資金調達にはいろいろな方法がありますが、出資・融資・資産の現金化の3つに分類されます。
いつまでにどのくらいのお金が必要なのか、何に充てる資金なのかによって、選ぶべき資金調達方法は異なります。
そこで、資金調達について、その方法や種類ごとのメリット・デメリット、選び方を徹底解説していきます。
目次
資金調達とは
「資金調達」は、会社経営や事業運営において必要なお金を、外部から集めることです。
特に会社経営において資金調達は欠かせないことであり、怠れば手元の資金が足らなくなり、たとえ利益が出ていて黒字だとしても倒産する恐れがあります。
そこで、資金調達について以下の4つの項目に関する理解を深めましょう。
- 必要性
- 目的
- 金額
- 種類
それぞれ説明します。
必要性
資金調達の「必要性」として、手元に十分なお金がなければ事業継続が難しくなることが挙げられます。
創業期であれば、会社設立や新規開業に向けたお金が必要です。
開業後も運転資金がなければ、実績を作る前に事業継続を断念しなければなりません。
売上が順調に上がった場合でも、追加で材料や商品を仕入れるのであればお金が必要です。
掛取引においては、計上した売上分の代金が入金されるまで1~2か月間が空きます。
その間の運転資金がなければ、仕入れ代金だけでなく家賃や給与などの固定費、借入金返済などの支払いができなくなり、会社は倒産してしまいます。
そのため資金調達は、会社や事業を継続する上で、欠かせない業務であると認識しておくことが必要です。
目的
資金調達の「目的」は、ビジネスにおいては設備資金または運転資金に充てるお金が必要だからといえます。
新規事業をスタートするときや、事業を拡大する場合には新たな設備を導入することとなるでしょう。
その際、まとまった多額の資金が必要となります。
また、先にも説明したとおり、売上や利益は十分あっても売掛金が入金されるまでの間、手元の資金を枯渇させることはできません。
支払いに充てる資金が必要であるため、不足するよりも前に調達し、お金の流れを止めないようにすることが必要です。
金額
資金調達する目的は会社や事業によって異なるものの、先に説明したとおり次の2つです。
- 設備投資
- 運転資金
それぞれの調達額の目安や考え方について説明していきます。
設備投資
設備資金の資金調達においては、まず投じたお金を何年で回収できるのか、次の計算式で算出してみましょう。
回収期間=設備投資額÷設備投資による年間キャッシュフロー 設備投資による年間キャッシュフロー=設備投資による利益+設備投資に関する減価償却費 |
そもそも設備投資する目的は収益を上げることであり、回収原資は「利益(キャッシュフロー)」となります。
たとえば銀行からお金を借りて資金調達するのなら、年間の返済額が上記キャッシュフローの金額内であることが望ましいといえます。
簡易キャッシュフロー=当期純利益+減価償却費(毎年減少させていく価値の経費計上) 年間返済額 <= 簡易キャッシュフロー |
運転資金
運転資金の資金調達においては、月商の3か月分を目安に確保しておくことが必要です。
銀行から融資を受ける場合など、業種や業績などによって3か月分よりも融資限度枠が多くなることもあるでしょう。
ただし目安となるのは月売上の3倍の額です。
また、業種によるものの創業期の事業が軌道に乗るまでの期間は6か月程度が目安となります。
そのため事前に運転資金に充てるお金を準備しておくことが必要といえるでしょう。
種類
資金調達の種類は、大きく次の3つに分けることができます。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
それぞれ簡単に説明します。
デットファイナンス
資金調達の種類のうち、「デットファイナンス」とは負債を増やす調達方法です。
デットファイナンスは「借入金融」と呼ばれる方法で、銀行から融資を受けたり社債を発行したりなどの方法で負債を増やし、手元の資金を増やします。
言い換えれば借金が増えるため、資金を調達した後は元金と利子を返済する義務を負うことになります。
借入れによる資金調達で返済負担が重くなりすぎれば、資金繰りが悪化するだけでなく、ステークホルダーからの信用も失います。
ただし支払った利子は損金計上が可能となるため、節税効果は期待できるでしょう。
エクイティファイナンス
資金調達の種類のうち、「エクイティファイナンス」は株式発行などで自己資本を増やす調達方法です。
「エクイティ」とは株式資本や自己資本のことであり、新しく株式を発行して資本を増やす資金の調達方法であることから「エクイティファイナンス」と呼ばれています。
借入れではなく、資本を増やすため返済義務のないお金を調達できることや、財務体質強固につながります。
ただし発行した株式を投資家がどのくらい保有するのか、割合によって経営権を脅かされたり奪われたりする恐れがあると留意しておきましょう。
また、投資家に関与されるなど、自由な経営ができない可能性もあります。
アセットファイナンス
資金調達の種類のうち、「アセットファイナンス」は資産換価による調達方法です。
借金を増やさず、経営権を脅かされることなく資金を調達できる方法であり、対象となる資産も不動産・車両・設備・機械・有価証券・ゴルフ会員権・特許権・売掛債権など多岐に渡ります。
資産を売ってお金に換える方法である以上は、調達額が資産価値や信用力に依存すると理解しておく必要はあります。
デットファイナンスの資金調達
資金調達の種類は先に説明したとおり大きく3種類に分類されますが、そのうちの1つが「デットファイナンス」で、「借入金融」と呼ばれる負債増加による調達方法です。
デットファイナンスについて、以下の3つを説明していきます。
- 方法
- メリット
- デメリット
デットファイナンスとは?メリット・デメリットや種類ごとの違いを解説
方法
デットファイナンスによる資金調達の方法は、主に以下の銀行から融資を受ける方法などが例として挙げられます。
- 民間銀行
- 政府系金融機関
- 消費者金融
融資を受ける場合も、以下のとおり様々なお金の借り方があるといえるでしょう。
- プロパー融資
- 不動産担保融資
- 売掛債権担保融資
- 信用保証協会保証付き融資
- 制度融資(自治体・信用保証協会・銀行)
- ビジネスローン
- 手形割引
また、社債を発行する方法もデットファイナンスに含まれます。
メリット
デットファイナンスのメリットは、主に次の4つです。
- 自由に経営できる
- 金融機関と信頼を構築できる
- 利子負担による節税効果が期待できる
- 資金計画を立てやすい
デメリット
デットファイナンスのデメリットは、主に次の5つです。
- 審査が厳しい
- 返済義務を負うことになる
- 利息を支払わなければならない
- 借金が増える
- 自己資本比率を低下させる
エクイティファイナンスの資金調達方法
「エクイティファイナンス」は、主に新株を発行し、出資してもらう資金の調達方法です。
デットファイナンスは負債を増やすため、お金を借り過ぎれば借金返済に追われることになってしまいます。
それに対しエクイティファイナンスは資金を投じてもらう方法のため、自己資本を増やし、外部に悪印象を与えることもありません。
エクイティファイナンスについて、以下の3つを説明していきます。
- 方法
- メリット
- デメリット
エクイティとは?デッドファイナンスとの違いやメリット・デメリットを解説
方法
エクイティファイナンスは資本を増やすため、主に次の4つの方法から選ぶことになります。
- 公募(時価発行増資)
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
- 転換社債型新株予約権付社債
メリット
エクイティファイナンスのメリットは、主に次の3つです。
- 返済義務のない資金を調達できる
- 経営ノウハウやアドバイスなどのサポートが期待できる
- 取引先を紹介してもらえる可能性がある
デメリット
エクイティファイナンスのデメリットは主に次の4つです。
- 投資家に将来性を認めてもらう必要がある
- 自由な経営を奪われる恐れがある
- 出資に見合うリターンを上げなければならない
- 経営権を奪われる恐れがある
アセットファイナンスの資金調達方法
「アセットファイナンス」とは、資産を売ってお金に換えることにより、資金を調達する方法です。
換価の対象となる資産は不動産や自動車などはもちろんのこと、回収前の売掛債権や特許などの権利、有価証券なども含まれます。
アセットファイナンスについて、以下の3つを説明していきます。
- 方法
- メリット
- デメリット
方法
アセットファイナンスは、保有または所有する資産を換価する資金調達であり、次の3つの方法があります。
- ファクタリング
- 保有資産の売却
- リースバック
ファクタリングとは?仕組み・手数料の目安や注意点について簡単に解説
メリット
アセットファイナンスのメリットは、主に次の5つです。
- 借金が増えない
- 最短で即日に資金調達できる
- 審査の難易度が低い
- 資産管理・コストの負担が軽減される
- オフバランス化で評価が上がる
デメリット
アセットファイナンスのデメリットは、主に次の3つです。
- 売却資産の種類によっては時間がかかる
- 買いたたかれる恐れがある
- 調達額は資産価値に依存する
資金調達方法の選び方
資金調達の方法は種類が多く、どの方法を選ぶべきか迷いがちといえますが、以下の7つを確認した上で選択しましょう。
- 使途
- タイミング
- 難易度
- コスト
- 成長ステージ
- 規模
- 取引形態
それぞれの選び方について説明していきます。
使途
資金調達の方法は、集めたお金を何に使うのか、「使途(使い道)」によって選びましょう。
設備資金と運転資金のどちらを準備することが必要なのか、資金使途によって調達方法の選択は大きく変わります。
まず設備資金では、多額の資金を必要とするため、資産の現金化では不足が生じる可能性があります。
求める額を上回る価値の資産を保有していれば、資産換価により多額の資金を調達できるものの、多額の資金を必要とする場合には政府系金融機関である日本政策金融公庫や民間銀行の融資を頼ることが一般的です。
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タイミング
資金調達の方法は、いつまでにお金を集めなければならないのか、使うタイミングによって選びましょう。
たとえば、急いで資金を調達しなければならない事態に陥っているとき、銀行融資を頼っても審査に時間がかかってしまいます。
この場合、ビジネスローンであれば最短即日融資を受けることができる可能性があります。
借金を増やしたくないなら、売掛金を現金化するファクタリングを選べば、最短即日資金を調達できるでしょう。
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難易度
資金調達の方法は、調達先の審査の「難易度」によって選びましょう。
中小企業の多くは、資金調達の方法を「銀行融資」に依存し過ぎています。
しかし赤字経営では審査は通らず、他の資金調達方法を知らないまま、手元の資金がショートして廃業や倒産に追い込まれることも少なくありません。
この場合、売掛金を現金化する「ファクタリング」なら、審査では売掛先の信用力を重視します。
赤字決算・債務超過・税金滞納などで銀行融資の審査に通らなかった場合でも、ファクタリングなら審査の難易度も比較的低めであるため、資金調達につながる可能性があります。
ファクタリングは銀行融資の審査に通らなくても理由可能!その理由とは
コスト
資金調達の方法は、お金を集めることにより発生する利子や手数料など、金銭的な「コスト」により選びましょう。
たとえば銀行からお金を借りて資金調達すれば、設定された金利による利息を支払うことが必要です。
クラウドファンディングを通じて出資を受けた場合でも、寄付されたお金は贈与とみなされるため、金額によっては贈与税がかかります。
資産の現金化においても、売却する上で手数料が発生します。
どの資金調達の方法でも利子や税金、手数料などコストがかかるため、調達コストをできるだけ抑えることできる方法を選ぶとよいでしょう。
成長ステージ
資金調達の方法は、現在の事業の「成長ステージ」により選びましょう。
たとえば創業期であれば、民間銀行から融資を受けたくても実績ない状態では審査に通りません。
この場合、政府系金融機関の日本政策金融公庫などであれば、積極的に相談に応じてくれるでしょう。
成長期や拡大期で将来性が期待できるのでれば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に出資してもらえる可能性もゼロではありません。
安定した経営の中で、銀行融資が実行されるまでや助成金が入金されるまでのつなぎ資金が必要な場合には、決算書に悪影響のないファクタリングを活用するといった方法もあります。
規模
資金調達の方法は、会社や事業の「規模」に合った手法を選びましょう。
たとえば非上場の中小企業の借入れにおいては、民間銀行よりも日本政策金融公庫の融資制度や制度融資が利用しやすいと考えられます。
民間銀行を選ぶ場合でも、都市銀行は主に大企業がメインの取引先となるため、地域に密着した運営を行う地方銀行や信用金庫などを頼ったほうがよいでしょう。
また、中小企業に近年注目されている資金調達方法であるファクタリングも、掛取引で発生した売掛金を前倒しで回収できるため、資金繰りを円滑にする方法として活用できます。
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取引形態
資金調達の方法は、掛取引や手形取引、現金決済など「取引形態」によって選びましょう。
一般的な掛取引であればファクタリングによる資金調達が可能であるものの、個人商店のように現金決済が基本であれば申し込みできません。
業界によっては手形取引を行っているケースもあり、この場合であれば手形割引を使うこともできます。
どの取引形態かによって、選ぶべき資金の調達方法は変わってくると理解しておいてください。
まとめ
資金調達の方法はいろいろありますが、大きくわけると次の3つです。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
中小企業の多くは、デットファイナンスのうち、銀行融資による資金調達に依存している傾向が見られます。
しかし経済状況などの変化で、これまで順調だった売上が急激に低迷してしまい、黒字から赤字へと転落する恐れも否定できません。
赤字経営になると、銀行融資の審査に通らず、たちまち資金調達できなくなってしまうでしょう。
資金調達の方法は、銀行融資などお金を借りる方法だけではありません。
保有する資産の範囲で借金を増やさず資金調達できる、ファクタリングも方法として検討することをおすすめします。