ファクタリングの割引率とは?決定する6つの要素と低く抑えたいときの4つの方法

ファクタリングで資金調達するとき、どのくらいの「割引率」なのか知っておきましょう。

なぜならファクタリング会社が売掛金を買取るときに差し引く手数料は「割引率」により決定され、利用者が調達できる資金額に大きく影響するからです。

そこで、ファクタリングの割引率を決定する要素とは何なのか、できるだけ低く抑えたいときの方法について解説していきます。

ファクタリングの割引率は手数料を決めるパーセンテージ

ファクタリングで資金調達するときにファクタリング会社に支払う手数料は、「割引率」によって大きく変わってきます。

たとえばファクタリングと似た手法に「手形割引」がありますが、手形割引による手形買取金額は以下の計算式で算出します。

手形買取金額=手形額面×割引率×支払いまでの日数

ファクタリングは売却する対象が手形ではなく売掛債権であり、債権回収不能に関する弁済義務もありませんが、割引率の考え方はこれとほぼ同じで以下の計算式で算出されます。

売掛債権買取金額=売掛金の額面金額×割引率-手数料(諸費用)

計算式からもわかるとおり、ファクタリングの割引率で買取金額が左右されることとなります。

割引率の高いファクタリング会社と契約すれば、本来受け取るはずだった売掛金の額面金額を大きく目減りさせることになるため、できるだけ割引率を低く抑えることのできるファクタリング会社を選ぶようにしましょう。

ファクタリングでかかる諸費用の内訳

ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社に支払う諸費用の内訳は以下のとおりです。

  • 基本手数料(サービス料)
  • 登記費用
  • 印紙代(契約書貼付用のため契約金額に応じて200円~20万円)

また、ファクタリング会社によって次のような費用を請求される場合もあります。

  • 審査手数料・事務手数料(5,000円程度)
  • 出張費(遠方の企業へ担当者が出向く場合の交通費など)
  • 登記費用(債権譲渡登記が必要な場合の登録免許税7,500円)
  • 司法書士に対する報酬(債権譲渡登記が必要な場合5~10万円程度)

できるだけ手数料を低く見せるため、手数料以外の費用の金額を増やし別途請求する悪質な業者も存在するため、不明な費用を請求されたときには説明を求めたほうがよいでしょう。

ファクタリングで資金調達するときは以上の「コスト」がかかるため、できるだけ割引率を抑えることが重要といえます。

ファクタリング割引率を決定する審査で重視される6つの要素

ファクタリングの割引率は、ファクタリング会社の「審査」で決まりますが、その割合は売掛債権が未回収になるリスクの高さに左右されます。

確実に回収できると判断できる売掛債権なら、ファクタリング会社も安心して買取ることができるため、割引率を抑えた積極的な取引ができるでしょう。

しかし不安要素の多い売掛債権は貸し倒れリスクが高いため、割引率を上げるか買取拒否という判断することになります。

以上のことから、ファクタリングの割引率を決定する審査では、主に次の6つの「要素」が重視されます。

  1. 売掛先の信用力
  2. 利用者の信用力
  3. 売掛金額の大きさ
  4. 売掛金の支払い期日までの日数
  5. 2つの割引方式による割引率の違い
  6. 2つの契約方式による割引率の違い

それぞれの要素について説明していきます。

売掛先の信用力

ファクタリングの審査で重視されるのは、売掛先の信用力です。

期日に売掛金を支払うことになる売掛先の業績や財務状況が安定していれば、資金繰りが行き詰まる可能性の低い売掛先と判断できるため、割引率も低く下げることができるでしょう。

利用者の信用力

ファクタリングでは利用者の信用力はそれほど重視されませんが、経営状態や評判がよい場合などは割引率が低くなることがあります。

また、過去の利用実績があれば信用力の高さを証明しやすいため、初めてファクタリングを利用するときよりも2回目以降の利用の方が割引率を低く抑えやすいといえます。

ただし過去の利用において、回収した売掛金をすぐに支払わなかったことがある場合などは、割引率を高く設定されるか買取を拒否される可能性が高くなってしまいます。

売掛金額の大きさ

ファクタリング会社の審査で割引率を決めるときは、買取る売掛金の金額の大きさも重視します。

なぜならファクタリング会社が事業を運営する上でかかる「諸経費」は、金額の大きな売掛金と少額の売掛金のどちらの場合でも変わらないからです。

そのため金額の大きな売掛金が売却の対象にすると、ファクタリング会社も諸費用など差し引いても十分に利益を得やすいため、割引料を下げて買取りしてもらいやすくなります。

売掛金の支払い期日までの日数

売掛先から売掛金を回収できる支払い期日までの日数も割引率に影響します。

ファクタリングの審査では売掛先の信用力を確認しますが、売掛金の支払い期日までに倒産しないとは言い切れません。

たとえば支払い期日までの期間が長い売掛金の場合、期日までに売掛先の経営状況などが変化し、倒産したり支払い不能状態に陥ったりするリスクは高くなるといえるでしょう。

以上のことから、支払いまでの日数が短い売掛金であれば、割引率は低く設定されることが期待できます。

2つの割引方式による割引率の違い

ファクタリング会社が売掛債権を買取ると、その譲渡額が利用者に支払われることになりますが、次の2つの支払い方法により割引率が異なります。

  1. 一括割引方式
  2. 個別割引方式

それぞれの支払い方法について説明していきます。

一括割引方式

「一括割引方式」とは、譲渡承諾日または指定日にまとめて売掛債権の買取金額が支払われる方式です。

たとえば1,300万円の売掛債権の買取で300万円が差し引かれるときに、残りの1,000万円が指定日に入金されます。

ファクタリング会社の事務コストも抑えることができるため、利用者もその分、多く手元の資金を増やすことができるといえます。

個別割引方式

「個別割引方式」とは、売掛金の範囲内で、譲渡する金額や譲渡する日を利用者が自由に決めることのできる支払い方式です。

たとえば1,300万円の売掛債権の契約のうち、お金が必要になったタイミングで300万円のみ譲渡するという流れとなり、利用者のニーズに合わせて支払い日など設定できることがメリットといえます。

しかし割引料は契約段階で決まるため、一括割引方式よりも高くなりやすい傾向が見られます。

2つの契約方式による割引率の違い

ファクタリングには次の2つの契約方式があります。

  • ファクタリング会社と利用者だけで契約する「2社間ファクタリング」
  • 2社に加え売掛先とも契約する「3社間ファクタリング」

このうち、「3社間ファクタリング」のほうが割引率を低く抑えることができます。

それぞれの割引率の相場は以下のとおりです。

  • 2社間ファクタリング 10~20%
  • 3社間ファクタリング 1~9%

3社間ファクタリングは売掛先とも契約を結ぶため、売掛先からファクタリング会社に直接売掛金が支払われます。

2社間ファクタリングでは、売掛金の回収を利用者が代行することになるため、ファクタリング会社に支払う前に使い込みや流用されてしまうリスクが高くなってしまいます。

そのため未回収リスクが少ない3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングよりも割引率が低く設定されます。

ファクタリング割引率から受取金額を計算する方法と知っておきたい税金の扱い

ファクタリングで資金調達するとき、実際に売却した売掛金がどのくらいの金額で戻ってくるのか、税金の扱いについても確認しておきましょう。

たとえば、次の条件を提示したファクタリング会社と2社間ファクタリングによる契約を結び、資金を調達するとします。

売掛債権額1,000万円
割引率10%
事務手数料1万円
登記費用9万円
掛目80%(20%留保金)

このケースで現金化とできるのは、売掛債権額1,000万円からその8割分である留保金200万円を差し引いた800万円です。

800万円に割引率10%を掛けた80万円が手数料となり、720万円を現金として受け取ることができます。

そして2社間ファクタリングでは利用者が売掛先から売掛金を回収し、ファクタリング会社に支払えば留保金200万円を返還してもらえます。

このとき、事務手数料1万円と登記費用9万円が差し引かれるため、払い戻されるのは残りの190万円です。

この1,000万円の売掛債権を売却する事例では、資金調達できた金額が720万円と190万円の合計910万円で、前倒しで受け取ったのは720万円という計算になります。

割引料に消費税はかからない

ファクタリングは、売掛債権の売買です。売買に対して消費税は発生しないのか気になる人もいるでしょう。

ファクタリングは売買取引ではありますが、手数料も含めて一切消費税はかかりません

消費税は商品やサービスの消費に対し納める税金ですが、ファクタリングも売掛金の売買によるサービスです。

しかし金銭債権の譲渡は「非課税取引」という扱いのため、売掛債権をファクタリング会社に譲渡するファクタリングも税金がかからない取引となります。

債権譲渡登記が必要な場合、司法書士に対し支払う報酬には消費税が課税されますが、手数料などに消費税が含まれることはありません。

もしもファクタリングで資金調達したとき、別途、消費税を請求されたときには悪質な業者でないか疑うようにし、取引を中断するようにしましょう。

ファクタリングの割引率を抑えたいときの4つの方法

売掛金の現金化により受け取ることのできる金額は、ファクタリング会社が設定する割引率によって大きく変わります。

そのためファクタリングで資金調達するときには、できるだけ割引率を低く抑えたほうがよいといえますが、その「方法」として次の4つが挙げられます。

  1. 複数社から相見積もりを取得・比較する
  2. ファクタリング会社と交渉する
  3. 複数回の利用で実績をつくる
  4. ファクタリングの乗り換えも検討する

それぞれどのような方法か説明していきます。

複数社から相見積もりを取得・比較する

ファクタリングの割引率は、ファクタリング会社独自の審査により決まります。

そのため最初から一社に限定せず、複数のファクタリング会社から「相見積もり」を取得し、比較した上でファクタリング会社選びをしたほうが割引率を低く抑えることができます。

ファクタリング会社と交渉する

複数のファクタリング会社を比較するとき、他社を比較対象としつつ「交渉」することによって、割引率を下げてもらえる場合もあります。

複数回の利用で実績をつくる

ファクタリングは、初回の利用よりも複数回利用している「実績」があるほうが、審査で「信用力」が高いと認められやすくなります。

何度も利用し、期日を守って売掛金を支払うことができていれば、未回収リスクが低いと判断されるからです。

初回取引の際には高めの割引率で設定されやすいともいえますが、少しずつ取引実績を重ねていくことで割引率を下げることができます。

ファクタリングの乗り換えも検討する

ファクタリング会社にとって、他社でファクタリングの利用実績がある利用者は、安心して契約できる「優良顧客」という扱いになります。

すでに他社で利用実績があるということは、売掛先から受け取った売掛金を遅れずファクタリング会社に支払ったことを意味するため、割引率を引き下げてでも獲得したい顧客だからです。

もしも今のファクタリング会社との契約で設定されている割引率に不満があるのなら、ファクタリング会社の「乗り換え」も検討するとよいでしょう。

まとめ

ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社の審査で決定される割引率によって、手元の現金の増え方が大きく異なります。

できるだけ割引率を下げてファクタリングを活用できることが望ましいため、柔軟な対応ができるファクタリング会社を選ぶことをおススメします。