建設業の資金繰りが厳しいのはなぜ?資金調達方法を紹介!

建設業は資金繰りが厳しいといわれていますが、その理由として業界特有の事情などが関係しています。

材料費や外注費など支払いが先行する中、工事が完成しなければ報酬を得ることはできないなど、お金が必要なときに資金不足に陥りがちです。

そこで、建設業の資金繰りが厳しい理由と、改善するための方法について簡単に解説していきます。

建設業の資金繰りの特徴

建設業の資金繰りは厳しいといわれていますが、その背景には業界特有の次の特徴があるからといえます。

  1. 支払いが先行する
  2. 工期が長い
  3. 手形取引が多い
  4. 銀行融資を受けにくい

それぞれ説明していきます。

建設業が今抱えている課題とは?まず解決させなければならないことは3つ

支払いが先行する

建設業の資金繰りの特徴として、支払いが先行することが挙げられます。

工事を受注できた場合でも、材料費・外注費・仮事務所・足場設置など様々な費用を先行出費することになります。

しかし工事代金は完成した後で請求し、支払ってもらう流れとなるため、先行出費分の負担で資金繰りは悪化しやすくなるといえます。

特に規模の大きな工事の場合、完成するまで数か月や年単位と時間がかかるため、前金などがなければ入金まで資金繰りは厳しい状況が続きやすくなります。

工期が長い

建設業の資金繰りの特徴として、工期が長いことが挙げられます。

工事を受注して入金されるまでの期間は、平均3か月半です。

半年以上かかるケースもあり、代金の一部を前受してもらえる場合や、工事の進捗に応じて支払ってもらえる場合などを除き、資金繰りに苦労しやすいといえます。

手形取引が多い

建設業の資金繰りの特徴として、手形取引が多いことが挙げられます。

慣習として手形取引が残っている業界であるため、通常の売掛金取引より入金サイトは長くなりがちです。

今だに残る手形取引は、そもそも発注元が支払い時期を引き延ばすためのものであり、廃止の方向に向かっているとはいえ厳しい状況といえます。

銀行融資を受けにくい

建設業の資金繰りの特徴として、銀行融資を受けにくいことが挙げられます。

建設業は先行する支払いが多く、赤字の案件でも受注しているケースが少なくないため、利益を出ていなければ審査には通りにくくなります。

回収した工事代金で返済することを前提に資金を貸し付けても短期間での融資となり、工期が長い場合には融資は難しいと判断されることもあるようです。

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建設業の資金繰りを改善する方法

資金繰りが厳しいといわれる建設業ですが、改善する方法として以下の3つが挙げられます。

  1. キャッシュフロー管理を徹底する
  2. 受注する工事を選ぶ
  3. 前金で交渉する

それぞれどのような方法か説明していきます。

キャッシュフロー管理を徹底する

建設業の資金繰りを改善させるためには、キャッシュフロー管理を徹底しましょう。

資金繰り表を作成し、日々の現金の入出を徹底して管理することが必要です。

いつ報酬が入金され、反対に仕入れ代金や固定費などの支払いがあるのか、金額を明確化することで運転資金が不足するタイミングを知ることができます。

入金までの期間に資金ショートすれば、仮に黒字であっても会社は倒産してしまいます。

資金繰り表を作成し、入出金管理を徹底して行い、資金不足に陥る前に調達するようにしてください。

受注する工事を選ぶ

建設業の資金繰りを改善させるためには、受注する工事を選びましょう。

売上規模が大きくなることが予想されても、材料費や人件費なども増えることが予想されれば、赤字になる可能性があります。

見積もり段階で、工事期間中に必要となる材料費や人件費などを支払うことができるか、工事原価の確認も行った上で受注することが必要です。

また、入金時期が施工後ではなく施工中または前払いなどであれば、代金を回収することができるため、その点についても確認しておいたほうがよいでしょう。

前金で交渉する

建設業の資金繰りを改善させるためには、前金で交渉しましょう。

規模の大きな工事の場合、材料費や人件費など工事原価を前金で受け取ることができないか交渉することで、資金繰りは改善されます。

工事が3分の1や半分進んだ段階で入金してもらうことはできないか、材料費や外注費の支払いは作業後の2か月後に遅らせることはできないかにするなど、入金と支払いのタイミングのズレを短縮する交渉が必要です。

資金繰りを改善するには資金調達が重要

資金繰りを改善するうえで最も重要となるのが資金調達です。具体的な資金調達方法を7つ解説します。

  1. 手形割引
  2. ファクタリング
  3. オンライン融資
  4. 助成金・補助金
  5. 資産の売却
  6. 株式の発行
  7. 投資家からの投資

手形割引

手形割引とは、手形に記載された期日が到来するよりも前に、銀行や手形割引専門業者に売って換金する資金調達の方法です。

本来、手形の振出人による期日まで手形は決済されないため、現金化まで時間がかかります。

慣習として手形取引が残っている業界である建設業では、手形による入金の長期化に悩まされがちといえます。

しかし手形割引を使えば、期日到来前の手形でも換金することが可能です。

なお、銀行や手形割引専門業者に手形を売却するという形であるものの、実際には融資を受けることとみなされるため、審査で振出人または利用者の信用力に問題があると判断されれば利用できません。

一般的な手形割引で設定される金利は年率3.9~15.0%で、主に振出人の信用力により変わります。

たとえば大手企業・上場企業・優良企業が振出人であれば3.9~10.0%、その他一般企業なら10.0%以上の金利が適用されることになるでしょう。

ファクタリング

ファクタリングとは、商取引で発生した売掛債権をファクタリング会社に売って換金する資金調達の方法です。

手形割引と似た仕組みですが、売掛先に対し発生している売掛金を債権として売却します。

また、手形割引は融資としてみなされますが、ファクタリングはあくまでも債権の売買であるため審査の難易度も低めです。

売掛先の信用力を重視した審査が行われるため、赤字決算で借入れができない建設業でも信頼性の高い売掛債権があれば資金調達に利用できます。

ファクタリングは特に建設業と相性の良い資金調達方法として知られていますが、工事債権はファクタリング会社から人気があり、好条件での買い取りが可能であることが多いといえます。

融資を受けるわけではないため負債も増えず、公共工事の経営事項審査でも悪影響を及ぼすことはありません。

ただしファクタリングは手数料が高めに設定されやすく、利用者とファクタリング会社のみで契約が完結する2社間ファクタリングでは10~20%が相場です。

できるだけ信用力の高い売掛債権を売却することと、2社間ファクタリングでも手数料を安く抑えることができるファクタリング会社を選んだ上で利用するようにしてください。

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オンライン融資

オンライン融資とはPCやスマートフォンなどを利用して、オンライン上で申し込みから入金までを完了できる融資制度です。一般的に、融資を受けるためには審査の期間が必要です。そのため、すぐに借り入れができないケースも珍しくありません。

しかし、オンライン融資であれば、申込者の会計データを元にして、AIが融資可否を判断します。そのため、審査の手続にかかる時間が短く、早く融資を受けられるのが特徴です。

直近数ヶ月の取引データから融資の可否や融資金額を判断するため、赤字が続いている方にはあまりおすすめできません。また、融資金額の上限も1,000万円と低めです。

しかし、1,000万円以下でも早く融資をしてほしいといった方にはおすすめの方法といえるでしょう。

助成金・補助金

助成金や補助金を活用するのもおすすめです。厚生労働省からは「建設事業主等に対する助成金」が発表されています。

建設事業主等に対する助成金には「トライアル雇用助成金」「人材確保助成金」「人材開発支援助成金」などの種類があります。それぞれ利用できる金額や申し込みの条件が異なるため、確認をして利用できるものがないか調べてみましょう。

日本政策金融公庫の「新創業融資」も利用できる可能性があります。創業したばかりで資金繰りに悩んでいる方は、ぜひ利用を検討してみてください。ほかにも自治体や信用保証協会が制度融資を行っている場合もあります。

資産の売却

所有している資産を売却して、資金を確保する方法もあります。売却できる資産には不動産や有価証券などが挙げられます。これらを所有している方は、一度売却を検討してみてください。

自社ビルを保有している場合は、別のビルに引越しをして売却するのもおすすめです。しかし、引越しを伴う場合は、引越し費用が負担にならないか確認しておく必要があるでしょう。

不動産を売却すれば資金を確保できるだけではなく、固定資産税の削減にもつながります。一方で、不動産投資を行っている場合、売却するタイミング次第では損失になりかねません。そのため、資産を売却するべきかは慎重に判断しましょう。

上記の方法で資金繰りが改善しなかった場合には、ぜひ資産の売却を検討してみてください。

株式の発行

株式会社であれば、株式を発行して資金を得ることができます。ほかの資金調達方法と大きく異なるのは、借金ではないため返済の義務がない点です。借金が増えると将来的に経営が苦しくなってしまう可能性があるため、返済の必要がないのは大きなメリットといえるでしょう。

一方で、株式は会社としての魅力がなければ投資家から購入してもらえません。さらに場合によっては株式を売却されてしまい、経営難に陥る可能性もあります。また、相手に株式全体の3分の2を購入されると、経営権が握られてしまいます。

このように株式の発行には様々なリスクがあるため、十分に注意をしましょう。

投資家からの投資

投資家から投資を募って、資金を調達する方法もあります。最も有名なのは「クラウドファンディング」でしょう。会社の活動の魅力をアピールできれば、投資家だけではなく一般の方からも支援を受けられる可能性があります。

しかし、クラウドファンディングで資金を確保するのは容易ではありません。まずはクラウドファンディングを行っていることを認知してもらうために、SNSを活用して会社の知名度を高める必要があります。そのうえで、事業内容に共感してもらえなければ投資はしてもらえないでしょう。

ベンチャーキャピタルから出資を受ける方法もあります。創業したばかりの会社であれば、有効な資金調達方法といえるでしょう。しかし、投資金額の割合によっては経営権を握られる可能性があり、事業で得た利益を分配しなければなりません。

どちらも非常に難易度の高い方法といえるでしょう。

まとめ

建設業は材料費や外注費など、様々な費用を先行して支払うことが必要となるのに対し、工事代金は完成後になるため資金繰りが悪化しやすい傾向にあります。

業界特有の事情や問題を解決しやすい資金調達方法を選ぶことが資金繰り改善につながるといえますが、その1つがファクタリングです。

借金を増やせば公共工事を請け負う際の経営審査に影響することもあるため、決算書を汚さず資金調達できるファクタリングなら安心といえます。

建設業は入金サイトが長くなりやすいため、相性が非常に良い資金調達方法であるファクタリングをうまく活用することをおすすめします。