ファクタリングはやばい資金調達の方法なのか、何を基準に判断するかわからず、資金繰りの悩みを解消できない経営者も少なくありません。
しかし、実際には正規のファクタリングに違法性はなく、中小企業にとっては有効な資金調達の方法として活用できます。
ファクタリングがやばいといわれているのは、違法な取引を行うヤミ金融業者などの存在が関係します。
そこで、ファクタリングはやばいといわれている理由や、違法業者と安心して契約できる優良業者の特徴について解説していきます。
ファクタリングとは
「ファクタリング」とは、事業者が掛取引によって保有している売掛債権のうち、「売掛金」をファクタリング会社に売って現金化する金融サービスです。
資金調達の方法を銀行融資に依存しがちな中小企業などに注目されており、商品やサービスを販売したときに後払いで受け取る売掛金を前倒しで回収できます。
売掛金が入金されるまで、1~2か月待たなければならない状況の中、仕入代金や借入金返済の支払いに充てるお金がなければ資金ショートしてしまいます。
ファクタリングを活用すれば、入金予定の売掛金が前倒しされるため、資金不足や資金ショートを防ぐことができます。
ファクタリングとは?種類と仕組みをメリット・デメリット含め徹底解説
ファクタリングがやばいと言われる背景
ファクタリングはお金を借りず、保有する売掛金を早期に売却し手持ち資金を増やすことができるため、「やばい」と言われるような金融サービスではありません。
さらに、売掛金を担保として融資を受けるわけではなく、あくまで売買契約であるため負債にもならないというメリットもあり選んでファクタリングを利用する方もいます。
しかしファクタリングはやばいと言われ、安全性が疑われている背景には、次の4つが関係しています。
- 法整備が不十分
- 給与ファクタリングに対する注意喚起
- 偽装ファクタリング業者の摘発
- 貸金業登録をしていなくても営業可能
それぞれ説明していきます。
ファクタリングは安全?法的根拠と違法業者や悪質な手口の見分け方を解説
法整備が不十分
ファクタリングはやばいと言われる背景には、ファクタリング業界は貸金業法や利息制限法、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取り締まりに関する法律の略称)などの法的な規制が及ばないなど、「法整備」が十分ではないことが関係します。
一般的に銀行やノンバンクと呼ばれる金融機関では法による制限がありますが、ファクタリングは売掛金の売買であり、金銭の貸し借りではないため、ファクタリング会社の貸金業登録は不要であり、貸金業法の規制や影響は及ぶことがありません。
そのため売掛金の買い取りとみせかけた偽装ファクタリング業者などが横行しやすいといえます。
給与ファクタリングに対する注意喚起
ファクタリングはやばいと言われる背景には、事業者向けのファクタリングスキームを個人向けに返還した「給与ファクタリング」について、金融庁が注意喚起していることが関係しています。
金融庁は、事業者向けのファクタリングにおけるスキームを個人向けに当てはめて、「給与(賃金債権)」を給料日前に買い取る「給与ファクタリング」について注意を呼び掛けています。
給与ファクタリングでは、給料が支払われた後で、個人を通じて資金が回収されます。
しかし給与ファクタリングの仕組みは金銭貸付と同様であるため、貸金業登録をしていない業者はヤミ金融業者であり、違法取引です。
給与ファクタリングとは?違法業者の手口や仕組みについて徹底解説
偽装ファクタリング業者の摘発
ファクタリングはやばいと言われる背景には、表向きは売掛金の現金化を装う「偽装ファクタリング業者」が次々に摘発されたことが関係します。
【事例】 一般社団法人ハートフルライフ協会
2021年2月5日、表向きはファクタリングを装い、法外な金利で金銭を貸し付けた一般社団法人ハートフルライフ協会の幹部数名が逮捕されました。
契約の際には、売掛金が回収できなくても責任は負う必要はないと説明していたのに、期日に支払いがなかったため売掛債権額を超える返済を求めていたようです。さらに法定利息は上限が年利15%~20%(貸付額によって変動)なのに対し、8倍~34倍の利息を受け取っていたようです。
法人格が「一般社団法人」だったため、公共性が高い安心できる企業と安心し、契約してしまったのでしょう。
しかし違法業者か判断する基準は法人格ではなく、過去の実績など確認した上で契約するべきか見極めることが必要です。
【事例】 株式会社ZERUTA 七福神
2021年1月14日 貸金業登録をせずに給料ファクタリングを行い、「株式会社ZERUTA 七福神」が摘発されました。
ZERUTAは貸金業法違反に加え、法外な利息(超高金利)を得たとして、出資法違反の容疑で逮捕に至りました。実際に法定利息の約14~31倍の利息を受け取っていたようです。
ZERUTAのホームページでは「ブラックでも利用可能な給料ファクタリング」、「即日融資に代わる借金ではない給料ファクタリング」などと謳い集客を行っていました。
ファクタリングがやばいわけではない根拠
ファクタリング業界の法整備が十分でないことや、給与ファクタリングや偽装ファクタリング業者の摘発などにより、安全性が低い資金調達の方法と懸念されがちです。
しかし、ファクタリングは決して「やばい」、「怖い」金融サービスではありません。
ファクタリングがやばいわけではないとする法的根拠として、民法で債権の譲渡が法律で認められている行為であることが挙げられます。
民法第466条 債権の譲渡性 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 2.当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。 |
「債権は、譲り渡すことができる」と記載されていることから、法律では認められている行為といえます。
また、金融庁によるファクタリングの定義は以下のとおりです。
企業の取引先に対する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、買い取った債権の管理・回収を自らが行う金融業務 |
売買契約に基づく指名債権を譲渡することによる資金の調達方法であり、金銭の貸し借りではないため、ファクタリング会社に賃金業登録は不要です。
正規のファクタリング会社が売掛債権を買い取り現金化するファクタリング業を営んでいる場合において、取引は法律で認められた行為であり、貸金業登録をしていなくても違法ではないといえます。
やばい違法業者の特徴
正規のファクタリングは違法行為ではなく、やばいと恐れる必要もありません。
むしろ銀行融資の審査に通らない事業者でも、安心して保有する売掛金の範囲で資金調達できる安全な金融サービスといえます。
ただし中には、ファクタリング業界の法整備が十分ではないことを利用し、ファクタリングを装う違法業者やヤミ金融業者が存在しています。
やばいとされるファクタリングを装う違法業者には、主に次の7つの特徴が見られます。
- 審査がない(不十分)である
- 相場と異なる売買手数料を請求される
- 追加費用を請求される
- 償還請求権ありの契約である
- ジャンプ・分割を提案される
- 事務所が存在しない
- 請求書を提示してもらえない
それぞれの特徴について説明していきます。
ファクタリングが違法ではない法的根拠|注意すべき悪質業者の見分け方
1.審査がない(不十分)である
やばい違法業者の場合、契約前に審査を行わない、または十分ではないことが多いといえます。
通常、ファクタリングの申し込みがあれば、買い取ってもよい売掛債権なのか、必ず審査が行われます。
回収の可能性や信用力の低い売掛先の債権を買い取ってしまうと、期日に回収できず貸し倒れとなり、その損失をファクタリング会社が負わなければならないからです。
また、買取依頼の売掛金が本当に存在するのか、十分に見極めなければ架空債権である恐れもあります。
買取可否や売買手数料設定において、審査なしで契約は絶対にありえないため、書類提出や情報提供などなく、即契約を伝えられた場合にはやばい違法業者と疑い契約しないでください。
2.相場と異なる売買手数料を請求される
やばい違法業者の場合、正規のファクタリング契約ではありえない、相場を大きく上回る(または下回る)手数料を請求されることがあります。
2社間ファクタリングの売買手数料相場は10~20%、3社間ファクタリングは1~9%が目安です。
一般的な相場を大きく上回るだけでなく、下回る売買手数料を設定されている場合は、後で追加費用を請求される可能性もあります。
ファクタリング会社が負担するコストやリスクを考慮した上で売買手数料は決定するため、相場の範囲か確認しましょう。
3.追加費用を請求される
やばい違法業者の場合、見積もり段階では提示されていなかった追加費用を、後で請求されることがあります。
見積もり段階では提示されていない費用を積み増しするケースは、提案段階では費用を安く提示したほうが契約に至りやすいからです。
積み増しの名目は、
- 初回利用
- 即日振り込み
- 売掛先の信用力不足
などが多いとされます。
また、本来のファクタリングでは存在しない、保証金や手付金などの架空費用を請求されるケースもあります。
見積もり段階では触れられることのなかった追加費用が発生したときは、やばい悪徳業者と疑い一旦契約を注意してください。
4.償還請求権有の契約である
やばい違法業者の場合、売掛金が回収できなかったときの責任を利用者が負う、償還請求権ありの契約であることが多いといえます。
償還請求権とは、売掛先が倒産したなどの理由で売掛金が回収できなかったときの弁済責です。
未回収となった場合に再度売掛金を買い戻す行為(買戻しをさせる行為)は貸金業登録していないファクタリング会社は行ってはいけません。
償還請求権ありの契約は貸金業に該当するため、貸金業者のみの扱いとなるため、一般的なファクタリング会社では取り扱いません。
しかし、違法な悪徳業者は貸金業登録をせずに償還請求権ありの契約を結び、貸し倒れリスクを利用者に負わせようとするため、契約しないようにしてください。
5.ジャンプ・分割を提案される
やばい違法業者の場合、支払いはせず売買手数料のみでOKとするジャンプや、分割による支払いを認めることが多いようです。
ファクタリングでは、回収した売掛金を分割払いすることや、売買手数料のみの支払いで据え置くジャンプなどは行いません。
しかし悪徳業者では分割払いやジャンプを可能とし、むしろ提案してくることもあるようです。
いずれの行為も融資とみなされるため貸金業者のみの扱いであるため、違法業者と契約しないようにしてください。
6.事務所が存在しない
やばい違法業者の場合、ホームページなどに記載されている所在地に事務所が存在しないなど、事業実態がないケースが見られます。
サイト内の所在地に実際に事務所があるのか確認に出向くと、建物自体がないなど明らかに実在しているか確認できなかったり、個人宅であるケースもあるようです。
知名度の低い業者の場合、ホームページはしっかりとした内容で作りこんでいるものの、企業情報などが掲載されていないこともあるため、必ず実在するのか確認するようにしてください。
7.契約書を提示してもらえない
ファクタリングの契約をする際、見積書や契約書は大変重要な書類です。
口頭での説明を受けたとしても実際の金額が異なった場合、証明できる書類がなければ、利用者は不利になってしまいます。
契約を行う際には、必ず契約書を貰い、見積書も受け取りましょう。提出を要求しても応じてくれない場合は契約を見送るなど対処しましょう。
優良なファクタリング会社の特徴
ファクタリングはやばい資金調達の方法ではないものの、法整備が十分ではないことを利用して、偽装ファクタリングなど法外な契約を交わす悪徳業者が潜んでいることがあります。
そのため悪質なヤミ金業者と契約してしまわないように、次の7つの特徴がある優良なファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
- 柔軟に審査対応している
- 手数料が相場の範囲である
- 入金まで時間がかからない
- 買取可能な債権額の範囲が広い
- 債権譲渡登記を義務づけていない
- コンプライアンス体制が整備されている
- 口コミなどの評価が高い
それぞれの特徴について説明します。
ファクタリング会社は大手が安心!メリット・デメリットと選ぶポイント
1.柔軟に審査対応している
優良なファクタリング会社は、担当者との面談の中で、諸事情などを説明すると柔軟い対応してもらえることもあります。
ファクタリングは、人と人とのつながりであり、信頼関係を築いてこそ成立する契約です。
そのため面談において経営者の信頼性が担当者に認められれば、特別な事情がある場合などにおいて考慮されるなど、親身な対応も期待できます。
ただし電話のみで特に審査はしないなど、甘すぎる対応は違法業者の可能性が高いため、契約しないようにしてください。
2.売買手数料が相場の範囲である
優良なファクタリング会社は、請求される売買手数料が相場の範囲に留まります。
ファクタリングの手数料の相場は、以下のとおりです。
- 2社間ファクタリングの相場…10~20%
- 3社間ファクタリングの相場…1~9%
信頼できるファクタリング会社であれば、おおよそ上記の範囲で安く抑える売買手数料を提案してくれます。
売買手数料は、売却する売掛債権の額や売掛先の信用力など、様々な項目を審査した上で決まるため、多少前後する場合もあります。
ただし相場を大きく上回る、または下回る売買手数料が設定されるは違法業者の可能性が高いため注意してください。
3.入金まで時間がかからない
優良なファクタリング会社は、現金化した売掛金が入金されるまでの時間が短いといえます。
最短即日に現金化が可能といったスピーディな対応のファクタリング会社なら、急いでまとまったお金が必要というケースにも対応できます。
ファクタリングを利用する多くは、銀行融資の審査に通らない状況などであるため、既に審査などに時間がかかってしまい、必要な期日まで時間がない場合も少なくありません。
スピード重視で資金を必要とする場合は、現金化まで時間がかからないファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
ただし審査なしで即日入金といったケースは、違法業者である可能性が高いため、契約しないようにしてください。
4.買取可能な債権額の範囲が広い
優良なファクタリング会社は、買取可能とする売掛金の債権額について、下限や上限などが厳しくないといえます。
ファクタリング会社が買い取りできる売掛金の額に下限や上限がある場合、下限はできるだけ低く、上限は高く設定されているほうが、買取額の範囲は広いといえます。
たとえば100万円の売掛金しか保有していない場合、買取可能額の下限が300万円であれば、ファクタリングの申し込みはできません。
特に中小企業や個人事業主では、100万円に満たない少額債権を利用したいケースも多いため、買取額の範囲は確認しておきましょう。
5.債権譲渡登記を義務付けていない
優良なファクタリング会社は、2社間ファクタリングによる契約においても、債権譲渡登記を義務付けていないことが多いといえます。
2社間ファクタリングでは、売掛先に対する通知や承諾を得る手続はないため、債権の二重譲渡など防ぐために債権譲渡登記を義務付けているファクタリング会社も見られます。
しかし債権譲渡登記後は、売掛先や取引銀行に情報を確認され、ファクタリングを利用したことを知られる恐れもあります。
登記費用も利用者が負担しなければならないため、債権譲渡登記は義務ではなく、留保や未登記で対応してくれるファクタリング会社を選んだほうが安心です。
ファクタリングの債権譲渡登記とは?登記の必要性と理由について解説
6.コンプライアンス体制が整備されている
優良なファクタリング会社は、債権譲渡に関する法務や反社会勢力排除など、コンプライアンス体制がしっかりと整備されています。
目に見えない資産である売掛債権や個人情報について、取り扱いを厳重に行っているファクタリング会社でなければ、取引先や取引銀行などに情報が漏れないとも言い切れません。
JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)の運営するプライバシーマーク(Pマーク)など、取得しているファクタリング会社であれば安心して契約できます。
7.口コミなどの評価が高い
優良なファクタリング会社は、実際に利用した方の口コミや評価などが高いといえます。
利用者やリサーチ会社の調査などの口コミで、上位をキープしているファクタリング会社なら安心です。
評判も良く人気が高いのは、サービスの内容が充実していることを客観的に証明しているといえるため、参考にすることをおすすめします。
ファクタリングで資金調達するときには口コミサイトの情報は参考にするべきか
まとめ
ファクタリングがやばい資金調達の方法と懸念されるのは、違法な偽装ファクタリング業者が摘発されたことや、金融庁が給与ファクタリングについて注意喚起していることが関係しています。
その背景には、ファクタリング業界の法整備が不十分であるからといえるものの、ファクタリングで行う売掛債権の売買は違法ではありません。
法的な根拠もあり、危険な手段ではなく、むしろ中小企業が有効に安心して使うべき資金調達の手法といえます。
ただし違法業者が横行しているのも事実であり、安全性を欠くヤミ金と取引してしまうリスクもあると考えられるため、安心して相談できる優良なファクタリング会社の見極めが重要になると考えられるでしょう。
ファクタリングを利用したいけれど、どの業者が安心して相談できるか判断がつかないときは、PMGに是非お気軽にご相談ください。