トラックの購入後は、法定耐用年数に従って減価償却することが必要です。
ただ、新車と中古のどちらのトラックなのか、中古の場合には法定耐用年数の残り年数の有無などで計算方法は変わってきます。
さらに減価償却の計算方法も定額法と定率法があるため、計算例や仕訳処理の方法なども理解しておく必要があります。
そこで、トラックの減価償却について、新車と中古の耐用年数の計算・仕訳方法を解説していきます。
目次
トラックの減価償却とは
トラックなど車両運搬具に限らず、建物・建物附属設備・機械装置・器具備品などの資産は、時間の経過や使用による損耗で価値が減少していく「減価償却資産」です。
減価償却資産は、購入したときにすべてを経費として計上せず、使用可能とみなされる法定耐用年数で分割して必要経費にしていきます。
経年や使用による損耗で減少した価値を減価償却し、毎年「減価償却費」として費用計上し、資産価値を適切にマイナスしていくことになります。
トラックの場合、長期間に渡り使用し続けたことによる老朽化や、新規モデルの登場などによって価値が低下します。
適切な資産価値と費用計上のための減価償却が必要ですが、主に次の2つの計算方法があります。
- 定額法
- 定率法
それぞれの減価償却の計算と仕訳方法について説明します。
定額法
「定額法」とは資産の金額に一定割合を掛けて減価償却費を求める方法です。
割合は法定耐用年数ごとに定められており、たとえば耐用年数2年なら償却率0.500となり、1年目と2年目に半分ずつ減価償却費を計上します。
資産項目によって定額法しか選択できない資産があるものの、トラックは車両運搬具なので、法人や事業主の方針により計算方法を選ぶことができます。
毎年同じ額を償却していくことになりますが、たとえば100万円で購入した新車トラックの法定耐用年数が2年の場合、毎年度末に減価償却費として計上する額は以下のとおりです。
50万円=100万円÷2年
なお、最終年度は残存価値1円を残すことになるため、減価償却費から1円を差し引き計上します。
また、減価償却費の仕訳処理については次の2つの方法があります。
- 直接法
- 間接法
1年目の仕訳は以下のとおりです。
直接法 | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
減価償却費500,000円 | 車両運搬費500,000円 | トラック減価償却 1年目/2年 |
間接法 | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
減価償却費500,000円 | 減価償却累計額500,000円 | トラック減価償却 1年目/2年 |
定率法
「定率法」とは、減価償却の初年度に多くの減価償却を計上する方法です。
減価償却の残存価値に一定の償却率を掛けて減価償却費を計算します。
能率が高く収益が多いときに償却費が多く計上されることや、修繕費などが多い後年度に償却費が低減するため費用配分の効率化が可能です。
一定の償却率を掛ける特性上から、取得年度が最も高い減価償却費となり、年を追うごとに減少していきます。
ただし、同じ償却率で計上し続ければ最終的にマイナスになる場合があるため、資産価値が保証率から割り出された金額を下回ったときには定額法で減価償却を行います。
たとえば法定耐用年数6年で1年経過した中古のショベルローダーを200万円で購入した場合において、調整後の耐用年数は5年とします。
1年目から5年目の減価償却費と1年目の仕訳処理は以下のとおりです。
- 1年目800,000円
- 2年目480,000円
- 3年目288,000円
- 4年目216,000円
- 5年目216,000円
直接法 | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
減価償却費800,000円 | 車両運搬費計額800,000円 | トラック減価償却 1年目/5年 |
間接法 | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
減価償却費800,000円 | 減価償却累計額800,000円 | トラック減価償却 1年目/5年 |
新車トラックの法定耐用年数
新車トラックの法定耐用年数は、自家用と業務用のどちらの使用目的か、車両の種類などで変わってきます。
そこで、次の2つに分けて新車トラックの法定耐用年数を説明していきます。
- 運送事業用のトラック
- 運送事業用以外のトラック
運送事業用のトラック
運送事業用のトラックを新車で購入した場合の法定耐用年数は以下のとおりです。
自動車の種類 | 法定耐用年数 |
小型の貨物自動車(積載量2トン以下) | 3年 |
大型乗用車(総排気量が3リットル以上) | 5年 |
その他の自動車 | 4年 |
被けん引車・その他 | 4年 |
なお、トラッククレーン・ショベルローダー・ブルドーザー・ロードローラー・コンクリートポンプ車など建設業で使用する車両のうち、人やモノの運送または運搬を目的とせず現場作業を目的としている車両は「機械装置」として扱います。
建設業の機械装置は総合工事用設備に該当し、耐用年数は6年と定められています。
運送事業用以外のトラック
運送事業用以外の自家用トラックは、次の2つに分けることができます。
- ダンプ式トラック
- その他トラック
ダンプ式トラックの耐用年数は4年、その他トラックは5年となりますが、具体的には以下のとおりです。
自動車の種類 | 法定耐用年数 |
総排気量0.66リットル以下 | 4年 |
ダンプ式の貨物自動車 | 4年 |
その他の貨物自動車 | 5年 |
報道通信用の車両 | 5年 |
その他の車両 | 6年 |
中古トラックの耐用年数
中古トラックの場合、法定耐用年数で減価償却しない点に注意してください。
あとどのくらい使用できるのか、その期間を見積もることが難しい場合には、簡易的に算出した残存年数を使用します。
ただ、次のように法定耐用年数がまだ残った状態なのか、それともすでに経過してしまっているのかによって計算方法は異なります。
- 法定耐用年数が残っているトラック
- 法定耐用年数を過ぎているトラック
どちらの計算方法で算出した場合でも、年数に1年未満の端数があるときには、端数を切り捨てて調整しますが、調整年数が2年に満たなければ2年で減価償却します。
以上を踏まえて、上記2つのトラックの耐用年数の計算方法を説明していきます。
法定耐用年数が残っているトラック
法定耐用年数の一部を経過したものの、まだ年数が残っているトラックは、次の計算式で耐用年数を算出します。
耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2 |
法定耐用年数の一部を経過している場合、法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に対し、経過年数の20%相当年数を加えた年数を残存年数とします。
計算した結果、1年未満の端数が出たときには切り捨てとなり、切り捨てたことで2年に満たない年数になった場合には残存年数2年で扱います。
たとえば中古7年目の運送事業用大型乗用車(総排気量が3リットル以上)を購入した場合、新車であれば法定耐用年数は5年です。
法定耐用年数はすべて経過しているため、法定耐用年数20%相当年数は1年(5年×20%)
であるものの、2年未満であるため耐用年数2年で扱います。
法定耐用年数を過ぎているトラック
法定耐用年数すべてを経過し、年数が残っていないトラックは、次の計算式で耐用年数を算出します。
耐用年数=法定耐用年数×0.2 |
中古トラックの耐用年数の計算は、法定耐用年数を超えているかにより計算方法が異なりますが、算出した年数が2年未満であれば耐用年数2年とみなすことは共通しています。
たとえば、中古2年目(新車であれば法定耐用年数5年)のトラックを購入した場合、法定耐用年数の一部を経過しているため残りの耐用年数は以下となります。
3.4年=(5年-2年)+2年×0.2 =3年
3.4年となるものの、端数は切り捨てであるため耐用年数3年で扱います。
トラック購入時と減価償却の仕訳処理
トラックの減価償却や計算方法は、新品と中古のどちらを購入したかによって異なります。
新車トラックは法定耐用年数をそのまま使用するのに対し、中古トラックでは複雑な計算方法で残存年数を算出することが必要です。
仮に法定耐用年数が残っていない残存年数ゼロの状態でも、簡便法による計算方法で2年の耐用年数として扱われます。
法定耐用年数を経過し終わっていれば、減価償却の対象外であると勘違いしないように注意してください。
トラックの減価償却は先に説明したとおり、定額法と定率法の2種類があり、個人事業主は定額法、法人は定率法により計算することになります。
今回は仕訳例を簡略化して説明するため、定額法による以下の4つの仕訳処理について説明していきます。
- 新車トラックの購入時
- 新車トラックの減価償却時
- 中古トラックの購入時
- 中古トラックの減価償却時
新車トラックの購入時
新品トラックの購入においては、法定耐用年数に基づく減価償却費の計算となるため、耐用年数を割り出す必要はありません。
例:期首に新車の業務用2トントラックを購入し、購入代金の300万円を現金で支払った | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
車両運搬具3,000,000円 | 現金3,000,000円 | 2トントラック購入代金 |
新車トラックを購入したときにはすべて資産計上することが必要であるため、「車両運搬具」の資産勘定科目を使用します。
新車トラックの減価償却時
購入した新車トラックは資産として計上しているため、期末に減価償却した分を費用として計上します。
例:購入した新車の業務用2トントラックの法定耐用年数(3年)で減価償却した 減価償却費100万円=車両運搬具300万円÷法定耐用年数3年 |
||
借方 | 貸方 | 摘要 |
減価償却費1,000,000円 | 車両運搬具1,000,000円 | 2トントラック減価償却1年目/3年 |
中古トラックの購入時
中古トラックを購入した場合、法定耐用年数で減価償却できないため、残りの耐用年数を計算することが必要です。
例:期首に中古の業務用2トントラック(2年落ち)を購入し、購入代金200万円を現金で支払った | ||
借方 | 貸方 | 摘要 |
車両運搬具2,000,000円 | 現金2,000,000円 | 中古2トントラック購入代金 |
新車トラックを購入したときと同様に、一旦すべてを資産科目「車両運搬具」の勘定科目で資産計上します。
中古トラックの減価償却時
中古トラック購入分についても、期末に減価償却した分を費用計上することになります。
耐用年数は、法定耐用年数と経過年数を以下の計算式にあてはめて算出します。
耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%) |
算出した結果、2年未満になったときには耐用年数2年として扱います。
例:購入した中古の業務用2トントラック(2年落ち)を減価償却した 耐用年数1.4年=(3年-2年)+(2年×20%)=2年 計算した結果、2年を下回ったため耐用年数は2年で計算します。 減価償却費100万円=車両運搬具200万円÷2年 |
||
借方 | 貸方 | 摘要 |
減価償却費1,000,000円 | 車両運搬具1,000,000円 | 中古2トントラック減価償却1年目/2年 |
トラック寿命を延ばすポイント
トラックの寿命はできるだけ長いほうが、購入のための資金を準備する必要もなくなり、資金繰りは安定するでしょう。
トラックの耐用年数が5年だった場合でも、5年経過後に使用できなくなるわけではありません。
適切にメンテナンスを行うことで、耐用年数を過ぎても使い続けることができるでしょう。
寿命を延ばすポイントとしては、主に次の3つです。
- エンジンオイル等を適宜交換する
- 運転方法を見直す
- 暖機運転を行う
それぞれのポイントについて説明していきます。
エンジンオイル等を適宜交換する
トラックのエンジンオイルは、人でたとえれば血液と同じ役割を担います。
そのためエンジンオイルが古く汚れているときや少なくなっている場合、トラックに不具合が発生しやすくなります。
エンジンオイルは、冷却・潤滑・洗浄・密着・防錆などの効果により、エンジンの働きを助ける役割を担っています。
日々、長距離を走り続けるトラックのエンジンオイルは早めに劣化する傾向が見られるため、トラックの心臓ともいえるエンジンを長持ちさせるためにも適宜交換するようにしてください。
また、冷却液・バッテリー液・ウォッシャー液なども補充や交換を忘れず行うようにしましょう。
運転方法を見直す
急発進・急加速・急ブレーキなどは、荒い運転ではトラックに負担をかけます。
発進はゆっくり、前もってブレーキを踏むなど、ドライバーがエンジンに負担をかけない運転を心掛けることも必要です。
暖機運転を行う
数分間アイドリング後に発進する暖機運転を行いましょう。
半クラッチの多用はクラッチ板を磨耗させ、エンジンオイルを汚す原因となります。
たとえ耐用年数を過ぎていても、状態を良好に保つことができていれば、いざというときに高価格で売却できる可能性もあります。
資金調達や資金繰り安定にもつながるため、できるだけトラックの状態を良好に保てる運転や操作を心掛けましょう。
まとめ
トラックの減価償却は、新品と中古のどちらで購入したかにより、計算方法などが異なります。
新車と中古のどちらを購入した場合でも、初年度にすべて資産計上し、減価償却により耐用年数に応じた年数で分けて費用計上することが必要です。
積載量・排気量などで法定耐用年数が細かく分かれることや、残存年数ゼロの中古トラックでも耐用年数2年として扱うことなど理解しておくようにしましょう。