新型コロナウイルスの影響で税金が払えない場合の猶予制度について解説

新型コロナウイルス感染症が流行した影響により、手元にお金がなく税金を支払うことができないため、猶予制度など利用できれば…と考える経営者は少なくありません。

確かに手元にお金がなければ税金を納めることはできないため、新型コロナの影響で税金を納めることができないのであれば、窓口に相談して猶予制度など申請しましょう。

そこで、新型コロナウイルス感染症の流行により、税金を支払うことができない場合の猶予制度について解説していきます。

税金滞納のペナルティ

税金を納めることは国民の義務とされているため、支払いができず滞納すればそれ相応のペナルティの対象となります。

全部で50という数の税金のうち、国が徴収する「国税」と地方公共団体が徴収する「地方税」には、次のような種類があります。

国税 所得税・復興特別所得税・贈与税・相続税・消費税・酒税など
地方税 固定資産税・都市計画税・不動産取得税・住民税・法人事業税・個人事業税など

いずれの税金も、支払いせずに放置し、法定納期限から5年で時効により消滅します。

しかしこれはあくまでも理論上の扱いであり、実務上は税務署や地方自治体が時効成立前に督促状を送ったり財産を差し押さえたりという手続を行うため、時効成立には至りません。

税務署や地方自治体が滞納されたままの税金を放置し、消滅時効期間の5年が過ぎることは現実的にありえないといえるため、督促や請求を無視したまま未払い状態を続けることは得策とはいえないでしょう。

そのため税金を納めることができないのであれば、地方自治体や税務署にまずは相談することが必要です。

何もアクションを起こさず連絡を無視し、放置していれば以下のようなペナルティの対象となります。

  1. 延滞金の発生
  2. 督促状の発生
  3. 滞納処分の執行

それぞれどのようなペナルティか説明していきます。

延滞金の発生

税金滞納のペナルティの1つ目は、「延滞金」が発生することです。

どの税金も、いつまでに納めなければならないか納期限が定められています。

この納期限内に税金の支払いがなければ、本来の税金だけでなく罰金として「延滞金」が加算されます。

延滞金(延滞税)は以下の計算式で算出できます。

延滞金=滞納税額×延滞日数×延滞金率÷365(日)

 

延滞金に適用される税率は、国税と地方税のうち滞納している税金の種類や滞納期間により、次のとおり異なります。

国税 納期限翌日から2か月までの税率年7.3% ・ 2か月経過後の税率14.6%
地方税 納期限翌日から1か月までの税率年7.3% ・ 1か月経過後の税率年14.6%

なお、延滞税率について詳しく知りたい場合には、国税庁のホームページ「延滞税について」で確認できます。

督促状の発生

税金滞納のペナルティ2つ目は、「督促状」が送付されることです。

法定納期限を過ぎても税金の支払いがなかった場合、国税と地方税それぞれ次のタイミングで督促状発送となります。

国税 納期限から50日以内
地方税 納期限から20日以内

督促状には、税目・期月・納期限・税額などが記載されており、支払いを請求されても納めることが難しいという場合の相談先なども記されています。

そのため税金納付が厳しい場合には、どれだけ遅くても督促状が届いた段階で記載の相談先に連絡を入れることが必要であり、無視したり放置したりすれば差し押さえを予告する催告書が届くことになります。

法定納期限内に税金を納めることができない段階で、税務署や地方自治体に連絡を入れることが重要であるものの、遅くても督促状が届いたときには速やかに対応することが必要といえます。

滞納処分の執行

税金滞納のペナルティの3つ目は、「滞納処分」が執行されることです。

納期限を過ぎたまま税金を納めなかった場合の滞納処分として、次の2つが行われます。

  1. 財産調査
  2. 財産差し押さえ

それぞれどのような処分か説明します。

財産調査

税金の滞納処分として行われるのが滞納者の「財産調査」です。

滞納中の税金を強制的に徴収するために、滞納者の身辺や所有する財産について調査が実施されます。

身辺調査の対象は、家族構成(戸籍調査)・勤務先・取引先で、財産については給与・預貯金・不動産・自動車・生命保険など金銭的価値のある財産の保有状況などです。

給与が差し押さえ対象になると、サラリーマンであれば勤務先に債権差押通知書が届くことになるため、会社に知られたくない場合には差し押さえ前の対処が重要といえるでしょう。

財産差し押さえ

税金の滞納処分として行われるのが、財産の「差し押さえ」です。

滞納者の身辺や所有する財産の調査を実施した後は、実際に給与など差し押さえて税金を回収します。

不動産などは差し押さえ後、競売で換価され納税へに充てられます。

財産差し押さえによる債権の回収は、本来であれば支払督促や訴訟による勝訴など、確定判決を得ることが必要とされています。

しかし税金については納税が国民の義務とされているため、この確定判決なしでいきなり実行されてしまうため、支払いを後回しにすることは危険です。

督促状発行日から10日以内に支払いがない場合、差し押さえによる強制徴収が実施されるリスクが高くなるため、支払いできない場合には税務署や地方自治体にまず連絡を入れるようにしてください。

新型コロナの特例猶予とは

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、税金を納めることができない場合に対し、納税を猶予してもらえる新型コロナ用の特例が設けられていました。

これは令和2年4月30日の新型コロナ税特法の成立・施行で創設された「納税の猶予の特例(特例猶予)」のことですが、申請期限の令和3年2月1日をもって終了しています。

ただし令和3年2月1日までの納期限到来する国税について、納期限までに申請書を提出できなかったことにやむを得ない理由があると認められる場合には、納期限後でも申請できるとされています。

しかしすでに終了している制度であるため、今発生している税金を納めることが難しいという場合には、従来までの税金の猶予制度を活用しましょう。

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税金の猶予制度とは

税金を納めることができない状況にあるのなら、税務署や市町村に猶予制度を申請できないか相談しましょう。

督促状が届いているのにも関わらず、何も連絡しないまま無視した状態を続ければ、いずれ財産を差し押さえられてしまいます。

できる限り早急に税務署や市区町村に相談することが必要ですが、支払う意思はあるものの厳しい状況にあることを示すため、現在の財務状況など具体的に説明できる書類など持参することも必要です。

その上で、次の2つの猶予制度について相談するようにしてください。

  1. 換価の猶予
  2. 納税の猶予

それぞれの猶予制度について説明します。

換価の猶予

「換価の猶予」とは、次に該当する場合であれば納期限から6か月以内に申請することにより、財産の差し押さえによる換価を待ってもらえる制度です。

  • 一度に納税すると事業継続または生活維持が困難になるリスクがあると認められる場合
  • 納税する誠実な意思がある場合
  • 猶予を受けようとする国税以外で税金を滞納していない場合

担保提供が明らかに可能である場合を除き担保を差し入れる必要もなく、認められれば原則1年間は支払いが猶予され、財産の差し押さえや売却も待ってもらえます。

さらに状況に応じて1年間延長できる場合もあり、令和5年中であれば猶予期間中の延滞金は通常年8.7%から軽減後の年0.9%へと軽減されます。

納税の猶予

「納税の猶予」は、一度に税金を納めることができない金額に限って、次のような個別の事情と金額について納税を猶予してもらえる制度です。

  • 新型コロナウイルス感染症の罹患者発生の施設で消毒作業が行われたことにより、廃棄した・備品・棚卸資産(食材など)の再調達価額等相当額
  • 納税者本人または生計が同じ家族が病気にかかった場合の医療費や治療などに付随する費用相当額
  • やむを得ず休廃業した場合に発生した損失や費用の相当額
  • 利益減少により受けた著しい損失額に相当する額(イベントの中止・延期、観光客減少など)

納税の猶予が認められると、換価の猶予と同じく原則1年間(状況に応じて更に1年間)納税を延長でき、猶予期間中の延滞金は8.7%から0.9%へ軽減されます。

猶予制度を利用する場合にも、一括ではなく分割での支払いなどもあわせて相談しましょう。

少しずつでも税金を支払うことで、納税の意思を証明することにもつながり、遅れず支払いを続けることにより差し押さえなど待ってもらいやすくなります。

猶予申請の方法

猶予制度を申請する場合には、国税庁のホームページ「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」内の「猶予の申請方法」を参考に、「猶予申請書」をダウンロードして猶予制度の申請期限までに所轄の税務署に申請しましょう。

申請書提出については、郵送やe-Taxによる電子申請も利用できます。

なお、換価の猶予については、原則、納めなければならない国税の納期限から6か月以内に申請することが必要です。

そのため納期限内に納めることができない段階で速やかに所轄の税務署(徴収担当)へ問い合わせし、猶予制度について相談するようにしましょう。

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、税金を納めることが厳しい状況である事業者は少なくありませんが、請求や督促状を無視していても問題は解決できません。

いずれは財産を差し押さえられることになり、仮に事業用資産がその対象になれば、事業継続できなくなるリスクが高まります。

そのため税務署や自治体に猶予制度など申請できないか速やかに相談することが必要です。

また、手元の資金が枯渇すれば会社は倒産してしまうため、売掛金を現金化するファクタリングなどによる資金調達もおすすめです。

資金を調達できれば税金の納税資金として利用できますが、銀行など金融機関からの融資は税金を滞納していれば審査に通りません。

ファクタリングであれば税金滞納中でも申し込みは可能であるため、納税資金の準備で困ったときにはファクタリングの活用も検討してみてください。