経営戦略とは?定義や種類・手順や分析方法をわかりやすく解説

経営戦略とは、時代の不確実性が増して激化する市場競争の中、持続的な成長を目指すためのシナリオです。

ビジョンや経営資源を踏まえた上で、目標を達成するためにどうすればよいのか、適切な経営戦略を練り上げることが求められています。

そこで、経営戦略とは具体的に何をするのか、定義や種類、手順や分析方法についてわかりやすく解説していきます。

経営戦略とは

データ分析グラフ

「経営戦略」とは、会社経営において、今の経営環境の下で目標を達成するための打ち手のことです。

最新技術やデジタル変革、AI進展などの影響によりビジネス環境は日々変化を続けていますが、目標を達成するためのシナリオが重要といえます。

会社経営において経営戦略の策定は最重要課題の一つと考えられます。

経営戦略について、以下の4つを説明します。

  1. 定義
  2. 目的
  3. 必要性
  4. 戦術との違い

アフターコロナの経営戦略とは?消費者の価値観と中小企業の課題を解説

定義

「経営戦略」とは、競争環境の中、経営の目的や目標を達成する方針や計画のことです。

規模の大きな会社でも、有限である経営資源のヒト・モノ・カネは、目標や目的に応じて選択・分配することが必要といえます。

目的

経営戦略の「目的」は、経営上の課題を解決し、存続するために必要な戦略を策定することです。

企業が目指すビジョンや目的を達成するために必要不可欠といえますが、経営戦略の目的として以下のことが挙げられます。

  • 差別化を通じた競争優位性の確立
  • 市場での独自位置の確保
  • 経営資源の有効活用
  • リスクの軽減

必要性

経営戦略は、企業が経営目標を達成する上で必要な要素といえます。

日々、経営環境が変化することへ対応できない企業は、経営においてジリ貧状態となります。

この状況を防ぐために経営戦略が必要とされており、将来の経営環境の変化を予測した上で存続・成長できる道筋を描くことが必要といえます。

戦術との違い

経営戦略は、企業の大局的視野と長期目線で、経営目的を達成するための方針全般です。

企業理念・経営理念・行動指針など、企業を運営する上で必要な基盤といえるでしょう。

一方の「経営戦術」は、経営戦略を成功させる上で必要となる具体的な方法や手段です。

経営戦略の一環である個別事業レベルの計画に、経営資源であるヒト・モノ・カネをどのように配分・活用するのか、どの地点で成功とするのかなどを明確化していくことが経営戦術といえます。

経営戦略の手順

タブレットを持つビジネスマン

経営戦略を策定するときの手順は以下の4つです。

  1. 目標の明確化
  2. 現状の分析
  3. 戦略の抽出
  4. 施策の実行

それぞれ説明します。

目標の明確化

経営戦略を策定するときは、事業の方向性や目的の共有とともに、目標とする数値などを明確化しましょう。

一般的に、以下の4つを経営目標として明確にすることが多いといえます。

  • 売上予算
  • 社会貢献目標
  • 人事目標
  • 収益目標

経営目標の設定には、後述するフレームワークの1つ「SMARTの法則」が役立ちます。

現状の分析

経営戦略を策定するときは、外部環境と内部環境など現状の分析が必要です。

現状分析は、あくまでも組織や部門、個人の現状の把握により行いますが、分析を踏まえて新たな課題や解決策を立案していきます。

項目が増えすぎると負担が大きくなるため、後述するフレームワークの中で、必要とされる方法をうまく組み合わせて分析しましょう。

戦略の抽出

経営戦略を策定するときは、現状分析の結果を踏まえた上での優位性を発揮できる戦略を抽出します。

分析完了後に、市場や競争環境における事業成功への要因について、戦略の精度を高めるための複数パターンを出していきましょう。

複数パターンを抽出した後は、方向性・実現可能性・期待できる成果などを比較して最もよい戦略を抽出します。

施策の実行

経営戦略を策定するときは、抽出して施策として立てた戦略を実行します。

実行する施策数が多い場合、重要度と緊急度で優先順位をつけておけば、始めるべきことが確認しやすいといえます。

【無料ダウンロード】
9つの資金調達方法を紹介

9つの資金調達方法のメリットデメリットから申請方法、さらに審査落ちした時の対処法までをまとめた経営者必見のガイドブックです。

いますぐダウンロード

経営戦略のレベル

段階の表示

経営戦略は、以下の3つのレベルに分けて策定することが必要です。

  1. 全社戦略/企業戦略
  2. 事業戦略
  3. 機能戦略

それぞれのレベルと策定する内容を説明します。

全社戦略/企業戦略

「全社戦略」とは「企業戦略」ともいい、どの事業領域で何を競争力の源泉として戦うのか、組み合わせる事業の構築や経営資源の配分などを決定する方針です。

主に全社戦略で決定することは以下の内容といえます。

  • 注力する事業
  • 目指すゴール
  • 経営資源の配分
  • 戦う事業領域
  • 競争力の源泉
  • 事業の組み合わせ

事業戦略

「事業戦略」とは、個別の事業分野で競争に勝ち抜くための方針です。

特定の事業部門や事業領域で、競争上の優位性を確保し、長期的目標を達成するための計画や方針といえます。

企業の各事業がビジネスで成功するため、目標を設定・達成するための方法を策定することです。

事業戦略には、以下の要素が含まれます。

  • 方向性の検討
  • 市場や顧客の戦略
  • 収益モデル考案
  • 経営資源の分配
  • マーケティング戦略の立案

機能戦略

「機能戦略」とは、営業戦略・財務戦略・人事戦略など、事業における戦略を実現させる機能ごとの視点から見た方針といえます。

事業戦略の達成に向けて社内組織の機能を最適化するために立案しますが、ポイントとしては以下のとおりです。

  • 事業戦略で設定された目標達成のために存在する
  • 事業戦略よりもさらに細かな活動計画である
  • 部署ごとの戦略が企業戦略・事業戦略からかけ離れないように全体の戦略や方向性に基づいた設計にする

また、業界や部門ごとの機能戦略には以下の戦略が挙げられます。

メーカー 研究開発・購買・生産・営業・物流等の機能に関する戦略
流通業 商品企画・仕入・営業・物流等の機能に関する戦略
生産開発部 生産戦略
マーケティング部 マーケティング戦略
営業部 営業戦略
人事部 人事戦略

経営戦略の種類

 

経営戦略の種類は、大きくわけると次の5つです。

  1. 差別化戦略
  2. 集中戦略
  3. 価格戦略
  4. 多角化戦略
  5. グローバル化戦略

それぞれの経営戦略について説明します。

差別化戦略

「差別化戦略」とは、他社と比べたときの商品またはやサービスの独自性や価値を、市場へ投入するための戦略です。

自社製品などを他社と差別化し、競争の優位性を築く戦略のことであり、価格競争脱却・利益率向上・新規参入抑制などのメリットがあるといえます。

長期的な顧客獲得につなげるために、消費者ニーズと競合他社のリサーチ後、セールスポイントを考えていきます。

付加価値とは?計算・分析方法や改善する手順・ポイントを徹底解説

集中戦略

「集中戦略」とは、勝算の高い分野へ資源を集中させる戦略です。

特定の顧客層・地域・製品・流通チャネルなどのターゲットに対し、経営資源を集中させる手法といえます。

資本の限られる中小企業などには重要な戦略といえるでしょう。

価格戦略

「価格戦略」とは「コストリーダーシップ戦略」ともいい、他社よりも低価格で商品やサービスを販売する戦略です。

プライシング(価格設定)を軸としたマーケティング戦略であり、中小企業よりも大手企業に向いているといえます。

行き過ぎた価格戦略は資金ショートのリスクを高めるため注意しましょう。

多角化戦略

「多角化戦略」とは、既存事業をベースとして複数事業を展開するための戦略です。

自社の経営資源を活用・応用し、新たな分野へと踏み出す戦略を指しています。

新たな製品・市場に展開し、成長を実現するための1つの戦略です。

グローバル化戦略

「グローバル化戦略」とは、世界レベルに既存事業を成長させるための戦略です。

国内市場にとどまることなく、国際市場へと進出し、競争優位性を高める経営戦略といえます。

グローバル市場のチャンスを活用し、収益・利益率・マーケットシェアを高めていきます。

経営戦略に役立つ分析方法

swot分析

経営戦略を策定するときに、活用できる分析方法として以下の8つが挙げられます。

  1. SMARTの法則
  2. 3C分析
  3. SWOT分析
  4. PEST分析
  5. PPM分析
  6. VRIO分析
  7. 5force分析
  8. STP分析

それぞれの分析方法を紹介します。

売上が低迷する原因は?原因分析のフレームワークと対策を解説

SMARTの法則

「SMARTの法則」とは、設定された目標の有効性を確認・分析する目安となる法則です。

次の5つの要素の頭文字である「SMART」の法則に従って、目標を検討し効果的で現実性の高いゴールを設定します。

  • Specific(具体性)
  • Measurable(計量性)
  • Achievable(達成可能性)
  • Related(関連性)
  • Time-bound(期限)

3C分析

「3C 分析」とは、自社を取り巻くマーケティング環境における成功要因の発掘や、強み・弱み・競合の動向を分析するフレームワークです。

以下の3つの「C」を分析し、企業を取り巻く環境を明確にした上で、今後の経営戦略を導き出します。

  • 顧客(Customer)
  • 競合(Competitor)
  • 自社(Company)

顧客ニーズ・競合の動き・自社の強みと弱みを分析し、最適な意思決定へつなげます。

SWOT分析

「SWOT分析」とは、現状把握のために外部環境と内部環境を、以下の4つの要素で分析するフレームワークです。

  • 強み(Strength)(強み)
  • 弱み(Weakness)(弱み)
  • 機会(Opportunity)
  • 脅威(Threat)(脅威)

自社の強みを生かして弱みは改善し、機会の追求と脅威を回避する施策を立てることが必要です。

販売戦略や人事戦略など、幅広いシーンで活用できるフレームワークといえるでしょう。

PEST分析

「PEST分析」とは、自社を取り巻く外部環境が与える影響を把握・予測するためのフレームワークです。

以下の4つの外部環境を取り出して、分析の対象とします。

  • 政治(Politics)
  • 経済(Economy)
  • 社会(Society)
  • 技術(Technology)

分析結果から、参入する市場への入り方や、起こりそうな事態などを大まかに予測することができます。

主に事業戦略(経営戦略・海外戦略・マーケティング戦略など含む)を策定するときに用いるケースが多いといえるでしょう。

PPM分析

「PPM分析」とは、市場成長率と市場占有率から事業や自社商品を4つのポジションへ分けて分析する手法です。

市場の成熟度と競争優位性の側面から事業の位置づけを明確化し、リソースの振り分けを検討していきます。

PPMとは、「Product Portfolio Management」の頭文字の略称で、経営資源の配分を考えるときの分析手法です。

次の4つのカテゴリーに事業や製品を配置し、市場での立ち位置を確認します。

カテゴリー 市場成長率 市場シェア
花形 高い 高い
金の成る木 低い 高い
問題児 高い 低い
負け犬 低い 低い

立ち位置の確認ができれば、投資や撤退の判断、投資配分などの検討がしやすくなり、経営資源を無駄なく活用できます。

VRIO分析

「VRIO分析」とは、優位性や経済資源を把握するときのフレームワークです。

次の4つの視点から、競合の優位性や経済資源を把握できます。

  • Value(経済的価値)
  • Rarity(希少性)
  • Inimitability(模倣困難性)
  • Organization(組織)

それぞれの要素の分析で、自社の強みや弱みを把握した上での、競合に対する優位性を把握できます。

5force分析

「5force分析」とは「ファイブフォース分析」といい、業界における脅威を明確にして収益性を向上させるフレームワークです。

収益性に影響する以下の5つの力を分析することで、自社を取り巻く業界を客観的に把握でき、状況に合った事業展開の判断ができます。

  • 業界における競合の脅威
  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威
  • 買主の交渉力
  • 売主の交渉力

力関係が弱ければ業界の収益性は高く、強ければ収益性は低いと判断できます。

また、課題発見にもつながるため、今後起こりうる脅威へ先手を打ち、課題を改善することも可能です。

STP分析

「STP分析」とは、以下の3つの頭文字を略した名称の分析方法であり、市場における自社製品等の立ち位置を明確化するためのフレームワークです。

  • Segmentation(セグメンテーション)
  • Targeting(ターゲティング)
  • Positioning(ポジショニング)

新規事業を展開する上で、自社や製品市場における立ち位置を明確化することにより、マーケティング戦略を策定・実行しやすくなるといえます。

顧客のニーズや特性などの切り口で市場を細分化し、いろいろな角度から市場を把握していきましょう。

それにより、自社の戦える市場や競合、さらに差別化できるポジショニングを見つけることができます。

まとめ

経営戦略は、企業を取り巻く経営環境が常に変化し続けているため、方向性を明確にするために策定します。

将来の予測が困難な時代にも対処しやすくなるため、分析に役立つフレームワークを活用しながら策定し、事業を展開していきましょう。