付加価値とは?計算・分析方法や改善する手順・ポイントを徹底解説

付加価値とは、販売する商品やサービスに価値を付することであり、競合他社と差別化を図る上で欠かせないことです。

数多くの商品やサービスが販売・提供される中、付加価値が高ければ顧客に選ばれやすくなります。

付加価値を向上させるためには、計算方法や分析方法、改善させるための手順など知っておくことが必要です。

そこで、ビジネスにおける付加価値について、計算・分析方法や改善する手順・ポイントをわかりやすく解説していきます。

付加価値とは

「付加価値」とは、商品やサービスに対して特別な価値を付けることです。

ビジネスにおいて付加価値を付与する理由は、競合他社との差別化を図り、顧客に選ばれることが必要だからといえます。

他社にはないデザインや仕様、コストパフォーマンスで付加価値があると認められれば、販売戦略における売上や利益向上にもつながるでしょう。

財務分析で生産性を測るときは、以下のとおり数値化された付加価値を利用します。

付加価値=売上高-外部購入価値

計算式からわかるとおり、付加価値は販売商品の利益を示す「粗利」とイメージするとよいでしょう。

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付加価値の計算方法

付加価値の計算方法は、主に次の2つです。

控除法 中小企業庁方式と呼ばれる方法で、売上から原材料費や外注費などを差し引いて計算する方法
加算法 日銀方式とも呼ばれる方法で、人件費や減価償却費などを足して計算する方法

それぞれの計算方法について説明します。

控除法

付加価値の計算方法のうち「控除法」とは、売上高から経費を差し引いて計算する方法です。

控除法による付加価値は、以下の計算式で算出できます。

付加価値=売上高-(原材料費+外注加工費+水道光熱費+消耗品費+当期商品仕入高)±棚卸資産に含まれる前給付原価の修正

売上高から差し引くのは他の企業の生み出した価値です。

外部から購入した価値は、自社の前の供給会社に給付したコストであり、前給付原価といいます。

計算式にあるとおり、前給付原価は売上原価に含まれる原材料費・外注加工費・水道光熱費・消耗品費・当期商品仕入高などが該当し、棚卸資産があればそれぞれの費用を期首・期末に増減した分調整することが必要となります。

加算法

付加価値の計算方法のうち「加算法」とは、付加価値を構成する費用や利益などの項目を足す方法で、以下の式で計算します。

純付加価値(減価償却費を含めず計算した付加価値)=労務費・人件費+賃借料+租税公課(印紙代など)+特許権使用料+純金利費用(支払利息割引料-受取利息配当金)+利払後事業利益
※利払後事業利益=営業利益-純金利費用=法人税等+配当金+役員賞与金+留保事業利益

粗付加価値(減価償却費を含めて計算した付加価値)=純付加価値+減価償却費

上記の計算式の以下の項目について、それぞれ説明します。

  1. 人件費
  2. 賃借料
  3. 租税公課
  4. 金融費用
  5. 減価償却費

人件費

「人件費」とは、労働に対して支払われる給与や各種手当のことです。

雇用した従業員に対する費用全般であり、以下の費用を含みます。

  • 生産するときの労務費
  • 生産管理の役員給与
  • 販売費
  • 福利厚生費
  • 退職金
  • 職給付引当金
  • 賞与引当金繰入額

賃借料

「賃借料」とは、事業運営で必要な土地・建物・機械・車両などを外部から借りるときの費用です。

たとえば自動車のリースやコピー機のレンタルなどをイメージするとわかりやすいでしょう。

また、会社名義で借りたサテライトオフィスなどの契約費用なども含まれます。

租税公課

「租税公課」とは、国に納める税金と、公共団体に支払う会費などです。

以下の費用が租税公課に該当します。

  • 税金(事業税・固定資産税・自動車税・不動産取得税・登録免許税・印紙税など)
  • 会費・組合費・賦課金など(商工会議所・商工会・協同組合・同業者組合・商店会など)

金融費用

「金融費用」とは、支払利息など正常営業循環外の活動により発生する費用です。

運営やサービス開発でかかった資金を調達したとき発生する費用であり、以下の費用が該当します。

  • 支払利息
  • 社債利息
  • 割引料
  • 社債発行差金償却
  • 社債発行費償却

減価償却費

「減価償却費」とは、固定資産を耐用年数に合わせて分割し、期ごとに費用として計上するとき用いる勘定科目です。

付加価値計算における減価償却費は、製造原価・販売費および一般管理費が該当しますが、特別勘定に計上されたものは含みません。

付加価値の分析方法

付加価値を計算した後は、割り出した数値により現状を把握し、今後どのような改善が必要か分析しましょう。

主に付加価値の数値を使った分析方法は次の3つです。

  1. 付加価値率
  2. 付加価値労働生産性
  3. 労働分配率

それぞれ解説していきます。

付加価値率

「付加価値率」とは、売上高の中で占める付加価値の割合で、以下の計算式で算出します。

付加価値率(%)=付加価値÷売上高×100

付加価値率が高い場合、顧客に提供する価値が高いと判断できるため、十分な付加価値が付与されているといえます。

付加価値労働生産性

「付加価値労働生産性」とは、従業員一人あたりの付加価値であり、以下の計算式で算出します。

付加価値生産性=付加価値額÷従業員数

数値が大きければ生産性が高いことを示し、小さければ生産性の低い状態と判断できます。

労働分配率

「労働分配率」とは、分配率の中で従業員に付加価値がどの程度還元されたか示す数値で、以下の計算式で算出します。

労働分配率=人件費÷付加価値額×100

分配率は、付加価値が人件費や金融費用、賃借料などの項目ごとでどのくらいの割合かを示します。

労働分配率が高ければ、人件費の負担が大きくなっていると考えられるものの、十分な給与を支払っているため従業員が離職しにくい状況であるといえます。

しかし利益に見合わない給与の支払いで、企業成長が阻害される恐れがあるため見直しが必要でしょう。

反対に労働分配率が低ければ、労働と賃金が見合ってないため、離職率が上がるリスクがあります。

ただし従業員の生産性が高い状態であるため、高すぎず低すぎない労働分配率をキープすることが求められるでしょう。

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付加価値を改善する手順

付加価値が高ければ、自社商品やサービスに他社にはない価値を付与できているといえます。

競合他社との差別化を図り、顧客に選ばれるためには付加価値を改善させることが欠かせないといえますが、手順としては以下の4つです。

  1. 競合他社との比較
  2. 課題の検討
  3. 恩恵の検討
  4. 解決・見直す部分の検討

それぞれの手順について説明します。

競合他社との比較

まずは労働分配率が適正な割合か、同業他社と比較してみましょう。

労働分配率は、業界ごとで特色が出ます。

製造業やIT業などはオートメーション化が進んでいるため、人件費を比較的抑えやすい業種であり、労働分配率も低くなりやすいといえます。

しかし飲食業や宿泊業は、接客メインの業種であるため、経費のうち人件費の占める割合が大きく労働分配率が高くなりやすい傾向が見られます。

課題の検討

現在、顧客が求めていること、解決したいと考えていることは何なのか考察しましょう。

たとえば宿泊業で30歳の独身女性が訪れたと想定した場合、求めていることや解決したいことは以下と考察できます。

  • 単独による宿泊でさみしさを感じている
  • 複数で宿泊するときよりも費用が割高に感じる
  • 宿泊において困ったときの相談相手がいない

次にまた足を運びたいと感じてもらうには、顧客ニーズに対応できることが必須となるため、課題解決に向けた工夫や取り組みを検討してみましょう。

恩恵の検討

顧客にサービスなど提供する場合、結論としてどの状態が最も嬉しいと感じてもらえるのか、恩恵に関する検討も必要です。

上記の30歳独身女性が宿泊した例の場合、以下の状態になれば安心や満足度につながると考えられるでしょう。

  • 単独による宿泊でもひとりの時間と誰かと楽しむことの時間がある
  • 単独による宿泊でも宿泊代金が割高ではない
  • 単独による宿泊でも頼りになる年齢の近い人がいる

解決・見直す部分の検討

顧客の解決させたい問題などに関する解決策が、自社の提供する商品やサービスと合致する確認しましょう。

たとえば宿泊者1人に対しコンシェルジュを付けるサービスを提供するとします。

さらに宿泊者の年齢に近いスタッフがコンシェルジュとして配置されることや、観光地のリクエストに案内役として同伴するサービスなどが提供されれば、単独での旅の不安が払しょくされるでしょう。

しかしコンシェルジュを雇えば人件費も発生するため、料金に上乗せすることになります。

仮に割高と感じても利用してもらえる付加価値へと育てるために、顧客へのヒアリングを行い、不満を解消させるサービスの提供などさらに検討していくことになるでしょう。

業種別の付加価値を高めるポイント

付加価値を高める方法はどの業界や業種でも特に大きな違いはありません。

ただし業種によって、押さえておきたいポイントは異なるといえます。

そこで、以下の業種ごとの付加価値を高める上で押さえておきたいポイントを紹介していきます。

  1. 製造業
  2. 農業
  3. 宿泊業
  4. 不動産業
  5. 飲食業

製造業

製造業の場合、付加価値自体を高めることを意識するのではなく、労働生産性を向上させていきましょう。

現場の業務効率化に取り組むことで、従業員1人あたりの生み出す付加価値を最大限に引き出すことができます。

また、外注費が数年変化のない状態で契約を結んでいるのなら、複数社から相見積もりを取得し、金額によっては他社への乗り換えなども検討することが必要です。

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農業

農業の場合、たとえば自社生産のネギをカットし、ラーメン店へ販売するなどの手法が考えられます。

単にネギをカットして販売するのではなく、たとえば以下のとおり徹底した品質管理を実施することで、他社との差別化を図ることができるでしょう。

  • 加工において低温で管理する
  • オゾン水で殺菌・洗浄する
  • クール便で直送する

新鮮な状態でカット済の手間のかからないネギを届けることができるなど、他社にはないサービスと商品の販売こそが付加価値といえます。

宿泊業

宿泊業の場合、訪問客にまた足を運び泊まりたいと感じてもらえることが必要です。

たとえば温泉地で旅館などが集中している激戦区においても、特別ルームやアクティビティなど、他の宿泊先では体験できない接客力を高めることが必要といえます。

設備などを充実させるだけでなく、接客サービスは非常に重要な要素であるため、付加価値の分配において人件費に重点が置いた検討が必要です。

不動産業

不動産業のうち賃貸経営であれば、賃貸料を引き上げるだけの付加価値を付与できる取り組みを検討しましょう。

たとえば有名な家具や雑貨で内装を統一させたリデザイン物件や、ペット・バイク・楽器などに特化した物件など、ターゲットを絞って付加価値をつけた物件など検討することです。

他にも内装をカスタマイズ可能とすれば、販売価格を高めに設定できるだけでなく、売上高から他社の価値を差し引いた付加価値を向上させることができます。

飲食業

飲食店の場合、周辺に同業が複数存在するケースもめずらしくないため、その店舗でなければならない付加価値を創出しましょう。

めずらしい食材や特別な素材、本場で鍛えた熟練の技術など、独自の魅力を伝えることもできます。

また、空間づくりなどの演出により、差別化を図ることも可能です。

まとめ

付加価値は、ビジネスにおいては競合他社にはない自社のみの価値であり、顧客から選ばれるためには欠かせないことです。

他にはない価値を創出することで、顧客数を増やすことができ、利益を生むことにもつながるでしょう。

企業を成長へ導く上で、販売する商品やサービスに付加価値を付与することは必要なことです。

企業体質の改善のためにも、どうすれば付加価値を高めることができるのか、改めて検証してみることをおすすめします。