新型コロナウイルス感染症は、多くの中小企業を倒産に追い込むほどの勢いで拡大しました。
そして東京商工リサーチが2021年4月中旬に実施した調査によると、3社に1社が過剰債務状態にあるとされており、倒産している中小企業の数は増え続けています。
今後もさらに倒産する中小企業は多くなっていくといえるでしょう。そのため、どうすれば倒産せずに経営を続けることができるかを知っておく必要があります。
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自社債務に過剰感があると回答した中小企業は全体の3割以上
東京商工リサーチが2021年4月1日~12日にかけてインターネットにより実施したアンケートによると、自社債務について過剰感があると回答した中小企業は35.0%に上っています。
国も新型コロナウイルス感染症の影響により、中小企業が経営破綻してしまわないための資金繰り支援策を打ち出しました。一時的には中小企業の資金繰りを改善させたものの、長期的に効果があったとはいえません。
なぜなら、コロナ禍がある程度落ち着いた2023年現在において、中小企業の倒産数は増えているからです。中小企業がコロナ禍を乗り切るための策として、
- 実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)
- 新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール
- 社会保険料の支払い猶予
- 税金の納税猶予
などを行った中小企業は少なくありません。
これらは中小企業の資金繰りを緩和させたといえますが、借入れに対する依存で債務が膨らんでしまい、バランスシートを肥大化させることとなりました。
また、ゼロゼロ融資を利用後に倒産した企業数は、2021年から飛躍的に増加しています。返済の負担は非常に大きいといえるでしょう。
特に飲食店や旅行業では高い売上の崖に直面しているといえますが、
- 飲食店79.4%
- 飲食料品小売業78.5%
- 洗濯・理容・美容・浴場業78.5%
が、それぞれ過剰債務と回答しています。
コロナ禍が落ち着いた現在でも、新型コロナウイルスによる影響は大きく、経営に苦しんでいる方は少なくないといえるでしょう。
中小企業が倒産を回避する方法とは?
新型コロナウイルスによる経営への影響は計り知れません。景気がすぐに回復するとは考えづらいため、経営を続けるためには倒産をどのように回避するかを知っておくことが大切です。
資金繰りを改善する
倒産を回避するうえで最も重要なのは、資金繰りの改善です。まずは経営を行っていくうえで必要な資金と減らせる資金を明確にしましょう。
たとえば、営業所の場所を移すことで家賃を減らせたり、ペーパーレスを導入することでコピー代を減らせたりする可能性があります。気づいていないだけで、削減できる経費は数多く存在するかもしれません。
倒産の原因は数多くありますが、簡潔にまとめると「資金不足」が原因です。そのため、経営状況を見直して、資金不足の原因を考えることは倒産を回避するうえで欠かせません。
そのなかで必要な資金と減らせる資金も自然と明らかになります。後は経費を削減するために、どのようなアクションを起こすかを考えていきましょう。
事業内容を変更する
そもそものビジネスモデルが利益の出づらいモデルになっている可能性があります。その状態で経営を続けたとしても、経営を安定させることは難しいかもしれません。
ビジネスモデルに原因がある場合は、事業内容の変更を検討する必要があります。利益が出やすいビジネスモデルを見つけることさえできれば、経営が回復する可能性は高いでしょう。
一方で、事業内容を変更するのは容易ではありません。ある程度の資金が必要になるため、銀行から追加で融資を受けることも検討しなければいけません。失敗すると負債がさらに増えてしまう可能性もあります。
そのため、事業内容の変更は慎重に行うようにしましょう。十分に利益が得られるビジネスモデルと確証が得られたら、チャレンジするのをおすすめします。
事業計画書を作成する
経営状況を見直せば、改善するべき点はいくつか見つけることができるでしょう。しかし、改善点が多ければ多いほど、どのように着手してよいかわからなくなる場合があります。そのため、何を改善するべきか明らかになるように、事業計画書を作成しましょう。
社内についてわかりやすくまとめるのは重要ですが、社外を意識して作るのも重要です。社外を意識して作ることで、事業の将来性について銀行へのアピールとなり、融資を受けやすくなるでしょう。
ポイントは短期・中期・長期と期間をわけて事業計画書を作成することです。長期的に経営を改善するためには、短期的な目標を設定することが欠かせません。そのため、事業計画書は期間別に作成するようにしましょう。
追加で融資を受ける
追加で融資を受けることで、一時的に経営を安定させることができます。しかし、融資を受けるためには、銀行に返済する能力があると認めてもらわなければいけません。そのため、先ほど紹介した事業計画書を念入りに作成する必要があります。
融資を受けた後は、返済をしなければいけません。そのため、安易に融資を受けてしまうと、さらに経営を圧迫する可能性もあります。経営を継続するために融資を受けるのではなく、利益を生み出すための投資として融資を利用するのがおすすめといえるでしょう。
事業再生を行う
事業再生とは融資や借り入れを行っている金融機関に、返済スケジュールの見直しを求めて、支援を受けながら事業を再生する倒産手続の一種です。
事業再生には「私的再生」と「法的再生」の2種類があります。私的再生は裁判所を通さずに、金融機関に直接交渉をして、返済期間のリスケジュールをする方法です。すべての債権者から同意を得なければいけませんが、同意さえ得られれば再生手続に時間はかかりません。
一方で、法的再生は裁判所を通して法律に則り、再生手続を行うことになります。自分で金融機関と交渉をする必要がない点はメリットといえるでしょう。しかし、私的再生と比べて時間がかかってしまう点には注意をしてください。
まとめ
中小企業の倒産は増え続けている一方で、回避する方法も数多く存在します。コロナ禍による影響を受けた中小企業は少なくありません。そのなかで今でも経営を続けている中小企業は、何らかの方法で倒産を防ぐための対策を行っていると考えられます。
今回紹介した内容を参考に、ぜひ中小企業の経営状況改善に取り組んでみてください。厳しい景気が続きますが、決して諦める必要はありません。中小企業が経営を続けることも十分可能なので、さまざまな方法にチャレンジしつつ、経営を改善させましょう。