新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業が打撃を受けたなか、政府は中小企業の救済を目的に、無利子・無担保で融資を受けられる「ゼロゼロ融資」を実施していました。
経済の正常化を背景に、同制度は2022年9月に終了したため、今後はゼロゼロ融資を利用している企業の利払いや融資返済が課題となります。
ゼロゼロ融資の返済をうまく進めていくためには、借り換えをおこなうのが一つの選択肢です。
特に政府が2023年1月から始めたゼロゼロ融資の借り換え保証を活用すれば、借入時の保証料の引き下げが可能です。
この記事では、ゼロゼロ融資の借り換えをはじめとした返済対策について紹介していきます。
中小企業経営者向け!

ゼロゼロ融資の現状と今後
ゼロゼロ融資は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経営状況が厳しくなった中小企業を救済するために実施された融資制度です。
多くの企業の資金繰りを下支えしましたが、制度自体は2022年9月に終了したため、2023年現在ではゼロゼロ融資を受けている企業の返済が、企業自体は日本全体の課題となっています。
まずはゼロゼロ融資の現状や今後について紹介していきます。
ゼロゼロ融資の仕組み
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に行動制限や工場の稼働停止などにより、多くの企業が深刻な打撃を受けました。
政府はこの悪影響を軽減する目的で、中小企業や小規模事業者への支援策である「ゼロゼロ融資」をおこなっていました。
同制度は、政府が日本政策金融公庫や商工中金および各民間金融機関に対して利子補給をおこなうことで、3年間にわたり実質的な利払いをゼロにする仕組みです。
また、信用保証協会による保証を付与することで無担保で利用できるのも特徴となっています。
コロナ禍において多くの中小企業が苦境に立たされたため、ゼロゼロ融資を利用しています。
ゼロゼロ融資の制度は金融機関によって複数あり、条件も異なりますが、基本的なシステムは下記の通りです。
- 限度額は個人事業主など小規模事業者で6,000万円、中小企業は3億円
- 公的機関が融資から3年間利子を負担するため、実質的には無利子
- 借入に担保は不要
- 元本の80%もしくは全額を信用保証協会が保証
2022年9月でゼロゼロ融資は終了
ゼロゼロ融資はコロナ禍の企業を支援する目的で実施されていたもので、もともと期間限定の制度でした。
期限についてはコロナの感染状況や企業の経営環境などをふまえて何度か延長されましたが、2022年9月末に正式に終了に。
そのため2023年現在では、新規に同制度のもと無利子・無担保で資金調達をすることはできません。
今後の焦点は、ゼロゼロ融資を利用している企業の返済動向や、3年間となっている利子補給が終了した後の利払い・返済コストの増加に対する対応となります。
ゼロゼロ融資の返済状況
帝国データバンクの調査によると、2022年8月時点で新型コロナ関連融資を現在借りている企業のうち、すでに約7割が返済を開始しています。
一方で、多くの企業はまだ返済割合が元本全体の半分以下という状況で、30%程度は未返済と回答しています。
そのため、今後更にゼロゼロ融資の返済が進んでいくものと想定されます。
中小企業庁は、2023年7月~2024年4月にかけて、返済開始が集中すると見込んでいます。
(参照:日本経済新聞「中小企業、ポストコロナの出口戦略 企業信用調査マンの目」)
ひょうご税理士法人の調査によると、2023年3月時点では返済のめどが立っている、あるいは返済できると考えている企業は90%超にのぼります。
つまり、現時点ではゼロゼロ融資の返済に不安を抱いている企業は限定的です。
返済が厳しくなるリスクも
ゼロゼロ融資は最長20年程度まで借入期間をのばせるため、企業によっては完済はまだまだ先に。
さらに、融資を受けてから3年後は利払いが発生、据置期間の終了後は元本返済も必須となるなど、時間がたつごとに負担は重くなっていきます。
さきほどと同じくひょうご税理士法人の調査によると、40%程度の企業は自社で資金繰りを把握するための試算表を作成していないため、お金の流れを正確につかんでおらず、経営の健全性やリスクを認識できていない可能性があります。
コロナからの正常化の状況は地域や業種によって差があり、中にはまだ経営の健全性を取り戻していない企業も少なくありません。
今後返済が本格化する中で、返済が厳しくなる企業も増えてくる可能性があります。
ゼロゼロ融資の返済・借り換え対策
ゼロゼロ融資をスムーズに返済するためには、まず資金計画を立ててみて、無理せずに返済できるかを確認するのが有効です。
返済が厳しい時には、財務改善や金融機関との返済条件の交渉、借り換えなどの対策を早めに講じるのが大切です。
完済までの返済計画を建てる
いまの経営環境と融資の状況をふまえて、完済までの資金計画を立ててみましょう。
利払い負担の増加や元本返済の開始を加味しても、安定して返済できるようならば問題はありません。
計画通りの売上や利益を確実に実現できるように組織や設備などを整えておきましょう。
もし、計画的に返済していく目途が立たないならば、早いうちから対策を講じる必要があります。
手遅れになる前に、これから紹介する対策を実行して、経営の健全化を進めましょう。
収支や財務の改善を試みる
収支改善については、売上を増やすのは難しい企業が多いと想定されるので、仕入れの効率化によるコスト削減や事業運営にかかる固定費の削減などが有効な手立てとなります。
事業環境の正常化が遅れているのであれば、大胆にビジネスを抑制してコスト削減を試みるのも一案です。
また、余剰資産の売却、組織のスリム化等により、財務状況を健全化するのも有効な方法に。
もし、金利負担が重い融資がゼロゼロ融資のほかにあるなら、ゼロゼロ融資の利子補給が終わる前に、そちらを返済してしまうのも一案です。
なお、売掛債権を譲渡して資金調達をするファクタリングも財務改善の手段に適しています。
調達した資金で債務を返済すればバランスシートを圧縮できて、財務健全化につながります。
金融機関と交渉
自力で対処ができないならば、返済条件について金融機関と交渉する必要があります。
ゼロゼロ融資自体だけでなく、それ以前から借りていた融資についても相談してみましょう。
一般的には返済スケジュールの調整や金利の引き下げなどをおこなうことになります。
ただし、融資条件の変更は、金融機関からすれば資金回収が遅れたり、収益が低減することになるため、交渉に応じてくれるとは限りません。
条件変更に応じてもらう可能性を高めるためには、綿密な資金計画や事業計画を立てて「条件変更をすれば着実に融資を返済していける」と説明する必要があります。
借り換えをおこなう
返済が困難になった場合、借り換えという手段があります。
借り換えとは、低金利の金融機関から融資を受けて、元の借入金を返済することで、利息負担を軽減する方法です。
借り換えによって、返済期間の短縮や返済額の減少を実現することができます。
借り換えには手数料や保証料が必要となるため、こうしたコストを踏まえて借り換えの是非を検討してください。
また、借り換えにおいても審査を受けて通過する必要があるため、資金繰りや経営環境が厳しい状況がネガティブに働いて、借り換えを進められないリスクもあります。
コロナ融資の借り換え保証制度などの支援策の活用
返済が厳しくなった場合、補助金や助成金などの支援策にも目を向けてみましょう。
ゼロゼロ融資はもう利用できませんが、その他にも中小企業を救済・支援する制度は複数存在します。
2023年1月には、ゼロゼロ融資の借り換えをスムーズにおこなうために「コロナ融資の借り換え保証制度」が始まりました。
同制度をうまく活用すると、金融機関の支援も受けながら、経営の健全化を進めることができるでしょう。
コロナ融資の借り換え保証制度
早いタイミングでゼロゼロ融資を利用した企業から利子補給期間の終了が近づく中で、融資の借り換えにより資金繰りを改善しようとする企業は増えています。
ゼロゼロ融資の借り換えを支援する目的で、2023年1月からコロナ融資の借り換え保証制度が始まっています。
同制度を利用すれば、借り換えにかかる保証料を抑えながら金融機関の支援も受けられます。
コロナ借り換え保証制度とは
2023年現在でもコロナの影響が抜けておらず、経営状況が思わしくない中小企業の融資の借り換えをしやすくするのが、コロナ借り換え支援制度です。
基本的な制度概要は以下の通りとなります。
- 保証限度額:1億円
- 保証期間(≒融資の最長期間):10年以内
- 据置期間:5年間
- 保証料:最小0.2%
- ゼロゼロ融資で100%保証だった融資は、元本を100%保証
利用するためには、売上や利益率に関する条件を満たすとともに、事業計画書を立てて経営改善への道筋を立てる必要があります。
コロナ借り換え保証制度の利用条件
まず、以下のいずれかに該当している必要があります。
- セーフティネット4号の認定(売上高が20%以上減少していること。最近1か月間(実績)とその後2か月間(見込み)と前年同期の比較)
- セーフティネット5号の認定(指定業種であり、売上高が5%以上減少していること。最近3か月間(実績)と前年同期の比較)
- 売上高が5%以上減少していること(最近1か月間(実績)と前年同月の比較)
- 売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少していること(③の方法による比較に加え、直近2年分の決算書比較でも可)
更に以下の内容を盛り込んだ経営行動計画書を作成しなければなりません。
- 事業者名等
- 現状認識
- 財務分析
- 計画終了時点における将来目標
- 具体的なアクションプラン
- 収支計画及び返済計画
行動計画書は借り換え実行後に金融機関と共に経営健全化を進めるうえでの土台となるものなので、金融機関のアドバイスを受けながら精緻な計画を策定してください。
コロナ借り換え保証制度のメリット
コロナ借り換え保証制度を使用して借り換えをおこなうことで融資条件の緩和や限度額の拡大などのメリットがあります。
また、金融機関の支援を受けながら経営再建を図る仕組みになっているため、自分だけのノウハウで経営するよりも早期の業績改善が期待できます。
融資条件の改善
ゼロゼロ融資の利子補給の期間が過ぎてしまうと、それぞれの条件に応じて利息が発生します。
審査によっては別の金融機関で融資を組みなおした方が利息が低下する可能性も期待できます。
また、融資期限を延ばすことで、月々の返済額を軽減できる可能性もあります。
融資に関する負担を軽くすることでコストを抑えることで、業績の改善が期待できます。
保証制度を活用すれば、信用保証協会から保証を受ける保証料も低減するため、コスト削減の効果は更に大きくなります。
融資限度額の拡大
コロナ借り換え保証制度を利用することで、新たに借入れることができる融資限度額が拡大されます。
これにより、資金調達の柔軟性が高まり、経営計画の実行に向けた資金調達を行うことができます。
信用保証協会からの手厚い保証が審査上プラスに働くことにより、融資限度額の拡大も期待できます。
金融機関の伴走支援による経営改善
コロナ借り換え保証は、提出された行動計画書をもとに金融機関が計画通りの経営改善に向けて企業を支援する仕組みです。
経営に関するコンサルティングや、計画達成のためのPDCAの継続、財務分析による業績改善状況の確認と課題解決など、金融機関が資金面以外も支援することで、経営改善を早められると期待できます。
ゼロゼロ融資の返済にファクタリングの活用もおすすめ
ゼロゼロ融資の返済が厳しくなってしまった場合の資金調達方法としては、売掛債権を譲渡するファクタリングも有効な選択肢の一つです。
ここからはファクタリングの特徴や利用するメリットについて紹介します。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、企業が持つ請求書などの売掛債権を、金融機関やファクタリング業者に譲渡し現金化する取引です。
償還請求権なしの取引の場合は、売却した債権の資金回収リスクはファクタリング会社に移転し、利用した企業には債権の額面から手数料が引かれた金額が払われます。
債権を譲渡するだけなので、借金を増やさずに資金調達して、融資の返済に充てらることができます。
ファクタリングのメリット
ファクタリングの条件次第にはなりますが、手数料が融資の利息や保証料などの合計より低い場合は、資金調達コストを抑制することができます。
資金調達コストの低減を求めるなら、相対的に手数料の安い3社間ファクタリングを活用するのが有効です。
また、ファクタリングは主に債権の債務者(企業から見た取引先)の信用力を審査するため、利用企業の経営状況が悪くとも利用できます。
ゼロゼロ融資の返済に困っている企業は信用状況も思わしくない可能性が高く、ファクタリングは有力な資金調達手段となるでしょう。
最後に、既に借金返済に困っているなか、借入を増やさずに資金調達ができるのもポイントです。
借入の場合は将来返済していかなければなりませんが、ファクタリングは借入ではないため、借金を増やすことはなく、もちろん返済も不要です。
信用状況を悪化させたり、将来の返済負担を重くしたりする心配がありません。
PMGならファクタリングとコンサルティングを一気に相談できる!
ファクタリングでゼロゼロ融資を返済するなら、PMGを利用するのがおすすめです。
同社は法人中心にサービスを展開しているファクタリング会社で、最短1日で現金化できるため、速やかに融資の返済を進められます。
最大の買取額は2億円で、3社間ファクタリングなら手数料の下限は2%と、支払いコストの抑制にも役立つファクタリング会社です。
2社間・3社間どちらのファクタリングにも対応しており、年間で6,000件ほどの契約を行なっているなど、実績も豊富です。
ファクタリングについて相談したい人は、こちらから詳細をみてみましょう。
PMGのファクタリング
さらに、PMGでは事業再生などの経営コンサルティングもおこなっています。
M&Aや財務戦略の策定など、業績改善のアドバイスやソリューション実行を相談できます。
目先の資金調達だけでなく、長期的な成長戦略を策定するうえでの、PMGを利用するのがおすすめです。
経営に関するアドバイスを受けたい人は、こちらを見てみましょう。
PMGの事業再生コンサルティング
中小企業経営者向け!

