運転資金とは?種類とお金が足りなくなる理由・調達方法について解説

運転資金とは、会社経営において枯渇させてはいけないお金です。

必要とする運転資金は、月商の3~6か月程度が目安といわれていますが、業種や会社の成長段階により異なります。

資金繰りに頭を悩ませないためにも、売上や業績に影響を及ぼすことのない運転資金を確保することが必要です。

そこで、会社経営において必要とする運転資金について、その種類や足らない理由、調達方法をわかりやすく解説していきます。

運転資金とは

「運転資金」とは、会社経営において必要なお金であり、費用を支払う際に負担するお金です。

また、会社を成長させるために欠かすことのできない資金でもあり、主に次の2つに分けることができます。

  1. 変動費
  2. 固定費

それぞれ説明します。

運転資金とは?考え方や種類・計算方法についてわかりやすく解説

変動費

「変動費」とは、売上の増減によって変わる運転資金で、たとえば次に挙げる費用です。

  • 原材料費
  • 仕入原価
  • 外注費
  • 給与(派遣・契約社員など)
  • 販売手数料
  • 荷造運賃

売上が上昇すれば仕入れや製造に費用が多くかかることとなり、投下しなければならないお金が増えます。

それにより、変動費として調達しなければならない金額も増えると留意しておきましょう。

なお、売上高から変動費を差し引くと「限界利益」を算出できます。

限界利益=売上高-変動費

「限界利益」とは、売上高と変動費の差であり、固定費をすべて回収できる地点を示します。

また、以下の「限界利益率」は、売上高のうち占める限界利益の何割を示しています。

限界利益率=限界利益÷売上高×100(%)

固定費

「固定費」とは、売上の増減に左右されない固定された運転資金であり、毎月一定に発生する次に挙げる費用などです。

  • 事務所・店舗の家賃
  • 給与(毎月定額の社員)
  • 光熱費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • リース料

多少の変動はあっても大きな変化はなく、毎月一定額を負担し続けなければなりません。

そのため仮に売上がゼロだった場合でも、支払わなければならない費用として認識しておきましょう。

なお、売上と経費がつり合い、利益がゼロになる地点を「損益分岐点売上高」といいます。

どのくらい売上高を上げれば固定費を賄うことができるか確認できる指標であり、以下の計算式で算出できます。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

会社が存続するために最低限必要である売上高ともいえるため、確認しておくとよいでしょう。

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運転資金の種類

必要となる運転資金は、運営する事業などによって異なり、主に成長段階などによって以下の5種類に分けることができます。

  1. 経常運転資金
  2. 増加運転資金
  3. 減少運転資金
  4. 季節運転資金
  5. その他運転資金

それぞれ説明します。

運転資金の目安は?種類ごとの計算方法や不足を防ぐ方法をわかりやすく解説

経常運転資金

「経常運転資金」とは、会社経営において常時必要となる運転資金であり、たとえば毎月支払いが必要な以下の費用が含まれます。

  • 人件費
  • 地代家賃
  • 光熱費
  • 広告宣伝費

経常運転資金は以下の計算式で算出できます。

経常運転資金=売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産-仕入債務(買掛金・支払手形)

売掛債権と棚卸資産を足して買掛債務を差し引くと算出できますが、目安としては3〜6か月分の経常運転資金を用意しておく必要があります。

増加運転資金

「増加運転資金」とは、売上向上や事業拡大など、現状維持にとどまらず成長段階において必要になる運転資金です。

利益が出ているのに手元のお金が足らなければ、「黒字倒産」するリスクを高めます。

そこで、仕入れや人員などの増加で必要となる資金を確保することが必要といえますが、まずは経常運転資金の計算式をもとに増加運転資金を以下の例で考えてみましょう。

通常時の運転資金250万円=売上債権200万円+棚卸資産200万円-仕入債務150万円

業績が2倍になったときの運転資金500万円=売上債権400万円+棚卸資産400万円-仕入債務300万円

売上が増え、仕入や債権も増えればその分、必要となる運転資金も増えます。

同じサイクルで売上が増え続ければ、今よりもさらに運転資金が必要になるため、資金繰りに注意が必要です。

運転資金が増加する要因とは?増加運転資金の発生要因や分析方法について解説

減少運転資金

「減少運転資金」とは、事業縮小や売上減少により負担が重くなった固定費の支払いに充てる運転資金です。

仮に売上がゼロだとしても、毎月発生する事務所の家賃や従業員の給与などは支払い続けなければなりません。

好調だったときに支払っていた仕入代金や人件費、業務委託費などが売上に対して余分にかかっている状態であるため、不足する資金を調達することが必要です。

また、店舗閉鎖など経費削減でも発生する費用も減少運転資金に含まれます。

季節運転資金

「季節性運転資金」とは、通常時ではなく、たとえば特定の季節や時期に必要になる追加の運転資金です。

たとえば次の費用に充てる資金が季節性運転資金に含まれます。

  • 従業員の賞与月
  • 季節商品(エアコン・暖房器具・新入学商品など)
  • イベント商品(クリスマス・お正月など)

季節要因が関係することで増える運転資金であり、ある程度はどのくらいの金額が必要か把握しやすいため、前もって資金調達の準備をしておくことが大切です。

その他運転資金

「その他運転資金」とは、取引先との契約内容が変更されたことなどで、一時的に資金不足に陥った際に必要となる運転資金です。

仕入れ代金の支払サイトが短期化されたときや、現金決済から掛けへの変更などにおいても、手元の資金不足が予想されるため資金が必要となります。

想定していなかった事態で発生する臨時的な運転資金であり、改善されるまで資金繰りを調整することが必要となるでしょう。

運転資金の計算方法

運転資金を調達する方法はいろいろありますが、中小企業などが主に活用しているのは銀行から融資を受ける方法です。

どのくらいの運転資金が必要になるかは、事業の業種・形態・資金使途などで変わってきます。

たとえば商品を仕入れて、販売した代金が入金されるまでの期間が比較的短めの小売業の場合、保有する現金がそれほど多くなくても手元の資金は枯渇しにくいといえます。

しかしメーカーなどの場合、投じた資金を回収するまでの期間は年単位に及ぶなど、長期目線で回収期間を検討しておく必要があります。

資金を回収するまでに手元のお金がどのくらい足らなくなるのか想定しつつ、資金繰りなどを踏まえた資金調達が必要となるでしょう。

必要とされる運転資金の目安は、月商3~6か月分であり、以下の①または②のいずれかの計算を参考にすることをおすすめします。

①おおよその運転資金=売掛債権+棚卸資産-買入債務

②正確な運転資金=平均月商×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-買入債務回転期間)

運転資金が足らない理由

運転資金は色々な費用の支払いに充てるお金であるため、主に以下の理由によって足らなくなると考えられます。

  1. 掛取引の入金遅れ
  2. 仕入増加による資金不足
  3. 特定の資金ニーズの負担増加
  4. 業績不振による資金不足

それぞれ説明します。

掛取引の入金遅れ

運転資金が足らなくなる理由として、売掛先との掛取引の入金遅れが挙げられます。

日本の商取引においては、多くは商品やサービスの販売と同時に代金が支払われるのではなく、後日請求分がまとめて入金される掛取引が主流です。

そのため商品やサービスを販売してから、売上代金が入金されるまでは一定期間空白の期間が発生します。

しかしその間、仕入れ代金や固定費などの支払いは発生するため、資金不足に陥りやすいといえるでしょう。

掛取引がメインの場合、入金と出金のタイムラグにより、運転資金が不足してしまうと留意しておくべきです。

仕入増加による資金不足

運転資金が足らなくなる理由として、売上上昇に伴う仕入増加による資金不足が挙げられます。

売上が伸びれば、仕入れや人件費などの負担も大きくなるため、先出し費用がまかなえずに仕事を受けることができないというリスクも発生します。

  • 生産数増加による材料・仕入れの増加
  • 新規取引先や新規顧客増加による諸経費の増加
  • 従業員増員による人件費の増加

上記のケースにおいては、手元に十分な資金がなければ「黒字倒産」するリスクが高まります。

売上が伸びているときこそ、運転資金を調達することが必要と留意しておくべきです。

特定の資金ニーズの負担増加

運転資金が足らなくなる理由として、特定の資金ニーズの負担増加による資金不足が挙げられます。

業種によっては、特定の月や季節に繁忙期を迎えることとなり、その時期には必要な運転資金が増えます。

例として、以下の時期などが挙げられます。

  • 夏季・冬季の従業員に対する賞与が発生する月
  • ウインタースポーツ用品取扱業者の夏場の固定費支払い、または冬季の仕入れ代金など
  • お盆・クリスマス・年末年始・ランドセルなどイベント関連商品の仕入れ代金

毎年決まった月や時期に運転資金の不足が予想されるのであれば、事前に資金調達することが必要です。

業績不振による資金不足

運転資金が足らなくなる理由として、売上低迷に伴う業績不振による資金不足が挙げられます。

売上が伸びず、入金予定の売掛金などが発生していなくても、毎月固定費は支払い続けなければなりません。

仕入れも減少するため仕入れ代金の負担は軽減されても、将来入金される予定の売掛金が発生しなければ、先々資金不足に陥ることは避けられないでしょう。

  • 事務所家賃
  • 水道光熱費
  • 従業員給与

などの固定費は、売上の変動に関係なく発生するため、不足分を補うためのつなぎ資金を準備することが必要です。

運転資金の調達方法

運転資金を用意しなければならないとき、調達方法は銀行融資に限りません。

たとえば売上増加による運転資金であれば、前向きな理由として捉えられ審査にも通りやすいでしょう。

しかし資金繰りの失敗や赤字経営による借入れであれば、金融機関の審査に通らず融資を受けることができない可能性が高くなります。

資金の用途によって運転資金の調達方法は変わるといえますが、たとえば次の5つが候補として挙げられるでしょう。

  1. 日本政策金融公庫の融資
  2. 自治体の制度融資
  3. 民間銀行の融資
  4. ビジネスローン
  5. ファクタリング

それぞれ説明します。

日本政策金融公庫の融資

運転資金の調達方法のうち、中小企業が利用しやすいのは「日本政策金融公庫」から融資を受けることです。

日本政策金融公庫とは国が100%出資・運営している「政府系金融機関」であり、営利目的で運営されていません。

事業者の活動支援などによる経済発展が目的であるため、中小企業にも積極的に資金を貸し付けています。

運転資金においても低金利で無担保・無保証による借入れが可能であるものの、提出書類の準備など手間や時間がかかるため、余裕を持って申し込みましょう。

運転資金の融資とは?受けられる金融機関と成功のポイントについて解説

自治体の制度融資

運転資金の調達方法のうち、中小企業が利用しやすいのは自治体の「制度融資」です。

「制度融資」とは、自治体・金融機関・信用保証組合の3者が連携して資金を貸し付ける制度であり、小規模事業者や中小企業の資金支援を目的としています。

低金利で融資を受けることができ、保証料や利子の一部を負担する自治体もあるため、調達コストを抑えることもできるでしょう。

ただし上限や金利は自治体によって異なること、審査や手続に関わる組織が多いことを踏まえ、時間的な余裕を持たせた相談・申し込みが必要です。

民間銀行の融資

運転資金の調達方法のうち、中小企業が利用しやすいのは「民間銀行」から融資を受けることです。

メインバンクとして取引のある民間銀行から融資を受けることも方法の1つといえますが、中小企業であれば地方銀行・信用金庫・信用組合が頼りやすいでしょう。

都市銀行は主な取引対象を大企業としているため、地域密着で運営している民間銀行であれば、企業格付けが良好なら借入れ相談にも応じてくれます。

有利な条件で融資を受けたい場合、返済能力の高さを示す資料など準備しておくことも必要です。

なお、民間銀行などの金融機関は赤字や債務超過では審査に通さないため、前向きな理由による借入れの際に頼ったほうがよいでしょう。

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ビジネスローン

運転資金の調達方法のうち、中小企業が利用しやすいのは「ビジネスローン」を利用することです。

「ビジネスローン」とは、通常の銀行融資では審査に通りにくい事業者向けの金融商品です。

準備する書類や審査のハードルが緩和されていることや、個人事業者や法人経営者であれば申し込みできることがメリットといえます。

契約基準・金利・融資限度額は、銀行や消費者金融など、どの金融会社と契約するかによって異なります。

ただしいずれの場合も、通常の銀行融資より金利は高く設定され、融資限度額も低めであることは留意しておくことが必要です。

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ファクタリング

運転資金の調達方法のうち、中小企業が利用しやすいのは「ファクタリング」の利用です。

「ファクタリング」とは、保有する売掛債権を現金化することで資金を調達できる金融サービスですが、現在中小企業で利用が拡大しています。

売上が伸びれば将来入金予定の売掛金も増えます。

しかし売掛金の状態では、手元の現金が増えないため支払いに充てるお金が足らなくなる可能性もあると考えられるでしょう。

この場合、ファクタリングで売掛金を現金化すれば、最短即日で手元のお金が増えます。

また、売掛金を抱えすぎていると、銀行から不良債権の混在に関する懸念を抱かれることがあります。

ファクタリングで売掛金を現金化すれば、オフバランス化を図ることができ、銀行融資の審査においても不利になることはありません。

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まとめ

運転資金の調達方法はいろいろありますが、何のための資金が必要なのか、その理由や金額、タイミングによって選ぶべき方法は異なります。

大切なのは、運転資金が不足する直前に資金調達するのではなく、できるだけ早めに対応することといえるでしょう。

ただ、資金不足に陥る事態に気がつかなかったケースや、急な出費で現金が必要になる場合などもあり、必ずしも事前に準備できるとは限りません。

このような場合、ファクタリングを利用すれば借金を増やすことなく最短即日で売掛金を現金化できるため、上手に活用することをおすすめします。