「ファクタリング」とは、保有する売掛金をファクタリング会社に売って現金化する資金調達の方法のため、「金利」という概念はありません。
利用の際にファクタリング会社に対し「売買手数料」を支払いますが、融資を受けるわけではないため「金利」による「利息」とは異なるものです。
しかしファクタリングに金利が関係ないのならどのように売買手数料が決まるのか、融資を受けて資金調達したときに支払う利息とどちらがお得なのか気になる方もいることでしょう。
そこで、ニーズに対応できる資金調達方法を選ぶために、ファクタリングの売買手数料相場と融資の金利を徹底比較していきます。
目次
ファクタリングは金利でなく売買手数料
ファクタリングは売掛債権を売却し現金化することで資金を調達できる方法のため、「金利」は発生せず、「売買手数料」が発生します。
「金利」とは、金銭の貸借で借りた側から貸した側に支払われる貸借料(利息)を決める、元金に対する割合のことです。
貸金業には利息制限法が適用されますが、ファクタリングは売買取引であり貸金業にはあたらないため、適用されません。
※利息制限法とはここでいう、借入をした際にかかる利息の利率や遅延損害金の価格を一定以上にならないように上限を定めている法律
売買手数料は、ファクタリング会社独自の審査により決定します。
ファクタリング売買手数料の相場
ファクタリングで資金を調達するとき、ファクタリング会社に支払う売買手数料の割合には一般的な相場があります。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのどちらを利用するかによって異なりますが、一般的な売買手数料相場は以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング 10~20%
- 3社間ファクタリング 1~9%
金利と同じく「%」を使った割合で表示されますが、金利は「年率」が原則ですがファクタリング手数料は「月率」として考えます。
そのため、もしも融資を受けるときの金利とファクタリング売買手数料の手数料率を比較するのなら、ファクタリング売買手数料率を「年率」に換算し比べることが必要です。
たとえば3社間ファクタリングで発生する売買手数料の割合が5%だとしても、年率に換算すればその12倍となるため60%となります。
年率換算にすると割合が一気に高くなるため、期間を決めて数か月利用するなど一時的な資金調達への活用はよいものの、年間単位など継続した利用では資金繰りが悪化することになると留意しておくべきです。
ファクタリング売買手数料を決める要素
ファクタリングを利用するときにファクタリング会社に支払う売買手数料は、様々な要素により決定されます。
ファクタリング会社により、どの要素を重視するかは異なる部分はあるものの、多くは共通しています。
主にファクタリング売買手数料を決める要素として挙げられるのは次の4つです。
- 売掛先の信用力
- 利用実績
- 売掛債権額
- 契約形態
それぞれどのようなことを重視されるのか説明していきます。
①売掛先の信用力
ファクタリングで現金化する売掛債権の信用度は高ければ高いほど売買手数料は安く抑えることができます。
ファクタリング会社が審査で最も重視する要素といえますが、期日までに売掛先が倒産すれば売掛金は回収できなくなります。
設立したばかりで実績がなく、どのような事業を行っているかわからない売掛先の場合には、売掛金の支払期日までに資金繰り悪化を理由に夜逃げする可能性もゼロではありません。
買い取る売掛債権が確実に回収できる債権であることが求められるため、売掛先の信用力を重視した審査を行うといえるでしょう。
売掛先だけでなく、売掛債権が本当に実在しており架空の債権でないことも重要です。
ファクタリングでは売掛先の信用力を重視するため、リスクの高い売掛債権と判断されれば売買手数料も高く設定されます。
②利用実績
過去にファクタリングの利用実績がある場合には、信用力の高い利用者と判断されやすく、売買手数料を引き下げることができるでしょう。
過去の利用実績は、すでにファクタリングにより売掛金を売掛先から回収し、ファクタリング会社に渡すという流れを滞りなくできている証明といえるからです。
初回利用よりも2回目以降のほうが売買手数料は安くなりやすいですが、過去契約時に何らかのトラブルなどを起こしている場合は契約できない事もあるため注意しましょう。
③売掛債権額
ファクタリング会社に売却する売掛債権額は、高ければ高い方が売買手数料を安く抑えることができます。
売掛金の買取手続にかかる手間やコストは、売掛債権の金額が大きくても小さくてもほとんど変わりません。
仮に売掛金30万円に対する売買手数料を10%で設定すると3万円ですが、150万円に対する売買手数料を2%で設定しても同じ3万円です。
10%で設定すれば15万円ですが、事務手続や手間は変わらないため引き下げてもよいと考えやすいといえます。
売掛債権額が大きければファクタリング会社の利益も出しやすいため、少額債権よりは売買手数料を引き下げてもらいやすくなるでしょう。
④契約形態
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、どちらの契約形態かによって売買手数料も次のように大きく分かります。
- 2社間ファクタリングの売買手数料相場 10~20%
- 3社間ファクタリングの売買手数料相場 1%~9%
2社間ファクタリングの場合、売掛先から売掛金を回収するのは利用者です。
もしも売掛金を回収したとき、利用者の資金繰りが悪化していれば、口座に売掛先から入金されたお金を、会社存続の為にやむを得ず使い込んでしまうこともあるかもしれません。
そのため流用されるリスクを踏まえて、2社間ファクタリングの売買手数料は3社間ファクタリングよりも高めに設定されます。
反対に3社間ファクタリングでは、売掛先からファクタリング会社に直接、売掛金の支払いが行われるため、リスクが低い分売買手数料も安く設定されるといえるでしょう。
また、3社間ファクタリングでは売掛先に対し売掛金の存在を確認しやすいため、架空の請求書などを持ち込まれるリスクが少ない分売買手数料も低くなります。
ファクタリング利用のメリット
資金調達にかかるコストだけ見れば、年率は銀行から融資を受ける方法が圧倒的に低いといえます。
もし財務状況が悪化しておらず、信用力に自信があるのなら銀行から融資を受けて資金を調達したほうがコストは抑えやすいといえるでしょう。
ただし銀行カードローンなどの場合、事業用資金として使うことは制限されている場合もあるため、その場合はビジネスローンなどを検討することになります。
ビジネスローンの場合、即日対応してもらえるなど一般的な融資よりも迅速に資金を調達できることが特徴です。
金利も5~18%程度であることが多いですが、限度額は1千万円程度までに限られることが多く、多額の資金調達には向かないといえるでしょう。
一方のファクタリングであれば、ファクタリング会社が買取可能とする売掛債権の下限や上限が設定されていなければ利用できます。
調達しなければならない資金よりも大きな額の売掛金を保有していることが必要となりますが、借金が増やさず多額の資金を調達できることがメリットです。
他にもファクタリングには次のようなメリットがあります。
- スムーズに資金調達できる
- 審査のハードルが低い
- 借入を増やさない
- 資金調達方法を多様化できる
それぞれのメリットについて説明していきます。
①スムーズに資金調達できる
ファクタリングのメリットは、何といっても現金化までのスピードがはやいことであり、スムーズに資金調達できることです。
商取引で発生した売掛金が入金されるまで、1か月や2か月かかります。
しかしファクタリングを使えば、この支払期日までの日数を短縮することができますが、早ければ即日現金化されるというはやさです。
迅速な資金確保の方法として、個人事業主や中小企業、スタートアップ企業のニーズに対応しやすい方法といえるでしょう。
②審査のハードルが低い
ファクタリング会社が行う審査では、利用者ではなく売掛先の信用力を重視します。
そのため赤字決算や債務超過を理由に、金融機関から融資を受けたくても審査が通らない利用者でも、ファクタリングなら資金調達できます。
利用者の信用力が重視されないため審査のハードルが低く、一般的に信用力が低いといわれる個人事業主や中小企業でも安心して申し込みできることがメリットです。
③借入を増やさない
ファクタリングは売掛債権を売却し現金化して資金を調達する方法のため、借金を増やさずに手元の現金を増やせることがメリットです。
融資を受ければ負債が増えますが、ファクタリングは売掛金が現金に代わるだけなので決算書の見た目を悪化させることもありません。
また、資金は調達したいけれどできるだけ借金は増やしたくないという無借金経営を目指す場合でも、ファクタリングなら対応可能です。
④資金調達方法を多様化できる
資金を調達する方法といえば、真っ先に思い浮かぶのが銀行から融資を受けることでしょう。
しかし銀行融資ばかりに資金の調達方法を頼っていても、市場や情勢の変化でいつ新規の借入れや追加融資による調達ができなくなるか不安を抱えることになります。
リーマンショックのような不景気や、今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済の混乱など、今後も何が起きるかわからない状況です。
たとえ優良企業だとしても、その後の見通しなどで手のひらを返してくる可能性は否定できず、実際に理不尽な対応を受けた企業なども見られます。
新規の融資を渋るだけでなく、融資額の減額や返済期限前の回収などの「貸し剥がし」に遭えば、手元の資金はさらに足らなくなり倒産に追い込まれることになるといえます。
どれほど銀行と良好な関係だとしても、資金の調達先を銀行一択ではなく、多様化しておくことは安定した経営に欠かせないといえるでしょう。
売掛債権を流動化するファクタリングもその方法の1つとして、検討したほうがよいことは言うまでもありません。
ファクタリング利用のデメリット
様々なメリットがあるファクタリングによる資金調達ですが、次の3つのデメリットには注意した上で利用するようにしましょう。
- 他の資金調達方法に比べて売買手数料が高め
- 債権譲渡登記の設定を求められることがある
- 法規制がなく悪徳業者が横行している
それぞれどのようなデメリットか説明していきます。
①他の資金調達方法に比べて売買手数料が高め
先にも述べたとおり、年率換算すればファクタリングで支払う売買手数料は、銀行から融資を受けるときよりも高めに設定されます。
ただしファクタリングは売却から回収までの期間が1か月や2か月のため、月率で割合を確認するべきです。
年率換算すれば確かに高額の割合ですが、年単位で利用するものではないためその点は誤解しないようにしましょう。
②債権譲渡登記の設定を求められることがある
2社間ファクタリングでデメリットとなるのが、「債権譲渡登記」を求められることがあることです。
確実に売掛債権がファクタリング会社に譲渡されたことを証明するために求められることがある手続ですが、法務局で申請する費用などは利用者が負担する場合が多いです。
また、手間や時間がかかれば迅速な現金化につながらなくなり、登記情報であるため売掛先や銀行などにファクタリング利用を知られるリスクも高くなるでしょう。
債権譲渡登記が必要な場合には2社間ファクタリングのメリットが生かされなくなるため、未登記で対応できるファクタリング会社を選ぶようにしてください。
③法規制がなく悪徳業者が横行している
ファクタリング業界は法規制が十分でなく登録制度なども設けられていないため、貸金業界で居場所を失ったヤミ金融業者などがファクタリング業界へ移行しています。
そのため、次のような場合にはヤミ金融業者と判断し、契約しないようにしてください。
- 担保や保証人を求められる
- 契約内容に金利の記載がある
- 相場を大きく上回る又は下回る売買手数料が設定されている
- 公式サイトがない
- 公式サイトに過去の実績など記載がない
- 公式サイトの連絡先が携帯番号のみ
- 十分な審査をせず即答で買取OK
ファクタリングによる売買手数料は、ファクタリング会社独自の審査で決まります。
法律では売買手数料の条件などもないため、ファクタリングで資金を調達するときには、過去の取引実績や会社規模など、様々なことを考慮しながらファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
ファクタリング売買手数料と融資金利との比較
お金を借りたときの金利も、ファクタリングでかかる売買手数料もどちらも「%」による割合表示ですが、金利は「年率」での表示であるもののファクタリング売買手数料は「月率」表示なので同じではありません。
同じ単位で表示させなければ比べることはできず、この部分に関しては気になる経営者の方も多いと思うので、ファクタリング売買手数料を年利換算したときの融資金利との比較を記載しております。
あくまでも、ファクタリングと融資は全くの別物として考えるようにしましょう。
資金調達の種類 | 年率 |
2社間ファクタリング | 120%~240%程度(月率10%~20%) |
3社間ファクタリング | 12%~108%程度(月率1%~9%) |
銀行融資(カードローン含む) | 2%~15%程度 |
消費者金融 | 4%~18%程度 |
ビジネスローン | 5%~18%程度 |
クレジットカードのキャッシング | 15%~18%程度 |
銀行から融資を受けるのか、消費者金融から借入れするのかなどによっても、金利や売買手数料は大きく異なります。
特に2社間ファクタリングの負担は大きいため、利用の際には期間を決めたり、ファクタリングの卒業へ向けた事業コンサルなどを行っているファクタリング会社だと安心して利用できるでしょう。
ファクタリングとは
最後に余談になるかもしれませんが、ファクタリングについて記載します。
「ファクタリング」とは、個人事業主や中小企業など、事業者が保有する「売掛金」をファクタリング会社に譲渡し現金に換えるサービスのことです。
ファクタリング会社側が設定した売買手数料を売掛債権額面から差し引いた残りが買取代金として支払われます。
ファクタリング会社と売掛債権を譲渡する「売買契約」を結ぶことによる資金調達方法のため、融資を受けるわけではありません。
そのため「売買手数料」は「金利」により決定するのではなく、ファクタリング会社独自の審査で決まります。
ファクタリングには次の2つの種類があり、どちらを選ぶかによって契約までの流れは異なります。
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
それぞれの契約方法の特徴や流れについて説明していきます。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、ファクタリングで資金を調達する利用者とファクタリング会社で契約を結びます。
売掛先に対し、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを伝える必要はないため、資金繰り悪化を知られたくない場合にも安心して利用できます。
また、2社(者)のみの契約であることから、審査や手続の流れがスムーズで、現金化まで迅速であることも2社間ファクタリングの特徴です。
急に資金を準備しなければならなくなったとき、保有する売掛金を前倒しで支払ってもらうことができれば…と考えることもあるでしょう。
このような場合、2社間ファクタリングなら最短で即日入金されるなど、ニーズに合った資金調達ができます。
なお、2社間ファクタリングで資金を調達する場合、次の流れで手続が進みます。
- 利用者とファクタリング会社で契約締結
- ファクタリング会社から利用者に対し、買取金額が支払われる
- 売掛先から利用者に売掛金が入金される
- 利用者からファクタリング会社に買取金額と売買手数料を支払う
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社、売掛先で契約を結びます。
売掛先が契約に関与するため、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡することを通知し、ファクタリング利用について承諾を得ることが必要です。
合意を形成することが必要となるため、段取りや資料作成などに手間がかかり、2社間ファクタリングよりも現金化まで時間がかかります。
また、売掛先から必ずしも承諾を得ることができると限らない上に、資金繰りが苦しい会社という印象を与え、その後の取引に影響が及ぶリスクも発生することになるでしょう。
ただし売買手数料は2社間ファクタリングよりも安く抑えることができるため、長年に渡り親身に付き合っている売掛先などあるのなら、3社間ファクタリングを検討してみることも方法の1つです。
3社間ファクタリングで資金を調達する場合、次の流れで手続が進みます。
- 利用者とファクタリング会社で契約締結
- 売掛先に対し債権を譲渡することの通知
- 売掛先から承諾することの通知
- ファクタリング会社から利用者に対し、買取金額が支払われる
- 売掛先からファクタリング会社に買取金額と売買手数料の支払いを行う
まとめ
ファクタリングには「金利」という概念がないのは、融資を受けて資金を調達する方法ではなく売掛債権の売買による方法だからです。
中小企業などは急にまとまった資金が必要になることもしばしば。
そのような場合でも、ファクタリングなら難易度の低い審査でスムーズに資金を調達できます。
ただしファクタリング業界は法規制が十分でなく、悪質な業者なども横行しやすくなっています。
たとえば契約書に金利による売買手数料の記載がある場合、その契約は売掛金の売買ではなく売掛金を担保とする金銭の貸し付けです。
悪徳業者に騙されれば十分な資金調達につながらないだけでなく、資金繰りは悪化し倒産に追い込まれるリスクも高くなるため、ファクタリング会社選びは慎重に行うようにしてください。