事業再生の手法の種類とそれぞれのメリット・デメリットとは?


新型コロナウイルス感染拡大の影響により、業績が悪化したことで資金繰りに窮し、経営に行き詰まったために事業再生の手法を探っている会社は少なくありません。

収束したかと思えばまん延防止等重点措置が取られるなど、いつまでたっても先行きが見通せない状況の中、会社を存続させるべきなのか廃業したほうがよいのか迷うこともあるでしょう。

無理に事業を続けて倒産してしまうよりも前に、事業を立て直し再生できるような手法を知りたいと考えることは自然なことです。

そこで、「事業再生」とはそもそもどのようなことを意味するのか、その手法の種類と選び方などについて説明していきます。

 

目次

「事業再生」の手法とは

「事業再生」とは、事業を抜本的に改革し、これまで収益を上げることのできていない事業などを改変して再生させることです。

会社が倒産状態に陥ったとき、清算する手続ではなく、収益力や競争力のある事業は残して一部債務を免除してもらったり弁済期を繰り延べしたりといった方法を取ります。

このまま会社経営を続けることは厳しいと感じている経営者でも、実際に会社が倒産してしまうことは大きな精神的ダメージを受けるだけでなく、債権者・取引先・従業員などにも迷惑をかけることになるでしょう。

ある程度、資金に余力があるのであれば、黒字化に向けた再生計画を策定し倒産を回避させることも目指すことも方法といえます。

 

「事業再生」する最適なタイミング

だんだんと売上が減少し、収益を上げることが厳しい状態になっていると感じていても、いつ「事業再生」に乗り出すべきか判断がむつかしいという経営者もいることでしょう。

売上向上に向け、営業活動に奔走していれば、事業再生にまで目を向けにくいといったケースも少なくありません。さらに事業再生が必要な状態であれば、毎月、資金繰りに奔走しているといったことも考えられます。

しかし事業再生のことに目を向けず、資金繰りに気を取られた結果、どうすることもできなくなった後で事業再生を考えても手遅れになってしまう可能性もあるでしょう。

黒字化を見込むことができない状態で事業再生しようとしても難しいため、事業再生を行うタイミングはできるだけ早いほうがよいといえます。

そのため、事業再生する最適なのは次のタイミングと考えられるでしょう。

資金繰りに数か月余裕があるとき

まだ資金繰りに数か月程度は余裕があるといえる状態でも、今後の見込みなどを予測した上で会社存続が厳しいと感じるのなら、本格的な事業再生に乗り出したほうがよいと考えられます。

なお、「事業再生」と似た言葉に「企業再生」がありますが、「事業再生」とは、収益を出すことのできない事業について立て直しを図ることです。

それに対し「企業再生」は、経営不振の企業を立て直すことであり、企業再生を図るには「事業再生」も不可欠といえるため両者に明確な違いはないと考えられます。

資金繰りが詰まることが予想される3か月~半年前

倒産が避けられない可能性が出てきてからでは遅いと考えてしまう経営者もいるでしょうが、倒産した後でも再起はできます。

ただしどの方法を選ぶかが重要であるため、再起を果たすためにも次をポイントとして押さえておきましょう。

  • 倒産するまで知人・友人・取引先などからの借入金や保証人になってもらった借入金には十分な手当をしておく
  • 連鎖倒産しそうな買掛先に対し十分な配慮をしておく
  • 事業を可能な限り毀損させないよう従業員の雇用を維持できるようにする

倒産後も再起を図るなら、今と同じ仕事をしていく可能性が高いと考えられます。

新たに事業を開始する場合でも、応援してくれるのは既存の取引先となるため、信頼をできるだけ失わない配慮が必要です。

資金が完全に詰まってしまう前に決断をし、資金繰りが詰まる可能性がある3か月~半年前には決断をすることが重要です。

 

事業再生の「手法」は主に2つ

事業再生の「手法」には、

  • 裁判所を通じて手続する「法的再生」
  • 裁判外を通さず手続する「私的再生」

の2種類に分けることができます。

2つの手法の違いは、裁判所を通すなどの方法で事業再生を行うか、債権者と個別に同意を得て行うかといった違いがあります。

それぞれの違いは次のとおりです。

裁判所を通じて手続する「法的再生」

「法的再生」では、裁判所が手続に介在することになります。

そのため手続において透明性や公平性が担保されることとなり、債権者にも法的拘束力を与えることが可能です。

ただし予納金など費用が発生ることや、第三者にも法的手続を行っていることを知られることになるため、今後の取引に不安や懸念を抱かれやすいといった経済的損失のリスクは高まります。

裁判外を通さず手続する「私的再生」

「私的再生」では、裁判所を通さずに債権者と個別に交渉して手続を進めていきます。

そのため迅速に手続を進めやすいことがメリットであり、再建計画や弁済計画なども柔軟な内容で立案し合意を得やすいといえます。

ただし裁判所が関与しないため、手続の透明性が保たれず、債権者同士の公平性にも問題があると認識されやすいことがデメリットです。

合意してもらえなかった債権者との間で重大な問題が生じるリスクもあると留意した上で手続したほうがよいでしょう。

「法的再生」と「私的再生」の違い

「法的再生」と「私的再生」は、裁判所を通すのか、それとも債権者と個別で手続を進めるのかといった違いがあります。

  • 債権者数が少ないとき
  • それぞれの債権者と信頼関係が構築できているとき
  • 利害関係者との間で調整が取れやすい
  • 倒産していることを公にしたくない

といったときには「私的再生」を選ぶことが多いといえるでしょう。

  • 債権者や利害関係者の数が多いとき
  • 利害関係者との調整が容易に進まない

といった場合などは、強硬な債権者などによる法的手続強行で債権者間の公平性を保つことができなくなるリスクが高いため、「法的再生」を頼ったほうが安心といえます。

 

「再建型」の「法的再生」による事業再生とは

裁判所の関与上で手続を進めてく「法的再生」は、

  • 「民事再生」や「会社更生」などの「再建型」
  • 「破産」や「特別清算」などの「清算型」

の2種類に分けることができます。

一般的に「事業再生」で用いられる手続「再建型」ですが、この場合、会社を存続させたままで負債を圧縮したり事業を改善したりなど再建を図ります。

「再建型」の事業再生を選ぶことのできるケースは、負債を整理することで事業黒字化が見込めるときです。

負債を整理しても黒字化が見込めないときには、「再建型」で事業再生を図ってもいずれ債務超過となる可能性があると考えられます。

さらに債権者にはできる限り多く弁済が重要となるため、清算したほうがよい場合には選ばないほうがよいともいえます。

「再建型」の事業再生には、

  • 民事再生
  • 会社更生
  • 特定調停

の3つがあるため、それぞれの内容を説明していきます。

民事再生

民事再生は民事再生法に基づいて、経済的に行き詰った中小企業などが利用する手法です。

現経営者の主導の下で、会社債権者など利害関係者多数の同意による再生計画を策定・遂行し事業再建を図ります。

会社更生

会社更生は株式会社のみ利用できる強力な手続であり、経済的に行き詰った株式会社が裁判所選任の更生管財人主導のもと、債権者など利害関係者多数から同意を得て更生計画を策定・遂行し事業再建を図っていきます。

比較的、規模の大きな会社などが利用する手続で、現経営者は会社から退くことが必要になります。

特定調停

特定調停とは、簡易裁判所に申立てを行うことで債権者との間に立ってもらい、返済条件を話し合って支払負担を軽くするための手続です。

弁護士を依頼せず、裁判所に介在してもらいながら当事者同士の話し合いで解決できる手続といえるでしょう。

 

「清算型」の「法的再生」による事業再生とは

「清算型」の事業再生は、

  • 「再建型」では黒字化が見込めない
  • 清算したほうが債権者に対し多く弁済できる

といった場合に選択します。

会社を解散すれば再建につながらないのではないかと考えてしまうものでしょうが、事前に「事業譲渡」などを利用し他社に事業を移し、元の会社を解散させるといった方法もあります。

「清算型」の事業再生には、

  • 破産
  • 特別清算

がありますが、それぞれの特徴を説明します。

破産

破産法にもとづき会社を清算する手続が「破産」です。

事業再生における破産手続とは、事業譲渡のことを意味しています。

特別清算

会社法にもとづき行う清算手続が「特別清算」で、債務超過の状態に陥っている会社の再建に活用されており、債務超過でない会社の清算手続は「通常清算」と呼ばれます。

「破産」よりも手続は比較的容易にできることが特徴です。

また、「特別清算」という名称を耳にしたときのイメージは、「破産」よりもネガティブでないことがメリットともいえます。

 

「再建型」と「清算型」どちらの法的再生を選ぶべきか

法的再生による事業再生では、「再建型」と「清算型」のどちらを選ぶべきか迷うこともあるでしょう。

迷ったときには、それぞれを選ぶ条件を参考にしてください。

「再建型」の法的再生を選ぶときの条件は次の2つです。

  1. 過去の負債を圧縮することでキャッシュフローの黒字化が見込めること
  2. 再建させたとき債権者に対する配当が現在清算させたときの清算配当を上回ること

過去の負債を圧縮しても、キャッシュフローが赤字のままという場合や、黒字化できる見込みがなければ、再建で弁済を受けることができる額は増えないため、債権者の再建への協力を得にくいといえます。

「清算型」の法的再生では、再生できる事業や資産だけ他の会社に譲渡し、元の会社は破産や特別清算で清算します。

そのため「清算型」を選択するときの条件は、次の3つといえるでしょう。

  1. 過去の負債を圧縮してもキャッシュフローの黒字化が見込めないとき
  2. 税金や社会保険など滞納が多く再建の見通しが立たないとき
  3. 再建させても債権者に対する配当が清算配当を下回るとき

「再建型」では事業再生が見込めないときは「清算型」を選ぶしかないといえますが、「破産」を選択すれば法的再生のマイナス面が強く出ることになることは留意しておきましょう。

 

「法的再生」のメリット・デメリット

法的再生は裁判所を通して行いますが、上記の「再建型」が事業再生の手続として利用されています。

資金繰り・経営状況・取引関係など、申立てを行う企業に応じた手続を選び、事業再生を図っていきますが、「法的再生」を選択することには次のようなメリットとデメリットがあります。

「法的再生」のメリット

法的再生では裁判所が介在することになるため、手続の「透明性」や「公平性」が担保されることはメリットです。

債権者に対しても、法的な「拘束力」があることもメリットといえるでしょう。

さらに債権者による権利行使を一時的に禁止するため、

  • 債権者の強制執行などで事業を継続させるために必要な資産の差し押さえを防止できる
  • 多数の債権者などが同意をし、裁判所が認可することですべての債権者から同意を得ることができなくても再建計画による再生を図ることができる
  • 事後的に否認や詐害行為を主張されるリスクがない
  • 届出されなかった債権は失効するため簿外債務の負担リスクがない

といったメリットもあり、スポンサーとなる企業からの支援も得やすくなるといえるでしょう。

「法的再生」のデメリット

反対に法的再生のデメリットとして、

  • 法的手続を行っていると公に知られ、イメージダウンや経済的損失、事業基盤の毀損といったリスクが発生する
  • 予納金や弁護士などへの報酬が発生する

といったことが挙げられます。

「倒産」した企業というマイナスイメージにより、運営に悪影響を及ぼすことは避けられないため、取引を懸念した契約先を失う可能性もあるでしょう。

ただ、スポンサー企業が見つかれば新たな信用供与により、取引関係を継続できるといったケースもあります。

 

「私的再生」を手法とした事業再生とは

「私的再生」では、裁判所は関与することがなく、債権者との個別の交渉で事業再生を図ります。

主に任意整理などの手続を利用し再生を図る手法であり、債務者との話し合いで和解できれば、事業再生への道が開かれます。

法的再生では「倒産」というマイナスイメージを社会的に認知させてしまうのに対し、「私的再生」では当事者同士のみが事業再生に向けた手続の事実を知ることになります。

事業価値の毀損を回避する目的で使われる手法であり、法的再生よりも債権放棄で事業を継続させたほうが多く回収を見込むことができる場合に用いられます。

  • 債権者数が少なく公平性を保てるとき
  • 債権者との間で信頼関係が築けているため事業再生に協力してもらえるとき

などが私的再生の条件となります。

金融機関を中心とした多数の債権者が存在するときなどは、私的整理ガイドラインに基づいた手続が行われることになるでしょう。

私的整理ガイドラインとは、平成13年に政府が緊急経済対策を受け採択したものであり、法的手続を使わず債権者と債務者の合意に基づいて債権放棄など行うための手続規定です。

法的拘束力はありませんが、再建に値する企業が私的再生するときの金融界・産業界・経営者間のコンセンサスとされています。

法的再生で多くの弁済が見込めないときには、債権者の合意を得ることができないため、私的再生による手法は困難であると理解しておきましょう。

私的再生の特徴

私的再生は法的再生と違って、議決により債権者の権利に変更を加えることはできません。

債権者ごとに、個別交渉を行い、示談・和解により権利変更を行って事業を再生させていきます。

以上のことから、「私的再生」の特徴として挙げられるのは次の4つです。

  1. 柔軟に借金問題解決へ向けた取り組みが可能になる
  2. 再建手続にかかる費用を軽減できる
  3. 「倒産」という社会的認知を回避できる
  4. 手続にかかる期間が短く迅速な処理が可能

・柔軟に借金問題解決へ向けた取り組みが可能になる

私的再生は、それぞれの債権者と合意することにより事業再生を図る手続のため、柔軟に返済方法や条件など債務弁済計画を作成しやすいといえます。

・再建手続にかかる費用を軽減できる

私的再生では裁判所を通さずに手続するため、裁判所に支払う予納金など費用がかからず、少ない費用で事業再生を図ることができます。

・「倒産」という社会的認知を回避できる

法的再生では、申立てを行うと倒産した会社といったネガティブなイメージがつくことになりますが、私的再生では対外的に知られることはありません。

・手続にかかる期間が短く迅速な処理が可能

債権者数が少ないときや、債権者数が多くても協力してもらえる場合には、法的再生よりも時間をかけずに事業再生を図ることができます。

「私的再生」による再建の方法

「私的再生」では、それぞれの債権者と合意することで再生を図っていきますが、合意する上での決まりなどは特にありません。

一般的な「私的再生」では、

  1. 債務者が主要債権者に対し私的整理を申し出る
  2. 債務の支払いを一時停止してもらう
  3. 債務者企業や大口債権者を中心とした債権者委員会が再建計画を策定する
  4. 債権者との交渉で同意を得る

といった流れになります。

債権者が債権の無税償却ができないときや、債権者の取締役株主に対し責任があるという理由で債務免除に応じることができないときなど、債権者から同意を得ることはできなくなるでしょう。

この場合、事業譲渡や会社分割など組織再編も含めた上で、法的再生である特別清算などの手続と組み合わなければならなくなる可能性もあります。

なお、私的整理ガイドラインに基づいて債務免除できるときや、サービサーに債権譲渡し無税償却するときなどは、法的再生は組み合わず事業再生を図ることができます。

 

「法的再生」と「私的再生」を選択する基準

「私的再生」の場合、法的再生よりも短い期間で手続できるメリットがある一方で、裁判所を通さないため透明性が失われるといったデメリットもあります。

そのため債権者が再建計画に同意してくれる条件に、再建できる見通しが十分にあることを示さなければなりません。

条件を充たすことができないのなら、法的再生を選んだほうがよいといえます。

原則、私的整理では債権者全員から合意を得ることが必要ですが、法的手続を強行する債権者がいれば債権者間の公平を図ることができなくなるため、法的再生を選ぶことになります。

 

事業再生を成功させるために押さえておきたい7つのポイント

「事業再生」を図り選んだ手法を実施しても、失敗すれば廃業や解散してしまうことになります。

そのため成功率の高い手法を選び、成功に向けた対策や取り組みを行うことが必要ですが、事業再生を成功させるポイントとして押さえておきたいことは次の6つです。

  1. 事業再生成功に向けた決意を固める
  2. 現状・原因を把握し適切な対策を立てる
  3. 事業再生に向けて計画を立てる
  4. 社内・社外と情報を共有する
  5. 事業の将来を見極める
  6. スポンサー企業や支援してくれる金融機関など見つける

それぞれ何を押さえておくべきなのか、その内容を説明していきます。

事業再生成功に向けた決意を固める

事業再生では一定の期間が必要であり、債権者との話し合いで精神的な負担も大きくなります。そのため成功させるにも、経営者自身が必ず事業を再生されるといった強い決意を持って臨むことが大切といえるでしょう。

・現状・原因を把握し適切な対策を立てる

事業再生において、法的再生と私的再生のどちらを選択するのか、法的再生を選ぶなら再建型と清算型のどちらを選ぶかなど見極めも重要です。

選んだ手法に最適といえる対策を立てることも必要となるため、会社の現状を正しく把握し、債務超過に陥った原因など洗い出しや分析を行っておくようにしましょう。

事業再生に向けて計画を立てる

事業再生の成功に向けたスケジュールをしっかり立てていきましょう。

実際にはスケジュール通りに手続が進まないというケースも少なくありませんが、行き当たりばったりでは今後の見通しも立てることはできません。

たとえば現状の把握とスポンサー企業の調査、債権者への対応に1か月ずつ時間を費やし、その後は事業再生計画に2か月かけるといったおおよその期間を決めておきます。

それにより、ある程度の見通しが立てやすくなり、目標とする期間内に手続を完了させることにつながるでしょう。

社内・社外と情報を共有する

社内で情報を共有できるような体制を作り、債権者やスポンサー企業など社外との情報共有も行っておくことで、周囲から信頼を得やすくなります。

事業の将来を見極める

債権者に対し、できるだけ弁済を行うことは大切なことです。

ただ、目的は事業の再生のため、再建計画をしっかり立て、事業の将来を見極めることが大切です。

自社のみで再生できないときでも、M&Aなどを活用し、譲渡先の企業の経営資源を用いた再建が可能となる場合もあります。

事業再生に向けて選ぶ手法次第で、その後が変わると理解した上での適切な判断が必要といえるでしょう。

スポンサー企業や支援してくれる金融機関など見つける

事業再生では、資金繰りの悪化した自社を支援してくれるスポンサー企業や金融機関を見つけることが重要です。

ただ、スポンサー企業や金融機関が見つからなくても、政府系金融機関の日本政策金融公庫の事業再生支援資金制度など、事業再生に向けた資金調達制度も活用できます。

苦しい状態の会社を立て直すため、最適な資金調達方法を選ぶことも大切と理解しておきましょう。

 

事業再構築補助金の活用

中小企業庁では、新型コロナウイルス感染症の影響長期化により、当面の需要や売上回復が期待しづらい中で、経済社会の変化に対応するため中小企業などの事業再構築を支援する「事業再構築補助金」制度を設けています。

緊急的に設けられた枠も複数ありますが、いずれも第4回公募は終了しており、第5回公募が令和4年1月中に開始される予定です。

第5回では設けられた枠すべてが継続されるとは限りませんが、内容を知っておくと公募があったときスムーズに申請できるため、確認しておきましょう。

対象となるのは、

  • 新分野展開
  • 事業転換
  • 業種転換
  • 業態転換
  • 事業再編

など思い切った事業再構築に取り組む中小企業などです。

「通常枠」

「通常枠」の申請要件として、

  1. 売上が減っていること
    2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意3か月間の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高比で10%以上減少し、2020年10月以降の連続する6か月間のうち任意3か月間の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高比で5%以上減少していること
  2. 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組むこと
  3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること

などを満たす必要があります。

中小企業の場合、補助率2/3(6,000万円超は1/2)で、通常枠なら次の補助額を受けとることができます。

  • 従業員数20人以下…100万円~4,000万円
  • 従業員数21~50人…100万円~6,000万円
  • 従業員数50人以上…100万円~8,000万円

「緊急事態宣言特別枠」

令和3年の緊急事態宣言で深刻な影響を受け、早期に事業再構築を必要とする中小企業などについては、補助率を引き上げた「緊急事態宣言特別枠」を活用できます。

「特別枠」では優先的に審査されることがメリットであり、仮に「特別枠」で採択されなくても、加点の上で「通常枠」による再審査が行われます。「通常枠」のみで申請したときでも一定の加点措置が行われるようです。

「緊急事態宣言特別枠」の対象となるのは、通常枠の申請要件を満たし、緊急事態宣言に伴って飲食店の時短営業・不要不急の外出・移動自粛などの影響を受け、令和3年1月~9月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比30%以上減少している事業者です。

要件に合致すれば地域や業種は問われないため、申請してみるとよいでしょう。

「緊急事態宣言特別枠」の場合、中小企業の補助率は3/4まで引き上げとなり、次の補助額が支給されます。

  • 従業員数5人以下…100万円~500万円
  • 従業員数6~20人…100万円~1,000万円
  • 従業員数21人以上…100万円~1,500万円

「最低賃金枠」

最低賃金引き上げの影響を受けて、原資を確保することが厳しい状況にある中小企業などを対象としたのが「最低賃金枠」です。

こちらも補助率が引き上げられており、加点措置により「緊急事態宣言特別枠」よりも採択率が優遇されます。

対象となるには、必須申請要件を満たすことと、次の2つを満たすことが必要です。

  1. 2020年10月から2021年6月の間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用する従業員が全従業員数の10%以上いる
  2. 2020年4月以降のいずれかの月の売上が対前年または前々年の同月比30%以上減少している

「最低賃金枠」の場合も「緊急事態宣言特別枠」と同じ補助率・補助額が支給されます。

採択件数に限りがありますが、採択されなかった場合には「通常枠」で再審査されるようです。

「大規模賃金引上枠」

従業員を多く雇用し、継続して賃金引き上げに取り組み、従業員を増やし生産性を向上させる中小企業などを対象にしたのが「大規模賃金引上枠」です。

最大1億円まで支援されますが、対象となるには必須申請要件を満たすことと、次の要件を満たすことも必要となります。

  1. 補助事業実施期間終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
  2. 補助事業実施期間終了時点を含む、事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させること

補助対象となるのは従業員数101人以上の中小企業・中堅企業で補助金額8,000万円超~1億円で、中小企業の補助率は2/3(6,000万円超は1/2)です。

「大規模賃金引上枠」は150社限定のため、採択されなかったときには「通常枠」での再審査となります。

 

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、売上激減や業績悪化などで資金繰りに行き詰り、事業を継続することすら危ういという企業も少なくありません。

資金が底を尽くまで粘ることも立派な心意気といえますが、結果として最後まで支援してくれた取引先や金融機関、従業員などにより大きな迷惑をかけることも考えられます。

ただ、早めに対応することで悪影響を最小限に抑えることができるとわかっていても、何をすればよいのか、何から手をつけたらよいのかわからない経営者もいます。

事業再生の手法を探っている経営者にとって、どの手法を選ぶかは重要なポイントとなりますが、「私的再生」と「法的再生」のどちらを選ぶべきかしっかりと見極めなければなりません。

様々な手法があるため、どの方法がよいか迷うこともあるでしょうが、活用できる補助金なども有効活用しながら適した方法を選択するようにしてください。