中小企業が資金調達するとき、どのような方法がもっともよいのか迷いがちです。
その理由として、中小企業の資金調達は大企業とは違い、信用力が低めで銀行融資や出資を頼りにくいことが挙げられます。
そこで、中小企業が資金調達するとき、どのような方法を選べばよいのか、現状の課題を解決できる方法も踏まえて解説していきます。
目次
中小企業の資金調達における現状
中小企業が資金調達する場合、現状として次の4つの問題を抱えているといえます。
- 銀行融資を受けにくい
- 出資を頼りにくい
- 調達先が内部資金と外部資金に分かれる
- 借入れに依存しがち
それぞれどのような問題を抱えているのか、その現状について解説していきます。
銀行融資を受けにくい
中小企業が資金調達において抱えている現状として、銀行融資を受けにくいことが挙げられます。
銀行の審査では、起業の業績や信用力などが重視されることになるため、赤字決算であることが多い中小企業では融資を受けることによる資金調達は厳しい現状です。
お金を貸す以上は、元金と利息を遅れずに払えることが必要であるため、返済能力が低いと判断されれば融資を受けることはできません。
中小企業は成長初期の段階であることが多く、安定性や信用力に欠けると判断されがちであることも、銀行融資を受けにくくしているといえます。
さらに中小企業は担保として差し入れる不動産を持っていないことも少なくないため、銀行や信用金庫など金融機関から不動産担保を求められても応じられないことも関係しています。
出資を頼りにくい
中小企業の資金調達の現状として、出資を頼りにくいことが問題として挙げられます。
株式会社であれば株式を発行し、投資家に出資してもらうことも可能ではあるものの、知名度が低く赤字決算などで業績が良好といえない株式を購入する投資家は少ないといえます。
将来的に期待が持てる企業でなければ投資家は注目しないため、中小企業が出資を受けて資金調達することは簡単ではないといえるでしょう。
調達先が内部資金と外部資金に分かれる
中小企業の資金調達先は、内部資金と外部資金に分かれるという特徴も現状として挙げられます。
「内部資金」とは、資本金や経営者個人が貯めた自己資金などで、利益を源泉とするものであり、返済義務を負わない資本金・預貯金・自己資金などが含まれます。
もう一方の「外部資金」とは、銀行や貸金業者など金融会社から借入れた資金で、 企業外部の資本調達源泉から調達した資金であり、 株式・社債・借入金・企業間信用などが含まれます。
内部資金は経営者個人で貯めていたお金や事業により生んだ利益などであるため、これら自己資金にコストは発生しません。
しかし外部資金の場合、会社外部から調達するお金であるため、調達の際には利子や手数料などコストが発生します。
また、銀行や信用金庫など金融機関から融資を受けるなら元金だけでなく利子の返済義務が発生するものの、経営に関与されることはありません。
投資家に出資してもらう方法では、返済義務は発生しないものの投資家が経営に干渉してくることや、株式保有割合によっては経営権を脅かされるリスクがあることを留意しておく必要があります。
借入れに依存しがち
中小企業の現状として、資金調達先を借入れに依存しがちであることが挙げられます。
過去に銀行融資など受けたことがある借入れ経験のある企業の場合、今後の資金調達も借入れを選ぶ傾向が見られます。
実際、借入れ経験がある企業の場合の調達先はその8割が金融機関であり、過去に借入れを頼ったことが一度もない無借金企業の場合の資金調達は「内部留保」が約半数を占めています。
無借金企業の場合、内部留保など内部資金に依存する傾向が高く、銀行など金融機関からお金を借りる必要のない状況にあるといえるでしょう。
その一方で、借入れに依存している中小企業の場合、借入先の候補となるのは銀行・信用金庫・政府系金融機関です。
しかし審査が厳しく借入れができない場合、金利が高めのビジネスローンなどに移行することになる、さらに赤字経営や債務超過などで審査が通らなければ資金調達先を失うことになります。
なお、赤字経営や債務超過で借入れによる資金調達が難しい場合でも、ファクタリングなら審査に通り利用できる可能性があります。
ファクタリングは売掛金を売却し、現金化する方法のため借入れではありません。
資金調達の方法を多様化するためにも、ファクタリングなど別の手段も検討できる準備をしておくことをおすすめします。
ファクタリングについては次の「中小企業の資金調達方法の種類」にて後述します。
中小企業の資金調達方法の種類
中小企業の資金調達の方法は、主に次の3つに分けることができます。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
「デットファイナンス」とは、銀行から資金を借り入れるなど、負債を増やして資金調達する方法です。
銀行や貸金業者など金融会社から融資を受けることや、証書発行による債務を負う方法などが例として挙げられます。
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「エクイティファイナンス」とは、新株を発行し自己資本を増やす資金調達の方法です。
発行した株式は投資家に買い取ってもらうことで、返済義務のない資金を調達できますが、株主が増えることや株主の株式保有割合などで経営権を握られるなどリスクに留意が必要といえます。
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「アセットファイナンス」とは、所有している資産を売ってお金に換える資金調達の方法です。
不動産・有価証券・知的財産権・売掛債権など、それぞれの資産の価値に見合う資金を調達できますが、調達できる金額は資産価値に留まることになります。
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それぞれに該当する中小企業の資金調達方法は以下のとおりです。
- 民間銀行の融資
- 日本政策金融公庫の融資
- 地方自治体の制度融資
- ビジネスローン
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
- クラウドファンディング
- ファクタリング
- その他資産売却
- 補助金・助成金
それぞれどのような方法か説明していきます。
民間銀行の融資
中小企業のデットファイナンスによる資金調達の方法として、「民間銀行」から融資を受けることが挙げられます。
メガバンク・地方銀行・信用金庫などが民間銀行として挙げられますが、中小企業の場合には地方銀行や信用金庫を頼ることがほとんどです。
担保や保証なしで融資を受けることは厳しいことが多いため、不動産などを担保として差し入れたり信用保証協会に保証してもらったりなどの方法で融資を受けることになります。
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日本政策金融公庫の融資
中小企業のデットファイナンスによる資金調達の方法として、「日本政策金融公庫」から融資を受けることが挙げられます。
日本政策金融公庫は政府が100%出資する金融機関であり、中小企業などに対し事業資金の貸し付けを積極的に行っています。
低金利で長期的に借入れが可能であるため、返済計画を立てやすいことがメリットです。
たとえば資金繰り支援として活用したいのが「セーフティネット貸付制度」で、資金繰りに一時的に支障をきたしているものの、中長期的に見れば回復が見込まれる中小企業・小規模事業者を支援する制度です。
日本政策金融公庫の制度で、設備資金や運転資金に使う資金を融資してもらえます。
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地方自治体の制度融資
中小企業のデットファイナンスによる資金調達の方法として、地方自治体の「制度融資」を利用することが挙げられます。
地方自治体の制度融資とは、自治体・金融機関・信用保証組合が連携して提供する融資制度であり、長期・低金利で借入れが可能です。
自治体により内容が多少異なるものの、経営基盤がぜい弱な中小企業や小規模企業を支援することを目的とした制度であるため、比較的審査のハードルも低いことがメリットといえます。
ビジネスローン
中小企業のデットファイナンスによる資金調達の方法として、「ビジネスローン」の借入れが挙げられます。
ビジネスローンとは、銀行から融資を受けにくい事業者に向けてつくられた金融商品であるため、柔軟な審査と無担保・無保証による借入れが特徴です。
また、最短即日で入金されるなど、スピード感が高いこともメリットといえますが、金利が高く設定されるため長期利用すると資金繰りは悪化してしまいます。
計画性をもって一時的に利用するにとどめておいたほうがよいでしょう。
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ベンチャーキャピタル
中小企業のエクイティファイナンスによる資金調達の方法として、「ベンチャーキャピタル」に投資してもらうことが挙げられます。
ベンチャーキャピタルとは、将来的に成長が見込める企業に投資する投資会社であり、上場したときに保有する株式を売ってキャピタルゲイン(売却益)を得ることを目的としています。
そのため資金面以外に経営支援も行い、企業が成長して上場できるようにアドバイスしてくれます。
ただし経営に関して干渉を受けやすいことなど、自由な経営ができないことがデメリットです。
予想通りに利益を生み出さなかった場合には株式売却を迫られることもあることや、そもそも将来咳が見込めると判断されなければ投資してもらうことはできません。
エンジェル投資家
中小企業のエクイティファイナンスによる資金調達の方法として、「エンジェル投資家」に投資してもらうことが挙げられます。
エンジェル投資家とは、もともと起業家や経営者だった方が、ベンチャーやスタートアップを支援する個人投資家です。
税制面で優遇される「エンジェル税制」も設置されているため、これから成長が期待できる企業に投資する個人投資家も増えてきました。
資金面でなく経営ノウハウのアドバイスや取引先の紹介など、経営がスムーズに進むように支援してもらえることはメリットです。
ただし必要以上に経営に干渉してくるエンジェル投資家もいるため、相性のよい相手か選ぶことが必要といえるでしょう。
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クラウドファンディング
中小企業のエクイティファイナンスによる資金調達の方法として、「クラウドファンディング」を利用することが挙げられます。
クラウドファンディングとは、インターネットを介して幅広くビジネスやアイデアを公開し、賛同を得た人から少額の資金を集める資金調達方法です。
「購入型」「寄付型」「投資型」など種類があり、中小企業でも気軽に出資を呼び掛けることができます。
ただしインターネット上に公開したアイデアなどが盗用されるリスクがあることや、希望する金額を集めることができると限らないことがデメリットです。
クラウドファンディングとは?やり方やメリット・デメリットを簡単に解説
ファクタリング
中小企業のアセットファイナンスによる資金調達の方法として、「ファクタリング」が挙げられます。
ファクタリングとは、たとえば翌月や翌々月に入金される予定の売掛金を、ファクタリング会社(ファクター)に売ってお金に換えるサービスです。
売掛金の現金化といえますが、1か月や2か月待たなければ入金されないお金を、手数料はかかるもののすぐに手元の資金にすることができます。
入金までのタイムラグを解消させることができることが大きなメリットであり、借金を増やす方法ではないことも注目したいところといえます。
ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説
その他資産売却
中小企業のアセットファイナンスによる資金調達の方法として、その他の資産を売却する方法が挙げられます。
保有する資産を売って現金に換える資金調達方法ですが、たとえば利益を生まない遊休資産や過剰在庫などを売却する方法が挙げられます。
「補助金」「助成金」による中小企業の資金調達方法
「補助金」や「助成金」でも資金を調達することができます。
国や自治体による補助金や助成金を利用すれば、返済不要の資金を調達することが可能です。
申請の要件を満たすのであれば積極的に利用するべきといえますが、補助金は必ず採択されるわけではなく、どちらも後払いとなるため準備段階での資金として活用できないことは留意しておく必要があるでしょう。
中小企業が資金調達を成功させるポイント
中小企業が資金調達を成功させるためには、次の4つのポイントを押さえておくことが必要です。
- 目的やタイミングに合った方法を選ぶ
- 審査が柔軟な方法を選ぶ
- 金利や手数料が安いサービスを選ぶ
- 説得力のある事業計画書を作成する
- 情報開示は積極的に行う
それぞれのポイントについて説明します。
目的やタイミングに合った方法を選ぶ
中小企業が資金調達を成功させるためには、目的やタイミングに合った方法を選ぶことが必要です。
資金調達するときには、調達できる金額は多ければ多いほどよいと考えがちであるものの、そもそも何に使うお金なのか、いつ必要かなどが重要といえます。
多く調達することばかりに気を取られてしまい、適した方法を選ぶことができなければ、必要なタイミングに資金調達できない可能性もあります。
思いつきで行動せず、計画的に資金調達の方法を選ぶことが重要です。
審査が柔軟な方法を選ぶ
中小企業が資金調達を成功させるためには、、できるだけ審査が柔軟な方法を選ぶことが必要です。
たとえばファクタリングは売掛金を現金化して資金を調達する方法であり、金券ショップに商品券を持ち込み、手数料を差し引かれて現金に換える方法と似た手法です。
ファクタリング会社で行う審査は、融資を受けるときのような信用情報を重視した内容ではなく、売掛先の信用力を重視した内容となります。
赤字経営では融資審査は通らないことがほとんどですが、ファクタリングなら信用力の高い売掛先との売掛金を保有していることで、スムーズに現金化することができます。
また、融資を受けるときには書類を揃えて申し込みして実行まで1か月など時間がかかってしまいますが、ファクタリングの場合には早ければ即日というスピードです。
銀行から融資を受けたくても赤字で借りることができないときや、急な出費で審査を待っている余裕がないという場合でも、ファクタリングならすぐに保有する売掛金を現金化することができます。
ファクタリングは銀行融資の審査に通らなくても理由可能!その理由とは
金利や手数料が安いサービスを選ぶ
中小企業が資金調達を成功させるためには、金利や手数料が安いサービスを選ぶことが必要です。
どの資金調達の方法においても、金利による利子支払いが必要であったり手数料が発生したりなど、コストがかかります。
コストが大きくなればその分、調達できる金額も少なくなるため、できるだけ費用を抑えることのできる資金調達方法を選ぶようにしましょう。
たとえば複数社から相見積もりを取得し、どの業者に任せるか選ぶこともコストを抑える上では必要な手順です。
説得力のある事業計画書を作成する
中小企業が資金調達を成功させるためには、説得力のある事業計画書を作成することが必要です。
融資を受けるときや出資してもらうときは特に、事業に関してどのくらい理解し、熱意や将来性を伝えることができるかが資金調達の成功を左右します。
説得力のある事業計画書を作成し、根拠となるデータなども盛り込みつつ、客観性を保つことが重要といえるでしょう。
情報開示は積極的に行う
中小企業が資金調達を成功させるためには、情報開示は積極的に行うことが必要です。
銀行や投資家と継続して付き合っていくことを考えるときには、有利な情報だけでなくネガティブな情報も積極的に開示することが必要といえます。
それにより信頼性を築くことができ、いざというときに助けてもらいやすくなるでしょう。
本来、ネガティブな情報はできるだけ漏らしたくないと考えがちであるものの、資金を貸し付けたり出資したりする立場であれば、事業の進捗を気にすることは当然といえます。
情報が常に開示されていれば、審査のスピードもはやまるため、資金調達までスムーズになるとも考えられます。
まとめ
中小企業が資金調達する理由は様々です。
ただ、経済の状況などが変化すると、これまで順調だった売上が低迷したり赤字に転落したり資金繰りが悪化してしまうことがあります。
新型コロナウイルス感染拡大にロシアのウクライナ侵攻などが資金繰りに影響を及ぼすこともあり、実際にすでに多くの中小企業がその影響を受け倒産や廃業に追い込まれています。
今後、中小企業が生き残りをかけて戦っていくためには、まず手元の資金をショートさせないため円滑な資金繰りと、それに向けた適切な資金調達が欠かせません。
融資や補助金などで資金を調達できず、手元の資金不足で悩んでいるのなら、ファクタリングも資金調達の方法として検討してみることをおススメします。