コロナ融資の返済が始まったものの、返せないときに検討したいのが借り換えです。
そこで、コロナ融資の借り換えを検討する方に向けて、日本政策金融公庫と民間銀行それぞれに対応できる制度について詳しく解説します。
中小企業経営者向け!

コロナ融資とは
「コロナ融資」とは、新型コロナウイルスが流行した影響により、資金繰りが厳しくなった事業者を支援するための事業資金貸付制度です。
特徴として、利子補給により3年間は「実質無利子」で借入れが可能であり、保証も信用保証協会が行うため無担保で融資を受けることができます。
売上激減などで苦しい状況に追い込まれた事業者が多く利用した融資制度であり、返済までの据置期間も「最長5年」で設定できるなどの特徴がありました。
しかし据置期間終了までの間に業績を回復させたくても、長引くコロナ禍で多くの事業者が完全回復に至っていません。
コロナ融資により資金繰り悪化は乗り越えられたとしても、猶予期間終了後に返済できず窮地に追い込まれるケースが増えることが懸念されています。
コロナ融資の返済開始時期
実質無利子・無担保で借入れができるコロナ融資は、据置期間も終了し元金返済もスタートしています。
コロナ禍が長引いたことだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻や原油・物価の高騰に円安など、様々なことが影響し十分に業績が回復していない事業者は少なくありません。
返済が厳しいのであれば「同額借り換え」で据置期間(返済猶予期間)を延ばすことを検討しましょう。
ただしコロナ融資は、借入先が日本政策金融公庫と民間銀行のどちらかにより、活用できる借り換え制度は異なるため注意が必要です。
公庫融資借換特例制度とは
「公庫融資借換特例制度」とは、事業者の日本政策金融公庫から受けた融資について特別に借り換えを可能とする制度です。
経済的環境や社会的な要因などで資金繰り難に陥っている場合、日本政策金融公庫に同額借り換えを依頼しましょう。
公庫融資借換特例制度は日本政策金融公庫で受け皿として用意されている制度であるため、想定していたよりもスムーズに借り換えに応じてもらえる可能性があります。
利用限度額は適用した特別貸付制度の貸付限度額で、返済期間は適用した特別貸付制度で異なり、新型コロナウイルス感染症特別貸付であれば20年以内(うち据置期間5年以内)です。
また、公庫借換特例制度で借り換え可能であるのは、政策金融公庫からの融資に限定されています。
ただし、コロナ融資といわれる「新型コロナウイルス感染症特別貸付」だけではなく次の融資も対象です。
- セーフティネット貸付制度の経営環境変化対応資金および金融環境変化対応資金
- 東日本大震災復興特別貸付
- 令和元年台風第19号等特別貸付
- 令和2年7月豪雨特別貸付
- 企業再生貸付制度の事業再生
- 企業再建支援資金(一部の対象およびシンジケートローン特例を除く)
- 企業活力強化貸付制度の事業承継・集約・活性化支援資金
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付
- 新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付
- 挑戦支援資本強化特別貸付
公庫融資借換特例制度について、次の2つを説明します。
- 公庫融資借換特例制度のメリット
- 公庫融資借換特例制度の注意点
公庫融資借換特例制度のメリット
「公庫融資借換特例制度」は、資金繰りが困難な状況において、事業者が自助努力で再建を支援するための支援をする制度です。
コロナ融資の返済が厳しい場合にも活用したい制度といえますが、そのメリットとして次の3つが挙げられます。
- 据置期間を延長できる
- 信用格付けを落とさない
- 資金繰りが安定する
それぞれ説明ます。
据置期間を延長できる
公庫融資借換特例制度を活用することで、据置期間を「延長」することができます。
貸付ごとに返済期間は異なりますが、新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付の返済期間は20年・15年・10年・7年・5年1か月となっています。
コロナ融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)の場合、返済期間20年以内で据置期間5年以内であるため、借り換えにより据置期間を引き延ばすことが可能です。
信用格付けを落とさない
公庫融資借換特例制度を活用しても、「信用格付け」を落とすことはありません。
本来、毎月の返済額を減らすために金融機関に「リスケジュール」を交渉すると、貸し付け条件変更により信用格付けは落ちてしまいます。
そのため新規で借入れしたくても、リスケジュールを依頼した金融機関の審査には通らなくなると考えられます。
しかし公庫融資借換特例制度の借り換えであれば、毎月の返済負担額を減らした場合でも信用格付けに影響しないことがメリットです。
資金繰りが安定する
公庫融資借換特例制度を活用することで、資金繰り「安定」につなげることができます。
新型コロナウイルスの感染対策挑戦支援資本強化特別貸付の利率は、業績に連動して設定されるため、たとえば利益が出ていない赤字企業であれば利率を引き下げられます。
さらに無担保・無保証人・期限一括返済であるため、最終期限まで利子のみ支払えば問題ないことから、資金繰り安定につながります。
公庫融資借換特例制度の注意点
日本政策金融公庫から借りたコロナ融資の返済が厳しいときでも、公庫融資借換特例制度で借り換えることで、資金繰り難を逃れることができる可能性はあります。
ただし次の2つには注意した上での活用が必要です。
- 金利が高くなる場合がある
- 中小企業事業のみ対象
それぞれ説明します。
金利が高くなる場合がある
公庫融資借換特例制度を活用することで、「金利」が高くなる場合もあります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付を以前借りた「タイミング」により、借り換えで金利が上がる可能性があるため、日本政策金融公庫に事前に相談したほうが安心です。
中小企業事業のみ対象
公庫融資借換特例制度は、「中小企業事業」のみが対象であるため、個人事業主が利用する「国民生活事業」は対象になりません。
「国民生活事業」の場合、借り換えを希望する旨を日本政策金融公庫に伝え、通常の融資を申し込むことになります。
コロナ借換保証とは
「コロナ借換保証」とは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、借金が増えてしまい資金繰り難に陥った事業者を支援するための制度です。
公庫融資借換特例制度は日本政策金融公庫から借りた融資に限定されるため、民間の銀行から借りたコロナ融資は対象ではありません。
しかしコロナ借換保証であれば、民間の銀行などから借りたコロナ融資や、他の保証付融資からの借り換え、事業再構築などの資金需要にも対応できます。
コロナ借換保証制度の対象となるには、以下に該当し、経営行動に係る計画を策定した中小企業です。
- セーフティネット保証4号(SN4号)の認定を受けている中小事業者
- セーフティネット保証5号(SN5号)の認定を受け、次のいずれかに該当する中小事業者
①売上高等減少率が15%以上
②売上高等減少率が15%未満であるものの、最近1か月間に対応する前年同月の売上高が令和2年1月29日時点の直近月平均売上高などと比較して15%以上減少している - 次のいずれかに該当する中小事業者
①最近1か月間の売上高が前年同月の売上高と比較して15%以上減少している
②最近1か月間の売上高が前年同月の売上高と比較して5%以上減少し、かつ前年同月の売上高が令和2年1月29日時点における直近の決算の月平均売上高等と比較して15%以上減少している
コロナ借換保証の保証限度額は1億円で、保証期間10年以内・据置期間5年以内です。
特徴的なのは借り換えの際に必要となる事業者が負担する保証料が「0.2%等」であるといえます。
100%保証の融資については100%保証での借り換えできますが、「経営行動計画書」の作成や金融機関の継続的な「伴走支援」が必要です。
コロナ借換保証についてさらに詳しく、次の2つについて説明します。
- コロナ借換保証のメリット
- コロナ借換保証の注意点
コロナ借換保証のメリット
新型コロナウイルス感染症の影響により、コロナ対応として実施されたコロナ融資の返済が厳しくても、コロナ借換保証を活用すれば業績回復までの資金繰りを安定させられます。
民間銀行からコロナ融資を受けた事業者で、返済負担が重いと感じているときには利用したい制度といえますが、コロナ借換保証を活用するメリットは主に次の4つです。
- 一般融資にも適用できる
- 据置期間を延長できる
- 保証料が割安
- 利益率減少でも利用できる
それぞれ説明します。
一般融資にも適用できる
コロナ借換保証のメリットとして、「一般融資」にも適用できることが挙げられます。
民間のコロナ融資の上限は6千万円でしたが、コロナ借換保証の補償限度額は1億円であるため、コロナ融資を超えて通所の融資にも適用できることを意味します。
コロナ融資で6千万円借入れしており、通常の融資でも4千万円借りているのなら、2つの融資合計1億円を借換制度の対象にできます。
据置期間を延長できる
コロナ借換保証のメリットとして、据置期間を「延長」できることが挙げられます。
コロナ融資の返済開始時期が2023年7月から2024年4月に集中することが予想されていますが、返済が始まると資金ショートリスクが上がる事業者も少なくありません。
しかしコロナ借換保証の保証期間は10年以内、据置期間5年以内であるため、さらに返済開始までの時期を延ばせます。
保証料が割安
コロナ借換保証のメリットとして、保証料が割安であることが挙げられます。
金融機関からお金を借りるときには保証料を負担することが必要ですが、通常であれば0.85%前後です。
しかしコロナ借換保証の保証料は、「0.2%等」となっておりかなり割安といえます。
なお、「0.2%」ではなく「0.2%等」であるのは、満たす利用要件によって割合が変わるからです。
売上または利益率の減少が5%以上で、セーフティネット4号または5号の認定取得の要件を満たす場合には「0.2%」が適用されます。
しかし売上または利益率の減少が5%以上という要件のみの場合には、「0.2%~1.15%」となるため注意しましょう。
利益率減少でも利用できる
コロナ借換保証のメリットとして、利益率減少でも利用できることが挙げられます。
仮に売上減少の要件を満たさなくても、利益率が低下していれば対象となります。
従来までの信用保証協会の保証料を大幅に引き下げる「伴走支援型特別保証制度」は前年同月比売上が「20%以上」減少していなければ利用できませんでした。
しかしコロナ借換保証では、20%以上減少ではなく「5%以上」減少していれば利用できるなど、要件が緩和されています。
さらに利益率の減少についても、「売上高総利益率」と「売上高営業利益率」のいずれかが要件を満たしていれば問題ありません。
コロナ借換保証の注意点
コロナ借換保証で資金繰り改善を図る場合、次の2つには注意した上で検討しましょう。
- 売上または利益率減少が必要
- 経営行動計画書と伴走支援が必須
それぞれ説明します。
売上または利益率減少が必要
コロナ借換保証で資金繰り改善を図る場合、売上または利益率が減少していることが必要です。
直近の売上とコロナ前の売上を比べたときに、5%以上売上が減少しているなどの要件を満たさなければ利用できません。
経営行動計画書と伴走支援が必須
コロナ借換保証で資金繰り改善を図る場合、経営行動計画書と金融機関の伴走支援が必須となります。
金融機関による伴走支援とは、試算表や決算書を提出し金融機関と面談の上、融資申し込み後に経営行動計画書を作成します。
経営行動計画書には、現状・財務分析・事業を回復・改善させるために行う具体的なアクションなどを記載することが必要です。
面談のもとで作成した経営行動計画書をもとに金融機関が審査を行い、自治体や保証協会に金融機関から問い合わせが入り、最終的に融資が実行されます。
融資が実行されれば終わりではなく、借り換え後も金融機関による継続した伴走支援が続きます。
伴走支援については、原則、5年間に渡り四半期ごとに計画の進捗状況を確認するなど、収益を改善させるまでの支援が続くことになります。
自社のみで判断するのではなく、金融機関も確認作業に加わることや、「PDCA」を回すことにより業績を改善させるスピードをはやめられます。
また、5年間は金融機関と継続して事業の環境や業績などに関して、話し合い確認する作業が続くため、理解を深め信頼関係を構築できます。
まとめ
多くの事業者がコロナ融資により資金を借入れたものの、据置期間終了後の返済が厳しいと感じる事業者も少なくありません。
このような場合に、コロナ融資の返済スタートを遅らせる手段として検討できるのが借り換えです。
ただし日本政策金融公庫と民間の銀行のどちらからコロナ融資を受けたかによって、活用できる制度は異なります。
また、メリットもあれば注意点もある制度であるため、それぞれの内容を理解した上で検討してください。
中小企業経営者向け!

