さまざまな事情により、期限内の法人税の申告や納付が難しくなることがあります。
今回は法人税の猶予が認められるパターンと申請をしなかった場合の注意点を解説していきます。
中小企業経営者向け!

法人税の申告・納付を延長できるケース
法人税は申告納税式の税金です。
原則として、確定申告分は、事業年度終了日の翌日から2か月以内に法人税を納めます。
納税方法は、銀行口座の振替納税のほか、コンビニ納付やスマートフォン決済、クレジットカード納付、e-Taxを利用したダイレクト納付やインターネットバンキングと多様です。
さまざまな事情で法人税の納付が難しくなることがあるため、以下のケースで法人税の申告や納付の延長が認められています。
- 国税庁が判断した場合
- 災害などでやむを得ない場合
- 会社都合での延長の場合
国税庁が判断した場合
納税者個別の事情と関係なく、災害などにより特定の地域などでの申告や納付に影響があるものと認められる場合は、国税庁が納付だけでなく申告の延期を認める場合があります。
原則、法人税の申告や納付は事業年度終了の日(決算日)の翌日から2か月以内ですが、国税庁の指定により申告や納付が指定の期間延長されます。
国税庁による指定の場合は、納税者の申請手続きは必要ありません。
期限延長を認める場合には、対象の地域や期日などは官報に掲載されます。
災害などでやむを得ない場合
個別のやむを得ない事情による申告や納付が難しい場合、法人が一定の要件を満たして「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出、税務署からの承認を受ければ延長してもらえます。
災害などの個別のやむを得ない事情とは、以下に該当するケースです。
- 納税者が震災や火災などの災害、盗難に遭った損害相当額
- 納税者や生計を一にする親族や病気やケガをしたことによる医療費等相当額
- 納税者が事業を廃止・休止したことによる損害相当
- 事業の利益減少など著しい損失を受けた額相当
- 本来の期限より1年以上経過して修正申告などで税額が確定したことによる納税額分
会社都合での延長の場合
「定款の定め等による申告期限の延長の特例」の制度があり、会社の運営上の都合で申告期限の延長が認められることがあります。
該当するのは次のようなケースです。
- 定款等の定めや得な事情で決算についての定時株主総会を事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に実施できない場合
- 通算法人が多数あるなどの事情で事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を提出できない場合
- 会計監査人設置会社で、定款等により事業年度終了の翌日から3ヶ月または4ヶ月以内に定時株主総会の招集ができない場合 など
法人税の申告延長をしなかった場合の影響
法人税の申告延長に本来必要な手続をしなかった場合、以下の措置の対象となります。
- 青色申告取り消し
- 延滞税・加算税が課される
- 調査が入る恐れがある
青色申告取り消し
原則として2期連続で本来の提出期限内に申告書の提出を行わなかった場合には青色申告が取り消されます。
青色申告は、複式簿記により作成した法定の帳簿書類を備え付ける代わりに事業者に一定の特典を認める制度です。
税務署への申請により青色申告を選択する法人には、欠損金の繰越や繰り戻し還付、中小企業投資促進税制など複数の特典の利用が認められます。
なお、期限内申告を行い誤りが見つかった場合でも、事業年度終了日の翌日から3か月以内に申告し直せば修正後の内容で申告できます。
青色申告が取消されると、その後1年は申請ができません。
申請から承認まで時間がかかるため、期限内の申告が難しい場合は延長の申請を申し出ることが必要です。
延滞税・加算税が課される
法人税の申告延長を申請せずに申告期限を過ぎて納付が行われない場合、延滞税や加算税などのペナルティが発生します。
延滞税は、期限後納付に対して発生する利息的な性格をもった税金です。
原則として、納付すべき税金の納付が行われなかった場合には、納期限の翌日から延滞税が発生することになります。
延滞税として課される税金は、納期限の翌月から2ヶ月以内は原則年7.3%(または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方)、2ヶ月超の部分は原則年14.6%(または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方)です。
加算税は、本来の納税額に加算して課税される税金のことをいいます。延期の手続きなしに期限内に申告がされない場合に課される可能性があるのが、無申告加算税です。
無申告加算税の税率は、税務署調査前の自主的な申告であれば本税(本来納付すべき税金)の5%ですが、調査後だと50万円以下の部分は15%、50万円超の部分は20%の追加課税となります。
調査が入る恐れがある
法人税の申告や納付を税務署に指摘されるまで放置してしまった場合、税務調査が入る可能性があります。税務調査とは、税務署による事業者の財産や滞納処分を行うための調査です。
さらに、税務署の指摘を受けても納付などが行われない場合、滞納処分に移行します。
滞納処分とは、事業者の財産の差押えなどで、税務署が滞納分を回収する手続です。
財産差押えが行われると、事業の継続などに影響が及びます。
税務署からの指摘や連絡を放置せず、必要に応じて延納の申請などを事前に済ませましょう。
まとめ
法人税の申告や納付は、場合によって延長を申請できる場合があります。
納期限を過ぎたまま放置すると、延滞税や加算税などが課さるなど影響があるため、早めに対処しましょう。
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