合同会社の資金調達方法とは?審査に信用力が影響しない手段を解説

合同会社とは、出資者と経営者が同日の法人格で、株式会社よりも設立にかかる費用や運営コストを抑えることができることが特徴です。

ただ、2006年5月の新会社法により新たに加わった法人格であるため、株式会社よりも歴史は浅く社会的な信用力も高くありません。

資金調達においても、株式会社よりもスムーズでない場合もめずらしくないといえますが、合同会社の場合にはどのような資金調達方法が好ましいのか、審査に信用力の影響しない手段について解説していきます。

合同会社とは

アメリカ合衆国の州法で認められているLLCをモデルとした日本の会社形態の1つが「合同会社」です。

すべての社員が会社の債務の責任を負う有限責任である上に、株式会社の場合は経営と株主が分離していますが、合同会社は社員それぞれ株主と同じ扱いです。

出資者が経営者となり、資金を出資したすべての社員が会社の決定権を保有し、定款で利益配分なども自由に設定できます。

なお、出資者の責任範囲は株式会社同様に有限責任となります。

合同会社に似た法人格に合資会社や合名会社がありますが、合資会社は有限責任社員だけでなく無限責任社員も存在し、合名会社はすべての出資者が無限責任社員で構成されるという部分が違いです。

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合同会社の資金調達における現状

合同会社を設立するときや会社経営のランニングコストは、株式会社よりも安く抑えることができます。

しかしまだ十分に周知されている法人格ではないため、信用力の低さから資金調達方法の選択肢は限られます。

そのため合同会社が資金調達するとき、次のような問題にぶつかることが現状といえます。

  1. 銀行融資の審査に通りにくい
  2. 融資限度額が少額になりやすい
  3. 資金調達方法が限られる

それぞれ説明していきます。

銀行融資の審査に通りにくい

合同会社の資金調達の現状として、銀行融資の審査に通りにくいことが挙げられます。

銀行から融資を受けるときには審査に通ることが必須となるものの、銀行は信用力の低い相手にはお金を貸しません。

貸したお金に利息を付けて、期日までに遅れず返すことができるか、返済能力が認められなければ融資を受けることは困難です。

そのため知名度や社会的な信用力の低いとみなされがちな合同会社の場合、銀行融資の審査に通りにくく、借入れで資金調達することは難しいのが現状といえます。

融資限度額が少額になりやすい

合同会社の資金調達の現状として、融資限度額が少額になりやすいことが挙げられます。

銀行融資の審査に通ったとしても、融資限度額として設定される金額は株式会社と比べれば少額です。

会社の法人格を株式会社に変更することで、銀行融資を頼らなくても株式を発行し、個人投資家や投資会社から資金調達できる可能性は高くなるでしょう。

株式会社であれば、銀行など民間金融機関の融資審査も合同会社より有利になり、資金調達の選択肢が広がりやすくなります。

合同会社の事業拡大の際には、法人格を株式会社へ変更するケースが多いのはこのような理由も1つとして挙げられます。

資金調達方法が限られる

合同会社の資金調達の現状として、資金調達方法が限られることが挙げられます。

合同会社は社会的な知名度や信用力が低いため、銀行から融資を受けにくい状態です。

さらに株式会社のように株式を発行することはないため、個人投資家や投資会社に株式と引き換えに出資してもらいにくいといえます。

そのため合同会社の資金調達においては、国や自治体の助成金や補助金に頼りがちになる傾向が見られます。

「返済義務あり」の合同会社の資金調達方法

合同会社が資金調達するときには、返済義務のある方法とない方法の2種類から選ぶことになります。

このうち返済義務ありの資金調達方法として、次の6つが挙げられます。

  1. 民間銀行の融資
  2. 日本政策金融公庫の融資
  3. 地方自治体の制度融資
  4. 信用保証協会保証付融資
  5. 事業者向けローン
  6. 私募債

それぞれの資金調達方法について説明していきます。

民間銀行の融資

合同会社の返済義務ありの資金調達方法として、民間銀行の融資が挙げられます。

銀行から融資を受けることができれば、実質年率1.0~3.0%を目安とし、据え置き期間もある中で資金を調達することができます。

都市銀行や地方銀行など、民間の銀行から融資を受けて資金調達する方法ですが、問題になるのは信用力です。

すべての銀行の審査で、法人格が合同会社であることが理由で落ちるわけではありません。

たとえば創業間もない場合や業績が悪化している場合などは、株式会社であったとしても審査に落ちます。

ただし株式会社などの法人格と比較すると、やはり知名度や社会的な信用力が低いとみなされがちな合同会社であることが、審査に不利になるとは言わざるをえません。

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日本政策金融公庫の融資

合同会社の返済義務ありの資金調達方法として、日本政策金融公庫から融資を受けることが挙げられます。

日本政策金融公庫とは、国が100%出資している政府系金融機関であり、創業間もない中小企業などが利用できる融資制度を準備しています。

預金機能を持たず、貸し付けをメインに行っており、無担保・無保証で融資を受けることができるといった特徴もあります。

融資を受けることができれば、実質年率1.0%~3.0%で据え置き期間もある中の資金調達が可能です。

合同会社の場合、「新創業融資制度」を活用すると資金調達しやすいといえます。

新創業融資制度は、

  • 融資限度額3,000万円(内、運転資金1,500万円)
  • 基準利率は年2.15%〜3.15%(令和5年3月1日現在・年利%)
  • 無担保・無保証

で資金を借りることが可能な制度であり、創業前や事業開始後の税務申告を2期終えていない場合に利用できます。

ただし税務申告を1期終えていない場合は、創業資金総額の10分の1を自己資金として準備しることが必要になるので注意しましょう。

 

地方自治体の制度融資

合同会社の返済義務ありの資金調達方法として、地方自治体の制度融資の利用が挙げられます。

制度融資とは、次の3つの機関の連携により資金を貸し付ける制度です。

  1. 地方自治体
  2. 民間金融機関
  3. 信用保証協会

自治体などにより内容が異なる場合もあるため、事前の確認が必要となります。

たとえば民間金融機関が融資を実行するときに信用保証協会が保証することになり、協会に支払う信用保証料の一部を自治体が補助してくれるなどです。

他にも金融機関に対し貸付金を一部預託する自治体もあるため、どのような制度か前もって確認しておくと安心です。

制度融資を利用できれば、信用保証協会の保証を受けることができるため、融資審査に通りやすくなります。

制度によって据え置き期間の有無は異なるものの、実質年率は1.0~3.0%で借入れが可能になることも魅力です。

ただし自治体や銀行、信用保証協会など様々な機関が関わることになる制度であるため、融資相談から実行までの時間が長めであり、資金調達まで3か月程度かかると留意しておいたほうがよいでしょう。

信用保証協会保証付融資

合同会社の返済義務ありの資金調達方法として、信用保証協会保証付融資で借入れる方法が挙げられます。

信用保証協会保証付融資とは、信用保証協会が保証してくれる融資制度ですが、信用保証協会の審査に通ることが必要となります。

保証を受けるときには保証料を支払うことになるものの、万一返済できなくなったときには8割を信用保証協会が肩代わりしてくれます。

ただし弁済義務がなくなるわけではなく、信用保証協会に対して返済しなければならないことは留意しておきましょう。

事業者向けローン

合同会社の返済義務ありの資金調達方法として、事業者向けローンの利用が挙げられます。

事業者向けローンとは、銀行で融資を受けにくい事業者向けに、銀行や貸金業者が資金を貸してくれる金融商品です。

事業資金に特化した金融商品であるため、審査のハードルが低く、早ければ即日遅くても1週間程度で融資を受けることができます。

ただし実質年率は15.0%前後であるため、長期利用すれば利息負担の重さから資金繰りを悪化させるため、一時的な利用に留めておく必要があるといえるでしょう。

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私募債

合同会社の返済義務ありの資金調達方法として、私募債を発行することが挙げられます。

私募債とは、会社が資金を調達するときに発行する社債の1つであり、合同会社でも発行できます。

社債は投資家から資金を集めるときに発行する有価証券であり、株式と似た形式で資金調達することが可能です。

合同会社では少人数私募債を利用することにより、発行金額・償還年数・利息など自由に決めることができます。

条件の範囲で無理のない返済計画により、資金を集めることができるでしょう。

さらに少人数私募債を発行できれば経営が安定していると判断される傾向があるため、合同会社でも信用力を引き上げることにつながり、銀行からの融資を受けやすくなるとも考えられます。

少人数私募債の発行人数は50未満とされているため、想定していたよりも資金を集めることが難しくなるケースも考えられることや、償還日に一括返済が必要になることは留意しておいてください。

「返済義務なし」の合同会社の資金調達方法

合同会社が資金調達するとき、返済義務のある方法以外にも、返済義務なしの方法から選ぶこともできます。

返済義務なしの方法として、次の3つが挙げられます。

  1. ファクタリング
  2. クラウドファンディング
  3. 補助金・助成金

それぞれの資金調達方法について説明していきます。

ファクタリング

合同会社の返済義務なしの資金調達方法として、ファクタリングの利用が挙げられます。

ファクタリングとは、商品やサービスを販売したものの、まだ回収していない売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、現金化する資金調達の方法です。

売掛先から入金される期日よりも、前倒しで売掛債権を現金化できることがメリットであり、審査では売掛先の信用力が重視されるためハードルも低めといえます。

借金を増やして後の資金繰りが悪化するリスクを抱えるよりも、保有する資産の範囲で資金調達できるほうが安心です。

また、ファクタリングは早ければ即日現金化が可能になるため、スムーズな資金調達につながることもメリットといえます。

ただし売掛債権額面の20%までの範囲で手数料が必要になることが多く、手元に残るお金が予定よりも少なくなる場合もめずらしくありません。

そのためファクタリングで資金調達する場合には、できるだけ手数料を低く設定してくれる信頼できる業者選びが重要です。

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クラウドファンディング

合同会社の返済義務なしの資金調達方法として、クラウドファンディングの利用が挙げられます。

クラウドファンディングとは、インターネット上にビジネスのアイデアや計画を公開し、賛同を得た不特定多数の個人から少額資金を募る資金調達の方法です。

資金を提供してくれた支援者には、その金額に応じたリターンを返す方式が主流となっており、寄付型・融資型・投資型・購入型などいろいろな方法があります。

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補助金・助成金

合同会社の返済義務なしの資金調達方法として、補助金や助成金の利用が挙げられます。

補助金は、国や地方自治体が事業者を支援するために資金の一部を給付する制度で、前もって採択される件数が決められています。

助成金も国や地方自治体が事業者を支援するための給付制度であるものの、定められている要件を満たせば支給してもらうことができます。

どちらも返済義務のない資金を調達できることがメリットである反面、提出書類や様々な準備などが必要になるため、資金調達まで半年程度かかることがデメリットです。

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まとめ

合同会社の資金調達方法として、銀行からの融資に頼りにくいのが現状です。

しかし資金を調達する方法はお金を借りる以外にもいろいろあります。

いずれは株式会社に法人格を以降し、事業拡大に向けて取り組みたいと考える合同会社も、今は銀行融資以外の方法で資金を調達することを検討するとよいでしょう。

特にファクタリングは、借金を増やすことに抵抗がある場合でも利用でき、信用力の高い売掛債権があれば好条件で資金調達できるため、検討してみることをオススメします。