会社倒産には予兆があるため、取引先などが潰れそうなサインを見逃さないことが重要です。
何らかの兆候が見られたとき、早期に気がつくことで連鎖倒産を防ぐことにもつながります。
そこで、会社倒産の予兆や潰れそうと感じる会社の特徴、さらに取引先に連動して連鎖倒産してしまわないためのポイントについて解説します。
中小企業経営者向け!

会社倒産とは
「会社倒産」とは、企業経営の行き詰まりで債務が弁済できなくなった状態に陥ることです。
法的な定義はなく、業績不振により借金を返済できなくなり、事業継続が難しくなった状態ととらえることができます。
以下の倒産手続を含む概念をまとめて会社倒産というため、会社破産も含まれます。
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なお、上記のうち「会社破産」は、破産法に規定されている以下のいずれかの破産手続開始原因が必要です。
支払不能 | 債務者が支払能力を欠き弁済期の債務を一般的かつ継続的に返済できない状態 |
債務超過 | 債務者の財産だけで債務完済ができない状態 |
会社倒産の予兆と12の特徴
会社倒産と呼ばれる状態に、ある日突然、陥るわけではありません。
業績が悪化し、赤字が続くなど何らかの経緯を経て、債務弁済ができない状態へと陥ることがほとんどです。
そのため取引先などが倒産するケースにおいても、倒産前に何らかの兆候が見られることが多いといえます。
主に倒産してしまう会社は、次の12の特徴などの「予兆」が見られます。
- 赤字が続いている
- 役員や経理担当者の退職が増えている
- 社長が取引先訪問を繰り返している
- 税理士等が頻繁に出入りしている
- 社長が居留守を使っている
- 希望退職者を募集している
- 給与の支払いが遅延している
- 大幅に経費削減している
- 保有資産を売却している
- 賞与が大幅に減額されている
- 大口の取引先との契約が終了する
- 売掛金の入金時期を交渉している
それぞれ説明します。
1.赤字が続いている
会社倒産の予兆として、まず決算で利益が出ずに「赤字」が続いていることが挙げられます。
赤字が続くと損失が膨らみ、銀行など金融機関から融資を受けるときの審査に通りにくくなります。
経営改善できないままでは融資を受けたり出資してもらったりできず、手元の現金が不足しがちです。
会社は赤字を原因に倒産することはありませんが、手元の資金が枯渇しショートするリスクを高めるため、倒産しやすい環境を作ってしまいます。
2.役員や経理担当者の退職が増えている
会社倒産の予兆として、財政状況を把握している役員や経理担当者の「退職」が増えることが挙げられます。
社内で誰よりも早く会社の先行きの危うを知る経営陣や経理担当者は、倒産リスク恐れて退職する可能性があります。
会社の創業期メンバーなど、社歴の長い役員や経理担当者の退職が続いているケースは注意が必要です。
3.社長が取引先訪問を繰り返している
会社倒産の予兆として、社長が取引先や金融機関などへの「訪問」を繰り返していることが挙げられます。
取引先へ仕入れに関して、価格などの交渉を行っている場合や金融機関への融資相談など、訪問を繰り返す理由はそれぞれです。
しかし社長が社内にいない時間が多くなり、本業に専念できない状態が多くなっている場合、経営が傾きかけている恐れが高いといえます。
4.税理士等が頻繁に出入りしている
会社倒産の予兆として、税理士や会計士など、専門家が「頻繁」に出入りしていることが挙げられます。
状況が深刻化しているため、税理士などの専門家に内情を確認してもらい、業務縮小など改善案を模索している可能性があります。
また、銀行への新規融資の相談やリスケジュール交渉、税負担を抑える方法などのアドバイスを受ける理由などで出入りが増えることもあるようです。
5.希望退職者を募集している
会社倒産の予兆として、「希望退職者」を募っていることが挙げられます。
社内で積極的に早期退職者を募集するようになった場合、現在の社員数のままでは人件費負担に耐えられず、経営を続けられない状況と考えられます。
人員をできるだけ減らし経費を削減したくても、一方的に解雇することや減給はできないため、従業員側の意思で退職希望する人を募集します。
ただし倒産危機に陥っていなくても、将来の市場環境の変化に対応するためなどの理由で、希望退職者を募ることはあります。
希望退職者を募集していることが必ずしも会社倒産の予兆とも言い切れないため、その他の項目などに該当しないか確認することが大切です。
6.社長が居留守を使っている
会社倒産の予兆として、社長が社内にいるにもかかわらず、「居留守」を使っているケースが挙げられます。
電話や来客があるのに、留守のフリをして対応しないのは、かなり経営が悪化している状況です。
たとえば銀行など金融機関から融資を受けているのに、返済できる見込みがなく支払い督促や催促から逃げているなどの理由が考えられます。
7.給与の支払いが遅延している
会社倒産の予兆として、従業員の給与の支払いが「遅延」していることが挙げられます。
給料日までに給与支払いがなければ、労働基準法違反に該当します。
法律に違反することは避けなければならないため、最優先ともいえる経費(給与)の支払いができないのは、資金繰りが限界であると判断できます。
8.大幅に経費削減している
会社倒産の予兆として、大幅に「経費削減」していることが挙げられます。
例年よりも経費削減を厳しく実施している場合、経費支払いに充てるお金が無くなっていることが多いといえます。
ただし経営状況が良好でも、利益を増やすためにコスト削減するケースはあるため、必ずしも経営悪化を原因とした経費削減とも言い切れません。
突然、極端な経費削減を始めた場合などは危機的な状況にあると考えられます。
9.保有資産を売却している
会社倒産の予兆として、車両や不動産などの「資産売却」しているケースが挙げられます。
事業で使用する資産でありながら、売ってお金に換え始めているときには、手元の資金が枯渇している恐れがあります。
手元の資金不足で事業用資産を売ってしまうと、事業継続に支障をきたし始めます。
もしも手元の資金不足で保有資産を現金化したいときには、将来入金予定の売掛金を現金化するファクタリングなどの活用をおすすめします。
ファクタリングとは?売掛金買取サービスのメリット・デメリットをわかりやすく解説
10.賞与が大幅に減額されている
会社倒産の予兆として、従業員の「賞与」が大幅に減額されていることが挙げられます。
経営状況が悪化したとき、従業員の基本給を減らすことは難しくても、賞与は比較的容易に減額できます。
そのため経営が傾き始めた場合、大幅に賞与がカットされるケースも少なくありません。
金銭面の待遇が改善されず、悪化する一方のときは倒産リスクが高まっていると考えられます。
ただし賞与の支払いは法的な義務ではなく、利益が十分に出ていなければ会社の経営判断で不支給になる場合や減額されることもあります。
経営の窮地に立たされているとは一概に言えないことは理解しておきましょう。
11.大口との契約が終了している
会社倒産の予兆として、「大口」の取引先との契約が終了したことが挙げられます。
中小企業などで見られがちなのが、大口の取引先が会社の主な収入源になっているケースです。
この場合、大口の取引先との契約が終了することで、一気に資金繰りが悪化してしまい、倒産に追い込まれるリスクが高くなります。
取引の依存度の高い1社との契約が終わっている場合は、警戒した方がよいといえます。
12.売掛金の入金時期を交渉している
会社倒産の予兆として、売掛金の入金時期を早めるように「交渉」していることが挙げられます。
手元の資金が足らず、入金前の売掛金を早く支払ってほしいと交渉している場合は、資金繰りが悪化していると考えられます。
反対に、買掛金の支払いについて、支払時期を遅らせる交渉をしている場合も同様です。
いずれの交渉も取引先に不信感を持たれることになり、その後の契約を打ち切られる恐れがあります。
そのリスクを承知の上で交渉することは、かなり追い込まれている状況と考えられます。
売掛金とは?買掛金との違いや管理における注意点をわかりやすく解説
取引会社に倒産予兆が見られる場合の対応
取引会社に倒産の予兆が確認できるにもかかわらず、放置していれば自社も連鎖倒産してしまうリスクを高めます。
そのため早急に、次の7つの対応を検討しましょう。
- 未回収の売掛金を確認する
- 商品・サービスの納入・提供を停止する
- 原材料の発注等を停止する
- 担保や保証人へ対応する
- 受取手形の手続をする
- 法的整理の申立てを確認する
- 自社資金を確保する
それぞれ説明します。
未回収の売掛金を確認する
取引会社に倒産予兆が見られるときには、「未回収」の売掛金はないか、いつ入金予定なのか確認しましょう。
倒産予兆が見られる取引先との取引状況や、売掛債権の詳細をまずは把握します。
未入金の売掛債権の入金予定の日付や金額、何の商品やサービスに対する支払いなのか把握しておきましょう。
保有する売掛債権の内容によって、その後の行動が変わることもあるため、最新の情報収集が重要です。
商品・サービスの納入・提供を停止する
取引会社に倒産予兆が見られるときには、商品やサービスの納入・提供を「停止」しましょう。
実際に取引先が倒産してしまうと、それ以降は納入・提供した商品やサービスの対価を受け取ることはできません。
損失を最小限に抑えるためにも迅速な行動が重要です。
納入途中の商品やサービスなどがあるときには、すでに納入・提供した状況などを記録しておき、すぐに請求できるように準備しておいてください。
原材料の発注等を停止する
取引会社に倒産予兆が見られる場合、商品販売前に原材料を発注しているときには、すみやかに「停止」しておきましょう。
取引先が倒産すれば商品を納入する必要はなくなるため、原材料を注目すると過剰に在庫を抱える恐れがあります。
ただし原材料の納入側が金銭的被害を受ける可能性もあるため、継続取引における不要部分の扱いを相談した上で決めることが望ましいといえます。
担保や保証人へ対応する
取引会社に倒産予兆が見られるときには、設定している担保や「保証人」への対応を行いましょう。
契約する際に担保や保証人を設定していれば、売掛債権が未回収となっても代金を回収できる可能性があります。
たとえば契約書に記載されている保証人などの連絡先を確認しておくなど、連絡できる準備は必要です。
受取手形の手続をする
取引会社に倒産予兆が見られるときには、受け取った「手形」の手続を始めましょう。
手形で支払い分を受け取っている場合、債権届出書を作成し、破産管財人や破産手続申立人に提出することが必要です。
この際、手形の写しを添付するため、債権の整理が終わるまで紛失しないように注意してください。
法的整理の申立てを確認する
取引会社に倒産予兆が見られるときには、「法的整理」の申立ては行われていないか確認しましょう。
法的整理は法律に従った手続であり、弁護士が代理人となって債権処理など進めます。
私的整理は裁判所が関与しない手続のため、公平性が保たれないリスクがあります。
取引先が法的整理と私的整理のどちらで手続をしているのか確認し、どこまで処理が進んでいるのか把握しておくことが必要です。
自社資金を確保する
取引会社に倒産予兆が見られるときには、「自社資金」を確保しておきましょう。
倒産により回収できない売掛金が発生すれば、自社も連鎖倒産してしまうリスクが発生します。
そのため売掛金回収が難しいと判断した時点で、自社資金を確保しておくことが必要です。
手元に現金があれば、支払いに充てるお金が足らなくなる状況を回避し、連鎖倒産を防ぐことにつながります。
連鎖倒産を防ぐポイント
取引先が倒産してしまう前には、何らかの予兆が見られることがほとんどです。
しかし事前に予兆を察知するためには、日常から注意深く取引先に関して観察することも必要といえます。
予兆を察知できず、見逃すことがあれば自社も「連鎖倒産」してしまう恐れがあるため、注意が必要です。
連鎖倒産を防ぐためにも、以下のポイントを押さえた上で対応を心掛けましょう。
- 与信管理を徹底する
- 担保提供してもらう
- 債務相殺を検討する
- 商品・サービスを回収する
- 債権を譲渡してもらう
それぞれ説明します。
与信管理を徹底する
取引会社倒産で自社も連鎖倒産してしまわないためにも、「与信管理」を徹底して行いましょう。
取引量や決済方法など、許容できるリスクを取引先の経営状況などを踏まえて判断します。
相手の「支払い能力」を事前に評価することで、貸し倒れリスクを最小限に抑えることができます。
担保提供してもらう
取引会社倒産で自社も連鎖倒産してしまわないためにも、「担保」を提供してもらいましょう。
契約締結の際に担保を提出してもらうことで、万一支払い不能に陥ったときの売掛金回収に充てることができ、金銭的な被害を最小限に抑えられます。
債務相殺を検討する
取引会社倒産で自社も連鎖倒産してしまわないためにも、「債務相殺」を検討しましょう。
取引先から回収していない売掛金が発生していると同時に、取引先に支払う買掛金もある場合には、相殺することで金銭的被害を抑えられます。
取引先と相互に債務を有するケースにおいて利用できる方法であるため、一方的に売掛債権を有するときには他の対策の検討が必要です。
商品・サービスを回収する
取引会社倒産で自社も連鎖倒産してしまわないためにも、商品・サービスを「回収」しましょう。
すでに納入している販売前の在庫商品を回収すれば、他の債権者に資産の一部として分配されることを防げます。
ただし商品を無断で回収すると窃盗罪となるため、取引先の担当者に持ち帰る「許可」を得てから実行してください。
債権を譲渡してもらう
取引会社倒産で自社も連鎖倒産してしまわないためにも、債権を「譲渡」してもらいましょう。
回収の見込みが不透明な場合でも、債権回収が可能になる方法です。
取引先の債務の弁済相手は、これまでの債権者から直接取引を行っていない第三者へ変わります。
なお、資金調達の方法で活用されるファクタリングも、保有する売掛金をファクタリング会社へ譲渡することで現金化が可能です。
売掛債権を譲渡することによる便利なサービスであるため、資金不足の際にはうまく活用することをおすすめします。
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まとめ
会社倒産の予兆はいろいろありますが、実際に潰れてしまってから慌てて行動しても、すでに売掛債権を回収できなくなります。
そのため取引先がどのような状況にあるのか、最新の情報を入手しましょう。
金銭的な被害を最小限に抑えるためにも、前もって担保や保証人を設定することなど方法はあるものの、できることには限界があります。
取引先が倒産した影響で自社も連鎖倒産してしまわないために、手元の現金を枯渇させないことが重要です。
売掛金を現金化するファクタリングであれば、手元の資金を増やすことはもちろん、未回収リスクをファクタリング会社に移転できます。
取引先倒産に不安を抱えることなく資金調達できるため、有効活用をおすすめします。
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