資金調達でファクタリングを利用以外にも、与信管理に活用することもできます。
ファクタリングで調査の対象となるのは売掛先ですが、利用者が売掛先の信用力を知りたいときにも、与信管理の手段としてファクタリングを利用可能です。
そこで、ファクタリングで与信管理をする方法や、取引前の信用調査で重視したいポイントについて説明していきます。
与信管理とは
「与信管理」とは、商取引において売掛金が未回収となるリスクを検討し、相手に信用を与えることです。
代金を前払いで受け取る場合や、現金決済であれば代金が未回収になることはありません。
しかし都度、現金の受け渡しを行えば、現金管理や事務手続などが煩雑化するため、業務が非効率になります。
そのため、一定期間の取引分の代金をまとめて請求する「掛け取引」が一般的ですが、このときに発生するのが「売掛債権」です。
帳簿上は「売掛金」で処理する未回収の売上代金が、後に回収できなくなれば大きな損失を被ることになるため、取引を行う上で相手が信用できる相手か見極めることが必要になります。
リスクを回避・軽減し収益を増大させるための管理が「与信管理」といえるでしょう。
与信管理とは?必要なプロセスや調査方法・業務の流れをわかりやすく解説
ファクタリングで与信管理が可能である理由
ファクタリングで与信管理が可能である理由として、次の3つが挙げられます。
- 審査通過は売掛先の信用力が重視される
- 信用力が手数料に影響する
- 債権の信頼性が契約条件に影響する
それぞれ説明していきます。
審査通過は売掛先の信用力が重視される
ファクタリングで現金化されるのは売掛金ですが、ファクタリングの申し込みを行う企業としては保有する売掛債権を回収するまでのサイトを短縮させたいといった理由があるはずです。
いずれにしてもファクタリング会社は、買取った売掛金を売掛先企業から決済され回収できなければ意味がありません。
そのため未回収となるリスクを考慮するためにも、与信において売掛先企業の信用度を重視する傾向にあります。
信用力が手数料に影響する
売掛先の信用力が高ければ、ファクタリング手数料も安く設定されます。
しかし財務状況や経営状態が思わしくなく、売掛金未回収リスクが高いと判断されれば手数料は高く設定されることになるでしょう。
債権の信頼性が契約条件に影響する
信頼性の高い売掛債権とファクタリング会社に認められば、ファクタリング契約の条件も良好になります。
確実に回収できると考えられる売掛債権であれば、多少ファクタリング会社にとって条件が厳しくても、買い取りたいと希望するからです。
ファクタリングによる与信管理で必要なこと
ファクタリングを使った与信管理では、次の2つが重要になります。
- 信用情報の収集
- 与信限度額の設定
- 与信限度額の見直し
それぞれ説明していきます。
信用情報の収集
ファクタリングを使った与信管理では、まず売掛先の信用情報を収集することが必要です。
帝国データバンクやリスクモンスターなど、信用調査会社のデータだけでなく、営業担当者が直接売掛先と接触することで得ることのできる情報もあります。
収集した情報から、売掛金の支払能力について評価していきます。
与信限度額の設定
売掛先の支払能力を見極めた後は、与信限度額を設定することが必要です。
与信限度額とは、売掛先とどのくらいの金額までであれば与信取引できるかを意味します。
たとえば売掛先の純資産の1割程度を与信取引額とするなど、許容できる範囲や線引きをすることで与信取引しやすくなるといえるでしょう。
与信限度額の見直し
ファクタリングを使った与信管理では、一度設定した与信限度額を見直すことも必要です。
一度設定した与信限度額が継続するわけではなく、売掛先の経営状況などは日々変化します。
そのため与信管理は一度行えば終わりではなく、常に新しい情報を入手するようにし、設定した金額を見直していきましょう。
信用力が低下していると判断されるときには、与信限度額を引き下げることや取引量を抑えること、現金決済や前払い決済で対応するといった方法を検討したほうがよいといえます。
与信管理にファクタリングを利用するメリット
与信管理でファクタリングを利用するメリットは次の5つです。
- 同時に資金を調達できる
- 未回収リスクも回避できる
- スポット利用も可能
- 売掛先に知られずに利用可能
- 自社の与信に影響しない
それぞれ説明します。
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同時に資金を調達できる
与信管理でファクタリングを利用するメリットは、与信管理と同時に資金を調達できることです。
もともとファクタリングは事業者向けの資金調達サービスであるため、手元の資金が不足しているときに活用できる方法といえます。
最短即日で資金調達できるはやさが魅力ですが、同時に売掛先の信用力を知ることもできるため、与信管理と資金調達が同時にできることがメリットといえるでしょう。
未回収リスクも回避できる
与信管理でファクタリングを利用するメリットは、売掛金の未回収リスクも回避できることです。
ファクタリング会社に売掛金を売却することと同時に、万一売掛金が未回収となった場合のリスクもファクタリング会社に移転されます。
そのため売掛金が回収できず、貸し倒れになるリスクを回避させたいときも、ファクタリングを利用するとよいといえるでしょう。
スポット利用も可能
与信管理でファクタリングを利用するメリットとして、ファクタリング自体スポット利用も可能であることが挙げられます。
ファクタリングは継続利用だけでなく、1回きりなどスポット的な利用も可能です。
何か月も続けて利用することは不安という場合でも、お試し感覚で1度のみ利用することもできます。
売掛先に知られずに利用可能
与信管理でファクタリングを利用するメリットは、売掛先に知られることなく与信管理できることです。
銀行やノンバンクなどが融資を行う際の与信では、主にJICCやCICなどの信用情報期間に登記録された情報を照合します。
このとき対象となるのは、借入金の申し込みを行った利用者です。
しかしファクタリングで重視されるのは売掛先なので、主に売掛先の企業情報を知るためには、データベースである帝国データバンクなどに照会をかけます。
その情報をもとにした与信・調査が行われますが、売掛先に対してファクタリング会社が連絡を行い、聞き取り調査を行うといったことはありません。
自社の与信に影響しない
与信管理でファクタリングを利用するメリットは、自社の与信に影響しないことです。
ファクタリングの審査では、主に売掛先の信用力を重視することになりますが、利用者の信用力もまったく関係ないわけではありません。
ただ、借入れの審査のように、申し込み履歴や契約履歴などが信用情報機関に登録されるわけではないため、自社の与信には影響しません。
信用情報機関に借入れ履歴などが登録されると、万一返済遅延などがあったとき、銀行融資など受けにくくなってしまいます。
ファクタリングは借入れではないため、信用情報機関に影響せず、銀行融資の与信にも悪影響を及ぼさない安心して利用できる方法といえるでしょう。
与信管理にファクタリング利用する注意点
与信管理でファクタリングを利用するときには、次の3つに注意しましょう。
- 新規売掛先は評価が低い
- 利用者の信用力も影響する
- 調査のみではその後の利用に影響
それぞれ説明します。
新規売掛先は評価が低い
与信管理でファクタリングを利用するときには、新規売掛先は評価が低いことに注意しておきましょう。
資金調達を目的とした買取ファクタリングの場合、売掛金が回収できなくなったときの保証を受けるわけでも保険をかけるわけでもありません。
あくまでも売掛金をファクタリング会社と売買し、換金してお金を手にすることを目的に行う手法です。
そのため、お金を借りるときの審査よりもハードルが低めであることが特徴ですが、どのような売掛金でも買い取りの対象になるわけではなく、取引実績のない新規売掛先は断られることもあります。
利用者の信用力も影響する
与信管理でファクタリングを利用するときには、利用者の信用力も審査に影響することに注意しておきましょう。
ファクタリング契約には、利用者とファクタリング会社で取引を行う2社間ファクタリング、そして売掛先も交えた3社間ファクタリングがあります。
どちらも売掛先の信用力を重視した信用調査が行われますが、2社間の場合は利用者がファクタリング会社に代わって売掛先から売掛金を回収することになります。
そのため2社間ファクタリングの与信では、利用者の信用性もある程度重視されることになると理解しておきましょう
調査のみではその後の利用に影響
与信管理でファクタリングを利用するときには、調査ばかりを目的に利用してしまうと、その後、ファクタリングを利用したくても審査に通らない可能性があることに注意しておきましょう。
ファクタリングはもともと資金調達を目的に利用されるサービスであり、ファクタリング会社も売掛金を買い取り、回収してやっと利益を得ることができます。
そのため審査のみ依頼し、売掛金は売却せずといったことを続けていると、ファクタリング会社にとっては審査に手間や時間だけかけることになってしまいます。
繰り返し与信調査を目的にファクタリング会社に審査を依頼し続けると、ファクタリング会社の心象を悪くしてしまい、本当に資金調達目的で利用するときに希望する対応をしてもらえない可能性もあります。
そのため過度な与信調査目的のファクタリング利用は避けたほうがよいでしょう。
まとめ
ファクタリングは与信管理に活用することもでき、同時に資金調達することもできます。
資金調達と与信情報を収集するといった2つの目的を達成できるため、売掛先との取引において与信限度額を見直すきっかけにすることもできるでしょう。
他にもファクタリングにはいろいろなメリットがあるため、上手に活用することをオススメします。