請求書とは、商品やサービスを納品後にその対価を受け取るため支払いを確定させるために作成する文書です。
商品やサービスを納品・提供済だった場合でも、請求書を発行して取引相手に渡さなければ代金を受け取ることはできません。
そのため請求書には、締め日や支払期日を記載することとなりますが、どのように日付を決めればよいのでしょう。
そこで、請求書の締め日や支払期日の決め方や、発行するタイミングなどについて解説していきます。
目次
請求書の締め日とは
請求の締め日とは、商品やサービスを納品・提供する期間の区切りとなる最終日のことです。
1か月の間に商品やサービスを納品・提供し、1か月分を取引相手に請求することが多いといえるでしょう。
たとえば月末締め翌月末払いなどの場合、1か月で締め日を迎えることになります。
会社経営では収益を管理する事務処理が必要となりますが、試算表なども1か月を1つのサイクルとしていることからわかるとおり、請求する区切りも1か月のほうがわかりやすいといえるでしょう。
ただし締め日は会社によって様々であり、互いの合意で決めることができます。
区切った期間の最終日が締め日となり、その期間の支払いを定めた日付が支払日です。
請求書の支払期日とは
請求書を発行するときには、いつまでに代金を支払ってもらうのか支払期日も記載します。
1か月を請求期間とした場合において商品やサービスの代金を支払ってもらう日が支払日です。
下請代金の支払期日は「下請代金支払遅延等防止法」により、商品・サービスの納品・提供を受けた日から60日以内で、かつできる限り短い期間内に定めることとされています。
支払期日までに支払わなかった場合、納品・提供を受けた日の60日後から支払った日までの日数に対し、年率14.6%を乗じた金額を「遅延利息」として支払うことも義務付けられています。
会社経営では手元の資金を枯渇させないことが重要となるため、請求金額だけを伝えてもいつ入金されるかわからなければ資金ショートする可能性が高まります。
そのため相手に支払期日を明確に伝えておくことも重要です。
一般的に支払期日は、月末締め翌月末払いや月末締め翌々月末払いなどが多いですが、自由に決めることができます。
会社ごとの支払サイトによって異なる場合が多いため、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。
取引先の決算期前後で請求書のやり取りが発生するときには、期ズレを防ぐために修正を依頼されることもあるため、より注意しておく必要があります。
請求書の発行日とは
請求書の発行日とは、商品やサービスを販売・提供した代金を請求するためいつ請求書を発行するか、その日付です。
請求書の発行自体は法律で義務付けられているわけではなく、契約内容に相手が合意すれば書面がなくても問題ないとされています。
しかし事務処理上、請求書がなければ代金の回収漏れが発生しやすくなり、取引先も支払い漏れが発生しやすくなります。
取引や金額に対する認識にズレが生じないようにするためにも、請求書は発行しておいたほうが安心です。
請求書は商品やサービスを提供し終えたタイミングで発行することになりますが、発行する日付をいつにするか悩んだときには次の2つを参考にしましょう。
- 都度方式 商品・サービスの販売・提供が終了したタイミングで請求書を発行
- 掛売方式 1か月など決まった一定期間に繰り返し取引があるときにはまとめて請求書を発行
請求書を発行する日は取引が実際に行われた日を記載することになります。
都度方式の場合には、取引終了日が請求書の発行日で、掛売方式なら実際に取引が終了して一定期間後に請求書を発行します。
請求書にいつ発行されたのか日付が記載されていないと、どの取引に対する何の請求か不明瞭となり、仕入税額控除の対象にならなくなってしまいます。
また、代金を回収する上で支障をきたすリスクも高くなったり架空請求と疑われたりなど、よいことは1つもありません。
そのため発行日は必ず請求書に記載するようにしてください。
発注側:請求書の支払期日を過ぎた場合の対応
請求書の支払期日を過ぎてしまった場合、そもそも後払いによる取引は双方の信頼関係が成立していなければ成り立たないことを再認識し、すぐに取引先に連絡を入れましょう。
うっかり忘れてしまうことや、送金したと思い込んでしまうこともあるかもしれません。
しかし相手にとって、支払期日が守られないことは信頼関係を崩す行為と判断されます。
早急に連絡することと、いつ入金できるか伝えることが大切です。
受注側:入金されない場合の対処法
取引先に請求書を送付したのにもかかわらず、記載していた期限を過ぎても入金がないときには、取引先に請求書が届いているか確認してみましょう。
手違いにより届いていない場合もあれば、紛失の可能性も考えれます。
そのため未入金の場合には次の3つで対処しましょう。
- 取引先に連絡する
- 内容証明で支払い督促する
- 法的手段を行使する
それぞれ説明していきます。
取引先に連絡する
取引先に対し、メールや電話で支払期日を過ぎても入金がないことを伝えましょう。
仮に請求書が届いていない場合には、その際に伝えてもらえるはずなので再度発行することが必要です。
先方の手違いで経理担当者に請求書が届いていないケースなどは、早急に入金してもらうことと、いつ支払ってもらえるか確認することも必要となります。
注意したいのは、納品した商品や提供したサービスに何らかの不具合などがあり、意図的に入金されていないケースです。
クレームに対応する場合には、何に問題があるのか伝えてもらい、交換・返品・値引きなどで対応するようにしましょう。
請求書を再発行する場合
請求書を再発行する場合には、一度発行した請求書を同じ内容のものを再度作成することになります。
たとえば請求書の内容にミスがあったときなども再発行が必要ですが、1通目の請求書と混同することのないように、「再発行」と記載しておくことをおススメします。
単価・数量・ケタ数など数字に関係する内容部分は特にミスが起きやすいため注意し、内容が修正されたときには再発行分が正しい請求書とわかるようにしておくことも必要です。
再発行した請求書の発行日は、訂正前の請求書と同じ発行日で問題ありません。
支払期日が過ぎた後で再発行を依頼されたときも、請求書に記載する支払期日を変更する必要もないでしょう。
契約の際に延滞利息を取り決めていたときには、請求書に延滞利息が追加されることを記載し支払期日を延ばす場合もありますが、延長の目安は2週間から1か月程度が望ましいとされます。
内容証明で支払い督促する
取引先にメールや電話で連絡し、早急に支払ってもらうように伝えても入金が確認できないときには、内容証明郵便を使って支払い督促をしましょう。
内容証明郵便とは、どのような内容の文書を誰にいつ送ったのか、日本郵便が証明する郵便です。
普通郵便で請求書を送っても、郵便事故などで届いていないといわれてしまう可能性もあるため、間違いなく手元に届けられていることを証明するためにも内容証明郵便が有効といえます。
また、法律による請求書の有効期限は5年とされているため、請求書を発行し送っていても支払いがないまま5年経過すれば時効が成立してしまいます。
しかし内容証明郵便は民法上の時効を中断させる自由の催告に該当するとされ、有効期限を6か月延長することができます。
内容証明郵便で請求書を送っても支払いがない場合には、この延長された有効期限の6か月間に、裁判上の請求や差押さえ、仮処分などの手続を行うこととなるでしょう。
内容証明郵便が取引先に届けることで、支払いを早く済ませなければならないという心理的なプレッシャーを与えることにもつながります。
法的手段を行使する
内容証明郵便を送っても入金がない場合には、裁判所から督促状を送付してもらう「支払督促」を検討しましょう。
請求を裁判所に代行してもらうため、取引先には精神的な圧力をかけることができ、請求者の立場も守られます。
支払督促を送付して2週間以内に異議が申し立てられた場合には訴訟に移行することになります。
支払督促や訴訟など裁判所で手続するときには、時効は中断されます。
訴訟を起こすことで、訴状や答弁書催告状などが取引先に通達されることとなりますが、これらの書類が届いたことで時効が中断されるとされているからです。
訴訟となった場合、取引先は口頭弁論期日までに答弁書を作成し、裁判所に提出しなければなりません。
仮に訴状が届いているのに答弁書が提出されないときや口頭弁論に出廷されなかったときには、欠席判決で処罰されることとなるでしょう。
また、回収できない場合、裁判で債務名義を取得して強制執行を申し立てることもできます。
強制執行で支払いがない代金に相当する財産などを差押さえ、競売の対象にすることで取り立てが可能です。
なお、法的手続を行う場合には、最後通告としてメールや電話で取引先に連絡を入れておきましょう。
まとめ
会社経営において、請求業務は重要な仕事の1つです。
請求書の締め日や支払期日をどのように決めればよいか迷うこともあるでしょうが、複数の取引先がある場合でも統一すると事務的な処理におけるミスを防ぎやすくなります。
なお、締め日や支払期日などは双方が納得していれば自由に決めることができますが、たとえば月末締め翌々月末払いなど支払期日までが長めに設定されれば資金繰りは悪化しやすくなってしまいます。
入金はできるだけ早く、支払いは遅くすることがキャッシュフローを円滑にするために必要です。
いずれにしても対外の信頼関係を損なうことのないように、請求する側とされる側のどちらの立場になったとしても、取り決めを守って期日を守るようにしましょう。