ファクタリングの「割引率」は、利用する前に知っておくと安心です。
売掛金をファクタリング会社へ買取ってもらうとき、支払う売買手数料は割引率により決定され、調達できる金額に影響するからです。
そこで、ファクタリングの割引率を決める要素と、できるだけ低く抑えたいときの対処法を解説します。
ファクタリングの割引率
ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社に支払う売買手数料は、割引率で大きく変わります。
たとえばファクタリングと似た手法である「手形割引」では、手形買取金額を以下の計算式で算出します。
手形買取金額 = 手形額面 × 割引率 × 支払いまでの日数 |
ファクタリングの場合、売却する対象は手形ではなく売掛金です。
債権が回収不能になっても弁済義務もないため、手形割引とは似た仕組みであっても、同じ手法とはいえません。
ただしファクタリングの割引率の考え方は手形割引とほぼ同じで、以下の計算式で算出します。
売掛債権買取金額 = 売掛金の額面金額 × 割引率 - 売買手数料(諸費用) |
計算式からもわかるとおり、ファクタリングの割引率で買取金額が左右されます。
割引率の高いファクタリング会社と契約すれば、本来受け取るはずだった売掛金の額面金額を大きく目減りさせます。
そのため、できるだけ割引率を低く抑えられるファクタリング会社を選べば、受け取ることのできる額も増えます。
ファクタリングでかかる諸費用の内訳
ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社に支払う諸費用の内訳は以下のとおりです。
- 基本手数料(サービス料)
- 登記費用
- 印紙代(契約書貼付用のため契約金額に応じて200円~20万円)
また、ファクタリング会社によって次のような費用を請求される場合もあります。
- 審査手数料・事務手数料(5,000円程度)
- 出張費(遠方の企業へ担当者が出向く場合の交通費など)
- 登記費用(債権譲渡登記が必要な場合の登録免許税7,500円)
- 司法書士に対する報酬(債権譲渡登記が必要な場合5~10万円程度)
できるだけ売買手数料を低く見せるために、後で追加費用を請求する悪質な業者も存在します。
本来、売掛債権の売買契約で発生しない不明な費用を請求された場合は、何のために支払うお金なのか説明を求めましょう。
ファクタリング審査で重視する要素
ファクタリングの割引率は、ファクタリング会社の「審査」で決まります。
確実に回収できる売掛債権なら、ファクタリング会社も安心して買取ることができるため、割引率を抑えた積極的な取引ができるでしょう。
しかし不安要素の多い売掛債権では貸し倒れリスクが高くなるため、割引率を引き上げられる場合もあれば、買取不可と判断されることになります。
以上のことから、ファクタリングの割引率を決定する審査では、主に次の6つの要素が重視されるでしょう。
- 売掛先の信用力
- 利用者の信用力
- 売掛金額の大きさ
- 支払い期日までの日数
- 割引方式による割引率の違い
- 契約方式による割引率の違い
それぞれの要素を説明していきます。
売掛先の信用力
ファクタリングの審査で重視されるのは、売掛先の信用力です。
期日に売掛金を支払うことになる売掛先の業績や財務状況が安定していれば、割引率も低く下げることができるでしょう。
利用者の信用力
ファクタリングでは利用者の信用力はそれほど重視されませんが、経営状態や評判がよい場合は割引率が低くなることがあります。
また、過去の利用実績があれば信用力の高さを証明しやすいため、初回利用よりも2回目以降の方が割引率を低く抑えやすくなるでしょう。
ただし過去の利用で回収後の売掛金をファクタリング会社へすぐに支払わなかったことがあれば、割引率を高く設定されたり買取拒否されたりすることもあります。
売掛金額の大きさ
ファクタリング会社の審査で割引率を決めるときは、買取る売掛金の金額の大きさも重視します。
その理由は、ファクタリング会社が事業を運営するときの諸経費が、買い取る売掛金の金額に左右されないからといえます。
金額の大きい売掛金を売却対象にした場合、諸費用など差し引いても十分に利益が残ることになるため、ファクタリング会社も割引料を下げて債権を買取りしてもらいやすくなります。
支払い期日までの日数
売掛先から売掛金を回収できる支払い期日までの日数も割引率に影響します。
ファクタリングの審査では売掛先の信用力を確認しますが、売掛金の支払い期日までに倒産しないとは言い切れません。
そのため支払い期日までが長い売掛金は、期日までに売掛先の経営状況などの変化で、倒産や支払い不能状態に陥るリスクは高くなります。
支払いまでの日数が短い売掛金なら、割引率は低く設定されることが期待できます。
割引方式による割引率の違い
ファクタリング会社が売掛債権を買取ると、その譲渡額が利用者に支払われます。
割引率は、次の2つの支払い方法により異なります。
- 一括割引方式
- 個別割引方式
それぞれ説明していきます。
一括割引方式
「一括割引方式」とは、譲渡承諾日または指定日にまとめて売掛債権の買取金額が支払われる方式です。
たとえば1,300万円の売掛債権の買取で300万円が差し引かれるときに、残りの1,000万円が指定日に入金されます。
ファクタリング会社の事務コストも抑えることができるため、利用者もその分、多く手元の資金を増やすことができるといえます。
個別割引方式
「個別割引方式」とは、売掛金の範囲内で、譲渡する金額や譲渡する日を利用者が自由に決めることのできる支払い方式です。
たとえば1,300万円の売掛債権の契約のうち、お金が必要になったタイミングで300万円のみ譲渡するという流れとなり、利用者のニーズに合わせて支払い日など設定できます。
しかし割引料は契約段階で決まるため、一括割引方式よりも高くなりやすい傾向が見られます。
契約方式による割引率の違い
ファクタリングには次の2つの契約方式があります。
- ファクタリング会社と利用者だけで契約する「2社間ファクタリング」
- 2社に加え売掛先とも契約する「3社間ファクタリング」
このうち、「3社間ファクタリング」のほうが割引率を低く抑えることができます。
それぞれの割引率の相場は以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング 10~20%
- 3社間ファクタリング 1~9%
3社間ファクタリングは売掛先とも契約を結ぶため、売掛先からファクタリング会社に直接売掛金が支払われます。
2社間ファクタリングでは、売掛金の回収を利用者が代行することになるため、ファクタリング会社に支払う前に使い込みや流用されてしまうリスクが高くなってしまいます。
そのため未回収リスクが少ない3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングよりも割引率が低く設定されます。
ファクタリングにおける税金の扱い
ファクタリングで資金調達するとき、実際に売却した売掛金がどのくらいの金額で戻ってくるのか、税金の扱いについても確認しておきましょう。
たとえば、次の条件を提示したファクタリング会社と2社間ファクタリングによる契約を結び、資金を調達するとします。
売掛債権額1,000万円 割引率10% 事務手数料1万円 登記費用9万円 掛目80%(20%留保金) |
このケースで現金化とできるのは、売掛債権額1,000万円からその8割分である留保金200万円を差し引いた800万円です。
800万円に割引率10%を掛けた80万円が売買手数料となり、720万円を現金として受け取ることができます。
そして2社間ファクタリングでは利用者が売掛先から売掛金を回収し、ファクタリング会社に支払えば留保金200万円を返還してもらえます。
このとき、事務手数料1万円と登記費用9万円が差し引かれるため、払い戻されるのは残りの190万円です。
この1,000万円の売掛債権を売却する事例では、資金調達できた金額が720万円と190万円の合計910万円で、前倒しで受け取ったのは720万円という計算になります。
割引料に消費税はかからない
ファクタリングは売掛債権の売買契約を結びます。
売買手数料も含めて、一切消費税はかかりません。
消費税は商品やサービスの消費に対し納める税金ですが、ファクタリングも売掛金の売買によるサービスです。
しかし金銭債権の譲渡は非課税取引という扱いのため、売掛債権をファクタリング会社に譲渡するファクタリングも税金がかからない取引となります。
債権譲渡登記が必要な場合、司法書士に対し支払う報酬には消費税が課税されますが、売買手数料に消費税が含まれることはありません。
もしもファクタリングで資金調達したとき、別途、消費税を請求されたときには悪質な業者でないか疑うようにし、取引を中断するようにしましょう。
ファクタリングの割引率を抑えたい場合の対処法
売掛金の現金化により受け取ることのできる金額は、ファクタリング会社が設定する割引率によって大きく変わります。
そのためファクタリングで資金調達するときには、できるだけ割引率を低く抑えたほうがよいといえます。
その方法として、次の4つが挙げられます。
- 複数社から相見積もりを取得・比較する
- ファクタリング会社と交渉する
- 複数回の利用で実績をつくる
- ファクタリングの乗り換えも検討する
それぞれどのような方法か説明していきます。
複数社から相見積もりを取得・比較する
ファクタリングの割引率は、ファクタリング会社独自の審査により決まります。
そのため最初から一社に限定せず、複数のファクタリング会社から相見積もりを取得しましょう。
比較した上でファクタリング会社選びをしたほうが、割引率を低く抑えることができます。
ファクタリング会社と交渉する
複数のファクタリング会社を比較するとき、他社を比較対象としつつ「交渉」することによって、割引率を下げてもらえる場合もあります。
複数回の利用で実績をつくる
ファクタリングは、初回の利用よりも複数回利用している実績があるほうが、審査で信用力が高いと認められやすくなります。
何度も利用し、期日を守って売掛金を支払うことができていれば、未回収リスクが低いと判断されるからです。
初回取引の際には高めの割引率で設定されやすいともいえますが、少しずつ取引実績を重ねていくことで割引率を下げることができます。
ファクタリングの乗り換えも検討する
ファクタリング会社にとって、他社でファクタリングの利用実績がある利用者は、安心して契約できる優良顧客という扱いになります。
すでに他社で利用実績があるということは、売掛先から受け取った売掛金を遅れずファクタリング会社に支払っていた証明ともいえます。
ファクタリング会社は、割引率を引き下げてでも獲得したい顧客と考えることでしょう。
もしも今のファクタリング会社との契約で設定されている割引率に不満がある場合、乗り換えも検討することをおすすめします。
まとめ
ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社の審査で決定される割引率によって、手元の現金の増え方が大きく異なります。
できるだけ割引率を下げてファクタリングを活用できることが望ましいため、柔軟な対応ができるファクタリング会社を選ぶことをおすすめします。
