建設業の資金調達方法5選|業界の資金繰り状況とおすすめの方法を解説

建設業界は資金調達に苦しむこともめずらしくないといえますが、その理由として資金繰りに関する問題が発生しやすいことが挙げられます。

特に材料費や外注費などの支払いが先行しやすく、必要なタイミングで資金調達できなければ仕事を受注することも進めることもできなくなるのが建設業の特徴といえます。

そこで、建設業が資金調達するときにはどのような方法が最適なのか、業界特有の資金繰りの現状などもあわせて解説していきます。

建設業の資金繰りの現状

建設業の資金繰り現状として、主に次のような課題を抱えているといえます。

  1. 重層下請構造で利幅が取りにくい
  2. 許可が必要
  3. 材料費など先行出資が多め
  4. 入金サイトが長め
  5. 手形取引が多い

それぞれどのような課題を抱えているのか、その現状について詳しく説明します。

重層下請構造で利幅が取りにくい

建設業は、元請けから下請けに仕事を発注し、受注した下請けがさらに次の下請け(孫請け)に仕事を依頼する「重層下請構造」による取引が一般的です。

国や自治体の工事や、民間大手企業の大型工事などは、大手の建設企業が仕事を受託し、土木・建築・リフォーム・管工事・電気工事など専門部分を下請けに依頼します。

全国には約50万社の建設会社があるといわれていますが、そのうちの99%は資本金額3億円未満の中小建設会社です。

工事規模が大きいほど、小規模の建設会社は重層下請のピラミッド末端に位置づけされることにあり、下請けの発注が繰り返されるたびにマージンが差し引かれるため、利幅の取れない仕事を引き受けることになってしまいます。

許可が必要

建設業では、軽微な工事以外では建設業許可を取得することが必要です。

小規模の工事だけであれば問題ないものの、ある程度の規模の仕事を請け負いたければ許可を取得していなければなりません。

許可なしで受注できる事は、

  • 工事金額1,500万円未満の建築一式工事や延面積150㎡未満の木造住宅工事
  • 建築一式工事以外の税込500万円以下の工事

などです。

建設業許可を取得していないことで、国や地方公共団体発注の公共工事において必要となる経営事項審査を受けることができなくなります。

仕事の幅が限られることは、許可を取得していない建設業にとってデメリットでしかないといえるでしょう。

材料費など先行出資が多め

建設業で仕事を受注できたとしても、建築資材や仮事務所・足場の設置費用の他、外注費などの先行出費が多く発生します。

報酬は完成後に請求した後で支払われるため、上記の費用を先に支払うことが必要となれば、資金繰りは悪化しやすくなるでしょう。

大規模の工事であれば、完成まで数か月や年単位の時間がかかることもあり、天候などの事情で工事が延期されたり追加工事が発生したりすると、さらに入金までの時間が長くなります。

入金サイトが長め

建設業は、先にも述べたとおり入金サイトが長めであるため、資金繰りが悪化しやすいといえます。

工事を受注し、入金されるまで平均3か月半はかかるといわれているものの、中には半年以上というケースもあります。

施工前に代金の一部を前受できるケースや、進捗に応じて支払われる場合もあるものの、多くは完成後であるため、資金繰りに苦労しがちです。

手形取引が多い

建設業では、慣習として手形による取引が残っているため、入金サイトが通常よりも長くなりがちです。

手形取引は発注元が支払いする時期を引き延ばすために利用されており、手形取引が多い業種として卸売業・小売業・製造業・建設業が挙げられ、廃止の方向に向かっているとはいえまだまだ残っているといえます。

【無料ダウンロード】
資金繰りを見える化。資金繰り表テンプレート

もう資金繰りで悩まない!経営者・財務担当者のための資金繰り表テンプレート。財務管理を簡単にし、ビジネスの安定成長を目指しましょう。

いますぐダウンロード

建設業におすすめの資金調達方法5選

資金繰りに苦労しがちな建設業ですが、問題を解決するための資金調達方法として次の5つが挙げられます。

  1. 日本政策金融公庫の融資
  2. 信用保証付き融資
  3. プロパー融資
  4. 手形割引
  5. ファクタリング

それぞれどのような資金調達方法か説明していきます。

①日本政策金融公庫の融資

建設業の資金調達で活用したいのが「日本政策金融公庫」の融資です。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、創業融資といわれる融資制度であり、創業後すぐの建設会社でも低金利の無担保・無保証で融資を受けやすいといえます。

民間の銀行から融資を受けたくても、実績が十分でなく信用力が低ければ審査に通りません。

しかし創業融資は建設業との相性も良く、審査でも創業事業の「経験」が重視されるため、下積みを十分に経験している経営者なら借入れ可能となると考えられます。

融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)であるため、検討してみることをおすすめします。

②信用保証付き融資

建設業の資金調達で活用したいのが「信用保証付き融資」です。

ある程度事業が軌道に乗ってきた段階で、追加融資を受けたいときに選びたい資金調達方法といえます。

民間銀行など金融機関から融資を受けたい場合において、公的機関の信用保証協会に保証してもらい、融資採択や融資枠の拡大を図ります。

信用保証協会に対する保証料の負担は必要となるものの、万一返済できなかったときには保証協会が借金を肩代わりするため、銀行も安心して資金を貸し付けやすくなるという仕組みです。

ただし保証協会の代位弁済が行われた場合には、返済先が銀行から保証協会に移るため、返済免除されるわけではないことは理解しておきましょう。

銀行など金融機関を通じて、保証協会の保証制度の活用を申し出ることになるため、地方銀行や信用金庫などとのつながりを持つこともでき、遅れず返済し実績を積み重ねることで次のプロパー融資につなげることもできます。

③プロパー融資

建設業の資金調達で活用したいのが民間銀行の「プロパー融資」です。

プロパー融資は、銀行独自の責任で資金を貸し付けるため、万一返済されなかった場合の貸し倒れリスクも銀行が負います。

そのため審査が非常に厳しく、実績が高く業績や信用力が認められる場合でなければ利用できません。

ただし信用保証付き融資では借入額に上限があるため、たとえば大規模工事で多額の資金が必要になったときには対応できない場合もあります。

しかしプロパー融資は限度額が特に設けられていないため、借入額の上限を気にせず申し込むことが可能です。

保証料も発生せず、金利は1%以下というケースもあり、さらに銀行独自で融資可否を判断するため融資実行までの時間も短いというメリットがあります。

最終的には銀行からプロパー融資を受けることができる状況を目指していくべきといえるでしょう。

④手形割引

「手形割引」とは、手形を支払期日到来前に、銀行や手形割引業者で換金することです。

約束手形は、振り出した個人や法人が、記述されている期日までに支払うことが約束される手形ですが、期日になるまで現金化できません。

建設業は慣習として手形による取引が残っていることが多いため、特に手形の入金サイト長期化には悩まされがちです。

しかし期日を到来する前の手形でも、銀行や手形割引業者に買い取ってもらえば先に現金化できます。

ただし手形割引は、手形の買い取りではあるものの、実際には融資を受けることとみなされます。

そのため銀行で手形割引を利用したくても、振出人や利用者の業績のどちらも審査で重視されるため、断られることもあります。

銀行に断られた場合でも、引き受け可能とする手形割引業者もありますが、高額な割引料を請求される場合もあるため注意してください。

一般的な手形割引の金利は年率3.9~15.0%と幅があり、振出人の信用度で変わってきます。

大手企業や上場企業、優良企業であれば3.9~10.0%の利率で利用可能となり、その他一般企業の場合には10.0%以上の金利が適用されます。

⑤ファクタリング

「ファクタリング」とは、商取引で発生した売掛債権を、期日到来前にファクタリング会社に売って換金するサービスです。

手形割引と似ているものの、ファクタリングでは手形ではなく売掛先に対して発生している「売掛金」が買い取りの対象となります。

また、手形は借入れとみなされるのに対し、ファクタリングは債権の「売買」であるため融資を受けるわけではなく、法的には債権の譲渡契約を結ぶことになります。

建設業の場合、竣工後に請求した完成工事の売掛債権を保有している場合において、期日が1か月先であるとしましょう。

この場合でも、ファクタリング会社に一定の手数料を支払い買い取ってもらうことで、前倒しで現金を受け取ることができます。

審査でも売掛先の信用力が重視されるため、利用者の業績や財務状況が悪化していても、信頼性の高い売掛債権であれば利用可能です。

特に建設業で相性の良い資金調達方法といえますが、その理由として工事債権はファクタリング会社から人気があるため、好条件で現金化できることが挙げられるでしょう。

さらに借入れではないため負債を増やさず、公共工事の経営事項審査の審査に悪影響を及ぼすこともありません。

そして下請けの建設業者の場合、元請けや得意先との関係性が非常に重要ですが、2社間ファクタリングを利用すれば利用者とファクタリング会社だけで契約が完結します。

そのため元請けや得意先の売掛債権を譲渡したことを誰にも知られることなく、資金調達に活用できることもメリットです。

ただしファクタリングは手数料が高めに設定されやすく、特に利用者とファクタリング会社のみで完結する2社間ファクタリングでは10~20%が手数料割合の相場となっています。

信用力の高い売掛債権であればできるだけ手数料を安く抑え設定するファクタリング会社など、良心的な対応をしてくれる業者を選ぶことが大切です。

まとめ

建設業界は材料費や外注費などの支払いが先行しやすいことや、入金サイトが長期化しやすいため資金調達に苦労しがちです。

そのため建設業界特有といえる事情や問題を解決できる資金調達方法を選ぶことが、資金繰り改善につなげる一歩となるでしょう。

特にファクタリングは、入金サイトが長めの建設業と相性が非常に良い資金調達方法であるため、手元の資金不足に悩んだときには活用することをおすすめします。