給料ファクタリングとは?違法である根拠と活用するべきサービスについて解説

保有する売掛金を売却し、現金化することで資金調達が可能となるファクタリングですが、個人を対象とした給料(給与)ファクタリングの存在が問題視されています。

独立行政法人国民生活センターでは、給料(給与)をファクタリング取引に活用しようとするヤミ金融業者の存在に注意するように警告しています。

勤務先から支払われる給料債権を売れば、その代金を受け取ることが可能と宣伝する給料(給与)ファクタリングで、高額な手数料や強引な取り立て被害が発生しているからです。

給料(給与)ファクタリングを行う業者は、あくまでも債権を買取るだけなので貸し付けではないとしていますが、実態は貸金業であり借金を増やすことと同じです。

貸金業法の登録をせず給料(給与)ファクタリングを業として行っているのはヤミ金融業者ですので、決して利用しないようにしてください。

給料ファクタリングとは

売掛債権ではなく給与債権を売却することで現金化するファクタリングを給与ファクタリングと呼びます。

一般的に中小企業や個人事業主が資金調達に活用する「ファクタリング」は、事業者が保有している売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に譲渡して現金化するサービスです。

一定の手数料を支払い、債権譲渡契約を結んで現金化する方法のため、金銭の貸し借りではなく売掛金の売買に該当します。

しかし最近では、事業者向けのファクタリングのスキームを使った「給料ファクタリング」が個人の資金調達に利用されるケースが見られます。

企業間による一般的なファクタリングと異なり、個人向けのファクタリングですが、その内容を理解するために次の3つを説明していきます。

  1. 給料ファクタリングの仕組み
  2. 給料ファクタリングが広まった理由
  3. 給料ファクタリングを利用するリスク

給料ファクタリングの仕組み

「給料ファクタリング」とは、個人が勤務先から受け取る給料を「賃金債権」とし、業者が給料日前に買い取ることで現金化する手法です。

給料が支払われた後は、個人を通じて資金を回収することになります。

給料前借り感覚で利用してみたいと考える方もいるでしょうが、次の流れで現金化されます。

  1. 個人から給料ファクタリング業者に対し、賃金債権である給料(給与)を売却(譲渡)する
  2. 給料ファクタリング業者から個人に、手数料を差し引いた金額が支払われる
  3. 勤務先から個人に給料(給与)が支払われる
  4. 個人から給料ファクタリング業者へ、手数料を含めた金額(受け取った給料分)を支払う

一見普通のファクタリングと何も変わらないように見えますが、実は大きな問題が存在します。

悪質な詐欺まがいの行為で個人を騙そうとする業者の存在が問題となっているため注意してください。

給料ファクタリングが広まった理由

通常であれば個人が現金を入手する際に挙げられるのは、銀行やノンバンクから融資を受ける方法です。

しかしすでに複数の金融業者などからお金を借りていて、融資審査に通らない状態では資金を調達できません。

複数からお金を借りており、自転車操業のようなことを繰り返していると、返済に遅れが生じ信用情報に傷がついている状態=ブラック入りしている場合もあるでしょう。

しかし給料(給与)ファクタリングでは、このようにどこからもお金を借りることができないブラックの方でも対象としています。

お金を入手するための方法の裏道として活用されており、正規の貸金業者や銀行からお金を借りることができず、ヤミ金融業者に頼らなければならない状態の方が利用できる方法として知られるようになりました。

ただ、そもそもどこからもお金を借りることができず信用情報に問題が多い方が、法外ともいえる費用を負担して給料ファクタリングを利用しても何の意味もありません。

本来、債権の譲渡そのものには違法性はないものの、違法な取立てや過度な手数料がヤミ金融業者の手口に酷似している業者も存在します。

すべての業者が悪質なサービスを提供しているわけではないものの、法的な整備が整っておらず貸金業のように登録制度もないファクタリング業者そのものを、グレーなサービスとして捉える方もいるようです。

ただこのようなファクタリング業に関する批判は、通常のファクタリングに対する風評被害ともいえます。

そのため日本ファクタリング業界で金融庁に違法性の照会を行い、違法と言い切れる法律は制定されていないものの給料ファクタリングの仕組みそのものは認められず、貸金業に該当すると考えられると訴えました。

そして給料(給与)ファクタリングは貸金と認められたことで、貸金業登録を行っていない業者がサービスとして提供すれば、それはヤミ金融業者が行う違法な取引となるとされたのです。

給料ファクタリングを利用するリスク

勤務先から給与を受け取っている個人なら、誰でも給料(給与)ファクタリングを利用することはできるでしょう。

しかし貸金業法に抵触する可能性があるとされた今、安易に利用することはおすすめできませんし、仮に利用する場合でも貸金業登録を行っている業者でなければ契約してはいけません。

事業者を対象とするファクタリングでも、ファクタリング業界には登録制度は設けられていないため、その環境を悪用し過度な取り立てや法外な手数料の搾取しようとする悪徳業者は存在しています。

特に給料(給与)ファクタリングの場合、給与の引き渡しが遅れたことにより勤務先にまで取り立ての電話がかかったという事例もあるようなので要注意です。

事業者向けのファクタリングとの違い

事業社向けのファクタリングとは、企業が保有する売掛金(売掛債権)を第三者に譲渡し、代わりに現金を受け取る仕組みを指しています。

中小企業が資金調達の策として利用しているものであり、高い評価を得ていることが特徴です。

その事業者向けのファクタリングの個人向けサービスとして落とし込んだものが給料ファクタリングで、会社などに在籍しているサラリーマンなどが利用する内容となっています。

通常の事業者向けのファクタリングであれば、債権を売却する売買契約による資金調達なので借入れではありません。

しかしサラリーマンなどが将来受け取る給料も勤務先に対する債権とみなした給料ファクタリングの場合、給料債権から差し引く手数料は実質的には「利息」に該当すると判断されました。

「給料ファクタリング」を業と営むのなら「貸金業」として、財務局長または都道府県知事の登録が必要となります。

しかし実際に給料ファクタリングをサービスとして提供する業者の中には、貸金業登録を受けていないため、金融庁でもこの無登録業者を「ヤミ金融業者」として注意を促しています。

事業者向けのファクタリングでも表向きはファクタリングと見せかけ、貸付けと同じサービスを提供しようとするヤミ金融業者が存在します。

特に新型コロナウイルス感染拡大で資金難に陥った事業者や個人を標的にした悪質なケースも存在するため、契約しないように注意してください。

ヤミ金融業者が貸金業登録しない理由

貸金業を営む場合、財務局長または都道府県知事の事業者登録を受けることが必要です。

しかしなぜヤミ金融業者は貸金業登録しないのか、その理由として、貸金業法に違反すれば10年以下の懲役若しくは3,000万円以下(法人は1億円以下)または併科に処せられることとなるからです。

貸金業法とは、過剰な貸し付けを抑制し、金利の適正化させ利用者を守るための法律といえます。

貸金業者が個人に貸し付けることができる借金総額は、利用者の年収の3分の1までと定められており、設定する金利も融資額に応じて利息制限法による15~20%という範囲で定めなければなりません。

そのため無限に金銭を貸し付け高い金利を設定したい業者は、貸金業登録せず営業していると考えられるでしょう。

給料ファクタリングの摘発事例

2020年7月29日に大阪府警生活経済課は、給料を支給日前に受け取ることが可能であるとうたい、無登録で金銭の貸し付けを行ったコンサルタント会社「SONマネジメント」(東京都)の社員男女4人を貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕しました。

この給料ファクタリングで摘発された事件は全国初ですが、逮捕容疑として2020年3~6月に、国や東京都の登録を受けず個人の男性2人に計20万円を貸し付けた疑いとされています。

現在は新型コロナウイルスの影響により、仕事がなくなり生活が苦しくなった方も少なくありません。そのような事情を踏まえた上で、相談してきた個人にファクタリングとうたい金銭を貸し付けたようです。

摘発された業者の設定した手数料は、年利換算すると630~1,620%という法定上限である年利15~20%を大幅に上回った内容でした。

本来のファクタリングなら売掛金を対象としているので、ファクタリング会社(ファクター)ではその売掛債権をいくらで買取りできるか査定し、相場に見合う手数料を設定します。

摘発された業者では査定らしい査定は行っておらず、そもそも一般的なファクタリングとは異なり貸金業なので、法定上限を守った利息を設定することが必要です。

法外な年利の設定で出資法違反容疑にも該当するといえますが、ブラックでも可能といううたい文句が特徴でノンバンクなどから融資を受けることができない方を対象としており、強引な取り立てなどによる被害が相次いでいます。

いずれにしても、貸金業登録を受けずに給料(給与)ファクタリングを行うことは違法な行為ですので、無登録業者であるヤミ金融業者を利用すると高額な手数料を支払わされてしまうと認識しておくべきでしょう。

事業者向けのファクタリングとは

給料ファクタリングは事業者向けのファクタリングとは異なる仕組みですが、正規の事業者向けファクタリングは、個人事業主や中小企業が抱えている資金不足や資金繰りの悩みを解決できる方法として活用されているサービスです。

保有する売掛金をファクタリング会社に売却することで現金化し、手元の資金を増やすことができます。

銀行から融資を受ける方法でも資金は調達できます。

しかし借金を増やすため、後々の資金繰りが悪化しないとも限りません。

それに対し事業者向けファクタリングは、保有する売掛債権という「資産」を現金に換えて資金調達する方法のため、負債も増えず厳しい審査もなく利用できます。

事業者向けファクタリングには、

  • 利用者とファクタリング会社で契約する「2社間ファクタリング」
  • 利用者とファクタリング会社、売掛先で契約する「3社間ファクタリング」

の2種類があります。

そこで、より事業者向けファクタリングを理解するために、次の2つについて説明していきます。

  1. 2社間ファクタリングの仕組み
  2. 3社間ファクタリングの仕組み

2社間ファクタリングの仕組み

「2社間ファクタリング」とは、利用者とファクタリング会社のみで契約を結び、売掛債権や現金をやり取りするファクタリングです。

売掛先を間に挟むことなく手続が進むため、ファクタリング会社によっては即日現金化が可能になるなど、スピーディさが魅力といえるでしょう。

ただし売掛先に対する通知や承諾がない分、ファクタリング会社が抱えるリスクは大きくなるため、手数料は高めに設定されます。

2社間ファクタリング利用による流れは次のとおりです。

  1. ファクタリング利用の申し込み
  2. ファクタリング会社による審査
  3. 契約締結と現金化した買取代金の入金
  4. 売掛先から売掛金を回収
  5. ファクタリング会社に回収した売掛金の支払い

3社間ファクタリングの仕組み

「3社間ファクタリング」は、利用者とファクタリング会社に加え、売掛先もかかわることになるファクタリングです。

売掛先に対してファクタリングを利用することを伝え、承諾を得るという流れが必要になるため、売掛先の協力なしでは成立しない契約形態ともいえるでしょう。

しかしファクタリング会社にとっては、売掛債権の存在を売掛先に確認でき、期日に支払われる売掛金も直接ファクタリング会社の口座に入金されます。

そのリスクの低さから、手数料は安く設定されることが特徴です。

ただ、利用者にとっては売掛先に対して通知や合意を得る手続が必要となり、売掛先にファクタリング利用を知られてしまうため、その点は留意した上で選ぶことが必要となります。

3社間ファクタリング利用の流れは以下のとおりです。

  1. ファクタリング利用の申し込み
  2. 売掛先に対する通知と承諾を得る手続
  3. ファクタリング会社による審査
  4. 契約締結と現金化した買取代金の入金
  5. 売掛先からファクタリング会社が売掛金を回収

事業者向けファクタリングのメリット

事業者向けファクタリングのメリットとして挙げられるのは、主に次の4つです。

  1. 借金を増やさず資金調達できる
  2. 売掛金未回収リスクを回避できる
  3. 資金調達までスピーディ
  4. 審査のハードルが低い

それぞれ説明していきます。

①借金を増やさず資金調達できる

本来であれば期日にならなければ売掛先から入金されない売掛金を、前倒しで受け取ることが可能なファクタリングですが、売掛金の売買による資金調達のため借金を増やすことはありません。

②売掛金未回収リスクを回避できる

売掛先の資金繰りが悪化し、期日に代金が未入金となるリスクも、ファクタリングであれば回避できます。

仮に利用後、売掛先が倒産して売掛金が貸し倒れとなっても、その責任を利用者が負う必要もありません。

③資金調達までスピーディ

銀行や公的機関から融資を受けて資金調達する場合、必要書類の準備や長い審査で時間がかかります。

しかしファクタリングは申し込みから現金化までスピードがはやいため、すぐにお金が必要という場合でも対応できます。

④審査のハードルが低い

財務状況などが悪化している場合、融資を受けたくても審査に通りにくくなります。

しかしファクタリングは、手数料は発生するものの借入れではなく、審査でも売掛先の信用力が重視されます。

財務状況が悪化していても、信用力の高い売掛先の債権があれば審査に通ることもめずらしくないため、そのハードルの低さから資金を調達しやすいことが特徴です。

また、融資を受けるとき求められる保証人や担保なども必要なく、スムーズな手続で資金を調達できます。

事業者向けファクタリングのデメリット

事業者向けファクタリングは、個人事業主や中小企業が資金調達に活用しやすい方法であるものの、次の2つのデメリットは留意しておくべきです。

  1. 手数料が高い
  2. 3社間ファクタリングでは取引先に利用を知られる

それぞれ説明していきます。

①手数料が高い

事業者向けファクタリングのデメリットとして挙げられるのは、まず手数料が発生することです。

銀行から融資を受けるときの金利よりも高めに設定されるため、コストがかかることは留意しておきましょう。

②3社間ファクタリングでは取引先に利用を知られる

3社間ファクタリングであれば手数料を安く抑えることができますが、売掛先に対する通知や承諾を得ることが必要となるため、利用を知られることはデメリットです。

資金繰り悪化などを懸念され、その後の取引に影響が及ぶ可能性も否定できません。

ファクタリング会社を選ぶポイント

事業者向けのファクタリングなら、上手に活用することでスムーズな資金調達につながり、リスクを回避させることも可能です。

しかし注意したいのは、給料ファクタリングのように悪徳業者に騙されないように注意しなければならないことといえます。

ファクタリング業界は法整備が十分でなく、悪徳業者が横行しやすい環境となっています。

そのためファクタリング会社を選びが重要ですが、次の6つをポイントと押さえた上で選ぶようにしましょう。

  1. 手数料の高さ
  2. 現金化までのはやさ
  3. 必要書類の量
  4. 買取可能額
  5. 償還請求権の有無
  6. オンライン対応の有無

それぞれどのようなことに注意して選べばよいか説明します。

①手数料の高さ

事業者向けファクタリングを利用した場合、設定される手数料は2社間ファクタリングと3社間ファクタリングで次のとおり異なります。

2社間ファクタリング 10~20%
3社間ファクタリング 1~9%

上記の相場と大きくかけ離れた手数料が設定される場合、悪徳業者である可能性が高いと判断できるでしょう。

また、手数料は安く設定されているのに、本来のファクタリング契約では存在しない費用を請求してくるケースもあるため、安すぎる手数料にも注意してください。

②現金化までのはやさ

売掛金を現金化するまでのスピードはファクタリング会社によって異なるため、たとえば最短即日可能というファクタリング会社やオンライン完結可能なファクタリング会社なら、よりスピーディに資金調達できます。

③必要書類の量

ファクタリング契約を結ぶときには必要書類を提出することが必要となりますが、必要書類の量も確認しましょう。

一般的には次の書類を揃えておくとスムーズに手続できます。

  • 登記簿謄本(法人の場合)
  • 印鑑証明書
  • 本人確認書類
  • 決算書(確定申告書)直近2~3期分
  • 取引履歴の確認可能な銀行口座通帳
  • 売掛先との基本契約書
  • 売掛先との売買契約書
  • 売掛金を証明する請求書・発注書・納品書など

必要書類がほとんどなく、審査もなく現金化が可能という場合、悪徳業者の可能性が高いため注意してください。

④買取可能額

ファクタリング会社によっては、買取可能とする売掛債権に下限または上限を設けていることもあります。

中小企業の場合、少額債権など多く保有していることがあるため、特に下限は設定されていないか確認しておきましょう。

⑤償還請求権の有無

償還請求権ありのファクタリング契約を結んでしまうと、利用後に売掛先が倒産して売掛金が回収不能となったとき、その責任は利用者が負うことになります。

また、償還請求権ありの場合は融資とみなされるため、必ず確認しておくようにしましょう。

⑥オンライン対応の有無

オンライン対応が可能なファクタリング会社なら、面談や書類の受け渡しをインターネット上で行うことが可能です。

スムーズに資金調達したい場合や、忙しくて窓口まで出向くことができないときなどは、オンライン対応してくれるファクタリング会社なら安心して利用できます。

違法業者の不安があるときの相談先

もしも給料ファクタリングをすでに利用してしまっている場合、弁護士や司法書士に過払い金請求の対象にならないか相談してみましょう。

取り立てに悩んでいる場合にも、弁護士や司法書士が介入したことが業者に伝われば、利用した個人に直接請求してくることはなくなるはずです。

給料ファクタリングでこれまで個人を騙し金銭を貸し付けていた悪徳な業者は、無茶な取り立てを行う可能性も否定できませんので早めの対処が必要です。

年利に換算すると数百から千%を超える高額な手数料を支払わされてしまう可能性があるため、被害に遭った場合やヤミ金融業者からの取り立てなどで困っているのなら、下記の相談窓口に連絡してください。

  • 金融庁 金融サービス利用者相談室(平日10:00~17:00)
     電話:0570-016811(IP電話からは03-5251-6811)
  • 金融庁 多重債務についての相談窓口(web検索)
     https://www.fsa.go.jp/soudan/index.html
  • 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター
     電話:0570-051051(IP電話からは03-5739-3861)
  • 警察
     電話:#9110(各都道府県警察相談ダイヤル)
  • 消費生活センター等の消費生活相談窓口
     電話:188(消費者ホットライン)

まとめ

金融庁では、給与の買取りをうたう違法なヤミ金融に注意するように呼びかけていますが、これは「給料ファクタリング」のことです。

給料ファクタリングは、中小企業や個人事業主が資金調達に活用する事業者向けのファクタリングとは異なるため、混同しないようにしてください。

事業者が資金調達にファクタリングを活用するときには、必ず事業者向けのファクタリングを利用することと、ファクタリング会社選びも慎重に行うことを心掛けましょう。