ファクタリングは、製造業でも利用数が増えつつあります。
ただ、実際に製造業向けの資金調達方法なのか、どのようにファクタリングで手元のお金が増えるのか疑問を感じている方もいることでしょう。
そこで、ファクタリングが製造業でよく利用される理由とは何なのか、実際の活用事例も紹介しながら解説していきます。
中小企業経営者向け！
目次
ファクタリングとは
ファクタリングとは、商取引で発生した売掛金を早期現金化するサービスで、急な資金ニーズにも対応できる方法として注目されています。
たとえば店舗でモノを購入するとき、商品の受け渡しと同時にその代金を支払いますが、事業者間の取引では基本的に後払いです。
先に商品やサービスが販売され、その後、請求書を発送し後日入金してもらう掛け取引が一般的となっています。
この掛け取引により取引先（売掛先）に代金を請求する権利が発生し、その権利が売掛債権であり売掛金です。
ファクタリングでは、将来、売掛先から受け取る売掛金をファクタリング会社に売却することで、入金予定期日よりも前にお金を受け取ることができます。
売上を伸ばせば売掛金も多く発生するため、将来的には手元のお金は増えます。
しかし入金予定までに手元の資金が底をつきてしまい、黒字倒産してしまう企業も少なくありません。
そのようなときに役立つ資金調達方法がファクタリングであり、売買手数料は差し引かれるものの、すぐに手元の現金を増やすことができます。
製造業でファクタリングが人気の理由
ファクタリングは売掛金を前倒しで入金してもらうことにより、資金を調達できる方法です。
製造業でファクタリングが人気の理由として、以下の6つが挙げられます。
- 製造業は掛売りが基本
- 売掛債権の回収まで長期化しやすい
- 多くの持ち出しが必要
- 固定費の支払いが多い
- 赤字が慢性化しやすい
- 機械・設備のトラブルが発生しやすい
それぞれどのような理由か説明していきます。
1. 製造業は掛売りが基本
製造業でファクタリングに人気が集まっているのは、掛売りが基本です。
製品を納品後、すぐにその代金を受け取るのではなく、後日請求書を発送して入金してもらう掛けによる取引がほとんどといえます。
しかしファクタリングなら、売掛先が支払う期日まで待つことなく、売掛金を前倒しで受け取ることができます。
2. 売掛債権の回収まで長期化しやすい
製造業は掛売りが基本であり、すでに売上として計上されている売掛債権を回収するまで2か月かかるなど、「長期化」しやすいことが特徴です。
売掛先の支払い期日よりも前に、手元の運転資金が枯渇してしまい、倒産する企業もあるほどです。
しかしファクタリングを利用すれば、入金までの期間を「短期化」し、すぐに手元のお金を増やすことができます。
3. 多くの持ち出しが必要
先に売上として計上されている売掛金は、期日にならなければ入金されません。
そのため材料費などの仕入れ代金や外注費などの人件費は先払いとなり、多く持ち出しが必要となるのも製造業の特徴です。
製造をスタートさせてから入金まで、手元のお金が不足してしまいがちですが、ファクタリングを利用すれば資金不足を解消することができます。
4. 固定費の支払いが多い
製造業を運営するためには、工場や機械、設備など様々な準備が必要であり、これらを固定費として支払います。
固定費の支払いが多ければ、当然、資金繰りは悪化しやすくなるといえます。
しかしファクタリングなら、手元の売掛金を現金化することで、すぐに固定費に充てる資金を調達できます。
5. 赤字が慢性化しやすい
製造業は固定費の支払いが多い業界ですが、仮に製品があまり売れない場合でも支払い続けることが必要となるため、赤字になりやすいといえます。
赤字続きでは銀行から融資を受けることが厳しいですが、ファクタリングなら赤字経営でも資金調達に活用することができます。
6.機械・設備のトラブルが発生しやすい
製造業を運営するためには機械や設備などが必要ですが、故障など急なトラブルが発生しやすいといえます。
機械が故障すれば製品をつくることはできなくなり、売上にも大きなダメージを与えてしまうこととなるでしょう。
修理をしたくてもお金がなければできませんが、ファクタリングを使うことですぐに修理代金を準備することができます。
製造業におけるファクタリング活用事例
下請けの製造業者の場合、支払いサイトの長さや手形決済の多さで、材料や人件費の支払いに窮することはめずらしくありません。
納品が終了してから入金という流れのため、先払いの仕入れ代金に充てるお金がなく、材料を仕入れることができなくなるケースも見れられます。
下記、製造企業Ｉ社様の事例はまさにそのケースで、仕入れ代にあてる資金の調達でファクタリングを利用されています。
| 年商：2億6,000万円 | 売掛債権額：2,400万円 |
| 従業員数：15人 | 資金調達額：2,000万円 |
| 都道府県：群馬県 | 資金用途：仕入れ代 |
また、災害や事故など想定していなかったトラブルの発生で納期に間に合わなくなり、外注費などが先出しになることもあります。
従業員に対する給料や工場の家賃など、固定費の支払いも当然発生するため、それらの費用にあてる資金も準備しなければなりません。
下記、製造企業J社様の場合、固定費の支払いに充てるための資金調達にファクタリングを活用されました。
| 年商：4億円 | 売掛債権額：3,000万円 |
| 従業員数：8人 | 資金調達額：1,000万円 |
| 都道府県：岩手県 | 資金用途：固定費の支払い |
製造業におけるファクタリング利用のメリット
ファクタリングを資金調達に活用すれば、資金繰りが厳しくなりやすい製造業でもすぐに手元の現金を増やすことができます。
そのため製造業に限らず、様々な業界でもニーズに対応できる資金調達の方法として注目されています。
その背景には、ファクタリングを利用することに、以下の8つのメリットがあるといえるからです。
- 返済負担に追われない
- 急な資金ニーズに対応しやすい
- 書類準備に手間がかからない
- 保証人や担保は必要ない
- 審査の難易度が低い
- 未回収リスクを回避できる
- 決算書を汚さない
- 利用を誰にも知られない
それぞれのメリットをて説明します。
1. 返済負担に追われない
ファクタリングはお金を借りて資金を調達する方法ではないため、返済負担に追われることがありません。
銀行から融資を受ければ、一時的に手元の資金は増えても、その後の返済に苦しむこともめずらしくないといえます。
しかしファクタリングは保有する資産を現金に換えて資金を調達する方法のため、後々の返済負担に悩むことはありません。
2. 急な資金ニーズに対応しやすい
ファクタリングの大きな特徴は、急いでお金が必要なときでも対応してもらえることです。
銀行から融資を受けるときには、申し込みから融資実行まで時間がかかり、すぐに資金を必要とする場面で対応できません。
しかしファクタリングは、売掛金が現金化されるまで最短即日など、時間をかけずに資金調達できます。
3. 書類準備に手間がかからない
銀行から融資を受けるときには、様々な書類を作成することが必要となり、申し込むまで時間もかかります。
しかしファクタリングは準備しなければならない書類も少なく、手続も比較的簡単で手間がかからないことがメリットです。
4. 保証人や担保は必要ない
ファクタリングは借入れではないため、保証人や担保は必要ありません。
銀行から融資を受けるときには、不動産などを担保として差し入れることや、代表者の個人保証など人的担保を求められることが多いといえます。
しかしファクタリングは借金を増やす方法ではなく、不動産など所有していなくても、個人事業主でも資金調達に利用することができます。
5. 審査の難易度が低い
銀行融資の審査は大変厳しく、経営状態が良好でなければ通らないこともめずらしくありません。
しかしファクタリングの審査は難易度が低く、売掛先の信用力が重視されるため、経営状態に関係なく資金を調達できます。
6. 未回収リスクを回避できる
ファクタリングでは、保有する売掛金をファクタリング会社に譲渡するため、売掛先の倒産リスクも移転することができます。
仮にファクタリング契約後、売掛先が倒産し売掛金が回収できなくなっても、その責任を利用者が負うことはありません。
7. 決算書を汚さない
ファクタリングはお金を借りて資金調達する方法ではないため、貸借対照表の負債も増えません。
そのため決算書を汚すことはなく、会計上の見た目を悪化させることも、信用力を低下させることがないこともメリットです。
8. 利用を誰にも知られない
ファクタリングのうち、利用者とファクタリング会社で契約を結ぶ2社間ファクタリングで資金調達すれば、売掛先にも銀行にも知られることなく資金を調達できます。
売掛債権を売却するときに売掛先に協力してもらうことが必要になると、自社の資金繰り悪化を知られその後の取引に影響するとも考えられます。
しかし2社間ファクタリングなら誰にも知られず売掛金を現金化できるため、売掛先に不信感を抱かせることなく資金調達できます。
製造業におけるファクタリング利用の注意点
製造業の資金調達の方法として、様々なメリットがあるファクタリングですが気をつけておきたいこともあります。
そこで、製造業がファクタリングを利用するときには次の6つに注意するようにしてください。
- 売買手数料の負担が必要
- 売掛先の信用力が低い利用しにくい
- 悪徳業者に騙されるリスクがある
- 3社間では売掛先に通知・承諾が必要
- 債権譲渡登記が必要な場合がある
- 資金調達額は売掛債権額面が限度
それぞれの注意点について説明していきます。
1. 売買手数料の負担が必要
ファクタリングで売掛金を現金化するときには、ファクタリング会社に売買手数料を支払うことが必要です。
融資を受けるときよりも割高といえる売買手数料がかかるため、長期利用は資金繰りを悪化させやすいと留意したほうがよいでしょう。
2. 売掛先の信用力が低いと利用しにくい
ファクタリングを利用するときには、売掛先の信用力が低ければ資金調達につながらないことに注意してください。
審査では自社の経営状態や信用力はそれほど重視されませんが、売掛先の信用力はかなり重視されることになります。
ファクタリング会社は売掛金が回収できなくなるリスクを最も懸念するため、信用力の低い売掛先の売掛金は買い取りの対象にならないと理解しておきましょう。
3. 悪徳業者に騙されるリスクがある
ファクタリング業界は法整備が十分とはいえないため、悪徳業者が横行しやすい環境といえます。
誠実に運営するファクタリング会社が多いとはいえますが、悪徳業者に騙されないファクタリング会社選びが必要といえます。
4. 3社間では売掛先に通知・承諾が必要
3社間ファクタリングで資金調達するときには、売掛先に対し通知を行い、承諾を得ることが必要となります。
手数料を安く抑えて資金を調達できることが3社間のメリットですが、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを売掛先に承諾してもらわなければなりません。
売掛先が債権譲渡に懸念を示せば、協力してもらうことはできなくなるでしょう。
どれほど説明しても、銀行から融資を受けずファクタリングで資金を調達しなければならない状態なのかと、勘ぐられてしまう可能性もあります。
このような背景から、中小企業では3社間よりも2社間ファクタリングが多く利用されています。
5. 債権譲渡登記が必要な場合がある
本来、2社間ファクタリングなら売掛先に知られず資金を調達できるはずですが、債権譲渡登記が必要になると知られてしまう可能性があります。
債権譲渡登記はファクタリング会社が売掛債権の権利を保有していることを証明するために行われますが、登記情報のため誰でも閲覧できます。
売掛先や取引銀行にも売掛債権が譲渡された事実を知られる可能性が出てくるため、債権譲渡登記を必要としないファクタリング会社を選んだほうがよいでしょう。
6. 資金調達額は売掛債権額面が限度
ファクタリングで資金調達できるのは、売掛債権額面が限度となります。
保有する売掛債権をファクタリング会社に売って現金に換える方法のため、債権額面よりも多く資金を調達することはできません。
製造業におけるファクタリング会社の選び方
資金調達にファクタリングを活用することのメリットや注意点を理解しておくことは大切ですが、重要なのはどのファクタリング会社と契約するかです。
そこで、製造業がファクタリングで資金調達するとき、契約相手となるファクタリング会社の選び方として次の6つを押さえておくようにしましょう。
- 売買手数料の安さ
- 現金化までのスピード
- 買取下限額の有無
- 買取上限額の有無
- 対応の丁寧さと親切さ
- 製造業での実績の有無
それぞれ説明します。
1. 売買手数料の安さ
ファクタリングでは大きなお金が動くことになるため、できるだけ売買手数料の安いファクタリング会社を選んだほうがよいでしょう。
ただしあまりに安すぎる売買手数料の場合、後で追加費用などを請求される可能性もあるため、前もってどのくらいの費用がかかるか確認しておいたほうが安心です。
2. 現金化までのスピード
ファクタリング会社に売掛金を売っても、現金化されるまでのスピードが遅ければスムーズな資金調達にはつながりません。
すぐにお金が必要なときこそ現金化までのスピードは重要といえるため、どのくらいで資金調達できるか事前に確認しておくようにしましょう。
3. 買取下限額の有無
個人事業主の場合、保有する売掛金は少額のことが多いですが、ファクタリング会社によっては買取可能とする売掛債権に下限を設定していることがあります。
数十万円の売掛金を保有していたとしても、たとえば買取下限額が100万円であれば、ファクタリングで資金調達できません。
保有している債権がいずれも少額という場合、少額債権の買い取りにも積極的に対応しているファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
4. 買取上限額の有無
ファクタリング会社によっては、買取下限だけでなく限度額を設けていることがあります。
金額の大きな売掛金の場合、万一回収できなかったときのリスクは計り知れません。
そのためファクタリング会社も未回収リスクを懸念し、一定額以上の売掛債権は買い取りを断わることが多いといえます。
どのくらいの金額まで買取可能か、多額の売掛金を現金化したいときはファクタリング会社に相談してみるとよいでしょう。
5. 対応の丁寧さと親切さ
ファクタリングは、利用者とファクタリング会社で信頼関係を築くことが必要な取引といえます。
そのため安心して取引できるファクタリング会社か、対応の丁寧さや親切さで判断するようにしましょう。
6. 製造業での実績の有無
ファクタリング会社は様々な業界や業種の売掛金を扱っていますが、その中でも製造業での実績がある業者のほうが安心です。
製造業での実績があれば、業界特有の事情も理解しているため、安心できるサービスが提供されると考えられます。
これまでどのくらいの数の取引実績があるのか、どのような業種の売掛債権を現金化してきたのか確認しておくようにしましょう。
まとめ
掛け取引が基本となる製造業では、手元の資金不足に悩まされやすいため、資金調達の方法としてファクタリングが活用されることが増えました。
長期化している売掛金の支払いサイトも短縮でき、必要なときにすぐ資金調達できることがファクタリングの魅力といえます。
ファクタリングは赤字経営や債務超過で悩んでいる製造業でも利用できるサービスです。
手元の資金不足に悩んだときには、積極的に活用を検討してみるとよいでしょう。
中小企業経営者向け！
おすすめの関連記事
