ファクタリングと貸金業法・利息制限法・出資法の関係とは?

ファクタリングは借り入れではなく、保有する売掛金などの売掛債権を、ファクタリング会社に譲渡して現金化する資金調達の方法です。

借り入れではないということは、ファクタリング会社に支払う費用は利息ではなく手数料であり、貸金業法・利息制限法・出資法は適用されません。

しかし、過去の判例ではファクタリングに利息制限法が適用されたことがあり、お金を借りたつもりはないのに知らない間に金銭消費貸借契約を結んでしまっていたケースもあるようです。

そこで間違った取引を行わないためにも、ファクタリングと貸金業法・利息制限法・出資法の関係を知り、借金を背負わない資金調達をしていきましょう。

貸金業法とは

「貸金業法」は、消費者金融など貸金業者や貸金業者からの借入れについて規定している法律です。

返しきれないほど借金を抱えて「多重債務者」で」苦しむ方が増え、深刻な社会問題となったことをきっかけに、平成18年に従来の法律が抜本的に改正され作られました。

貸金業法で重要なのは、

  1. 総量規制
  2. 上限金利の引下げ

の2つです。

それぞれ説明していきます。

総量規制

「総量規制」とは、お金を借りることのできる総額へ制限を設けることで、平成22年6月18日から実施されています。

貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えると新規の借入れはできなくなるという規制であり、適用されるのは個人です。

銀行からの借入れや法人名義での借入れ、住宅ローンなど低金利で長期返済期間の貸し付けは適用されません。

上限金利の引き下げ

法律上の上限金利には、

  1. 利息制限法
  2. 出資法

の2つによる法律の縛りがあります。

利息制限法

「利息制限法」とは、金銭消費貸借の暴利を防ぎ債務者を守ることを目的とした法律です。

金銭の貸し付けでは貸す側の立場が優位になりやすく、法外な利息を搾取されるケースも少なくないため、金銭消費貸借の利息や遅延損害金を一定限度に制限し取引の公平性・安全性を保っています。

利息制限法では借入額に対し、次のとおりに上限金利が設定されます。。

  • 元本の額が0万円未満 年利20%
  • 元本の額が10万円以上100万円未満 年利18%
  • 元本の額が100万円以上 年利15%

この上限金利を超えた利息分は無効とされるため、返済する必要もありません。
また、元本以外の金銭は一部例外を除きすべて利息とみなされますが、たとえば取引によって生じた利息以外の手数料や調査料などの名目も利息として扱われます。

これらは「みなし利息」として、利息制限法の適用対象です。

金銭消費貸借契約の通りにお金を返済できなくなった場合の違約金・賠償金も、元本に対する割合が1.46倍を上限としており、超過部分は無効となります。

なお、利息制限法の上限金利を超えた分の利息は無効となり元金の返済に充てられますが、利息制限法そのものに罰則規定はありません。

出資法

「出資法」とは、一般大衆の財産保護を目的とした法律です。

正式名称を「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」と言い、その名称どおりにお金を出資するときの取り決めがされている法律といえます。

違法な経済活動から経済的弱者(国民)を保護するための法律で、刑罰による経済取締法規です。

  • 出資金の受け入れ制限
  • 預り金の禁止
  • 浮貸しの禁止
  • 金銭貸借の媒介手数料の制限
  • 高金利の処罰

などの規定があり、貸金業として扱われている「給与ファクタリング」も規制対象となっています。

違反した場合、業者には「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」が科されます。

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ファクタリング会社で行っても3つの法律に触れない行為

ファクタリング会社は貸金業者ではないため、貸金業法・利息制限法・出資法の規制を受けることはありません。

そのため、以下の2つの行為があってもそれは違法ではないといえます。

  1. 貸金業登録せずに営業する
  2. 利息制限法や出資法の規制外の手数料設定

それぞれ説明していきます。

貸金業登録せずに営業する

ファクタリングはお金を貸すサービスではないため貸金業法は適用されず、貸金業登録せずに営業しても違法ではありません。

利息制限法や出資法の規制外の手数料設定

ファクタリングは貸金業ではないため、貸金業法の適用を受けません。そのため利息制限法や出資法を上回る手数料を設定したとしても、これらの法律に触れることはないといえます。

ただ、ある程度の相場は存在するため、正規のファクタリング会社であれば以下の相場に見合う範囲の割合で手数料を設定しています。

  • 2社間ファクタリング 10~20%
  • 3社間ファクタリング 1~9%

この相場を大きく上回る手数料を請求されたときには、利息制限法や出資法に関係なく怪しい業者と疑ったほうがよいでしょう。

ファクタリングで貸金業法が適用されるケース

ファクタリングは車や不動産などの資産を売ってお金に換えることと同じく、売掛債権を現金化するサービスです。

そのためファクタリング会社に支払う費用は利息ではなく「手数料」であり、借金を増やす方法ではないことから、貸金業法は適用されません。

しかし「償還請求権」や「買戻し特約」が付された契約は、債権の売買ではなく債権を担保とした金銭の貸し付けとみなされます。

そのためこれらの特約がついたファクタリング契約を結ぶことのできるファクタリング会社は、貸金業法登録した会社だけです。

ファクタリングと似た手法である「手形割引」も、償還請求権のある契約を結ぶため、融資を受けることになり、手形割引で支払う手形割引料は「みなし利息」という扱いになっています。

もしも契約内に「償還請求権」や「買戻し特約」などが付されている場合は、契約相手が貸金業者であるか確認することが大切です。

なお、これらの特約が付されている場合、売掛先から売掛金を回収できなければ利用者がその責任を負うことになります。

その点を踏まえた上で契約を結ぶようにしてください。

過去にファクタリングで利息制限法が適用された判例

締結された債権譲渡契約はファクタリングに名を借りたものであり、金銭消費貸借契約に準じるものとして利息制限法の適用と過払金返還請求を認めた判例は、平成29年3月3日、大阪地裁で判決されました。

その内容は、毎月60万円を借りて翌月100万円を返済するといった金銭授受と返済を、何度も借主ファクタリング会社が行ったというものでした。

借主となった運送業者(原告)が、ファクタリング会社(被告)に対して行われた運送料債権の譲渡が、実質的には譲渡担保の金銭消費貸借取引であるとした裁判です。

利息制限法を適用させた場合には過払いが生じることとなり、運送業者からファクタリング会社に対し、過払い金約491万円が請求されました。

この判例に関して、次の2つからなぜ利息制限法が適用されたのか確認してみましょう。

  1. 裁判の争点となった部分
  2. 利息制限法の適用が認められた理由

それぞれ説明していきます。

裁判の争点となった部分

争点となったのは、金銭の授受を伴った取引の性質が、債権譲渡なのか、それとも債権譲渡担保付の貸し付けなのかという部分です。

もし、債権譲渡担保の貸し付けであれば、利息制限法が適用されることになります。

裁判所は、この一件を債権譲渡担保付の貸し付けであると判断し、利息制限法の適用を認めたわけですが、ポイントとなったのはファクタリング会社が債権回収リスクをほとんど負っていないことでした。

利息制限法の適用が認められた理由

取引が金銭消費貸借契約であれば、金銭を貸した側は利息制限法所定の制限利率の限度でしか利息を収受することができません。

もし、今回の取引が債権の売買契約であり、利息を上回る利益を上げることができることを正当化するとすれば、ファクタリング会社主は売買の対象となった売掛債権について、ある程度は回収リスクを負うといった相応の理由があるべきです。

しかし、ファクタリング会社は、債権回収のリスクをほとんど負っていなかったわけです。

さらに、債権の額面とは関係なく、金銭の授受が行われていたことや、運送業者が買戻しを行わなかった場合には不利になる条件をつきつけ、買戻しを行わざるを得ない立場にあわせたことなどが決め手となったようです。

給与ファクタリングは貸金業登録が必要

ファクタリングは原則、利息制限法や出資法は適用されません。

しかし中には、表向きはファクタリングを装い貸金業を営む悪質なケース確認されています。

特に、事業者相手ではなく個人を相手とし、給料を賃金債権とみなし買い取る「給与ファクタリング」は、裁判所で実質「貸金業」と認定されています。

そのため賃金債権を買い取るためには貸金業法上の許認可が必要であり、貸金業登録していない業者は違法な悪徳業者です。

ファクタリングを装った悪質業者にはくれぐれも注意するようにし、慎重にファクタリング会社を選ぶようにしましょう。

ファクタリングに利息制限法や出資法が適用されるケース

通常のファクタリング契約であれば、売掛債権の売買取引のため、貸金業に関する規制を受けることはありません。

ただ、表向きはファクタリング会社として売掛債権の現金化をうたい営業していても、次のような契約内容のときには貸金業とみなされ、貸金業法・利息制限法・出資法の規制を受けることになります。

  1. 契約形式が債権譲渡ではない場合
  2. 償還請求権ありの契約の場合
  3. 担保・保証付き契約の場合

それぞれどのような契約のときに規制を受けるのか説明していきます。

契約形式が債権譲渡ではない場合

ファクタリングは売掛債権という債権を譲渡することによる資金調達のサービスのため、利用者とファクタリング会社で結ぶ契約は「債権譲渡契約」です。

しかし契約形式が債権譲渡ではなく、「金銭消費貸借契約」という場合には売掛金を担保とした資金の貸し付けとなります。

ファクタリングとして勧誘されたのに、契約書には売買契約であることが定められていないケースや、契約書の見出しはファクタリング契約なのに内容が資金の貸し付けになっているケースもあるようです。

資金の貸し付けは貸金業登録が必要となり、許認可を受けていない業者は悪徳なヤミ金融業者であるため、契約しないようにしてください。

償還請求権ありの契約の場合

「償還請求権」とは、債権の買い戻しを求める権利のことです。

通常のファクタリングでは、売掛先から売掛金が回収できなかった場合、その責任はファクタリング会社が負います。

利用者は現金化で受け取ったお金をファクタリング会社に返す必要はありませんが、償還請求権ありの契約を結んだ場合は、利用者に弁済義務が生じることになってしまいます。

償還請求権ありの契約は融資とみなされるため、貸金業登録しているファクタリング会社しか扱うことはできませんので注意してください。

担保・保証付き契約の場合

ファクタリングは売掛債権の売買のため、担保や保証人などは必要ありません。

融資を受けるわけではない以上、利用者に返済義務もないため、万一返済できなくなったときに備えた担保や保証人を準備する必要はないからです。

しかし担保や保証人を求められた場合、契約自体がファクタリングとはいえず、ファクタリングを装う金銭の貸し付けと判断できます。

貸金業登録のない業者であれば悪質なヤミ金融業者であるため、契約しないようにしてください。

正規のファクタリングなら貸金業法・利息制限法・出資法は無関係

正規のファクタリング契約を結ぶのであれば、貸金業法・利息制限法・出資法は無関係です。

仮に貸金業とみなされる行為を行っているファクタリング会社があれば、わざと貸金業登録をせずに違法な行為を行っているヤミ金融業者である可能性が極めて高いといえるでしょう。

以前までは表向き貸金業として営業していたヤミ金融業者もいましたが、取り締まりが厳しくなり、行き場を失った悪徳業者が表向きファクタリング会社を装うケースが増えたといえます。

貸金業登録までのハードルは非常に高く簡単に取得できるとはいえませんが、ファクタリング業界は貸金業登録が必要なく、法規制なども十分ではないことに目をつけたと考えられます。

貸金業登録やその他の規制を避けるためファクタリング会社を装ってはいますが、実際に貸金業者とみなされば無登録営業など様々な規制違反に該当する可能性が高い悪質な業者ばかりです。

ただし繰り返しになりますが、正規のファクタリング会社は貸金業法・利息制限法・出資法の規制は受けませんので、違法業者と混同しないようにしてください。

まとめ

ファクタリング契約を結んだはずなのに、売掛債権を担保とした借り入れだったという契約では、望んだ資金調達ができなくなります。

ファクタリングは売掛債権の売買による資金調達のサービスであり、金銭の貸し付けではありません。

そのため貸金業法・利息制限法・出資法の規制を受けることもなく、ファクタリング会社も貸金業登録は不要とされています。

しかし、中には表向きはファクタリングを装い、売掛債権を担保として資金を貸し付けるヤミ金融業者なども存在しているため、十分に注意が必要です。

ファクタリングを利用して資金を調達するときには、ファクタリング会社の見極めを十分するとともに、契約内容を確認した上で契約を結ぶようにしましょう。

もし契約を結ぼうとするファクタリング会社に不安があるときや、契約内容に怪しさや疑わしさを感じるときには、ぜひ一度相談いただければと思います。

ファクタリングを利用するときには、悪徳な業者に騙されないように十分注意するようにしましょう。