ベンチャー企業の資金調達方法とは?課題や種類・注意点をわかりやすく解説

資金調達を必要とするベンチャー企業などは、実績が不十分であるためその方法に悩むことも少なくありません。

ベンチャー企業とは、既存のビジネスモデルをベースとして収益性を高める工夫を行うことや、スケールを拡大することで売上を増大させる企業です。

成長段階の企業といえるため、長年経営を続けている会社とは信用力が異なり、資金調達における選択肢の幅は狭くなりがちです。

しかし手元にお金がなく資金調達もできなければ、仮に優秀な人材や他社にはないアイデア・技術などを持っていたとしても、倒産してしまいます。

そこで、ベンチャー企業の抱えている課題や、資金調達方法の種類・注意点についてわかりやすく解説していきます。

ベンチャー企業とは

「ベンチャー企業」とは、既存のビジネスモデルをベースとして収益性を高める工夫を行うことや、スケールを拡大して売上を増大させ、事業やサービスを展開している企業です。

独自の発想や技術などにより、大手企業では着手できないビジネスにも挑戦する新興企業といえます。

新たな道を切り開く成長過程の企業ともいえるため、事業が軌道に乗るまでは売上や実績も十分でなく、知名度や信用力も有名企業より劣るため資金調達しにくさなどの悩みを抱えがちです。

ただ、ベンチャー企業であるがゆえに資金調達できないわけではく、選ぶ方法によっては多額の資金を確保することができます。

スタートアップ企業との違い

ベンチャー企業と間違われることの多い「スタートアップ企業」とは、革新的な新たなビジネスモデルを考え、新市場を提供することによって短期的に事業価値を高め成長する企業のことです。

もともとはIT企業の集まっているアメリカ・シリコンバレーで使われ始めた言葉ですが、ベンチャー企業との大きな違いはビジネスモデルにあるといえるでしょう。

ベンチャー企業は既存のビジネスモデルをベースとして収益性を高める工夫を行うことや、スケールを拡大して売上を増大させることが多いといえます。

それに対しスタートアップ企業は、これまでにないイノベーションを起こし、新たなビジネスモデルを手探りで構築することが特徴です。

ただ、日本ではベンチャーとスタートアップは同じ意味で使われていることが多いといえますが、スタートアップ企業の場合には以下の3つの特徴があると理解しておくとよいでしょう。

  • 革新的なイノベーションを実現させる企業
  • 圧倒的な成長力を持った企業
  • M&A・IPOを目指す短期戦略により経営する企業

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ベンチャー企業の資金調達における課題

ベンチャー企業とは、新規事業を開拓するため起業した会社であり、広い意味ではスタートアップ企業も含まれるといえます。

そのためベンチャーなのか、スタートアップであるかに関係なく、長い歴史や高い実績のある企業と異なり信頼性や信用力が低く、資金調達のおいてもいくつかの問題を抱えています。

主にベンチャー企業の抱える資金調達における課題は、下記の3つです。

  1. 資金調達の選択肢が狭い
  2. 資金繰りに時間を割けない
  3. 方法によって経営の制約を受ける

それぞれどのような課題を抱えているのか説明します。

資金調達の選択肢が狭い

ベンチャー企業が抱える資金調達の悩みとして、まず方法の選択肢が狭いことが挙げられます。

事業として立ち上げたばかりの状態では、売上や利益も少なく、銀行や投資家などから信用してもらえません。

そのため資金調達の選択肢は少なく、限られた手法から選ぶことになるでしょう。

資金繰りに時間を割けない

ベンチャー企業が抱える資金調達の悩みとして、資金繰りに多くの時間を割けないことが挙げられます。

まだ規模も拡大途中の会社であれば、経営者が最前線でプレイヤーとして活躍しているケースも少なくありません。

そのため重要な業務や事業戦略の立案だけでなく、本業に忙しいことが多いため、資金繰りに時間を費やすことが難しい状況といえるでしょう。

方法によって経営の制約を受ける

ベンチャー企業が抱える資金調達の悩みとして、選ぶ方法によって経営の制約を受けることが挙げられます。

たとえば出資をしてもらう方法では、株式の一部や企業の経営に関する権利を投資家に譲渡しなければなりません。

その結果、経営に対する制約や経営陣の意思決定などにおいて、自由がなくなるといえるでしょう。

ベンチャー企業の資金調達方法の種類

実績が十分ではないベンチャー企業でも、選ぶ方法によっては多額の資金を調達できます。

主にベンチャー企業の資金調達方法として挙げられるのは次の3つです。

  1. 融資
  2. 出資
  3. その他

それぞれの資金調達方法について説明します。

ベンチャーの資金調達とは?必要性や方法・成長ステージごとの方法を解説

融資

ベンチャー企業の資金調達方法として、まず真っ先に頼りがちといえるのが「融資」を受けることです。

お金を借りて資金調達することといえますが、方法としては次の4つが挙げられます。

  1. 日本政策金融公庫の融資
  2. 地方自治体の制度融資
  3. 民間銀行の融資
  4. ビジネスローン

それぞれ説明していきます。

日本政策金融公庫の融資

「日本政策金融公庫」とは、国の100%出資・運営による政府系金融機関の1つです。

民間の金融機関の融資補完を目的として運営しているため、設立段階の中小規模の事業者などでも積極的に資金の貸し付けなど行っています。

低金利の上、無担保・無保証で融資を受けることができるため、ベンチャー企業でも安心して融資相談に応じてもらいやすいでしょう。

地方自治体の制度融資

地方自治体の「制度融資」は、自治体・金融機関・信用保証協会の3機関の連携による資金の貸し付け制度です。

これから創業するケースやベンチャー企業などでも、保証協会の保証が付くことで事業資金を借りやすくなるといえるでしょう。

また、保証会社に支払う保証料や、利子の一部など負担する自治体もあります。

ただし審査は銀行と信用保証協会でそれぞれ行うため、資金調達できるまで一定の時間がかかります。

民間銀行の融資

「民間銀行」から融資を受ける方法として、次の種類が挙げられます。

  • プロパー融資
  • 保証付き融資
  • 不動産担保融資

この中で「プロパー融資」は、銀行が独自に貸し倒れリスクや責任を負った状態で事業資金を貸し付けます。

そのため実績や信用力が十分ではないベンチャー企業の場合、審査に通りにくいといえるでしょう。

信用保証協会の保証付き融資や、不動産を担保に差し入れる不動産担保融資なら、審査に通り借入れできる可能性はあります。

ただし中小企業が民間銀行からお金を借りる場合、担保だけでなく経営者の人的保証も求められることが多いことは注意しましょう。

万一事業に失敗し、会社が倒産すれば経営者も自己破産しなければならない可能性が高くなります。

銀行融資の審査期間は?目安や手続の流れ・短くするポイントを解説

ビジネスローン

「ビジネスローン」とは、通常の銀行融資の審査には通りにくい個人事業者や法人向けの金融商品です。

用意しなければならない書類が簡素化されておりAIを使ったスコアリング方式の自動審査となるため、最短即日に融資を受けることができます。

しかし金融会社が抱える貸し倒れリスクの高い金融商品である以上、金利は高く設定されることや、調達できる金額が少額にとどまることは理解が必要です。

また、利息負担が重くなるため長期利用すれば資金繰りは悪化します。

ビジネスローンとは?銀行融資との違いやメリット・デメリット等について解説

出資

ベンチャー企業の場合、実績が十分でない中、民間銀行などから融資を受けることは容易とはいえません。

しかし、将来性が見込める事業であれば、投資家に資金を投じてもらえる可能性があります。

投資家に「出資」してもらう資金調達の方法としては、次の3つが挙げられます。

  1. ベンチャーキャピタル
  2. エンジェル投資家
  3. クラウドファンディング

それぞれ説明します。

融資と投資の違いとは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説

ベンチャーキャピタル

「ベンチャーキャピタル」とは、将来的に上場が期待できる新興企業に資金を投じる投資会社です。

新興企業の発行株式を購入し、上場後に売却し、キャピタルゲイン(売却益)を得ることを目的とします。

ベンチャーキャピタルに認められることは、多額の資金を調達できることを意味するものの、将来有望で成長率の高さなど判断基準が厳しく、ハードルは高めといえます。

ベンチャーキャピタルからの投資で資金調達する方法とは?

エンジェル投資家

「エンジェル投資家」とは、スタートアップ企業などに資金面で支援する元実業者や元経営者などの個人投資家です。

将来有望な若い起業家や会社を純粋に応援したいという思いや、社会貢献などを目的に資金援助するエンジェル投資家もいれば、ベンチャーキャピタル同様に上場後の売却益を目的とするケースもあります。

エンジェル投資家とは?出資を受けるメリット・デメリットや探し方を解説

クラウドファンディング

「クラウドファンディング」とは、インターネット上に事業のアイデアや計画などを公開し、不特定多数の賛同者から少額資金を集める方法です。

ファンを獲得することやテストマーケティングとして活用するなど、様々な使い方もできることがメリットといえるでしょう。

ただしインターネット上に公開したビジネスやアイデアを盗用されるリスクがあり、一定額に到達しなければ資金調達できないケースもあると留意しておきましょう。

クラウドファンディングとは?やり方やメリット・デメリットを簡単に解説

その他

融資を受けることや出資してもらうこと、どちらもベンチャー企業にとって簡単なこととはいえないでしょう。

ただし「その他」の資金調達方法として、次の2つであれば活用しやすいと考えられます。

  1. 補助金・助成金
  2. ファクタリング

それぞれ説明します。

補助金・助成金

「補助金」や「助成金」は、国や自治体から返済義務のない資金を調達できる方法です。

お金を借りる方法と違って返済義務がないため、ベンチャー企業では特に活用したい制度といえるでしょう。

「助成金」は審査で形式的な要件を満たし、受給条件に合致していればほぼ資金調達できます。

しかし「補助金」は要件を満たす以外に、提案内容の政策における最適性を審査され、採択されなければ資金調達につながらないことは留意しておいてください。

また、募集時期や条件などもたびたび変更されるため、最新情報を収集することが必要です。

ファクタリング

「ファクタリング」とは、保有する売掛金をファクタリング会社に売って現金化し、資金を調達する金融サービスです。

最短即日で売掛金を現金化できるため、早く手元の資金を増やしたいときにも活用しやすい方法といえます。

審査でも売掛先の信用力が重視されるため、実績が十分ではないことに悩むベンチャー企業や、初期投資が回収できおらず赤字経営の会社でも、入金前の売掛金があれば活用できます。

ただし手数料が発生するため、売掛金を前倒しで現金化する期間について、計画を立てた上での利用が必要です。

ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットを分かりやすく解説

ベンチャー企業が資金調達する場合の注意点

ベンチャー企業が資金調達する方法はいくつかあるものの、目的や金額、いつまでに準備しなければならないかによって選ぶ手段は変わります。

そこで、以下の3つの資金調達において、ベンチャー企業が注意しておくべきことを説明していきます。

  1. 融資
  2. 出資
  3. その他

ベンチャー企業の資金調達方法10選|各種の仕組みや課題・現状を解説

融資

ベンチャー企業が金融機関から融資を受けて資金調達する場合、手元に借入金が入金されるまで一定の時間がかかることは留意しておきましょう。

一般的に申し込みから融資実行までは1〜2か月程度かかるため、すぐに手元のお金を増やしたいという場合には活用できません。

また、事業計画・資金使途・経営状況などに関しても細かく審査されるため、中小企業などであれば所有する不動産を担保として差し入れることや、代表者の人的保証を求められることが一般的です。

出資

ベンチャー企業が出資を受けて資金調達する場合、発行する株式と投資家の保有割合によっては、経営権を脅かされることに注意しましょう。

議決権の半分以上の株式を握られてしまうと、会社を支配する権利は奪われたことになり、雇われ経営者として会社経営することになってしまいます。

出資による資金調達においては株式の移動が欠かせないため、出資者の意向に沿う必要性や、意見の対立で経営分離するリスクを抱えることなど理解しておいてください。

経営理念や事業方針は従来どおりで、自由な経営を求めるのなら経営介入されない資金調達の方法を選んだほうが安心です。

その他

ベンチャー企業が助成金で資金調達する場合には、受給条件を満たすことでほぼ必要な資金を調達できるでしょう。

しかし補助金の場合、政策推進に適した提案として採択されなければ、仮に受給条件を満たしていても資金調達できません。

さらに助成金と補助金はどちらも後払いによる支給となるため、経費等の支払いは一旦立て替えることが必要です。

この場合、活用しやすい方法として挙げられるのがファクタリングといえます。

ただしファクタリングは保有する売掛金を現金化する方法であるため、調達できる金額は売掛債権額面額にとどまります。

売掛債権額面より多くの資金を調達できる方法ではないため、さらに多く資金が必要な場合には、他の方法と併用するなど工夫が必要です。

さらにファクタリングは手数料が高めであるため、長期利用すると資金繰りが悪化してしまいます。

いつまでファクタリングで売掛金を前倒しするのか、事前に計画を立てた上で利用することが望ましいといえるでしょう。

まとめ

ベンチャー企業とは、既存のビジネスモデルを活用しつつ、収益性を高める成長段階の企業です。

スタートアップは革新的技術やアイデアでイノベーションを生み出し、起業から短期間で急成長する企業のことであるため、厳密にはベンチャー企業と意味は異なります。

しかし広い意味ではベンチャー企業とスタートアップは同じ意味で使われており、どちらの場合でも長期に渡り経営を続けている企業より信用力が劣ることは共通しています。

信用力が低ければ、銀行から融資を受けたくてもお金を借りることができず、資金調達の方法がないと悩んでしまいがちです。

しかしファクタリングを活用すれば、保有する売掛金を前倒しで現金化できるため、資金調達の方法に悩むことはなくなります。

ベンチャー企業で実績が不十分であり、融資を受けることができなかったとしても落ち込まず、ファクタリングの活用も検討することをおすすめします。