ゼロゼロ融資の条件変更とは?おすすめしない理由と対策方法について解説

ゼロゼロ融資の条件変更を検討する事業者は今後増えると考えられます。

そもそもゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、売上減少で資金難に陥った事業者が、実質無利子・無担保で融資を受けることができる貸付制度です。

ゼロゼロ融資による借入れを行っている事業者は多く、5年以内で設定できる据置期間のうち、1~2年で設定していた企業などはすでに返済が始まっています。

実際には3年以内で据置期間を設定している事業者が多い中、物価上昇や円安などの影響を受け、事業が回復しないまま返済しなければならない状況に追い込まれている状態です。

このような状況において検討されるのゼロゼロ融資の条件変更ですが、結論から言えばおすすめできません。

そこで、ゼロゼロ融資の条件変更とはどのような仕組みなのか、おすすめしない理由と条件変更に代わる対策方法について解説していきます。

ゼロゼロ融資とは

「ゼロゼロ融資」とは、新型コロナウイルス感染症の影響により、業績が悪化した個人事業主や中小企業を対象とした実質無利子・無担保による融資制度です。

2020年、中国の武漢から拡大した新型コロナウイルス感染症は、世界経済にまで大きな影響を与えました。

株式市場は暴落し、インバウンドは後退するなど、様々な影響から創業100年といった老舗の旅館なども廃業せざるを得ない事態にまで発展しています。

現在でも「コロナ倒産」してしまう企業は少なくない状態で、服飾・卸売・建設など影響を受けている業界は様々です。

さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響により、需要減や休業を余儀なくされるケースも増え、多大な損害を被った事業者も少なくないといえます。

部品が供給されないことで生産が停止してしまう工場や、在宅ワークに伴って逼迫した木材の需要による木材価格高騰(ウッドショック)発生なども、新型コロナウイルス感染拡大による影響が関係しています。

仮に黒字であったとしても、手元の資金が枯渇すれば企業は倒産します。

事業自体が停止した中、売上も激減してしまい、大変厳しい状況に追い込まれた事業者は増える一方だったといえますが、企業の倒産を防ぐ支援策として打ち出されたのが「ゼロゼロ融資」です。

条件変更とは

「条件変更」とは、融資を受けた借入金の返済が困難になった場合、返済計画を見直すリスケジュールのことであり、返済条件を変更します。

ゼロゼロ融資では、事業資金を借入れた後、すぐに返済を始めるのではなく5年以内で一定の据置期間を設けることが可能でした。

多くの事業者は、ゼロゼロ融資の据置期間を1~2年など、3年以内に設定していることが多いようです。

そのため返済がすでに開始された事業者や、今年から返済が始まるという事業者が多いといえます。

しかし借入金返済が苦しい状況にある場合、返済を一時的に猶予または減額する条件変更に目を向けがちですが、条件変更した債権は「貸出条件緩和債権」として扱われることになります。

貸出条件緩和債権とは、債務者の経営再建・支援を目的として、次の取り決めを行った貸出金のことです。

  • 金利の減免
  • 利息の支払猶予
  • 元本の返済猶予
  • 債権放棄
    など

一般的に条件変更の手法として挙げられるのは次の5つです。

  • 元本支払猶予(元金返済を免除)
  • 元本支払いの軽減(毎月の元金返済を減額)
  • 据置期間の延長(返済開始時期を遅らせる)
  • 融資期間の延長(毎月の元金返済を抑える)
  • 金利の減免(融資金利の引下げまたは免除)

このうち、ゼロゼロ融資の返済で困窮した場合、元本支払い猶予・元本支払いの軽減・据置期間の延長のいずれかによる対応が検討されることになるでしょう。

実際、金融庁が公表している金融機関の条件変更の実行率は98~99%となっており、基本的に応じる姿勢を見せています。

しかしいずれもお金を借りた事業者に有利となる取り決めであるため、ゼロゼロ融資で資金を貸し出した日本政策金融公庫や民間金融機関からは、新規融資を受けることは難しくなってしまうと留意しておくべきです。

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借り換えとは

「借り換え」とは、新規で融資を受けて調達した資金を使って、既存の借入れを返済することです。

すでに金融機関から融資を受けている借入金を、他の金融機関から融資を受けて返済します。

事業資金を借り換える最大の効果は、毎月の返済負担を軽減できることです。

借り換えは業績悪化で借入金返済が厳しい企業ばかりではなく、たとえば業績が良好である場合に条件のよい金融機関へ借り換える前向きなケースもあります。

毎月の返済額を抑えるのは条件変更でも同じと考える経営者もいることでしょう。

しかし条件変更は、原則、追加で新規融資を受けることができなくなるというデメリットがあります。

借り換えは条件変更ではなく、既存の借入れよりも金利を下げることができ、新規融資を追加できる場合もあります。

ただし、新規融資を行うことができるだけの財務体質が求められるため、どのような企業でも利用できるわけではありません。

条件変更をおすすめしない理由

ゼロゼロ融資による返済が厳しい状況であっても、条件変更はおすすめしません。

その理由として、条件変更を行うことにより追加融資を受けることが難しくなることが挙げられます。

そのため借り換えできないかまずは確認し、可能であれば再度据置期間を利用することや、返済期間を長めに設定するといった対応を検討しましょう。

借り換え制が難しい場合には、金融機関に相談して別の方法を模索し、それでも難しければ条件変更の手続を行うなど最終手段として捉えておいてください。

なお、ゼロゼロ融資の返済が厳しいことを理由に延滞することや、ゼロゼロ融資の返済を優先して税金を納めないといったことも避けてください。

月を越えた延滞が発生すると、借り換えなど検討する以前の問題として扱われるため、希望しても借り換えできなくなります。

税金においては猶予制度なども利用可能であるものの、金融機関や信用保証協会は納税に関して厳しく確認するため、仮に利用している制度が新型コロナウイルスの納税猶予だとしても納付計画を提出するように求められる可能性があります。

条件変更に代わる対策

借りたお金を返すことと納税はどちらも大切なことであり、どちらも優先して支払わなければなりません。

そのため早期に資金繰り状況を把握し、返済や納税を遅れないようにすることが必要です。

ゼロゼロ融資の返済が厳しい場合、条件変更に目を向けがちですが、代わる対策として次の2つが挙げられます。

  1. コロナ借換保証
  2. ファクタリング

それぞれの対策について説明していきます。

コロナ借換保証

2023年1月10日からスタートした「コロナ借換保証」は、再度、最大5年間の据置期間や返済期間を長期設定できる制度です。

民間金融機関や日本政策金融公庫で、既存のゼロゼロ融資を借り換えできる制度があり、たとえば東京都の企業なら民間金融機関から受けたゼロぜロ融資について次の制度利用が可能となっています。

  • 「新型コロナウイルス感染症・ウクライナ情勢・円安等対応緊急融資
  • 「コロナ借換保証」

このうち、「新型コロナウイルス感染症・ウクライナ情勢・円安等対応緊急融資」は東京都の制度です。

「コロナ借換保証」は、民間のゼロゼロ融資などの返済負担を軽減させる保証制度で、要件に該当する場合には積極的に利用すべき内容であるといえます。

日本政策金融公庫で要件を満たせば既存融資を借り換えできますが、令和4年9月30日で当初3年間の利子補給による実質無利子は終了となっているため、借り換えればこれまでの利子補給は終了となります。

制度を利用する場合、売上高または利益率の減少要件(5%以上)またはセーフティーネット4号または5号の認定取得が必要です。

これら一定の要件を満たすことに加え、金融機関と対話を通じ「経営行動計画書」を作成し、金融機関による継続的な伴走支援を受けることが条件となります。

ただ、借入時の信用保証料が大幅に引き下げることができるため、要件を満たすのであれば積極的に検討するとよいでしょう。

【コロナ借換保証制度概要】
保証限度額:1億円(100%保証融資は100%保証で借換可能)
保証機関等:10年以内(据置期間5年以内)
保証料率:0.2%等(補助前は0.85%等)

ファクタリング

「ファクタリング」とは、個人事業主や法人などが保有している売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金化して資金を調達するサービスです。

コロナ禍で資金繰りが悪化してしまい、仕入れ代金など買掛債務や税金の支払いができないことに悩む事業者も増えました。

融資を受けたくても、既存のゼロゼロ融資などの返済が苦しい状況にある中で、厳しい審査を通る見通しも立たないというケースもめずらしくありません。

そのような場合でも、ファクタリングなら未回収の売掛金があれば資金調達に活用できます。

ファクタリングのメリットは、

  • 売掛金入金期日より前に現金化できる
  • 借入れではないため担保・保証人は不要
  • 審査では売掛先の信用力が重視される
  • 売掛債権未回収となるリスクをファクタリング会社に移転できる
  • キャッシュフロー改善につながる

といったメリットがあります。

ただし、

  • 手数料負担が重い
  • 長期利用すると資金繰りが悪化する
  • 悪徳業者に騙されないため信頼できる業者の見極めが重要

といったデメリットもあるため、安心して資金調達に利用するのなら信頼できるファクタリング会社か見極めが必要といえます。

まとめ

今後、ゼロゼロ融資の返済開始時期は2023年7月から2024年に集中することが見込まれています。

このような状況を踏まえて、借り換えだけでなく、他の保証付融資からの借り換えや事業再構築など前向き投資の資金需要にも対応する保証制度として用意されたのがコロナ借換保証です。

もしもゼロゼロ融資の返済に悩んでいるときには、条件変更ではなくコロナ借換保証を利用できないか検討し、売掛金を前倒しで現金化できるファクタリングもうまく活用することをおすすめします。