黒字倒産とは?その原因や対策・回避方法をわかりやすく解説

「黒字倒産」とは、損益計算書上は利益が出ていて黒字なのに倒産してしまうことであり、回避するためには事前の対策が必要といえます。

利益が出ている状態に安心しきってしまうと、気がつかないうちに黒字倒産してしまうリスクを高めてしまいますが、回避するための対策としてどのような方法があるのでしょう。

そのためにも黒字倒産してしまう原因を知り、その後の対策に役立てることが必要です。

そこで、黒字倒産とはそもそもどのような状態なのか、原因や対策、回避方法をわかりやすく解説していきます。

黒字倒産する原因

損益計算書で利益が出ているということは、売上もあがり順調といえる状態のはずです。

黒字であることは喜ばしい状態のはずが、倒産してしまうのは手元に現金が残っていないからといえます。

商品を仕入れたときの買掛債務や税金、借入金の返済などに充てる資金がなく、支払不能という状態になってしまい会社は倒産します。

その黒字倒産を起こす主な原因として考えられることはいくかありますが特に、

  1. 売掛金の回収
  2. 過剰な在庫

の2点には注意が必要です。

売掛金の回収

売掛金は、商品を売ったときその代金をその場で受け取らず、一旦は債権とし後に回収することで発生します。

ただし売上は先に計上されるため、損益計算書上では現金が増えていないまま利益を発生させる要因といえるでしょう。

もし売掛金で計上した代金の回収が遅れれば、帳簿上は黒字なのに手元にはお金がないという状況を作ることになります。

そして売掛金を回収する期日より、先に経費などの支払いが発生することも、手元の現金を不足しがちな状態にしてしまう原因です。

できるだけ売掛金は早めに回収すること、遅れないように徹底して管理するといった対策が必要といえます。

過剰な在庫

商品を販売する機会を逃さないため、ある程度は在庫を保有しておくことは必要です。

しかしその在庫が過剰になりすぎると、現金化されない資産を抱えることになりますし、管理にもコストがかかります。

そして売上に対応した在庫しか費用として帳簿上に計上されないため、帳簿上は黒字なのに手元には在庫ばかり残り、現金不足という状態を作ることになるでしょう。

売れ残った在庫は早期に処分するなど、在庫管理を徹底して行うといった対策も必要です。

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赤字でも倒産しない理由

黒字倒産してしまう会社もあれば、赤字でも倒産せず会社を存続させているケースも少なくありません。

赤字でも倒産しない会社は、

  • 必要な資金を調達できている
  • 自己資金が豊富にある
  • 現金化できる資産がある

といった特徴があります。

たとえ損益計算書はマイナスで赤字だったとしても、上記の理由により手元の資金は枯渇せず、支払いに充てるお金がある状態を保つことができているからです。

倒産は資金繰り悪化により手元の現金がなくなることで起きるため、帳簿上の利益にとらわれるのではなく、実際のキャッシュの動きを把握しておくことが大切といえるでしょう。

黒字倒産を回避するための対策

黒字倒産を回避するための対策として考えられるのは次の7つです。

  1. 資金繰り表で管理を徹底する
  2. 利益率を向上させる
  3. 無駄な在庫は処分する
  4. 売掛金比率を下げる
  5. 買掛金比率を上げる
  6. 前受金を貰うようにする
  7. 状況に応じて資金を調達する

それぞれ説明していきます。

①資金繰り表で管理を徹底する

黒字倒産を回避するためには、「資金繰り表」など作成しキャッシュフローを常に把握し続けることです。

資金繰り表とは、手元の現金の収支をまとめた表であり、実際の現金の動きを把握できます。

黒字倒産回避のためには、手元に十分な現金があるか、お金の動きに問題が発生していないか常に確認しておくことが必要です。

収入に見合わない支出の発生や、キャッシュフローの突然の悪化などが見られたときには、その原因を探り対策する必要があります。

なお、資金繰り表をチェックするときには次の3つの指標を意識することをおススメします。

  1. 自由資本比率
  2. 自己資本比率
  3. 当座比率

それぞれの指標について説明していきます。

自由資本比率

「自由資本比率」とは、会社が自由に使える現金の割合を示します。

自由資金比率(%)=フリーキャッシュフロー÷利益剰余金(自己資本)増加額×100
フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー

正常な範囲は40%以上とされているため、40%未満のときには何らかの改善が必要と判断できます。

自己資本比率

「自己資本比率」とは、返済不要の資産をどのくらい保有しているか示す指標です。

自己資本比率(%) = 純資産 ÷ 総資産 × 100

健全経営といわれるのは中小企業なら15%程度ですが、優良企業とされる40%超を目指しましょう。

当座比率

「当座比率」とは、短期の負債に対し現金化できる資産の保有の程度を示す指標です。

当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

健全経営といわれるのは130%以上とされています。

②利益率を向上させる

黒字倒産回避のためには、利益率を向上させることも必要です。

売上に対するコストを抑えれば利益率は上がり、キャッシュフローも改善されます。

利益率が低い状態で事業を続けていると、たとえば売掛金が一券未回収となるだけでも大きなダメージを受けることになってしまいます。

利益率向上に向けて、商品やサービスの価格が適正に設定されているか見直してみましょう。

③無駄な在庫は処分する

黒字倒産を回避するためには、適正な在庫管理も必要です。

無駄な在庫を多く抱えていれば、無駄なコストも発生します。

そこで、在庫管理のために「交差比率(交叉比率)」を確認してみましょう。

交差比率 = 粗利率 × 在庫回転数
在庫回転数 = 年間の商品売上高 ÷ 年間の平均在庫金額

交差比率は在庫と商品の効率性を示す指標であり、100以上が健全経営とされます。

交差比率を無視して仕入れを続ければ、不良在庫を増やしキャッシュフローを悪化させます。

④売掛金比率を下げる

黒字倒産回避のために、売掛金の比率を下げることも検討しましょう。

売掛金は将来入金されることが予定されている資産ですが、まだ現金化されていないため支払いに充てることはできません。

売掛金を多く保有し続けると、手元の資金が不足してしまい、経営破綻を起こすリスクを高めます。

売掛先の売掛金未回収リスクにも注意し、与信による倒産の危険性など把握した上で、取引量や決済方法の見直しなども検討していきます。

⑤買掛金比率を上げる

買掛金は将来支払いが予定されている負債ですが、比率を上げれば手元に現金は残ります。

入金は早く、支払いは遅くすることでキャッシュフローは改善されやすくなるため、買掛金の支払いのタイミングが遅いほど資金ショートは起きにくいと考えられるでしょう。

ただし買掛金の比率が上がれば、いずれは支払う予定がある状態が長く続きます。

そのため貸借対照表や資金繰り表の管理は適切に行うことが必要といえます。

黒字倒産の原因は入金と支払いのタイミングがズレることも大きくかかわっているため、できるだけ入金後に支払いができるようなキャッシュフローを目指すことが望ましいと考えられます。

なお、買掛金の支払いが先延ばしになっても、いずれは支払うことが必要であることは念頭に置いておくことが必要です。

⑥前受金を貰うようにする

売掛金が入金されるまでのサイトが長めに設定されている場合には、業種や業界によるものの、可能であれば「前受金」を先にもらえないか交渉してみましょう。

前受金があれば、受け取ったお金を仕入れ代金や外注費に充てることができるため、資金繰り悪化を防ぎやすくなります。

売掛金の未回収リスクも低減させることができ、資金面でも余裕を生むことができるでしょう。

特に建設業などの場合、工期が長ければ長いほど報酬を受け取るまで時間がかかります。

その間に仕入れなければならない材料費や外注費など、すべて自社が立て替えて支払うことになると大きな負担です。

仮に工期の途中で売掛先が倒産すると、それまで費やした経費は無駄となり、当然報酬も回収できなくなってしまうでしょう。

そのため可能な範囲で前受金を支払ってもらえないか交渉し、応じてもらうことができれば黒字倒産のリスクを大幅に低減させることができます。

⑦状況に応じて資金を調達する

黒字倒産危機が迫っている状態の場合、手元の資金を防ぐために資金を調達しましょう。

資金を調達する方法は主に次の3つです。

  • アセットファイナンス(保有する資産を換金してお金を増やす方法)
  • デットファイナンス(借入れなどでお金を増やす方法)
  • エクイティファイナンス(株式発行など資本増加によりお金を増やす方法)

キャッシュフローを正常化するためにも資金調達は欠かせませんが、どの方法を選ぶかが重要です。
それぞれメリット・デメリットがあるため、資金を必要とするタイミングや金額、会社の状況などを踏まえた上でどの方法を選ぶか検討するようにしましょう。

まとめ

黒字倒産を回避するためには、実際のキャッシュフローを把握し、見直すことが必要です。

そのためにも資金繰り表を作成し、現状と資金繰り悪化の原因を洗い出すことも必要となるでしょう。

キャッシュフローが健全でなければ倒産リスクを高めてしまうため、利益確保や売上向上ばかりに気を取られるのではなく、手元の資金管理も適切に行うようにしてください。

利益率が低い状態で経営を続けていると、売掛金の入金遅れや未回収が発生することで一気に経営が傾いてしまう可能性もあります。

利益が出てて業績は向上していても、手元の資金がなくなれば倒産してしまうのが黒字倒産の恐ろしいところです。

キャッシュフローの見直しはもちろんのこと、手元の資金を不足するための資金調達を適切に行い、健全経営に向けた環境整備と管理を徹底して行っていくことをおススメします。