金融関係の会社ではコンプライアンスを遵守することが基本となっていますが、それだけでは足りず社会規範にも視野を広げていくことが必要とされています。
法律だけを守ればよいだけでなく、「コンダクト・リスク」という概念が注目されているところですが、金融会社だけでなく一般企業も同様です。
そこで、金融会社向けに金融庁が2018年10月に公表した「コンプライアンス・リスク管理に関する検査・監督の考え方と進め方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)」を参考に、コンプライアンス態勢を構築する上で求められる考え方を確認しておきましょう。
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金融庁も注目するコンダクト・リスク
金融庁が公表している「コンプライアンス・リスク管理に関する検査・監督の考え方と進め方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)」では、「コンダクト・リスク」が世界的に注目を集めていることが記載されています。
金融会社ごとにコンダクト・リスクの定義は異なりますが、たとえば三井住友フィナンシャルグループなどは「当社グループの役職員による、法令等の 違反・お客さま本位の徹底を欠く行為等により、顧客保護・市場の健全性・ 公正な競争に悪影響を及ぼすリスク」としています。
コンダクト・リスクで注目したいこととは?
コンダクト・リスクは共通した理解が形成されているとは言えないものの、リスク管理を行う上で把握できていない盲点となっているリスクがないか意識させることに意味があるといえます。
盲点となっているリスクは法律が整備されていないことが多く、
- 社会規範に反する行為
- 商慣習や市場慣行に反する行為
- 利用者視点の欠如した行為
などにつながることで企業価値を大きく毀損する可能性もあると考えられています。
さらにコンダクト・リスクが発生するケースとは、
- 利用者保護に悪影響が生じる場合
- 市場の公正や透明性に悪影響を及ぼす場合
- 客観的に外部に悪影響を及ぼさなくても金融会社自身の風評に悪影響を与えることでリスクが発生する場合
などが考えられます。
法整備には時間がかかるため、法律だけに目を向けていても変化する世の中の動きや社会常識に後れを取ってしまうということです。
法令違反でなくても行政処分の対象となった例
たとえば銀行で顧客の同意があれば法律違反にならないという認識で、対価といえるサービスまたは算定の根拠が明確でない融資実行手数料を徴求していた場合、顧客本位という観点ではないとして金融庁が業務改善命令を下した事例もあります。
顧客が融資実行手数料の支払いに同意していれば法律に違反しているとはいえませんが、根拠が不明なのに支払いを要求することは顧客本位とはいえず、社会規範にそむき利用者視点が欠如した行為といえます。
法律違反でなくても業務改善命令など、行政処分を出されることもあることを一般の事業者も肝に銘じておくことが必要といえるでしょう。