機械装置とは?減価償却の方法や仕訳処理についてわかりやすく解説

「機械装置」とは「機械及び装置」のことであり、購入した場合には資産計上し、年度ごとに減価償却することが必要です。

事業運営や収益向上のために購入した工作機械・印刷機械・食料品製造機械など、いろいろな製品を製造する設備が機械装置といえます。

償却性資産として扱われるため、耐用年数に応じた減価償却を行い、期ごとに費用化することが必要です。

機械装置の減価償却において、工具器具や構築物との違いもわかりにくく、仕訳処理においても迷うことはあるでしょう。

そこで、機械装置について、減価償却の方法や仕訳処理をわかりやすく解説していきます。

減価償却とは

「減価償却」とは、経年劣化や使用による損耗で下がった価値を費用として計上する会計処理です。

固定資産は購入したときよりも年数が経ったり使ったりすることで、劣化したり消費したりするためその価値を低下させます。

そこで、購入時は資産計上した固定資産を、使用可能な期間とされる「耐用年数」に分けて、少しずつ費用計上していく手続が減価償却です。

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高額の固定資産を一度に経費計上してしまうと、購入した年のみ所得額が抑えられることになります。

しかし固定資産は長期に渡り使用するため、所有する上での「ランニングコスト」も発生します。

そのため、固定資産を取得する上でかかった費用は、長期に渡り計上するべきという考え方に基づいて、減価償却が必要とされています。

なお、固定資産のうち土地などは時間の経過で価値が低下しないため、減価償却の対象ではありません。

減価償却は「定額法」と「定率法」に分けることができます。

「定額法」とは、固定資産を購入した代金を法定耐用年数で割り、毎年同額を償却します。

「定率法」は、期首の未償却残高に一定割合をかけた金額を毎年償却する方法です。

機械装置においては「定率法」による減価償却が採用されますが、購入当初は多く、年数経過によって少ない金額を減価償却費として計上することになります。

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機械装置とは

「機械装置」とは、事業目的で所有・使用する機械や装置です。

工場で使用する製造設備・搬送設備・自走式機械・作業用機械などが該当します。

機械類は「機械装置」、道具類と備品は「工具器具備品」に分けて仕訳しますが、たとえば以下の機械や装置が「機械装置」とされます。

  • コンプレッサー
  • プレス機
  • 起重機(クレーン)
  • ブルドーザー
  • 切断機
  • チェーンブロック
  • 研削盤
  • ベルトコンベアー
  • パワーショベル

機械装置は、機械それぞれが独立して用役を提供するのではなく、機械ごとが構成部分になる集合体として機能して製品を生産します。

そのため耐用年数は、それぞれの機械装置ではなく設備に含まれるすべての機械の加重平均の「総合耐用年数」となり、その他の有形固定資産と異なる総合償却を行います。

工具以外の動力で動く工場設備が機械装置といえますが、購入代金以外に据付費やそれを取得する費用も合算して計上します。

機械装置について理解を深めるために、次の2つを確認しておきましょう。

  1. 工具器具備品との違い
  2. 構築物との違い

それぞれ説明していきます。

工具器具備品との違い

「工具器具備品」とは、事業で所有・使用している耐用年数1年以上かつ取得価額10万円以上の道具や設備です。

具体的に事業に使われる次の道具や設備を「工具器具備品」の勘定科目で処理します。

  • 工具(機械に取り付けた加工工具・切削工具・取付工具など)
  • 器具(製品加工に直接使わない試験機器・測定機器・計量器・送風機など)
  • 備品(工具・器具以外の応接用テーブルソファ・キャビネット・パソコン・コピー機・看板・金庫・テレビ・自動販売機・書画・骨とう品・観葉植物など)

耐用年数1年未満または取得価額が10万円未満の道具や備品は、工具器具備品ではなく「消耗品費」で計上します。

一般的に、「機械装置」は製造業の製造ラインを構成する設備のことであり、「工具器具備品」は事業活動で使用する小規模な資産として区分します。

また、「機械装置」は租税特別措置の対象資産であるのに対し、「工具器具備品」は対象資産にはならないという違いもあります。

詳しくは、国税庁「減価償却資産における「機械及び装置」と「器具及び備品」の区分について」を参考にしてください。

構築物との違い

「構築物」とは、土地上に定着する建造物・工作物・土木設備であり、建物や建物附属設備は含まれません。

機械装置よりも工具器具備品と混同しやすいといえますが、土地に定着する建物以外の建造物や工作物が「構築物」となります。

後付けのエアコンや簡易パーテーションなどは「工具器具備品」の勘定科目で処理します。

具体的には以下を構築物として扱います。

  • フェンス
  • ガソリンスタンド
  • トンネル
  • 広告塔
  • 運動場のスタンド
  • プール
  • 舗装道路のアスファルト

など

構築物と機械装置の違いは、生産機能を有するかであり、有していれば機械装置となります。

機械装置の耐用年数

通常、固定資産の耐用年数は耐用年数表で判定すれば問題ありません。

しかし機械装置は一般の資産と異なり、設備の種類に分けた後に細目を分類し、耐用年数表にあてはめて耐用年数を決めます

そのため耐用年数が設備の種類に対応して記載されている「耐用年数表(別表第二)」にあてはめ、業務用設備として通常しているかによって判定します。

機械装置が何の業種用設備なのかを判定するときには、「耐用年数の適用等に関する取扱通達の付表(付表八)」を使います。

また、自社製作の固定資産も減価償却の対象となる点には注意しましょう。

測量機器や建設機械などの機械装置には、法律で定められた「法定耐用年数」が用意されています。

正しく減価償却を行うためには適切な法定耐用年数を使うことが必要ですが、東京都主税局の公表している「償却資産の評価に用いる耐用年数」にも、機械装置の耐用年数表が掲載されています。

機械装置の償却方法

機械装置は、個々の機械を構成部分とした集合体として機能すると考えられるため、償却は「総合償却」で計算します。

ただし税法上の取り扱いの特例によって、租税特別措置に基づく特別償却が使われることもあります。

そのため機械装置の減価償却は、主に次の2つに分けることができます。

  1. 総合償却
  2. 特別償却

それぞれの償却方法について説明します。

総合償却

機械装置は、機械それぞれが独立して用役を提供するものではなく、個々の機械を構成部分とした集合体として機能します。

そのため機械装置の耐用年数は、機械装置を設備一体とする「総合耐用年数」を使い、「総合償却」で計算することになります。

総合償却とは、複数の固定資産をグループでまとめ、一括で減価償却する処理方法です。

「グループ」とは、製品の生産ラインといった目的を果たすためのまとまりを意味します。

本来、減価償却は資産の法定耐用年数に応じて個別償却しますが、大規模な機械設備で個別償却してしまうと、実務上大きな手間がかかります。

工場の製品生産ラインなど、無数の機械装置が連なっているため、機械ごとに減価償却するとかなり事務負担が重くなることが想像できるでしょう。

そこで、このような手間を簡略化するため、同じ使用目的の製造ラインを1つのまとまりとして、一括で減価償却する「総合償却」が採用されます。

特別償却

「特別償却」とは、通常の減価償却費以外に、経費を追加計上できる制度です。

減価償却資産を取得し、事業用に供した日の属する事業年度に、取得価額の一定割合を償却します。

また、事業年度の償却限度額に一定割合を準じた額を償却額とする割増償却という方法もあります。

初年度に普通償却と分けて追加の償却が可能となるため、事業用資産取得直後から設備投資による当面の税負担を軽減できます。

ただしその後の減価償却費は、特別償却で先取りした分、減少します。

期間を通算すると全体で償却できる額は同じであるため、非課税・免税措置ではなく減価償却制度を利用した課税繰延措置に過ぎないことは理解しておきましょう。

機械装置の減価償却の仕訳

機械装置の減価償却は、定率法が法定の償却方法です。

ただ、仕訳処理において計算式を簡便にするため、ここでは定額法を採用して説明していきます。

なお、定額法で行う場合は事前に申請が必要となるため注意してください。

以上を踏まえて、機械装置の減価償却の仕訳を以下の2つに分けて説明します。

  1. 10万円未満の機械装置購入の場合
  2. 10万円以上の機械装置購入の場合

10万円未満の機械装置購入の場合

10万円未満の機械装置を購入した場合、資産として計上する必要はありません。

購入金額が10万円に満たない場合には、全額を経費として計上できるからです。

全額費用として処理できるのは、次のいずれかを満たす場合とされています。

  • 使用期間1年未満
  • 取得価額10万円未満

向上の製品生産ラインなどの機械装置を10万円未満で購入することは考えにくいといえますが、該当する場合には費用として計上することになります。

ただ、10万円未満で全額費用計上するケースの多くは、パソコンなどの購入などです。

製品生産ラインに組み込まず、汎用的に使用する事務用パソコンなどは、機械装置ではなく器具備品で取り扱います。

この場合においても、購入価格が10万円未満であれば、消耗品費などの勘定科目で全額費用として計上できます。

例:9万円のパソコンを購入し現金で支払った
借 方 貸 方
消耗品費 90,000円 現金 90,000円

10万円以上の機械装置購入の場合

10万円以上の機械装置を購入した場合には、資産として計上することが必要です。

なお、20万円未満であれば、一括償却資産の選択ができます。

一括償却資産とは、取得価格が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、個別の減価償却をせず使用開始年から3年間に渡り、その年に一括償却資産に計上した資産の取得価額の合計額の3分の1を経費計上できるルールです。

また、減価償却のルールには他にも「少額減価償却資産」があります。

中小企業者等にのみ認められている特例であり、取得価額が10万円以上30万円未満の資産は、一定要件のもとで全額を購入年に経費計上できるルールとなっています。

ただしここでは通常の償却の仕訳について説明していきます。

例:期首に設備を70万円で導入した現金で支払った
借 方 貸 方
機械装置 700,000円 現金 700,000円

 

例:減価償却費を計上するが、購入した設備の法定耐用年数は7年だった。(減価償却費=70万円÷7年=10万円)
借 方 貸 方
減価償却費 100,000円 機械装置 100,000円

まとめ

機械装置とは、営業目的で所有・使用している機械や製品製造の設備です。

償却性資産であるため、種類に応じて定められた耐用年数により減価償却することになります。

ただし法定耐用年数は機械の種類ごとに複雑に細分化されているため、任意の判断で耐用年数を決めることはできません。

国税庁のホームページなどを確認し、正しい減価償却を行うことが求められます。

なお、製品の生産ラインを構成する機械装置は、1つのグループとして一括償却する総合償却という方法で計算します。

また、税法の取り扱いで租税特別措置法に基づく特別償却が認められる場合もあるため、会計処理で不安な場合には税務署や専門家などに問い合わせてみるとよいでしょう。