ゼロゼロ融資の据置期間とは?返済開始時期を延長する方法について解説

ゼロゼロ融資の据置期間が過ぎ、ついに返済開始時期を迎えてしまったことで悩んでいる企業は少なくありません。

これからさらにゼロゼロ融資の据置期間満了によって返済が始まり、少ない手元の資金からどのように返済資金を捻出すればよいか悩む企業は増えていくことでしょう。

このような場合、ゼロゼロ融資の返済開始時期を延長させ、さらに据置期間を設けることができないのでしょうか。

そこで、ゼロゼロ融資の据置期間と、返済開始時期を延長する方法について解説していきます。

ゼロゼロ融資とは

「ゼロゼロ融資」とは中小企業など事業者を対象とした制度であり、政府系金融機関と民間金融機関から受けた融資について、公的機関が事業者に代わり3年間利子を負担し最長5年で返済猶予する実質無利子・無担保融資です。

新型コロナウイルス感染拡大により、緊急事態宣言が発出され様々な業種の事業者がその影響を受けることになりました。

打撃を受けた事業者の資金繰り対策として、2020年に導入されたのがゼロゼロ融資です。

新型コロナウイルス感染拡大といった災害ともいえる状況に対し、緊急経済対策として実施された制度であるため、実際にはコロナ禍以前から厳しい経営を強いられていた事業者の延命につながった可能性もあるといえるでしょう。

反対に、コロナ禍以前は経営状態が良好であったのに、長期的な需要の変化などで経営が厳しくなってしまった事業者もあります。

そのような状況下で、多くの企業の資金繰りを支えたといえるゼロゼロ融資の返済がついに本格化しようとしています。

日本政策金融公庫(国民生活事業)の実質無利子・無担保で融資を受けることができる「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、貸付期間20年以内、利息のみの支払いである据置期間は最大5年です。

民間金融機関の実質無利子・無担保融資も同じく据置期間は最大5年となっていますが、当初設定した据置期間を経過した事業者も少なくありません。

事業者の一部は淘汰が避けらないため、地域金融機関は返済困難でも存続可能な事業者に対し、経営改善や事業再生をサポートする取り組みが求められます。

また、ゼロゼロ融資は信用保証協会が債務全額または80%を保証するなど、リスクを負担しています。

今後、返済が厳しい事業者が再建していくためには、地域金融機関がどのように当事者意識を持ち取り組んでいけるかが重要になるといえるでしょう。

ゼロゼロ融資の据置期間

ゼロゼロ融資の「据置期間」については、多くの事業者が1~2年で設定しているケースが多いようです。

そのため多くの事業者がこれから利息のみの支払いだった時期を過ぎ、ついに元金を返済していくことになります。

元金返済が今年から開始される事業者の中には、依然として経営環境が厳しい中で返さなければならないケースも多く、コロナ禍による打撃から脱却できていない状況の中でどうすればよいのか頭を悩まされる状況に陥りかねないといえます。

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据置期間を延長する方法

ゼロゼロ融資の据置期間を過ぎ、元金の返済が始まる前に、期間を延長したいと考える事業者は少なくありません。

コロナ禍の打撃を受けたまま業績を回復させることができない状況にあり、元金返済開始時期を延期したい場合には、金融機関に据置期間の「延長」を相談することもできます。

コロナ禍を過ぎ、業績を回復できたのであれば元金返済が開始されても何の問題もないでしょう。

しかし業績は回復している事業者でも、資金繰りが不安定なため、元金返済が始まることに不安を感じている事業者もいます。

また、そもそも業績が回復していないため、元金を返済することが厳しい状況というケースも多く見られます。

もし上記に該当するのであれば、ゼロゼロ融資の据置期間の延長を金融機関に申し出るとよいですが、そもそも応じてもらえるのか不安を感じる事業者もいることでしょう。

金融機関にゼロゼロ融資の据置期間延長に関して、相談が可能である根拠は以下のとおりです。

据置期間を延長できる根拠

ゼロゼロ融資の据置期間は、延長することも可能です。

元金返済が開始する時期を延ばしたいのであれば、金融機関に据置期間の延長を交渉しましょう。

据置期間が終了すると、元金返済を必ずしも始めなければならないとも限りません。

国も、資金繰り困難な企業に配慮する方針で、公的・民間どちらの金融機関にも据置期間延長など金融支援要請が連続して出されているからです。

2022年5月11日、公的・民間どちらの金融関係団体にも、内閣総理大臣・経済産業大臣・財務大臣兼金融担当大臣などの連名で「原油価格・物価高騰等総合緊急対策を踏まえた資金繰り支援の徹底等について」といった要請が発出されいます。

連名による要請は7つあり、その中で次の内容を見れば、据置期間を超えた場合でも延長可能であることが確認できます。

“事業者からの2度目、3度目の返済期間・据置期間延長の相談を含め、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、返済期間・据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既往債務の条件変更や借換等について、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続すること。その際、据置期間終了後の返済負担が重くなることをおそれて据置期間の延長を躊躇する事業者がいる場合には、返済期間の延長も併せて提案すること。また、制度上の返済期間・据置期間を超えた延長についても個別の事情に応じて柔軟に相談に応じること。”

上記には、2度目や3度目の据置期間延長の相談があった場合でも条件変更や借り換えを含めた柔軟な対応と、据置期間延長を躊躇する場合には返済期間延長も併せて提案と記載されています。

そのためゼロゼロ融資の据置期間を延長することは可能であり、国からも柔軟に対応するように強く要請が出ているといえるでしょう。

据置期間延長の交渉ポイント

ゼロゼロ融資の元金返済が始まることが厳しいのであれば、据置期間延長を金融機関に交渉しましょう。

ただ、金融機関にゼロゼロ融資の据置期間延長を交渉するときには、以下の3つをポイントとして抑えた上での相談が求められます。

  1. 政府要請に基づいた検討を促す
  2. 冷静に交渉する
  3. 条件変更に注意する

それぞれのポイントについて説明します。

政府要請に基づいた検討を促す

ゼロゼロ融資の据置期間延長を交渉するときには、政府から要請が出ていることを主張し、要請に基づいて検討してもらえるように促すことがポイントです。

元金返済が開始する事業者に対し、政府からは柔軟な対応をするように金融団体に要請が出ています。

そのため金融機関に対するゼロゼロ融資の据置期間延長を頭ごなしに断られることや門前払いされることはなく、柔軟に対応してもらえるはずです。

万一断られてしまったときには、政府から要請が出ていることを主張し、検討してもらえないか交渉することで対応してもらえる可能性があります。

冷静に交渉する

ゼロゼロ融資の据置期間延長を交渉するときには、冷静に交渉することがポイントです。

確かにゼロゼロ融資を含め、資金繰りが厳しく返済困難な状況にある事業者に対しては、柔軟な対応をするように政府から金融団体に強い要請は出ています。

しかしあくまでも「要請」であり、「命令」ではありません。

そのため最終的に据置期間延長などを認めるか判断するのは金融機関であり、たとえば現在の業績のままでは単なる据置期間延長ではなく、「条件変更」で延長するしかないと判断される可能性があります。

条件変更とは、借入れの返済方法や条件を業況に合わせて、一時的に緩やかに変更することで、「リスケジュール」とも呼ばれます。

一時的な返済猶予で資金繰りに余裕を生むことはできても、リスケジュール実行は金融機関からの評価を下げ、新規借入れは難しくなります。

既存の借入れに対する返済が難しい状況にある中で、新たに借入れをしても返済能力はないと判断されるからです。

そのためあくまでも条件変更ではない据置期間の延長を相談し、仮に交渉が進まなくても冷静さを失わないように心掛けましょう。

条件変更に注意する

ゼロゼロ融資の据置期間延長を交渉するときには、条件変更に注意することがポイントです。

先にも述べたとおり、条件変更は一時的に資金繰りに余裕が出るメリットがある反面、金融機関からの評価を下げます。

しかし、ゼロゼロ融資の据置期間延長を金融機関に相談すると、据置期間延長は条件変更として扱われると伝えられることや、何の説明もなく条件変更に関する手続を進められる可能性もあります。

事業者から金融機関に対し、条件変更ではない据置期間延長を相談するときには、「借り換え」による方法などを交渉する方法を検討しましょう。

借り換えとは、新規で融資を受けて調達した資金により、既存の借入金を返済・清算することです。

融資の切り替えともいえますが、借り換えで新規の借入れに据置期間を長めに設定することで元金返済開始時期を延長でき、条件変更と異なり金融機関の評価を下げることもありません。

金融機関に条件変更ではない据置期間延長を交渉したつもりでも、手続に関する書類が手渡されたときに、条件変更であると気がつくケースもあると考えられるため、契約内容には注意しておく必要があります。

まとめ

ゼロゼロ融資の据置期間が終了し、元金の返済開始時期を迎える事業者は今後増えると想定されます。

業績が回復していない中で、ゼロゼロ融資の返済資金をどのように捻出すればよいか悩む企業は増えていくことになりますが、この場合には金融機関に据置期間延長を相談するとよいでしょう。

また、保有する未回収の売掛金があれば、現金化して資金調達できるファクタリングもおすすめです。

ファクタリングは融資を受けるのではなく、あくまでも売掛金の売買による資金調達方法であるため、金融機関の評価を落とすこともありません。

もしゼロゼロ融資の据置期間終了で、元金返済がスタートしてしまうことに悩んでいるのなら、返済資金捻出の方法としてファクタリングもあわせて検討してみましょう。