対象にすることで、社員のモチベーションやスキルアップにつながります。
まとめ
成長企業とは、利益や事業規模が拡大し続けている、高い成長性の感じられる会社です。
会社の成長を持続させるための経営努力を欠かさず、売上を上げるための現場や従業員のモチベーションが維持できる体制を整備できている会社ともいえるでしょう。
一時的な会社経営にとどまらず、生き残る会社となるためには、社会や情報の変化に対応しつつ、今後起こりえるリスクや失敗なども想定した対策を講じ実践することが必要です。
企業と従業員のいずれか一方ではなく、どちらも成長していくことが必要であり、そのためには適切な制度の整備や働きやすいオフィス環境整備などが求められます。
会社規模だけでなく質を成長させることにも目を向け、経営者自らがてこまめに経営状況を把握することが大切です。