法人の資金調達方法とは?法人格ごとで選ぶ種類・方法を徹底解説

法人の資金調達方法は種類が多いため、どれを選ぶべきか迷いがちです。

特に株式会社と合同会社など、法人格の違いによっても選択できる資金調達の方法は異なるため、それぞれに適した種類を理解しておくことをおすすめします。

融資を受ける方法や出資してもらう方法、さらに最近特に注目されている債権流動化など法人だからこそ利用しやすい資金調達の方法はいろいろあります。

そこで、法人の資金調達方法について、法人格ごとで選ぶ種類や方法を徹底解説していきます。

資金調達とは

「資金調達」とは、事業を運営する上で必要なお金を外部から手配することといえます。

なぜ資金調達が必要なのか、何のために行うのか、次の2つに分けて説明します。

  1. 必要性
  2. 目的

必要性

法人が資金調達することは、事業運営のおいて欠かせないことです。

その必要性は、人の身体で例える「血液」と「資金」が同じ役割を担っているからといえます。

血液は、流れが滞ったり不足したりすれば、病気になったり生命危機に陥ったりします。

事業運営においても同様に、お金の流れが止まったり不足したりすれば、資金繰りが悪化したりショートしたりなどで倒産してしまうでしょう。

手元のお金を枯渇させないためにも、適切なタイミングで必要な額を資金調達することは重要なことといえます。

目的

法人が資金調達をする目的は、事業を継続するためといえます。

決算で利益が出ておらず赤字経営だとしても、毎月の固定費や借入金の返済などの支払いに充てる資金があれば会社は倒産しません。

しかし利益が出ていて黒字経営だった場合でも、お金がなく支払いや返済ができなければ資金ショートし、黒字倒産するでしょう。

資金調達の目的は手元の資金を枯渇させないためであり、事業運営を継続させるために必要なことといえます。

【無料ダウンロード】
資金繰りを見える化。資金繰り表テンプレート

もう資金繰りで悩まない!経営者・財務担当者のための資金繰り表テンプレート。財務管理を簡単にし、ビジネスの安定成長を目指しましょう。

いますぐダウンロード

法人格の種類

法人は、以下の種類に分類されます。

公法人 国・地方自治体など
私法人 非営利法人・営利法人

そのため会社設立における法人格は、以下の2つから選ぶことになります。

  1. 非営利法人
  2. 営利法人

それぞれ説明します。

非営利法人

「非営利法人」とは、財産上の利益を得ることを目的としない法人です。

財産上の利益を図ることを目的としない活動をしている法人であり、私法人であれば以下の3つが非営利法人に該当します。

一般社団法人 一般社団・財団法人法に基づいた営利を目的としない社団法人
一般財団法人 一般社団・財団法人法に基づいた営利を目的としない財団法人
特定非営利活動法人(NPO法人) 特定非営利活動促進法(NPO法)により法人格を与えられた民間非営利団体

営利法人

「営利法人」とは、財産上の利益を図ることを目的とした法人であり、以下の種類に分類されます。

  • 株式会社
  • 持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)

株式会社と持分会社では資金の調達方法が大きく異なり、株式会社は株主から出資を受けるのに対し、持分会社は経営者自らが出資をします。

株式会社 株式発行により出資者から資金を集めて設立し、出資者(株主)の責任は出資額に限定される有限責任の法人
持分会社 経営者による出資で設立し、出資者(経営者)の責任は持分株会社の種類によって以下のとおり異なる

  • 合同会社 有限責任社員のみで構成
  • 合名会社 無限責任社員のみで構成
  • 合資会社 無限責任社員と有限責任社員で構成

一般的に法人格で選ばれやすいのは「株式会社」であり、次の選択肢として「合同会社」が挙げられるでしょう。

法人格ごとの資金調達の種類

法人格によって資金調達の種類は多少異なります。

ただ、株式会社と合同会社においてはそれほど大きな違いはなく、以下の種類から選ぶことになるでしょう。

  1. 融資
  2. 出資
  3. 債権流動化
  4. 補助金
  5. 助成金

それぞれ説明していきます。

融資

法人の資金調達で、最も一般的な方法が金融機関などから「融資」を受けることです。

借入れで手元の資金を増やすことといえますが、種類としては次の3つに分けることができます。

  1. 政府系金融機関
  2. 民間銀行
  3. 社債

それぞれ説明します。

政府系金融機関(株式会社・合同会社)

株式会社と合同会社のどちらも「政府系金融機関」に融資を申し込むことができます。

政府系金融機関とは、国内の経済発展や中小企業の活動支援などを目的としており、預金機能はなく貸付を行うために運営されています。

中小企業などが借入れの相談をする場合、以下の政府系金融機関を頼ることになるでしょう。

日本政策金融公庫
  • (国民生活事業)個人事業主・小規模事業者がメインターゲットであり、一般貸付で最大4,800万円を融資限度枠として設定可能
  • (中小企業事業)中小企業から中堅企業までがメインターゲットであり、融資上限額は制度によって異なるが億単位での融資も可能
商工中金
  • 政府と組合の共同出資で設立された金融機関で、中小企業から中堅企業までの組合員がメインターゲットであり、億単位での融資も可能

民間銀行(株式会社・合同会社)

株式会社と合同会社のどちらも、「民間銀行」に融資を申し込むことはできます。

民間銀行は次の種類に分けることができますが、中小企業であればメガバンクと呼ばれる都市銀行以外を選択することが一般的です。

都市銀行 全国や海外などに支店を設け、資力が充分にあるため中堅企業から大手企業をメインターゲットとしている大規模の普通銀行
地方銀行 中小企業や中堅企業をメインターゲットとした地域密着型の普通銀行
信用金庫 会員出資の非営利法人であり、融資資金は会員の出資が財源の金融機関

民間銀行から融資を受けるのであれば、以下から選ぶことになるでしょう。

  • プロパー融資(銀行独自の責任で実施される借入れ)
  • 信用保証協会保証付き融資(信用保証協会の保証を受けた上での借入れ)
  • 証書貸付(借用証書を差し入れて契約を結ぶ借入れ)
  • 不動産担保付き融資(不動産を担保に差し入れた上での借入れ)
  • ビジネスローン(通常の融資より審査ハードルを下げた事業者向けローン)

上記のうち、プロパー融資のように担保や保証人なしで融資を受ける場合、銀行から高い評価を得ていることが必要です。

まずは担保付きや保証付き融資で借入れ実績を作り、信用力を高めた上でプロパー融資を申し込むことが必要といえます。

社債(株式会社・合同会社)

「社債」は、会社発行の債券であり、投資家から資金を集めるために発行します。

株式と異なり、期間利息に負担や満期には元本返済が必要となる仕組みになっているため、返済義務を負います。

銀行からお金を借りて資金調達したいけれど、担保に差し入れる不動産などがなく融資を受けられないケースなどにおいて、選択しやすい方法といえるでしょう。

なお、社債発行は株式会社だけではなく、合同会社をはじめとする持分会社でも可能です。

ただし中小企業は信用力が高いといえないため、特定の投資家を対象とした少人数私募債などを選択することになるでしょう。

株式と社債の違いとは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説

出資

法人が資金調達する際、返済不要の資金を調達するなら投資家に「出資」してもらうことが必要です。

融資を受ける方法と異なり、返済義務を負わず自由度の高いお金を増やすことができるでしょう。

出資を受ける資金調達の方法は、主に次の3つに分けることができます。

  1. ベンチャーキャピタル
  2. エンジェル投資家
  3. クラウドファンディング

それぞれ説明します。

ベンチャーキャピタル(株式会社)

「ベンチャーキャピタル」は、未上場の新興企業に資金面の支援を行う投資会社です。

新興企業が発行した株式を購入し、上場後に売却することでキャピタルゲインを得ることを目的としています。

上場させることを目指し、投資活動を積極的に行うことが特徴といえますが、企業価値を向上させるための経営コンサルティングなど経営そのものに関与してくる可能性があります。

なお、合同会社は株式を発行できないためベンチャーキャピタルに出資してもらうことは難しいでしょう。

ベンチャーキャピタルからの投資で資金調達する方法とは?

エンジェル投資家(株式会社・合同会社)

「エンジェル投資家」は、会社を立ち上げ起業を目指す人やスタートアップ企業などを対象として資金支援を行う個人投資家です。

主に元経営者や元実業家などがエンジェル投資家として活動しているため、自身の人脈を使ってビジネスパートナーを紹介してくれたり経営ノウハウを伝えてくれたりなど、資金面以外のサポートも期待できます。

しかしベンチャーキャピタル同様に上場後の売却益を目的とするエンジェル投資家の場合、合同会社は出資を受けることが難しくなるでしょう。

また、合同会社で出資してもらう場合、資本や経営などのあり方が株式会社と異なることを理解し、会社法や自社の定款の規定など確認することが必要です。

出資者は社員、そして経営者となるため、出資額にかかわらず同等の議決権を持ちます。

定款には、経営を行う業務執行社員を指名することや、議決権割合などの規定を盛り込んでおくといった対応を検討しましょう。

エンジェル投資家とは?出資を受けるメリット・デメリットや探し方を解説

クラウドファンディング(合同会社)

「クラウドファンディング」は、インターネット上でビジネスプランやアイデアなどを公開し、賛同してくれた不特定多数の個人から少額の資金を投じてもらう仕組みです。

個人から資金を集めるため少額である一方、賛同者の人数が増えれば多額の資金調達につながります。

なお、クラウドファンディングは以下のとおり様々な形での応援方法で資金提供されます。

  • 購入型
  • 寄付型
  • 融資型
  • ファンド型
  • 投資型
  • ふるさと納税型

どの方法でも独自の魅力や斬新的なアイデアなどを提示することで、多くの賛同を得ることができるでしょう。

クラウドファンディングとは?やり方やメリット・デメリットを簡単に解説

債権流動化

法人が資金調達する方法として、近年注目されている「債権流動化」もうまく活用しましょう。

債権流動化による資金調達の方法は、主に次の2つです。

  1. ファクタリング
  2. 手形割引

それぞれ説明します。

ファクタリング(株式会社・合同会社)

「ファクタリング」は、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金化する金融サービスです。

お金を借りて手元の現金を増やす方法ではなく、審査でも売掛先の信用力が重視されます。

銀行融資に通らなかった法人でも、信頼性の高い売掛先の債権を保有していれば、利用できる可能性は高いといえます。

最短で即日現金化が可能であるため、すぐに資金を準備しなければならないときにはおススメの方法といえますが、調達額は売掛金額までに留まることなど留意しておきましょう。

ファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットを分かりやすく解説

手形割引(株式会社・合同会社)

「手形割引」は、期日前の手形を銀行または手形割引業者に売却して、現金化する金融サービスです。

ファクタリングと似た手法であるものの、手形割引で売るのは売掛金ではなく手形であり、手形取引がなければ利用できない資金調達の方法ともいえます。

また、ファクタリングと異なり、売却後の手形が決済されず不渡りになったときには、売った手形を買い戻さなければなりません。

貸し倒れリスクまで移転できない方法のため、その点は理解した上で選択することが必要です。

ファクタリングと手形割引の違いは?それぞれの活用メリット・デメリットを徹底解説

補助金

法人が資金調達するとき、出資と同様に返済義務のない資金を集めたいなら、「補助金」を申請しましょう。

補助金制度のうち、特に活用しやすいのは次の3つです。

  1. ものづくり補助金
  2. IT導入補助金
  3. 事業再構築補助金

それぞれ説明します。

ものづくり補助金(株式会社・合同会社)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」は、以下を支援する目的で創設された補助金制度です。

  • 中小企業の働き方改革
  • 従業員の賃上げ
  • インボイス導入

最新設備を導入する上での製造プロセスの改善や競争力強化など、中小企業の設備投資などに役立てることができる制度といえます。

ものづくり補助金は、以下の5つの募集枠に分かれており、それぞれ満たすべき要件や補助額などが異なります。

  • 通常枠
  • デジタル枠
  • グローバル市場開拓枠
  • グリーン枠
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠

そのため中小企業庁の「ものづくり補助金総合サイト」から、どの募集枠の活用が適しているか確認した上で申請することをおすすめします。

IT導入補助金(株式会社・合同会社)

「IT導入補助金2024」は、以下のケースで活用しやすい補助金制度です。

  1. 中小企業の働き方改革促進
  2. 労働環境改善
  3. 生産性向上などに向けたIT機器
  4. ITツール導入

労働生産性を向上させることが目的の制度であるため、勤怠管理ソフトや会計ソフトを導入するときや、ECサイトを構築する際に活用できます。

IT導入補助金2024」は次の5つの募集枠に分かれており、それぞれ補助対象や補助額が異なります。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

中小企業庁の「IT導入補助金2024」から、どの枠の活用が適しているか確認の上、申請を行うようにしましょう。

事業再構築補助金(株式会社・合同会社)

事業再構築補助金」は、新分野展開・業態転換・業種転換など、思い切って事業を再構築する事業者を支援するための補助金制度です。

新分野への進出や、新サービスの展開などにおいて、企業を支援してくれる制度となっているため、中小企業庁の「事業再構築補助金」サイトを確認の上申請を行いましょう。

助成金

法人が資金調達する上で、補助金同様に返済義務の負わない資金を集めることができる方法が「助成金」の申請です。

補助金の場合、申請要件を満たしていても政策等に沿った内容であると採択されなければお金を受け取ることはできません。

しかし助成金は、申請要件を満たしていればほぼ資金を調達できます。

主に活用しやすい助成金として、次の2つが挙げられるでしょう。

  1. 人材確保支援等助成金
  2. 人材開発支援助成金

それぞれ説明します。

人材確保支援等助成金(株式会社・合同会社)

人材確保等支援助成金」は、魅力的な職場をつくるために取り組む事業者を支援する助成金制度です。

雇用創出を図ること、そして人材確保・定着が目的の制度であり、以下のコースに分かれています。

  • 雇用管理制度助成コース
  • 介護福祉機器助成コース
  • 中小企業団体助成コース
  • 人事評価改善等助成コース
  • 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
  • 外国人労働者就労環境整備助成コース
  • テレワークコース

助成額などはコースによって異なるため、厚生労働省の「人材確保等支援助成金のご案内」を確認の上、申請するようにしてください。

また、令和6年の能登半島地震に伴い、人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))に新たなコースが創設されます。

詳しくは厚生労働省の公式サイトより、公表している内容を確認し、最新情報をチェックするようにしてください。

人材開発支援助成金(株式会社・合同会社)

人材開発支援助成金」は、職務関連の専門的知識・技能を習得させる職業訓練を実施した事業者に対し、かかった訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支援する制度です。

従業員のスキルアップや育成に活用できる制度であり、次の4つのコースに分かれています。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース

コースによって助成額など異なるため、厚生労働省の「人材開発支援助成金」を確認の上申請しましょう。

なお、人材開発支援助成金を活用したいものの、令和6年能登半島地震で被災した事業者については、特例措置により申請期限が猶予されています。

まとめ

法人が資金調達することは、事業や会社を経営する上で欠かせません。

資金調達の方法は法人格によって多少異なるものの、一般的な株式会社と合同会社ではそれほど大きな差はないといえます。

ただし資金を調達する目的やいつまでにいくら必要なのかなどにより、選ぶべき方法は異なるといえるでしょう。

銀行融資に依存し過ぎることなく、方法を多様化することで、万一融資審査に通らなかったときでも資金ショートすることなく手元の資金を増やすことができます。