法人が資金調達するときに活用できる方法はいろいろありますが、従業員20人以下の中小企業などの場合には手段が限定されます。
特に会社設立前後の法人は、資金調達手段が限定されやすいため、手元の資金を増やす方法になやまされがちといえます。
資金ショートせず法人を存続させるためにも、特にスモールビジネスでは財務を良好に保つことと、適切な方法で資金調達することが求められます。
赤字続きの法人であっても、資金調達に成功し資金ショートしなければ、会社は倒産しません。
目次
法人の資金調達方法の種類
個人事業主よりも法人の方が、資金調達方法の選択肢は多いといえますが、法人の資金調達は主に次の3つに分けることができます。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
それぞれどのような資金調達方法か説明していきます。
デットファイナンス
「デットファイナンス」とは、銀行など金融機関から融資を受けることや、社債を発行することにより資金調達する方法です。
負債を増やすため「借入金融」と呼ばれており、資金調達後は返済義務を負うことになります。
デットファイナンスによる資金調達のメリットとして、主に次の3つが挙げられます。
- 候補先が豊富にある
- 節税効果が見込める
- 自由な経営が可能
デットファイナンスで資金調達する場合、候補先は民間銀行以外にも、政府系金融機関や貸金業者など多岐に渡ります。
また、元金以外に負担する利子は損金として計上できるため、節税効果につながることもメリットといえます。
調達先からも、経営に関する縛りを受けることなく自由な経営が可能です。
反対にデメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 返済義務を負う
- 利子負担が増える
- 信用力低下リスクを高める
デットファイナンスは負債を増やすため、借りたお金は返さなければならないといった返済義務を負うことになり、設定された金利に応じた利子を負担することが必要です。
さらにデットファイナンスは信用力を低下させるリスクを高めます。
返済不要のない自己資本が、資本の何割を占めるかあらわす「自己資本比率」は、小さいほど経営が不安定であることを示します。
デットファイナンスで負債が減ると自己資本比率が低下するため、信用力も下がりその後の資金調達や事業取引に影響が及ぶ可能性もあるといえるでしょう。
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エクイティファイナンス
「エクイティファイナンス」とは、新株や新株予約権付社債を発行することにより、株主資本を増やして資金を調達する方法です。
デットファイナンスでは負債を増やすため、どうしてもマイナスなイメージが強くなります。
しかしエクイティファイナンスは,負債ではなく「自己資本」を増やすいため、外部から悪印象を抱かれることはありません。
エクイティファイナンスのメリットとして、主に次の3つが挙げられます。
- 返済義務のない資金調達が可能
- 財務基盤を安定させることができる
- 経営ノウハウなどアドバイスを受けることが可能
反対にデメリットとして、次の2つが考えられます。
- 自由な経営が難しくなる
- 経営権を奪われるリスクがある
- 配当金支払いが必要
返済義務のない資金を調達できるため財務体質強固につながることがメリットである反面、中小企業などスモールビジネスでは利用しにくい方法であることがデメリットといえます。
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アセットファイナンス
「アセットファイナンス」とは、所有している資産を売却し、お金に換えることで資金を調達する方法です。
現金化する対象となる資産は、
- 固定資産(不動産など)
- 動産(自動車など)
- 流動資産(有価証券・売掛債権など)
- 知的資産(商標権・特許など)
などです。
「アセット」とは「資産」や「有価物」のことであり、将来資産が生み出すキャッシュフローをもとに資金を調達するため、次のようなメリットがあります。
- 返済義務のない資金調達が可能
- オフバランス化が可能
借金を増やすことなく資金調達できる方法であり、資産売却によるオフバランス化で財務内容が改善されることもメリットです。
反対にデメリットとして次の2つが挙げられます。
- 資産を所有していることが必要
- 調達金額が資産価値の範囲に留まる
所有する資産の信用力に依存する方法であるため、そもそも売ってお金に換えることのできる資産を所有していなければ利用できません。
また、調達できる金額も資産を買い取ってもらえる金額に留まるため、その価値を超えることはないといえます。
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デットファイナンスの資金調達方法
法人の資金調達方法のうち、「デットファイナンス」は「負債」を増やして手元のお金を増やします。
主に銀行融資など「借入れ」による資金調達であるため、候補先が多いというメリットがあります。
ただし設定された金利に従い利子を支払うことが必要となるため、返済負担が大きくなれば、資金繰りが悪化してしまうことがデメリットです。
法人が活用できるデットファイナンスの資金調達方法として、主に次の4つが挙げられます。
- 銀行融資
- 政府系金融機関の融資
- 地方自治体の制度融資
- ビジネスローン
それぞれどのような資金調達方法か、メリット・デメリットもあわせて説明していきます
銀行融資
法人が利用できるデットファイナンスによる資金調達方法として、「銀行融資」が挙げられます。
主に民間銀行や信用金庫からお金を借りる方法で、次の つの方法があります。
- プロパー融資
- 信用保証協会保証付き融資
- 証書貸付
- 当座貸越
「プロパー融資」は、信用保証協会から保証してもらうことなく、銀行独自の責任で資金を貸し付けてもらう資金調達の方法です。
貸し倒れリスクを負うのは銀行であるため、審査も厳しく実績や信用力について厳しい審査が行われます。
「信用保証協会保証付き融資」は、信用保証協会から保証してもらうことにより、銀行から融資を受ける資金調達の方法です。
万一返済できなくなった場合にも、信用保証協会が弁済を肩代わりしてくれますが、返済義務がなくなるわけではなく、保証協会に対して返済することが必要になります。
銀行だけでなく信用保証協会の審査に通過することも必要となることや、保証料の負担が必要になることも忘れないようにしましょう。
「証書貸付」は、金銭消費貸借契約書(借用証書)を銀行に差し入れて融資を受ける資金調達の方法です。
証書貸付は1年以上の長期貸付に利用されることが多く、長期に渡って返すことができる返済能力がなければ利用できません。
「当座貸越」は、定期預金口座を開設している場合、普通預金残高の枠を超えた金額を引き出すときに自動的に定期預金口座から貸越できる方法です。
中小企業の場合、大企業を主な対象とするメガバンクよりも、地方銀行をはじめとする信用金庫や信用組合のほうが頼りやすいといえます。
銀行融資のメリットは、主に次の3つです。
- 多額の資金調達が可能
- 経営に介入されない
- 顧客紹介や情報提供なども期待できる
反対にデメリットとして、次の5つが挙げられます。
- 審査に一定の時間がかかる
- 提出書類が多岐に渡る
- 創業直後など実績がなければ利用しにくい
- 利子負担を負う
- 担保や保証人を求められる
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政府系金融機関の融資
法人が利用できるデットファイナンスによる資金調達方法として、「政府系金融機関」から融資を受けることが挙げられます。
「政府系金融機関」とは、国が100%出資し、経済発展や中小企業の活動支援などを目的とする金融機関です。
営利を目的としていない金融機関であるため、創業間もない企業でも資金調達に利用できることや、低金利による借入れが可能であることがメリットといえます。
ただし提出する書類などが多く、準備に手間がかかることはデメリットといえるでしょう。
政府系金融機関の例として「日本政策金融公庫」が挙げられますが、目的に応じた融資制度を複数設けています。
たとえば起業・創業で必要な資金調達の際には、「新創業融資制度」や「新規開業資金」などの制度を活用できます。
また、「公庫融資借換特例制度」では、日本政策金融公庫から借りた事業資金の借り換えを特別に可能としています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、資金繰りに困ったときに「ゼロゼロ融資」を利用した企業の少なくありませんが、まだ十分に事業回復できていないケースも多いといえます。
経済的環境や社会的な要因などを理由に資金繰り難に陥っているときには、同額借り換えを依頼してみるとスムーズに応じてもらえる可能性があります。
政府系金融機関から融資を受けて資金調達するメリットは、主に次の3つです。
- 創業前でも申し込みできる
- 無担保・無保証で借入可能
- 制度融資より審査が迅速(2~3週間程度)
反対にデメリットとして、次の3つには留意してください。
- 審査に一定の時間がかかる
- 提出書類が多く準備に時間がかかる
- 利子負担を負う
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地方自治体の制度融資
法人が利用できるデットファイナンスによる資金調達方法として、地方自治体の「制度融資」が挙げられます。
「制度融資」とは、中小企業や小規模事業者の資金支援を目的としておおり、自治体・金融機関・信用保証組合が連携した融資です。
低金利で長期利用できるのは、行政が信用保証を斡旋するためであり、保証料や利子の一部を負担してくれる場合もあります。
調達できる金額の上限や金利は自治体により異なり、保有する自己資金や事業計画によっても違ってきます。
ただし一般的には上限3千万円程度で、金利2.1~2.7%であり、借入期間は運転資金7年以内・設備資金10年以内であることが多いといえます。
制度融資のメリットは主に次の4つです。
- 創業前でも申し込みできる
- 無担保・無保証で借入可能
- 保証料・利子の一部を補助してもらえる
- 経営相談に応じてもらえる
反対にデメリットとして、次の3つには留意しておきましょう。
- 審査に一定の時間がかかる
- 提出書類が多く準備に手間や時間がかかる
- 保証協会に対する保証料の支払いが必要
ビジネスローン
法人が利用できるデットファイナンスによる資金調達方法として、「ビジネスローン」が挙げられます。
「ビジネスローン」は、銀行融資を受けて資金調達しにくい中小企業や小規模事業者に向けて作られた金融商品です。
一般的な銀行融資の審査に通らず借入れできなかった場合でも、ビジネスローンであれば借入可能となる場合があります。
ビジネスローンの場合、審査は「スコアリングシステム」を活用しているため、時間がかかりにくくすぐに結果が出ます。
スコアリングシステムとは、借入希望の企業と、過去に資金を貸し付けた企業のデータを照合し、事業内容や信用情報など評価する仕組みです。
融資可否・限度額・金利などをスムーズに決めることができるため、仮に1社で審査に通らなかった場合でも、他社では借入可能と判断される場合もあります。
提出しなければならない必要書類も少なく、いため、スムーズに資金調達したいときに適したサービスです。
ただ、ビジネスローンは金利が高く、一時的なつなぎ資金など短期借入なら利用しやすい反面、長期利用で資金繰りが悪化するリスクを高めます。
以上のことから、ビジネスローンのメリットとして、主の3つが挙げられます。
- 審査に時間がかからない
- 審査のハードルが低い
- 無担保・無保証で借入可能
反対に次の3つのデメリットには留意しておきましょう。
- 金利が高い
- 多額の調達金額は難しい
- 長期利用で資金繰りが悪化する
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エクイティファイナンスの資金調達方法
法人の資金調達方法のうち、「エクイティファイナンス」は株式を発行し、出資してもらう方法です。
株式を投資家に購入してもらうことにより、返済義務のない資金調達できるため財務基盤が安定しやすいことがメリットといえます。
また、資金調達方法によっては投資家から経営アドバイスしてもらえたりビジネスパートナーを紹介してもらえたりといったメリットもある一方、発行する株式や投資家の株式保有するによっては経営権を脅かされる可能性があります。
また、出資者に配当金を支払わなければならないことも、デメリットに含まれるといえるでしょう。
法人が活用できるエクイティファイナンスによる資金調達方法は、主に次の3つの方法が挙げられます。
- ベンチャーキャピタル(VC)
- エンジェル投資家
- クラウドファンディング
それぞれどのような資金調達方法か、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
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ベンチャーキャピタル
法人が利用できるエクイティファイナンスによる資金調達方法として、「ベンチャーキャピタル」に出資してもらうことが挙げられます。
「ベンチャーキャピタル」とは、未上場の新興企業に出資する投資会社です。
購入した株式を上場した後で売却し、キャピタルゲインを獲得することを目的としています。
ハイリターンを狙うため、積極的な投資を行うことが特徴であるため、多額の資金調達が可能となることや、将来有望で成長率が高いと期待してもらえれば上場することも夢ではありません。
実際、ベンチャーキャピタルに有望と期待してもらえるケースは多くありませんが、投資したいと思わせるだけの事業であれば可能性はゼロではないといえます。
ただし資金投下と同時に、経営コンサルティングなど実施して企業価値を向上させることを積極的に行うため経営に関与されがちであり、自由な経営をしにくくなることがデメリットといえるでしょう。
ベンチャーキャピタルには、政府系・銀行系・証券会社系・事業会社系・独立系などいくつか種類があり、例えば事業会社系では親会社との関連事業を好みます。
独立系なら積極的な投資スタイルを好むなど、それぞれ特徴が異なるため、自社に合うベンチャーキャピタルを選ぶことも必要です。
ベンチャーキャピタルから資金を調達するメリットは、主に次の2つです。
- 返済義務のない資金調達が可能
- 経営アドバイスやビジネスパートナーなど紹介してもらえる
ただしデメリットとして、次の3つには注意しておきましょう。
- 保有株式比率が低下する
- 出資に見合うリターンを上げることを求められる
- ベンチャーキャピタルの経営方針に従うことが必要
エンジェル投資家
法人が利用できるエクイティファイナンスによる資金調達方法として、「エンジェル投資家」に出資してもらうことが挙げられます。
「エンジェル投資家」とは、起業して間もないスタートアップ企業などに出資する個人投資家のことです。
実績や業績が十分でなければ、銀行からお金を借りたくても審査に通りにくいといえます。
しかしエンジェル投資家の多くはもともと実業家や経営者だった方が多いため、将来が期待できる企業に対し資金部分のサポートをしてくれるだけでなく、さらに経営ノウハウを伝えるなどアドバイスをしてくれます。
中には自身の広い人脈を使い、最適といえるビジネスパートナーを紹介してくれるケースもあるため、スムーズな経営が期待しやすくなるといえるでしょう。
ベンチャーキャピタル同様に、上場後の売却益を得ることを目的とするエンジェル投資家もいれば、純粋に起業家を応援したいという場合もあるため、あまり経営に関与されたくないという場合には後者の投資家を選ぶことが必要です。
また、日本ではエンジェル投資家の活動を促進するため、出資した個人投資家に適用される税制優遇措置「エンジェル税制」なども設けられており、より資金を投じやすい環境も整備されています。
エンジェル投資家の多くはもともと実業家や経営者だった方が多いため、実績や業績が十分でない資金繰りに窮している企業に手を差し伸べる存在のため、「エンジェル」と呼ばれます。
エンジェル投資家から資金調達するメリットは主に次の2つです。
- 経営アドバイスやビジネスパートナー紹介などサポートしてもらえる
- 出資してもらうまで時間がかかる
対する次の3つのデメリットは踏まえておくことが必要です。
- 保有株式比率が下がる
- 多額の資金調達は難しい
- 経営に関与される可能性がある
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クラウドファンディング
法人が利用できるエクイティファイナンスによる資金調達方法として、「クラウドファンディング」の利用が挙げられます。
「クラウドファンディング」とは、インターネットを通して不特定多数の個人から、少額ずつお金を集める仕組みです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用が増えた資金調達の方法であり、公開されたビジネスやアイデアに賛同したり魅力を感じたりした個人から資金を調達します。
寄付や購入など様々な形態で資金供与されることが特徴であり、個人から資金を募る方法であるため、賛同者が増えれば多額の資金調達につながりやすいといえます。
インターネットの普及で誰でも利用しやすくなった資金調達の方法といえますが、法人であれば個人よりも信用力が高いため、より資金を集めやすいと考えられます。
他社にはない魅力的な商品やサービスを提示できれば、多くの方から共感を得ることができるといえるでしょう。
クラウドファンディングは、支援者が起案者にどのように資金を提供し、リターンを得るかで次の6つのタイプに分かれます。
- 購入型
- 寄付型
- 融資型
- ファンド型
- 投資型
- ふるさと納税型
どのタイプがよいか見極め、適切な方法を選ぶことが成功につながるポイントです。
クラウドファンディングで資金調達するメリットは主に次の3つです。
- 大きなリスクを負わず挑戦しやすい
- 起業でもファン獲得につなげることができる
- テストマーケティングに利用できる
反対に次の3つのデメリットには留意しておきましょう。
- 多くの人に賛同・共感してもらうことが必要
- アイデアやビジネスプランを盗用されるリスクがある
- 目標金額達成に至らない場合もある
クラウドファンディングとは?やり方やメリット・デメリットを簡単に解説
アセットファイナンスの資金調達方法
法人の資金調達方法のうち、「アセットファイナンス」は所有する資産を換価して資金調達する方法です。
たとえば今は使用していない工場など、土地や建物といった不動産を売却してお金に換えます。
他にも付き合いで購入したゴルフ会員権や有価証券、取引先から回収していない売掛債権なども換価の対象です。
所有する資産の範囲で資金を調達する方法のため、デットファイナンスで負担しなければならない利子や、エクイティファイナンスで支払う配当金などのコストは発生しません。
ただし売却の際に手数料などの費用がかかるため、実際には資産価値よりも手数料分、調達できる金額は少なくなることがデメリットです。
また、売却しお金に換える資産を所有していなければ資金調達できないことや、長期的に見たときに利益減少の可能性があることもデメリットといえるでしょう。
法人が活用できるアセットファイナンスの資金調達方法は、主に次4つです。
- ファクタリング
- 資産売却
- 補助金・助成金
- M&A
それぞれどのような資金調達の方法なのか、メリット・デメリットについて解説していきます。
ファクタリング
法人が利用できるアセットファイナンスによる資金調達方法として、「ファクタリング」の利用が挙げられます。
「ファクタリング」とは、商取引で発生した売掛債権をファクタリング会社に売って現金化する資金調達のサービスです。
商品やサービスを売ったとき、その代金は後日請求し、入金してもらいます。
入金されるまでの間は、売掛金として計上しますが、この売掛金は代金を販売先に請求できる売掛債権という権利です。
この売掛債権をファクタリング会社に売ることで、入金までの期日まで待つことなく、前倒しで現金化できることがファクタリングのメリットといえます。
また、ファクタリング会社の審査では、売掛債権の信用力が重視されます。
そのため銀行融資の審査に通らない赤字経営や債務超過の会社でも、ファクタリングなら審査にとおり利用できる可能性があります。
早ければ即日資金調達できる方法であるなど、メリットはいろいろある一方で、手数料が高めであることは注意が必要です。
とはいえ売掛金をファクタリング会社に譲渡すると同時に、債権の未回収リスクも移転されることから、売却後に売掛先が倒産してもファクタリング会社が責任を負います。
資金調達だけでなく、貸し倒れリスク回避や管理の手間削減にもつなげることができるため、中小企業にはぴったりの方法といえるでしょう。
以上のことからファクタリングのメリットとして、主に次の6つが挙げられます。
- 最短即日で資金調達できる
- 貸し倒れリスク回避につながる
- 審査のハードルが低め
- 赤字決算や債務超過でも利用可能
- オフバランス化が可能
- 担保や保証人を求められない
ただし次の3つのデメリットは留意しておくことが必要といえます。
- 手数料が高め
- 調達額は売掛金額までに留まる
- 審査に通るとは限らない
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資産売却
法人が利用できるアセットファイナンスによる資金調達方法として、「資産売却」が挙げられます。
売却対象となる資産は次のとおりです。
- 土地
- 工場・ビル・社宅・保養所などの建物
- 車両
- 権利など無形固定資産
1年を超えて保有し、使用している資産が固定資産ですが、たとえば使用していない工場や設備などは、保有しているだけで管理コストが発生します。
使用していないのなら、売却し現金化することでコスト削減にもつなげることができるといえるでしょう。
さらに商標権・特許権などの権利や、付き合いで購入したゴルフ会員権・有価証券なども、現金化できます。
固定資産の売却には時間がかかりがちであるものの、資産の種類によっては、比較的、資金調達につながりやすいことはメリットといえます。
また、不要な資産を保有していると発生する費用やスペースを削減できます。
特に在庫などは、保有し続けることで保管スペースや管理に費用がかかることや、価値が目減りしていくリスクを抱えた状態となります。
しかし利益に直結しないのであれば、売却することで管理コストを削減でき、保管スペースを他のことに利用しやすくなるといえるでしょう。
コスト削減や場所の確保にもつながれば、結果として効率的な経営ができます。
ただし無駄な資産があれば売却できる方法であるものの、会社設立直後の法人である場合、無駄な資産を保有していないといえます。
長年事業を営む企業なら無駄な資産も増えやすい一方で、起業直後では無駄な資産はなく、売ると事業を運営できなくなる可能性があります。
さらに資産を売っても希望する金額の調達につながらない可能性もあり、想定していたよりも安値でしか買い取られてしまうかもしれません。
そもそも調達できる金額は、売却する資産の価値の範囲に留まるため、その価値を超えた金額は調達できません。
以上のことから、資産売却で資金調達するメリットとして、次の2つが挙げられます。
- 価値が高い資産であれば多額の資金を調達できる
- コスト削減やスペース確保につながる
反対に次の3つのデメリットは留意しておきましょう。
- 調達金額は資産価値に留まる
- 取得時の金額より調達額が少なくなる場合もある
- 固定資産などは現金化まで時間がかかる
補助金・助成金
法人が利用できる資金調達方法のうち、デットファイナンス・エクイティファイナンス・アセットファイナンスのいずれにも該当しない方法が「補助金」や「助成金」による資金調達です。
国や自治体の支援制度である「補助金」や「助成金」は、いずれも返済義務のない資金調達が可能となります。
経営権を失うこともなく、元本返済で資金繰りが悪化するリスクなどもありません。
万一会社が倒産してしまった場合でも、経営者が返済義務を負う心配もなく、経営権を脅かされることもないため、安心して手元のお金を増やすことができることがメリットです。
返済不要の資金調達が可能になることが補助金・助成金の最大のメリットである一方で、資金を受け取るまで多大な労力が時間や労力を費やすことになるのはデメリットといえます。
事業計画書作成・登記簿謄本の取り揃えなど、複数の面倒な手続をクリアすることが必要となり、審査にも時間がかかるためすぐに資金調達できるわけではありません。
そもそも募集要項や支援目的に合致していなければ申し込むことはできず、審査基準を満たすことはもちろん、タイミングが合わなければ募集が終了しているというケースもめずらしくないといえます。
制度によっては1度きりのものもあれば、継続募集しているものもあり、募集時期や条件なども変更される場合があります。
最新の情報を常に収集するように心がけることが必要であることと、後払いで資金を受け取ることになるため、一時的に立て替えが必要になることは理解しておきましょう。
補助金や助成金で資金調達するメリットは、主に次の2つです。
- 返済不要の資金調達が可能
- 制度によって多額の資金調達ができる
対する次の3つのデメリットには十分に注意しておきましょう。
- 条件を満たさなければ申請できない
- 書類準備に手間や時間がかかる
- 実際に資金を調達するまで時間がかかる
M&A
法人が利用できる資金調達方法のうち、デットファイナンス・エクイティファイナンス・アセットファイナンスのいずれにも該当しない方法として、「M&A」も挙げられます。
M&Aとは、「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の頭文字を略した呼称であり、企業の合併買収のことです。
2つ以上の会社が1つになることであり、資金調達の方法として挙げられるのは会社や事業の「売却」といえます。
会社の経営権や事業の資産や権利・義務などを売却することであり、会社をまとめて売るなら「株式譲渡」、事業だけ売るなら「事業譲渡」を行います。
会社や事業の売却においては、仲介業者に買い手を探してもらう方法が一般的といえますが、成功すれば多額の資金調達につながりやすいといえます。
しかし会社や事業を売却するときには、時間もコストもかかります。
仲介会社に依頼すると、手数料として数百万円など手数料を請求されることになり、すぐに見つからなければ売却まで数年かかってしまうこともデメリットです。
まとめ
法人の資金調達方法は、負債や資本を増やすことの他、所有している資産を現金化することなどがあります。
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、何のために資金が必要なのか、いつ・いくら調達しなければならないかなどを踏まえた上で選ぶようにしましょう。
すぐに手元のお金を増やすことが必要なときや、銀行融資の審査に通らないときにはファクタリングがおすすめです。