売掛債権の回収方法とは?流れや入金遅れへの対応・注意点を徹底解説

売掛債権を回収できなければ、どれほど売上が上がっても手元のお金は増えません。

そのため売掛債権が発生して取引先から入金されるまで、適切に管理を行うことが必要です。

期日になっても入金がない場合には、売掛債権を回収できなくなるリスクもあることを踏まえ、取引先に請求しましょう。

経営難に陥る前の売掛債権の回収方法について、流れや入金遅れへの対応方法、注意点を徹底解説します。

売掛債権とは

請求書に印鑑を押す手

「売掛債権」とは、商品やサービスを販売したときの代金を、後日請求する権利です。

将来的に見れば手元の現金が増える債権であるため、会計上は資産とみなされます。

売掛債権には「売掛金」「受取手形」「電子記録債権」の3つの種類があり、請求書を発行して後日代金を指定口座へ振り込んでもらう取引では売掛金が発生します。

売掛債権の回収前に相手方が倒産すれば、回収不能となり連鎖倒産するリスクが高まります。

近年では多くの中小企業が倒産しているため、その実態から売掛債権が回収できなくなるリスクに注意しておきましょう。

売掛債権の回収とは

売掛債権の回収とは、双方の契約において取り決めた期日までに売上代金を支払ってもらうことです。

取引先の経営状態が悪化し、支払いに充てるお金がなく入金されなかったときには、相手との交渉や催促など行動を起こさなければなりません。

売掛債権は以下の消滅時効期間を過ぎ、取引先が時効の援用をすることで、時効が完成し請求権を消滅させます。

  • 2020年3月以前に発生した売掛債権は支払期限から2年
  • 2020年4月以降に発生した売掛債権は、権利を行使できることを知ったときから5年、または権利を行使できるときから10年

売掛債権が発生した時期によって、消滅時効期間は異なるため、必ず確認しておきましょう。

売掛債権を回収する流れ

地方裁判所

売掛債権が取り決めた期日までに支払われなかったときには、以下の回収の流れで手続を行います。

  1. 取引先へ請求書を送る
  2. 取引先に催促する
  3. 内容証明郵便で催告書を送る
  4. 支払督促の手続をする
  5. 民事調停を申立て
  6. 訴訟で確定判決を得る
  7. 仮差押えの手続をする
  8. 強制執行の手続をする

それぞれの流れを説明します。

1.取引先へ請求書を送る

売掛債権を回収するために、取引先に請求書を送ることが必要です。

すでに請求書を送っているのにもかかわらず、期日を過ぎても入金がないのであれば、取引先に連絡して確認しましょう。

2.取引先に催促する

売掛債権を回収するために、取引先に支払いを促す催促をしましょう。

単なる支払い忘れである場合には早急に入金してもらうことになり、手元に請求書が届いていない場合には再送付します。

請求書を送り忘れていないか確認した上で、取引先に連絡をしてください

取引先の手元のキャッシュが足らず、支払いが滞っているときは、分けて払ってもらうなど支払い計画を検討します。

3.内容証明郵便で催告書を送る

売掛債権を回収するために、請求書を送っても入金がないのであれば、内容証明郵便で催告書を送りましょう。

内容証明郵便とは、いつ・誰が誰に対し・どのような文書を送ったのか郵便局が証明する郵便サービスです。

法的な拘束力はないものの、裁判になったときは相手方に請求したことを示す有力な証拠として使えます。

4.支払督促の手続をする

売掛債権を回収するために、請求書や催告書を送っても入金されないときは、簡易裁判所で支払督促の手続をしましょう。

支払督促は、金銭の未払いに関する問題を解決できる法的手続であり、簡易裁判所から支払いを命じてもらえます。

また、仮執行の宣言が付された支払督促や、確定判決と同一の効力を有するとされる支払督促があれば、強制執行の申立てをすることができます。

5.民事調停を申立て

売掛債権を回収するために、民事調停を申立てましょう。

調停委員会のもとで双方が話し合いをして合意をすることにより、問題解決を図る方法です。

訴訟よりも手続は簡易的に進み、解決までの時間が比較的短くて済みますが、不成立になった場合は訴訟に移行することが多いといえます。

6.訴訟で確定判決を得る

売掛債権を回収するために、訴訟で確定判決を得ましょう。

民事調停で話し合いをしても当事者同士で合意できず、不成立となったときには訴訟を提起することが一般的です。

訴訟で確定判決を得ることで、強制執行をすることもできます

7.仮差押えの手続をする

売掛債権を回収するために、相手の財産の仮差押えの手続をしましょう。

相手が勝手に財産を処分してしまうと、未払いの代金を回収できなくなってしまいます。

そこで、裁判所で保全の手続として行われるのが仮差押えです。

仮差押えでは、売掛債権額に相当する範囲で財産の処分を禁止します。

8.強制執行の手続をする

売掛債権を回収するために、裁判所を介して強制執行の手続をしましょう。

仮に民事調停が成立したり確定判決を得たりしても、約束どおりに支払いをしてもらえるとは限りません。

そこで、調停調書や確定判決を債務名義とした相手の財産を強制執行することで、売掛債権を強制的に回収できます。

売掛債権の入金遅れへの対応

複数の請求

取引先から売掛債権が支払われず、入金が遅れているときには以下の対応を検討しましょう。

  1. 契約書の確認
  2. 資産状況の把握
  3. 出荷の停止
  4. 相殺可能な債務の模索
  5. 未払残高の確認書の作成
  6. 商品の引きあげ

それぞれの対応について説明します。

契約書の確認

売掛債権の入金が遅れている場合、まずは取引先との間で交わした契約書を確認しましょう。

売買取引に関して先方の印鑑が押されている売買契約書や発注書があれば、代金に関して了承していたと立証できます。

先に紹介した仮差押えや訴訟など、法的手続を取るときにも証拠書類として役に立ちます

反対に見積書や請求書のみを作成し、代金に関して相手の捺印がある書面が手元にないと、法的手続の際に代金支払いや金額に関する合意があったことを証明しにくくなります。

そのため証拠書類を準備した上で、法的手続を検討することになるでしょう。

資産状況の把握

売掛債権の入金が遅れている場合、取引先に支払い能力があるのか、現金がなくても支払いに充てる資産を所有していないか確認しましょう

取引先の資産状況を調査しますが、現預金や土地建物に限らず、たとえば倉庫・工場・社用車・備品・在庫なども含まれます。

出荷の停止

売掛債権の入金が遅れている場合、新たに商品を出荷しないように一旦停止しましょう。

回収する必要のある売掛債権を増やさないように、支払いが遅れている代金を入金してもらえるまで商品を引き渡すことはできない旨を伝え、はやく支払ってもらうことが必要です。

相殺可能な債務の模索

売掛債権の入金が遅れている場合、相殺できる債務はないか模索しましょう。

売掛先である取引先が、買掛先でもある場合で、まだ支払っていない債務があるのなら売掛債権と相殺することも方法として考えられます。

相殺の通知を内容証明郵便で送り、双方合意のもとで相殺すると未回収を回避できます。

未払残高の確認書の作成

売掛債権の入金が遅れている場合、未払いの代金がどのくらい残っているか、未払残高確認書の作成を依頼しましょう。

現在、どのくらいの売掛債権が未払いなのか、金額を確認してもらうことと支払いを約束してもらうことを書面化した文書が未払残高確認書です。

未払残高確認書があれば、仮差押えや訴訟などの法定手続においても、売掛債権の存在を示す有力な証拠になります。

商品の引きあげ

売掛債権の入金が遅れている場合、すでに納品している商品を引きあげることも検討しましょう。

契約書に記載されている商品の所有権が移転するタイミングは、引き渡しのときである場合と、代金を支払ったときの2つのケースが考えられます。

引き渡しのタイミングで所有権が移転する場合は、たとえ代金が未払いでも取引先の合意が必要です。

代金の支払いときの場合も、自社に所有権は残っている状態ではあるものの、取引先にその旨を伝え納得してもらった上で引きあげるようにしてください。

売掛債権回収における注意点

時効の文字と砂時計

商取引により発生した売掛債権は、期日までに確実に回収することが必要です。

しかし取引先から期日になっても入金がされないケースも考えられるため、回収に向けた行動を起こすときには以下の2つに注意しましょう。

  1. 債権の消滅時効に注意する
  2. 公正証書を作成する

それぞれ説明します。

債権の消滅時効に注意する

売掛債権の回収において、消滅時効には注意しましょう。

消滅時効とは、一定期間で権利を行使しなかったときにその権利が消滅する制度です。

旧民法の消滅時効期間は、債権の種類ごとに設定されていました。

令和2年4月1日から改正民法が施行され、債権の種類を問わず消滅時効期間は、原則次のいずれか早いタイミングとされています。

  • 権利を行使することができるときから10年
  • 権利を行使することができることを知ったときから5年

なお、消滅時効期間が経過すれば自動的に時効成立に至るわけではなく、完成させるためには債務者が時効による利益を受ける旨を意思表示する時効の援用が必要です。

そのため取引先が売掛債権の時効の援用を手続し、時効が完成してしまう前に阻止・回収することが必要となります。

売掛金の時効とは?年数や成立しないケースと阻止・回収する方法を解説

公正証書を作成する

売掛債権を回収する上で、取引先との交渉で取り決めた内容については、公正証書を作成しましょう。

取引先に支払う意思があるのなら、交渉で売掛債権を回収できる可能性もあります。

ただし口約束で終わらせるのではなく、合意内容を文書にしておくことが不可欠いえますが、公証人が作成する公文書の公正証書にしておきましょう。

約束が守られなかったときには強制執行を可能とする執行認諾文言を付した公正証書であれば、売掛債権の未払いで財産を差し押さえることもできます。

まとめ

売掛債権の回収は、相手との交渉や催促など、行動を起こすことが必要です。

消滅時効期間を過ぎ、時効の援用をされてしまうと時効が完成してしまいます。

請求権が消滅するよりも前に阻止することが必要ですが、回収の流れを理解した上で手続を進めましょう。

売掛債権をファクタリングにより前倒しで現金化しておけば、未回収に悩むこともなくなります。

ファクタリングで資金調達をしたいものの、どのような仕組みなのか不安があるときは、お気軽にPMGにご相談ください。