売掛債権とは?種類や未回収を回避する方法をわかりやすく解説

売掛債権とは、商品やサービスを販売した代金を請求できる権利です。

事業者間における商取引において発生する債権であり、一定期間の支払いをまとめて回収する方法と言い換えることもできます。

売掛債権が発生する信用取引は後払いによる代金のやり取りとなるため、確実に回収することが必要であることと、未回収になれば倒産リスクが高まることも理解が必要です。

そこで、売掛債権について、種類や未回収を回避する方法をわかりやすく解説していきます。

売掛債権とは

「売掛債権」とは、商品やサービスの販売に伴い、代金の支払いを請求する権利のことです。

事業者間の商取引で、商品やサービスの受け渡しがある度に代金の支払いをすれば、手間とコストがかかります。

そのため一定期間に発生する複数の取引を後日まとめて請求し、事務手続などの効率化が図れる仕組みとして活用されています。

売掛債権は、将来、金銭を受け取ることができる権利であるため、会計上は資産とみなされます。

ただし半永久的に行使できる権利ではなく時効があることや、後払いを容認する信用取引の1つであるため、取引先の経営状態により回収できなくなるリスクがあることは留意が必要です。

売掛債権の種類

売掛金の文字とお金とビジネスマン

売掛債権には、以下の3つの種類があります。

  1. 売掛金
  2. 受取手形
  3. 電子記録債権

それぞれの債権について説明します。

売掛金

「売掛金」とは、商品やサービスを販売したときの売上代金を、将来受け取ることができる権利です。

事業者間で合意した条件で契約を結び、決められた期間で発生した取引の代金を後日請求し、期日までに支払います。

売掛金が支払われるまでの期間は販売側が提示し、契約書で合意することが多いといえますが、たとえば「月末締め・翌月10日払い」「15日締め・月末払い」など任意で決まります。

後払いによる取引であり、請求書発行のもと金銭のやり取りが進むため、事業者間に信頼が保たれなければ成立しない信用取引です。

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受取手形

「受取手形」とは、商品やサービスを販売した代金を、約束手形などの証書で取引するときの債権です。

手形には、約束手形と為替手形の2種類がありますが、約束手形は2者間で交換される手形であり、記載された支払日に現金化できます。

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電子記録債権

「電子記録債権」とは、電子債権記録機関に電子記録することで、発生や譲渡などの効力が発生する金銭債権です。

電子債権記録機関は、利用者の請求に基づいて電子記録や権利内容の開示などを行う登記所のような役割を担います。

一般的な法務局で管理される登記簿と異なるのは、電子債権記録機関で開示権限を持つのは利害関係者と金融機関のみであることです。

自動的に現金化される債権であるため、受取手形のように期日を意識し、金融機関に足を運ぶ必要はありません。

また、印紙税が課税されないことや、ペーパーレス化や業務効率化につながる債権ともいえます。

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売掛債権から経営状況を把握できる指標

データと電卓

売掛債権を基準に、経営状況を把握できる指標として、次の2つが挙げられます。

  1. 売上債権回転率
  2. 売上債権回転期間

それぞれ説明します。

売上債権回転率

「売上債権回転率」とは、売掛債権の回収のはやさをあらわす指標です。

売上債権回転率=売上(年間)÷売上債権(年平均)

効率的に債権を回収できているか示すため、回転率が高ければ回収までスムーズであると判断できます。

良好なキャッシュフローを保つ上では回転率が高いほうが望ましいといえるものの、業界や業種によってお金の動きは異なるため、目安となる数値にも違いがあります。

ただ一般的に、平均2か月1回以上回収できていることを示す売上債権回転率の目安は「6以上」です。

売上債権回転期間

「売上債権回転期間」とは、売上に対する売掛債権の割合であり、どのくらいの期間で商品やサービスを販売した代金を回収できているか示す指標です。

売上債権回転期間(日)=売上債権(売掛金+受取手形)÷(売上÷365日)
売上債権回転期間(月)=売上債権(売掛金+受取手形)÷(売上÷12か月)

期間が短いほど現金化まで時間がかかっていないことをあらわすため、健全で効率的な資金繰りが保たれていると判断できます。

反対に期間が長い場合、資金繰りが厳しく経営状況が悪化しやすい状態にあると留意し、管理体制の見直しなどが必要です。

売掛債権が発生するメリット

売掛債権が発生する取引を行うメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  1. まとめて請求できる
  2. 取引先が増える
  3. 手元にお金がなくても取引できる

それぞれ説明します。

まとめて請求できる

売掛債権が発生する取引を行うメリットとして、一定期間の取引分の代金をまとめて請求できることが挙げられます。

取引の都度、代金を請求し、支払ってもらえば事務手続が煩雑になります。

しかし一定期間の取引を一括で支払ってもらえれば、会計処理や現金管理などの事務作業や、手数料の削減など売上管理を効率化できます。

取引先が増える

売掛債権が発生する取引を行うメリットとして、取引先が増えることが挙げられます。

手元に現金がなくてもまとめて仕入れや購入ができるため、購入側の購買意欲を高め販売機会を増やせます

後払いで仕入れることを希望する事業者などが、新規の取引先となりやすく、契約数増加につなげることができるでしょう。

手元にお金がなくても取引できる

売掛債権が発生する取引を行うメリットとして、手元にお金がなくても取引できることが挙げられます。

決められた期間の取引を一括請求するため、商品納品やサービス提供のタイミングに現金がなくても、時間をかけて準備できます

急な発注依頼を受けてすぐに商品を仕入れたいときなど、手元にお金がなくても取引できることはメリットといえます。

売掛債権が発生するデメリット

売掛債権が発生する商取引には多くのメリットがある一方で、次の2つのデメリットには留意が必要です。

  1. 与信結果により制限が必要になる
  2. 資金繰り悪化の要因になる

それぞれ説明します。

与信結果により制限が必要になる

売掛債権が発生する取引を行うデメリットとして、取引先に対する与信結果によって、取引に制限が必要になることが挙げられます。

取引先との信頼関係が成立していなければ、後払いによる信用取引はできません。

そのため売掛債権が発生する商取引をしたくても、取引先の与信調査で経営状況が悪化している場合や、財務状態が悪いときには取引を断ることになるでしょう。

現金決済への変更や、信用取引で許容する取引金額や取引量などを制限するといった対応が求められます

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資金繰り悪化の要因になる

売掛債権が発生する取引を行うデメリットとして、後払いで代金を受け取る以上は、資金繰り悪化の要因になることが挙げられます。

代金を支払ってもらうまで、1か月や2か月など一定期間空いてしまいます。

そのため先行する仕入れ代金や固定費などに充てるお金が足らなくなるなど、資金繰りは悪化しやすくなります。

また、後払いでの取引に応じ、商品を納品した後で、取引先の経営状況が悪化し支払い不能となるリスクもゼロではありません。

仮に取引相手として依存している取引先が倒産すれば、自社も連鎖倒産する恐れは留意が必要です。

売掛債権の未回収リスクを防ぐ方法

通帳の入金の指差し

売掛債権は将来、計上した売上分の代金を受け取る権利であるため、確実に回収することが必要です。

しかし取引先の経営状況が悪化し、期日に支払いがされないなど、未回収となるリスクはゼロではありません。

そこで、売掛債権の未回収リスクを防ぐために、以下の3つを検討しましょう。

  1. 売掛債権の時効に注意する
  2. 売掛保証サービスを利用する
  3. ファクタリングを利用する

それぞれ説明します。

売掛債権の時効に注意する

売掛債権の未回収リスクを防ぐ方法として、法律上の「時効」に注意することが挙げられます。

請求書を発行し、取引先へ渡したのにもかかわらず、支払いがないまま時が過ぎればいずれ時効を迎えます。

売掛債権は、以下のいずれか早いタイミングで時効となるため、消滅時効を援用させない対策が必要です。

  • 債権者が権利を行使できると知ってから5年
  • 債権者が権利を行使できるときから10年

支払いを催促し続け、応じてもらえないときは裁判所を通じた支払督促や民事調停の申立てや、残高確認書による債務の承認を図ることを検討しましょう。

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売掛保証サービスを利用する

売掛債権の未回収リスクを防ぐ方法として、売掛保証サービスの利用などが挙げられます。

「売掛保証サービス」は、取引先の倒産や入金の滞りで回収できなくなる状況に備える保証です。

保証会社に保証料を支払うことで、万一、取引先からの入金がなかった場合に保証されます。

ただし取引先に対する審査があるため、取引先の財務状況が芳しくなければ引き受けてもらえない可能性があります。

ファクタリングを利用する

売掛債権の未回収リスクを防ぐ方法として、ファクタリングを利用することが挙げられます。

「ファクタリング」とは、売掛金をファクタリング会社へ売却し、現金化する金融サービスです。

取引先から売掛金が支払われる予定の期日より前に、売掛金を現金化できます。

仮に現金化の後に取引先が倒産し、売掛金を回収できなくなっても、その責任を利用者が負う必要はありません。

早期に売掛金を現金化できるため、未回収を防ぐ対策へつなげることができます。

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まとめ

売掛債権とは、商品やサービスを販売したときの代金を後で請求できる権利です。

現金決済のように都度金銭のやり取りが発生せず、コスト削減や事務手続の簡素化につながる仕組みともいえるでしょう。

手元のお金がなくても商品などを仕入れることができるため、取引先の幅を広げられることもメリットです。

しかし信用取引となるため、取引先の経営次第では契約できない場合や、代金を回収できなくなる恐れもあります。

ファクタリングを使えば売掛金を前倒しで回収できるため、代金の未回収を防ぐ対策に役立てることも可能です。

手元の資金不足を解消できる方法でもあるため、ファクタリングの利用に関してはPMGにお気軽にご相談ください。