ゼロゼロ融資の返済で厳しい場合、コロナ借換保証を利用すれば保証料負担を大きく軽減させた上で、資金繰り悪化を防ぐことができます。
中小企業庁は、2023年 1月 10日、新型コロナウイルス感染症で売上減少に至った企業が利用した実質無利子・無担保のゼロゼロ融資の返済負担軽減に向けて、信用保証制度「コロナ借換保証」をスタートさせました。
コロナ借換保証では、補助前0.85%など事業者が負担する保証料が0.2%などに引き下がり、100%保証融資なら100%保証で借り換えできます。
そこで、ゼロゼロ融資の保証料と、コロナ借換保証でかかるコストに関して簡単に解説していきます。
ゼロゼロ融資とは
「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売上が減少してしまった個人事業主や中小企業に対し、日本政策金融公庫や民間金融機関が実施した実質無利子・無担保の融資制度です。
返済猶予される据置期間は最大5年で設定でき、保証料も半額またはゼロで利用できるなど、負担が軽い融資制度の内容となっていました。
ゼロゼロ融資の「実質」無利子・無担保の意味は、一旦、借主である事業者が利子を支払い、後で支払った分が戻される仕組みだからです。
コロナ借換保証とは
企業倒産や廃業が増えることを懸念して創設されたのが「コロナ借換保証」です。
コロナ借換保証は、ゼロゼロ融資から借り換える場合はもちろん、他の保証付融資の借り換えや事業再構築など新たな資金需要にも対応する内容となっています。
そもそもゼロゼロ融資の返済猶予期間は最大5年で設定可能となっていましたが、多くの事業者が3年未満で設定しています。
そのため据置期間が終了し、いよいよ返済が開始される企業の数は2023年7月から24年4月に集中することが見込まれており、本格化すると多くの事業者の資金繰りが悪化する可能性があるからです。
返済により資金繰りが悪化する前に、借り換えで事業者を支援することがコロナ借換保証の目的といえます。
コロナ借換保証は、売上または利益率が5%以上減少していることなどの一定要件を満たっすことが必要です。
また、中小企業と金融機関が対話を通じ、「経営行動計画書」を作成して金融機関から継続的に伴走支援を受けることが条件となります。
条件を満たすことで信用保証料が大幅に引き下がる仕組みとなっており、保証限度額もゼロゼロ融資上限額6,000万円を上回る1億円、保証期間は10年以内(据置期間5年以内)で設定できます。
【コロナ借換保証の概要】 保証限度額:1億円 保証期間:10年以内 据置期間:5年以内 金利:金融機関所定 保証料 :0.2%等 要件:売上または利益率が5%以上減少・経営行動計画書の作成・金融機関の継続的な伴走支援など |
コロナ借換保証の特徴
コロナ借換保証の取扱期間の予定は2024年3月31日までとなっており、セーフティネット保証の枠組みで行われる個人事業主・中小企業支援事業であることが特徴です。
他にも次のような特徴があります。
- ゼロゼロ融資以外の借り換えにも対応
- 信用保証料を大幅に引き下げ
- 据置期間あり
それぞれどのような特徴か説明していきます。
ゼロゼロ融資以外の借り換えにも対応
コロナ借換保証は、ゼロゼロ融資だけでなく、それ以外の保証付融資の借り換えにも対応できます。
さらにコロナ借換保証は制度名称に「借換」とあるものの、新規資金にも対応できることが特徴です。
また、事業を再構築させる目的など、前向きな投資に対して必要となる資金の借入れにも利用可能です。
事業を回復させるために受けたゼロゼロ融資の返済が難しいという場合、借り換えの現状をまずは把握し、借金完済に向けたコロナ借換保証を検討しましょう。
信用保証料を大幅に引き下げ
コロナ借換保証は、信用保証料が大幅に引き下げられることが特徴です。
物価高や円安など、多くの事業者がコロナ禍以後も厳しい状況に置かれます。
借金が積み上がった状態で、返済負担が重くのしかかったままでは、資金繰りは改善されません。
そこで、借入時の信用保証料が大幅に引き下げられるコロナ借換保証が開始されました。
保証料とは、保証協会の信用保証制度利用のために支払う対価ですが、補助前の保証料は通常0.85%程度であるものの、コロナ借換保証では0.2%程度に引き下げられます。
ゼロゼロ融資の保証料は半額またはゼロでしたが、コロナ借換保証で0.85%から0.2%へと引き下がることは、ゼロよりも厳しいとはいえ半額で設定されるより有利な条件で利用できるといえます。
さらに、これまで100%保証融資を受けていた場合であれば、コロナ借換保証による借り換えでも、信用保証協会が融資額全額を保証する100%保証が可能です。
100%保証となることで、金融機関も資金の貸し出しリスクを低減させることができるため、融資を実行しやすくなるでしょう。
据置期間あり
コロナ借換保証でも、「据置期間」を設けることができます。
据置期間とは、借りたお金の元金に関しては返済が猶予され、利子のみ返済する期間です。
コロナ借換保証の据置期間は最大5年で設定可能となっているため、ゼロゼロ融資の据置期間終了による返済開始で資金繰り悪化が懸念される事業者が利用したい内容となっています。
しかし、据置期間は返済期間に含まれるため、後で返済する金額が大きくなりがちです。
安易に据置期間を引き延ばすのではなく、無理ない返済を実現させるための計画を検討することが必要といえるでしょう。
コロナ借換保証の流れ
保証料が大きく引き下がるコロナ借換保証は、ゼロゼロ融資の据置期間終了で返済が厳しい事業者が利用するべき制度といえます。
コロナ借換保証の流れは、以下の7つです。
- 経営行動計画書の作成
- 借り換えの申し込み
- 金融機関による与信審査
- 自治体によるセーフティネット保証認定
- 信用保証協会による保証審査
- 借り換えによる融資実行
- 金融機関による伴走支援
それぞれの流れについて説明していきます。
①経営行動計画書の作成
コロナ借換保証を利用する場合、「経営行動計画書」の作成が必要です。
制度創設の目的は事業者の収益力強化を図ることであるため、融資を受ける条件として具体的な今後の行動を記した「経営行動計画書」の提出が条件とされています。
行動計画とは、売上予測通りに事業を進めるための具体的な手順や手法であり、長期的な経営方針や長期ビジョンといえます。
コロナ借換保証の経営行動計画書は所定の様式があり、継ぐの必須事項に記入することが必要です。
- 事業者名簿(住所・法人名・金融機関を通じた情報提供への同意など)
- 現状認識(事業概要・事業の状況・財務の状況)
- 財務分析(売上の持続性・営業の収益性・労働生産性・健全性・効率性・安全性)
- 計画終了時点の目標(改善計画と目標値)
- 具体的な行動プラン(1~5年目までの取組計画・資本の使い道)
- 収支計画及び返済計画(直近の決算状況・1~5年目までの売上高・営業利益・税引き後の当期純利益・減価償却費・借入金返済額)
②借り換えの申し込み
経営行動計画書を作成後は、金融機関に借り換えを申し込み、計画書を提出します。
経営や財務の現状・資金使途・計画終了時の目標・収支計画・アクションプラン・返済計画など、内容に基づき説明できるように準備しておきましょう。
③金融機関による与信審査
借り換え申し込み後は、金融機関で行われる与信審査に通ることが必要です。
与信審査は返済能力を確認するためのものであり、貸倒れリスクなど調べるため必ず行われます。
④自治体によるセーフティネット保証認定
コロナ借換保証はセーフティネット保証の枠組みで行うため、市区町村など自治体によるセーフティネット保証の認定が必要です。
与信審査で問題ないと判断した金融機関は、自治体に認定の申請を行います。
⑤信用保証協会による保証審査
自治体への認定申請以外に、信用保証協会に対しても、事業者から受け取った経営行動計画書を提出した上での保証審査が依頼されます。
信用保証協会が保証することを決定すると、信用保証書が交付され金融機関が融資を行う流れです。
⑥借り換えによる融資実行
借り換えによる申し込み後に、金融機関・自治体・信用保証協会の3者の承認を受けることで、融資が実行されます。
なお、3者からの承認を受けるポイントの1つに、不備なく書類を準備することが挙げられます。
不備が発覚すると申請が通らなるため、ミスなく準備できるように金融機関に最終確認してもらうとよいでしょう。
⑦金融機関による伴走支援
コロナ借換保証では、融資実行で終了ではなく、その後も金融機関から事業者に継続的な伴走支援が行われます。
「継続的な伴走支援」はコロナ借換保証を利用する条件ですが、金融機関からの支援により事業者の負担を軽減させることが目的です。
金融機関が継続的な伴走支援が可能であると判断されなければ、コロナ借換保証は利用できないとも言い換えることができます。
コロナ禍の影響を正確に見通すことは困難であるため、経営者1人で悩むのではなく、支援してくれる金融機関と相談しながら経営改善に向けた取り組みを進めていくことが必要といえるでしょう。
まとめ
ゼロゼロ融資の据置期間が終了し、返済がスタートする企業数は2023年7月から24年4月に集中することが見込まれています。
返済開始が本格化することにより、多くの事業者が資金繰り悪化で苦しむことを懸念し、創設されたのがコロナ借換保証です。
コロナ借換保証であれば保証料負担を大きく軽減させることができるため、ゼロゼロ融資の返済が厳しい事業者は利用を検討することをオススメします。
制度利用に関しては、金融機関または最寄りの信用保証協会に問い合わせるとよいでしょう。
また、借り換え以外にも、未回収の売掛金を保有していれば現金化することで資金調達できるファクタリングもあります。
ファクタリングは借金を増やさず資金を調達でき審査のハードルも低いため、融資審査の通らない事業者でも利用可能であるため、あわせて検討してください。