業績V字回復とは?大手企業の事例と共通点・ポイントを徹底解説

業績V字回復とは、経営状態が優良だった企業の業績が急激に悪化した後、大きく好転することです。

どん底といえる状態から、Vの字を描くように大きく業績回復することといえますが、知名度の高い大企業などの事例も少なくありません。

思うように業績が伸びず、どうすれば回復させることができるのか悩んでいるのなら、大企業などの事例を参考にすることをおすすめします。

そこで、危機的な状況から大きく好転を見せる業績V字回復について、大手企業の事例や共通点、ポイントについて解説していきます。

業績V字回復とは

「業績V字回復」とは、もともと経営状態が優良だった企業の業績が急激に悪化し、その後大きく好転することです。

一旦は落ち込んだ業績が急に回復することで、売上や収益の推移をあらわすグラフが「V」の字を描いているように見えるため、業績V字回復と呼ばれています。

どん底からの急回復など劇的な逆転劇を示す言葉として使われていますが、他にも売上や収益の推移の描く文字の様子から、以下の種類があります。

  1. U字回復
  2. L字回復
  3. W字回復
  4. K字回復

それぞれ簡単に説明していきます。

U字回復

「U字回復」とは、V字回復ほどの急速な回復ではなく、一定の低迷期を経て業績が好転した回復パターンです。

回復のターニングポイントが緩やかなケースがU字回復に該当します。

L字回復

「L字回復」とは、業績が低迷した状態が続き、回復も極めて緩やかな回復パターンです。

中小企業などは多額の資金を投入しにくいため、現状を維持しつつ体力を回復させ、回復傾向を見せたケースが該当するといえます。

W字回復

「W字回復」とは、2度のV字回復を経験した回復パターンです。

業績低迷後に一旦は急回復した後、再度、低迷期に転じて回復を遂げたケースが該当します。

K字回復

「K字回復」とは、市場全体が回復傾向であるものの、業界と起業によって回復する傾向が二極化するマクロ経済状況です。

コロナ禍からの回復で、軌道に乗ることのできる企業もあれば低迷し続ける会社もあるなど、二通りに分かれたケースが該当します。

業績V字回復した大手企業の事例

業績V字回復を目指すのであれば、実際に成功した大手企業の事例を参考にするとよいでしょう。

主な事例として、以下の企業のケースが挙げられます。

  1. 日本マクドナルド
  2. 日本航空(JAL)
  3. 良品計画(無印良品)
  4. マツダ
  5. 日産自動車
  6. パナソニックホールディングス
  7. Mipox
  8. ユー・エス・ジェイ

それぞれの企業の事例を説明していきます。

日本マクドナルド

「日本マクドナルド」とは、アメリカ・マクドナルドのフランチャイズ企業です。

日本でファストフード・ハンバーガーレストランチェーンのマクドナルドを経営しています。

新型コロナウイルス感染症が流行したことで、食業界全体が打撃を受けました。

外出制限などが原因で、2020年3月の既存店売上は4年ぶりといえるマイナスを記録しています。

しかし2021年4月には経営をV字回復させました。

店内飲食に対する制限は続いていたため、2020年4月の既存店客数は大幅なマイナスだったものの、客単価は前年同月比で急激な伸びを見せて総売上が急回復したことが関係します。

単価が増えたのは、リモートワークや急行などで在宅する家族の利用が激増したからです。

モバイルオーダーの機能を拡充したり家族向けクーポンを配信したりといった商機を逃さない施策をスピーディに実行したことも、V字回復に成功した理由と考えられます。

日本航空(JAL)

「日本航空(JAL)」は、航空運送事業を営む大手企業です。

日本を代表する航空会社であるものの、米国同時多発テロなどで国際便の需要が減少し、リーマンショックなどで2010年1月には経営破綻しました。

破綻したときの負債総額は2兆3,000億円といわれており、株価は1円まで売り込まれましたが、2013年9月には東京証券取引第一部に再上場しています。

その背景には、日本を代表する経営者の稲盛和夫氏を会長に迎え、社長以下の役員全員が参加する特別講和月5回実施するなど、リーダー教育を徹底して行ったことが関係します。

学びにより得たことを約3,000人の管理職社員へと伝え、経営再建に対して当事者としての意識を高めてもらい、グループ全体へと広げていきました。

その結果、経営陣と現場が回復に向けて一体となり、V字回復に成功したといえるでしょう。

良品計画(無印良品)

「良品計画」とは、「無印良品」の企画開発から商品調達・流通・販売までを行う製造小売業です。

1989年に設立されましたが、2000年代に入る頃、経営が悪化の一途を辿りました。

2001年8月の負債額は38億円という大低迷期に突入しましたが、その背景にはブランド力低下や意思決定が停滞したなど大企業病にあったとされています。

そこで、社会や人の役に立つといった根本方針のもと、大規模な経営改革を実行したことで、2002年からV字回復したと考えられます。

マツダ

「マツダ」は、プレミアムなブランドを目指し、自動車の製造・販売などを行う自動車メーカーです。

2008年度には、リーマンショックによる影響やフォードグループから脱退したことで、8期ぶりの赤字転落・純利益700億円以上の損失を記録してしまいました。

2011年度までは、4期連続、赤字と業績不振が続いています。

しかし動力性能・燃費性能に優れたプラットフォームの開発を続け、新たなデザインコンセプトなどを打ち出すなど、ブランドのイメージ刷新を図りました。

戦略が成功したことで2012年度には黒字転換し、2013年度には純利益1,300億円を達成するという快挙を見せています。

日産自動車

「日産自動車」は、自動車や自動車部品の製造・販売を主な事業としている自動車メーカーです。

バブル崩壊後の1990年代以降は、自動車販売台数が減少したことで危機的な経営不振に陥りました。

1999年の赤字は6,844億円と巨額な数値となり、上場企業として当時ワースト額を記録しています。

そこで、当時ルソーの副社長だったカルロス・ゴーン氏を最高経営責任者として迎えたことで、短期間でのV字回復に成功しました。

ゴーン氏は自ら現場に足を運び、社員との対話で得た知見を経営判断に活かしています。

掲げた目標を全社員に周知し、目的意識を高めた現場主義の経営判断が、V字回復を成功させたと考えられます。

パナソニックホールディングス

「パナソニックホールディングス」は、社会生活の改善・向上、世界文化の進展を実現することに向けて取り組む日本の大手電機メーカー持株会社です。

2011年度と2012年度は、2期連続7,000億円以上の赤字を記録しましたが、これは巨額投資したプラズマテレビ部門の売上に伸び悩んだことが関係しています。

2012年に社長交代があり、大規模な構造改革に踏み切りプラズマテレビ事業から撤退しました。

住宅関連事業やバッテリー・カーナビなどの車載事業に注力する方向へシフトした結果、適切な選択と集中が回復の原動力となり、2014年度には純利益1,000億円以上まで復調しています。

成長が見込める事業へ注力したことで、V字回復できた事例といえるでしょう。

Mipox

「Mipox」とは、製品提供・受託加工・コンサルティングまでトータルに手がける研磨のワンストップソリューション企業です。

1925年に顔料と色箔の輸入業者としてドイツ資本に設立された会社ですが、2000年代前半までは業界トップクラスのシェアを誇り、業績も好調だったといえます。

しかしピークである2005年から業績は下降し、2009年にはピークの4分の1近くまで売上は低迷しました。

社長交代をきっかけとして、業績悪化の根本的な原因は接触していない既存顧客の多さや部門間の縦割り関係にあるとし、シームレスな情報共有体制の実現や進捗状況の可視化など解決に向けた取り組みを進めていきます。

クラウドサービスで共有プロセスを効率化し、営業会議や報告書などの撤廃や業務ロス削減も徹底して行いました。

その結果、2009年の赤字13億円の経営状況から、2016年は黒字5億円まで回復しています。

ユー・エス・ジェイ

「ユー・エス・ジェイ」は、大阪にあるテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営する企業です。

「USJ」の愛称で親しまれる「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」は2001年に開業し、初年度は年間来場者数1,100万人を記録しました。

しかし翌年の年間来場者数は700万人台まで落ち込み、2004年には事実上の経営破綻に陥っています。

2010年にマーケターの森岡氏をマーケティング部長に迎えて、本格的に改革をスタートさせました。

ターゲット層を拡大しCMの質を高めるなど、消費者視点の会社へと変えるなどの施策により、2015年10月には過去最高の月間来場者数175万人を達成しました。

現在では東京ディズニーランドも超えるほどの集客数日本一のテーマパークへと生まれ変わったといえます。

【無料ダウンロード】
9つの資金調達方法を紹介

9つの資金調達方法のメリットデメリットから申請方法、さらに審査落ちした時の対処法までをまとめた経営者必見のガイドブックです。

いますぐダウンロード

業績V字回復した会社の共通点

実際に業績V字回復した事例を見れば、成功した企業には次に挙げるような対策を講じているなど、一定の共通点があるといえます。

  1. 不採算事業の撤退
  2. アウトソーシングの有効活用
  3. 組織の意識改革

それぞれ説明していきます。

不採算事業の撤退

業績V字回復した会社の共通点として、不採算事業から撤退したことが挙げられます。

複数の事業を運営している企業は、売上が悪い商品など早めに見切りを付け、ヒットする傾向が高い商品へと集中して投資しています。

たとえば良品生活の無印良品は、従来までの安くてそれなり質のよいといったブランドイメージを抜本的に改革し、ターゲット層を開拓することでV字回復しました。

そのためV字回復を狙うのなら、従来までの業態や商品に固執するのではなく、ときには大胆に改革したり必要な施策に集中投資したりなどの決断が必要と考えられます。

アウトソーシングの有効活用

業績V字回復した会社の共通点として、アウトソーシングを有効活用していることが挙げられます。

アウトソーシングとは、企業がコア業務へ集中するため、ノンコア業務を外部に委託することです。

また、外部から優秀な人材を招き入れ、経営陣に据える事例も少なくありません。

たとえば日本航空では、京セラやKDDIを創業した稲盛和夫氏を会長に迎えました。

日産自動車の事例でもカルロス・ゴーン氏を最高経営責任者に迎え、ユー・エス・ジェイではマーケターの森岡氏マーケティング部長へと迎え入れて、V字回復に成功しています。

組織の意識改革

業績V字回復した会社の共通点として、組織の意識改革を徹底して行ったことが挙げられます。

低迷した売上や経営を再度軌道に乗せるためには、実際に現場で働く従業員の意識改革が必要です。

全社員が一丸となり、業績回復に向けて取り組むことができるように、経営改革にも社員を巻き込んで、企業風土の醸成から着手していきましょう。

業績V字回復のポイント

業績V字回復した企業の事例を参考に、業績回復を狙うのなら次のポイントを押さえた上で好転を目指しましょう。

  1. 事業・商品の整理
  2. 経営方針・戦略の明確化
  3. 業務の無駄の洗い出し・改善

それぞれのポイントを説明します。

事業再生の手法の種類とそれぞれのメリット・デメリットとは?

事業・商品の整理

業績V字回復したいなら、パナソニックの事例のように不採算事業から撤退するなど、事業や商品の整理を行いましょう。

不採算事業を撤退し、スリム化することが回復のきっかけになることがあります。

事業という大きな枠で切り離さなくても、商品やプロジェクトなどのうち、採算が取れない部分をカットすることも可能です。

適切な選択と集中が求められるといえますが、不確定な要素が多く残される中で何に注力するべきか見定めるために、先を見通すビジョンに基づいた戦略立案が欠かせません。

自社の強みを改めて見直し、ターゲット層を明確にして事業の方針に軸を据えていきましょう。

経営方針・戦略の明確化

業績V字回復したいなら、日本マクドナルドやマツダの事例のように、経営方針や戦略を明確化して切り替えましょう。

たとえ危機的な状況でも、経営の軸やブランドコンセプトを見失わないことも大切です。

若者やファミリー層へとターゲットを定めた日本マクドナルドや、敢えてファミリー層は切り捨てて上質路線へと切り替えたマツダは、ターゲティングと戦略構築で経営の軸を定めることができています。

既存のターゲット層を見直し、市場で占めるべきポジションを再度見極めることや、経営方針や戦略の明確化は重要です。

業務の無駄の洗い出し・改善

業績V字回復したいなら、Mipoxの事例のように業務効率化ツールを導入するなど、業務の無駄を洗い出して改善していきましょう。

業務プロセスを見直す上で、部門ごとの業務フローや情報の共有体制を見直し、問題点を洗い出すことが大切です。

その上で、Mipoxの事例のように業務効率化ツールを導入することも選択肢として検討できます。

そもそも業務効率化は現場の不合理を洗い出し、是正することが目的です。

従来までの非効率な業務フローで働いていた社員の肉体・精神的な疲労や過労が軽減されることや、モチベーションを上げることにもつながるでしょう。

まとめ

業績V字回復を遂げることは簡単なことではないものの、国内大手企業の事例からもわかるとおり、経営不振から短期間で成功したケースもあります。

過去の業績V字回復に成功した企業の事例を見たとき共通しているのは、経営施策をヒットさせるだけでなく、社内の文化を刷新することや全社員の意識を改革するといった抜本的な改革を行っていることです。

本気で業績V字回復を狙うのなら、小手先の経営施策ではなく、根源となる部分を一から見直し作り上げていきましょう。