法人税の申告や納付を延長することは可能?申請時の注意点も解説

さまざまな事情により、期限内の法人税の申告や納付が難しくなることがあります。法人税は、申告や納付を延長してもらうことができるか疑問を抱えている方もいるのではないしょうか。今回は法人税の猶予が認められるパターンと申請をしなかった場合の注意点を解説していきます。

法人税の申告や納付を延長することはできる?

法人税は申告納税式の税金です。原則として、確定申告分は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に法人税を納める義務があります。

納税方法は、銀行口座の振替納税のほか、コンビニ納付やスマートフォン決済、クレジットカード納付、e-Taxを利用したダイレクト納付やインターネットバンキングと多様です。

多くの法人は納税のための資金を準備していることと思いますが、さまざまな事情で法人税の納付が難しくなることがあります。あるいは、確定申告自体も困難になるケースもあるでしょう。

そこで国では、法人税の申告や納付の延長を一部認めています。どのようなパターンで申告の延長や納付の延長ができるのでしょうか。法人税の申告や納付を延ばせるケースを3つ紹介します。

  1. 国税庁が判断した場合
  2. 災害などでやむを得ない場合
  3. 会社都合での延長の場合

国税庁が判断した場合

まず、国税庁が必要と判断した場合です。納税者個別の事情と関係なく、災害などにより特定の地域などでの申告や納付に影響があるものと認められる場合は、国税庁が納付だけでなく申告の延期を認めることがあります。

国税庁による指定は、「地域指定による期限延長」や「対象者指定による期限延長」といわれる措置です。原則として、法人税の申告や納付は事業年度終了の日(決算日)の翌日から2ヶ月以内となりますが、国税庁の指定により申告や納付が指定の期間延長されます。

国税庁による指定の場合は、納税者の申請手続きは必要ありません。

国税庁が対応した全国にも影響した納税猶予措置としては、昨今の新型コロナウイルス感染症による措置が代表的でしょう。

2020年(令和2年)には、新型コロナウイルス感染症の影響や混雑緩和のため、所得税や消費税の申告などで1ヶ月の延長が認められました。(※法人税については以下に挙げている個別延長を緩和する措置が認められました。)

なお、国税庁が期限延長を認める場合には、対象の地域や期日などは官報に掲載されることになります。

災害などでやむを得ない場合

個別のやむを得ない事情による申告や納付が難しい場合、法人が一定の要件を満たして「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出して、税務署からの承認を受けると申告や納付を延長してもらえることがあります。

災害などの個別のやむを得ない事情とは、以下に該当するような場合です。

  • 納税者が震災や火災などの災害、盗難に遭った損害相当額
  • 納税者や生計を一にする親族や病気やケガをしたことによる医療費等相当額
  • 納税者が事業を廃止・休止したことによる損害相当
  • 事業の利益減少など著しい損失を受けた額相当
  • 本来の期限より1年以上経過して修正申告などで税額が確定したことによる納税額分

また、上記に類する事情があった場合にも法人税の申告や納付の延長が認められることがあります。ただし、該当する事実があっても、一時的に納付することが困難と認められない場合は猶予を受けられません。

また、納税額のすべてではなく、猶予を受けられるのは、例えば、災害であれば災害による損失額までなど損失などを受けた金額に限られます。原則として担保の提供が必要な点にも注意が必要です。

会社都合での延長の場合

ほかにも、「定款の定め等による申告期限の延長の特例」の制度があり、会社の運営上の都合で申告期限の延長が認められることがあります。申請により延長できるのは次のようなケースです。

  • 定款等の定めや得な事情で決算についての定時株主総会を事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に実施できない場合
  • 通算法人が多数あるなどの事情で事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を提出できない場合
  • 会計監査人設置会社で、定款等により事業年度終了の翌日から3ヶ月または4ヶ月以内に定時株主総会の招集ができない場合 など

該当する場合は、「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」を事業年度終了日までに提出することで申告を1ヶ月延長できます。ただし、法人税の納付は延長できない点に注意しましょう。

ここまで、法人税の申告や納付の猶予が受けられる場合についてケース別に紹介しました。申告や納付の延長に関する疑問や不明点については、PMGまでご相談ください。

プロが丁寧にお教えするうえ、お客様に合わせた方法でサポートしております。

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法人税の申告延長を申請しなかったらどうなる?

法人税の申告延長に本来必要な手続きをしなかった場合どのような影響があるのでしょうか。申請しなかった場合の影響を取り上げます。

  1. 青色申告取り消し
  2. 延滞税・加算税が課される
  3. 税務署による調査が入る可能性がある

上記3つについて解説します。

青色申告取り消し

原則として2期連続で本来の提出期限内に申告書の提出を行わなかった場合には青色申告が取り消されることになります。

青色申告は、複式簿記により作成した法定の帳簿書類を備え付ける代わりに事業者に一定の特典を認める制度です。税務署への申請により青色申告を選択する法人には、欠損金の繰越や繰り戻し還付、中小企業投資促進税制など複数の特典の利用が認められます。

なお、期限内申告を行い誤りが見つかった場合でも、事業年度終了日の翌日から3ヶ月以内に申告し直せば修正後の内容での申告が可能です。青色申告の取消しにならないためにも、まずは申告を行い、誤りがあれば早期に修正を行う方が期限遅れになりにくいでしょう。

また、青色申告は取消しになるとその後1年は申請ができません。申請しても承認されるまでに時間がかかるため、取消しにならないよう期限内の申告が難しい場合は延長の申請を申し出ましょう。

延滞税・加算税が課される

法人税の申告延長を申請せずに申告期限を過ぎて納付が行われない場合、延滞税や加算税などのペナルティが発生することがあります。

延滞税は、期限後納付に対して発生する利息的な性格をもった税金です。原則として、納付すべき税金の納付が行われなかった場合には、納期限の翌日から延滞税が発生することになります。

延滞税として課される税金は、納期限の翌月から2ヶ月以内は原則年7.3%(または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方)、2ヶ月超の部分は原則年14.6%(または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方)です。

加算税は、本来の納税額に加算して課税される税金のことをいいます。延期の手続きなしに期限内に申告がされない場合に課される可能性があるのが、無申告加算税です。

無申告加算税の税率は、税務署調査前の自主的な申告であれば本税(本来納付すべき税金)の5%ですが、調査後だと50万円以下の部分は15%、50万円超の部分は20%の追加課税となります。

意図的に申告をしていないなど悪質と判断された場合は重加算税が加算される点にも注意が必要です。重加算税は、無申告者の場合、本税の40%を課す税金で、より重い負担となって税金が追徴されます。

税務署による調査が入る可能性がある

法人税の申告や納付を税務署に指摘されるまで放置してしまった場合、税務調査が入る可能性があります。税務調査とは、税務署による事業者の財産や滞納処分を行うための調査のことです。

さらに、税務署の指摘を受けても納付などが行われない場合、滞納処分に移行することもあります。滞納処分とは、事業者の財産の差し押さえなどで、税務署が滞納分を回収する手続きのことです。

財産差し押さえが行われると、事業の継続などに影響が及ぶこともあります。税務署からの指摘や連絡を放置せずに早めに対処するだけでなく、必要に応じて延納の申請などを事前に済ませておくようにしましょう。

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まとめ

法人税の申告や納付は、場合によって延長を申請できることがあります。納期限を過ぎたまま放置すると、延滞税や加算税などが課されるほか、さまざまな影響がありますので、早めに対処することが望ましいです。