社保滞納により、ペナルティを受ければ、事業継続に大きな支障をきたす恐れがあります。
手元の資金が足らずに社保を滞納してしまったとき、相当のリスクを負うことは理解が必要です。
そこで、社会保険料を滞納したらどうなるのか、支払うことができなかった場合のペナルティと対処方法を説します。
中小企業経営者向け!

社会保険料の支払期限
社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)に加入しなければならないのは、次に該当する事業所です。
- 株式会社や合同会社などの法人
- 農林漁業・サービス業など一部業種を除き常時雇用する従業員が5人以上の個人事業所
上記に該当しないものの、半数以上の従業員が社会保険の適用事業所になることに同意し、申請で認可を受けた場合も社会保険適用事業所となります。
この場合、任意で社会保険に加入するため、健康保険と厚生年金保険のいずれか一方のみ申請することも認められます。
仮に加入義務があるのにもかかわらず、社会保険未加入の場合には加入義務が発生した時点から社会保険料未払いとなります。
社会滞納は、未納分についても実は2年という時効があるため、2年より前の社会保険料に関して支払う義務はないとも考えられます。
ただし実際には、滞納すればすぐに督促状などが発送されるため、消滅時効期間の2年を待っても時効成立することはありません。
社会保険料滞納によるペナルティ
社会保険料の納付期限まで保険料を納めることができず滞納してしまった場合、次の5つのペナルティを受けます。
- 電話により督促され
- 督促状が届く
- 延滞金が発生する
- 滞納処分を受ける
- 罰則の対象になる
それぞれ説明します。
電話により督促される
社保滞納によるペナルティとして、電話による督促を受けることが挙げられます。
社会保険料を納付しなければならない期限を過ぎても支払いがなければ、年金事務所からすぐに納めるように催促を受けます。
年金事務所への来所を求められることもあれば、事務所職員が会社を訪問することもあります。
滞納分を一括支払いできなければ、納付指導で納付計画が作成されます。
さらに指導や督励に従わず、完納の見込みがないと判断されれば、滞納処分へ移行します。
督促状が届く
社保滞納によるペナルティとして、会社に督促状が届くことが挙げられます。
年金事務所から電話で納付を求められるだけでなく、日本年金機構からも督促状が届きます。
督促状にはいつまでに社会保険料を納めなければならないか指定期限が記載されています。
督促状を発行日から起算して10日以上の経過した日が指定されるため、その期日までに支払うことが必要です。
なお、督促は滞納処分が前提条件となるため、支払いがなければ財産の差し押さえが行われます。
延滞金が発生する
社保滞納によるペナルティとして、延滞金が発生することが挙げられます。
督促状の指定期限までに社会保険料の支払いがない場合、滞納した罰金として延滞金を納めるように請求されてしまいます。
延滞金等の対象期間は、滞納保険料の納付期限翌日から納付日の前日までです。
日数に応じて保険料額に一定割合を掛けて計算しますが、納付期限翌日から3か月経過までの期間は年7.3%、その後は年14.6%を掛けた金額が延滞金となります。
滞納処分を受ける
社保滞納によるペナルティとして、滞納処分を受けることが挙げられます。
督促状を送ったり催促したりしても、滞納者から何の連絡もなかったり支払いもされなかったりした場合には、次の流れで滞納処分へ移行します。
- 財産の調査・捜査
- 財産の差押え
それぞれの説明します。
財産の調査・捜査
まず滞納処分を行う上で、会社が所有している財産の調査や捜査が開始されます。
滞納した社会保険料を回収するためには、会社が所有する財産を差し押さえ、換金して保険料の支払いに充てることが必要です。
どのくらいの財産を所有しているのか、聴取調査や取引金融機関に対する預金残高の確認、取引先企業全般に対する売掛債権の有無などが調査されます。
不動産など、その他財産全般に関しても同様です。
財産の差押え
次に滞納処分として、調査した不動産・預金・売掛債権などの財産が差し押えられてしまいます。
差押え後に換価された後は、滞納した社会保険料や延滞金に充てられます。
不動産が差し押さえ対象になると、生産基盤を失う可能性があり事業継続が困難になるでしょう。
預貯金が対象になった場合、取引金融機関に差し押さえの事実を知られるため、信用を失い今後の追加融資は難しくなります。
さらに売掛債権の差さえでは取引先から信用を失うため、その後の取引や契約を打ち切られ、事業継続が困難になると考えられます。
罰則の対象になる
社保滞納によるペナルティとして、罰則の対象になることが挙げられます。
社会保険未加入であることが極めて悪質と判断された場合、健康保険と厚生年金保険ではは6か月以下の懲役または50万円以下の罰金、雇用保険では6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象です。
仮に社会保険未加入であることを指摘されたときには、速やかに加入手続を行いましょう。
社会保険料滞納による影響
社会保険料は税金ではないものの、国や自治体の財源となる資金であり、国民が納めることが必要とされているお金です。
そのため社会保険料を支払わず滞納すると、会社には次の5つの影響が及びます。
- 社会的な信用を失う
- 従業員の離職率が上がる
- 銀行融資で資金調達できなくなる
- 取引先との関係が悪化する
- 商売自体できなくなる
それぞれ説明します。
社会的な信用を失う
社保滞納による会社への影響として、社会的な信用を失うことが挙げられます。
社会保険料を納めず財産を差し押さえられれば、取引金融機関や取引先に知られることになり、さらに従業員などにも広く伝わってしまいます。
多くの関係者に知られることで社会的な信用を失い、融資や取引の打ち切り、従業員の離職などその後の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に知名度の高い企業の場合、社会保険料滞納に関する事実は広く公表されるため、イメージ低下は免れることはできません。
顧客離れにもつながるため、さらに厳しい状況に追い込まれることになるでしょう。
従業員の離職率が上がる
社保滞納による会社への影響として、従業員の離職率が上がることが挙げられます。
社会保険を支払っていないことで、財務調査や差押えが実行されれば、将来性が期待できない会社と従業員も不安を感じます。
そもそも社会保険料は労使折半で負担する費用であるため、従業員から徴収した保険料を未納する企業を信頼し、働きたいとは思わないはずです。
信頼は薄れれば、従業員の離職が進んでしまう可能性は否定できないといえます。
銀行融資で資金調達できなくなる
社保滞納による会社への影響として、銀行融資で資金調達できなくなることが挙げられます。
社会保険料を滞納し、金融機関にもその情報が伝われば、資金繰りがかなり悪化している会社に資金を貸し付けたいとは思わないはずです。
その後の新規融資はもちろん、追加融資についても断られる可能性があり、貸しはがしなど早期回収に乗り出す恐れもあるため注意してください。。
取引先との関係が悪化する
社保滞納による会社への影響として、取引先との関係が悪化することが挙げられます。
商取引を行う相手が社会を滞納していれば、いずれ掛けの支払いも滞ると取引先は不安を感じるはずです。
そのため掛け取引は中断し、すべて現金決済による方法でのみ取引可能と変更される恐れもあります。
商売自体できなくなる
社保滞納による会社への影響として、商売自体できなくなることが挙げられます。
差し押さえの対象となる不動産や設備、預貯金などは事業継続において欠かすことのできないものです。
そのため必要な財産が差し押さえられてしまうと、商売自体できなくなる可能性があり、結果として廃業や倒産に追い込まれてます。
社会保険料の滞納問題を解決する方法
社会保険料の支払いができず、滞納してしまったままでは健全な会社経営はできません。
督促状や催促を無視し続ければ、最終的に財産を差し押さえられてしまうなど、事業継続は難しくなります。
そこで、社会保険料を滞納している問題を解決する方法として、次の3つの検討が必要です。
- 行政に相談する
- 専門家に相談する
- ファクタリングを活用する
それぞれ説明します。
行政に相談する
社会保険料が支払えず、滞納状態から抜け出すことができない場合には、年金事務所など行政に相談しましょう。
相談はできるだけ早くすることが必要であり、どれだけ遅くなったとしても督促状が届いた段階では連絡することが必要です。
行政に相談する内容としては、次の2つが挙げられます。
- 納付猶予
- 分納
それぞれ説明します。
納付猶予
社会保険料の支払いが一時的に困難である場合など、納付猶予を申請することを検討しましょう。
災害で財産が相当な損害を受けたことにより、厚生年金保険料を納められない場合には、申請に基づいて社会保険料納付を猶予してもらえます。
はやめに年金事務所へ相談することが必要です。
なお、納付の猶予の制度は、次のような種類があります。
- 災害により財産に相当な損失を受けた場合の納付の猶予(災害による納付の猶予)
- 災害等を受けたことにより納付困難となった場合の納付の猶予(通常の納付の猶予)
- 届出遅延による遡及した月分にかかる保険料に関する納付の猶予(届出が遅延したことによる納付の猶予)
詳しくは、日本年金機構の「厚生年金保険料等の納付の猶予」を参考にしてください。
分納
滞納している厚生年金保険料などを一度に納付すると、事業を継続させることが困難になる場合一定要件に該当すれば分割納付できます。
納付すべき厚生年金保険料などの納期限から6か月以内に「換価の猶予」を申請しましょう。
換価の猶予とは、税金を一括納付すると事業継続できなくなる恐れがあると認められる場合、申請に基づき差し押さえ財産の売却が猶予される制度です。
認められれば納付しなければならない厚生年金保険料などは、一定の猶予期間内に分割して納付すればよいとされ、猶予期間中の延滞金の一部も免除されます。
猶予期間中は毎月分割した社会保険料の納付が必要ですが、通常の社会保険料は継続して支払うことも必要である点には注意しておきましょう。
詳しくは、日本年金機構の「厚生年金保険料等の換価の猶予」を参考にしてください。
専門家に相談する
社会保険料の滞納問題を解決したいものの、事業継続自体難しく破産なども視野に入れるのであれば、弁護士など専門家に相談しましょう。
年金事務所などに相談しても解決に至らず、破産なども検討しなければならない状況でも、従業員の厚生年金の加入期間が短縮されることはありません。
社会保険料の支払いが大きな負担となり、さらに資金繰りも悪化してしまうことが予想されるのであれば、破産を検討することも手段の1つです。
法人破産では、法人の債務は免除されるため、社会保険料の支払い義務も消滅します。
ただし、法人格が持分会社で、その無限責任社員の方については法人破産後も社会保険料を負担する義務が残ります。
また、個人事業者の場合には自己破産しても社会保険料は免責されないため、法人と個人事業主では免除されるか否か異なる点にも注意しておきましょう。
ファクタリングを活用する
社会保険料の滞納問題を解決するには、支払いに充てる資金が必要であるため、ファクタリングを活用することも検討しましょう。
ファクタリングとは、中小企業に近年注目されている資金調達方法の1つですが、売掛債権をファクタリング会社に売って換金するサービスです。
商取引では売掛金が発生しますが、1か月または2か月先にならなければ入金されることはありません。
しかしファクタリングを利用すれば、最短即日現金化することができるため、滞納している社会保険料に充てることができます。
ファクタリングでも審査が行われますが、借入れの審査のように税金滞納や債務超過で通らなくなることはなく、売掛先の信用力が重視されます。
社会滞納中でも利用できる可能性は十分ある方法のため、ファクタリングを活用して資金調達し、滞納状態を解消することをおすすめします。
なお、ファクタリングに関しては、以下の記事で詳しく説明しています。
ファクタリングの利用方法とは?仕組みと注意点について簡単に解説
まとめ
社会保険料を滞納し続けると、電話や郵送での督促が行われ、放置していたり納めなかったりすれば会社の財産を差し押さえられます。
事業用の資産を差し押さえられてしまうと、事業運営に支障をきたすことになり、会社経営を続けることもできなくなります。
早期に問題解決するためにも年金事務所などに相談し、社会保険料の支払いに充てる資金を調達するのならファクタリングがおすすめです。
ファクタリングは、税金滞納や債務超過、赤字決算でも利用できる資金調達の方法であり、審査では売掛先の信用力が重視されます。
最短即日で資金調達できるため、滞納状態を早期に解消したいのであれば、うまく活用することをおすすめします。
中小企業経営者向け!

