ファクタリング契約には「2社間」と「3社間」がありますが、どのような違いがあるのか理解できていなければ選ぶことはできません。
債権の流動化の手法として注目されているファクタリングですが、契約に「売掛先」が関与するかによって、2社間と3社間に分けられます。
そこで、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの仕組みや特徴、違いなど解説します。
中小企業経営者向け!

目次
2社間ファクタリングとは
「2社間ファクタリング」とは、ファクタリング契約のうち、利用者とファクタリング会社のみで取引を行うファクタリングです。
売掛先に対し、売掛債権(売掛金の請求権)をファクタリング会社に譲り渡すことを伝えたり承諾を得たりする必要はないため、スムーズに手続が進みます。
そのため、売掛金を現金化するまでの時間が早く、ファクタリング会社によっては即日入金に対応してもらえるなど、スピード感のある資金調達が可能です。
ただし売掛金は利用者が回収することになるため、ファクタリング会社にとっては「使い込み」が懸念されるなどリスクの高い契約となります。
また、売掛債権は目に見えない資産であるものの、売掛先に対して債権の存在確認ができない契約のため、売買手数料は高めに設定されます。
2社間ファクタリングとは?仕組みや合法である理由をわかりやすく解説
3社間ファクタリングとの違い
「3社間ファクタリング」とは、利用者とファクタリング会社だけでなく、「売掛先」も契約に関与するファクタリングです。
ファクタリング会社に売掛債権を譲渡することについて、売掛先に伝え承諾を得ることが必要となります。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの大きな「違い」とは、主に次の4つといえます。
- 売掛先に対する通知・承諾の有無
- 債権譲渡登記の有無
- 売買手数料の負担の大きさ
- 現金化までのスピード
それぞれ説明します。
売掛先に対する通知・承諾の有無
2社間ファクタリングは売掛先にファクタリングを利用する事実は伝えないため、債権を譲渡する旨を通知することも承諾を得ることもありません。
しかし3社間ファクタリングでは売掛先に対する債権譲渡の通知と、承諾を得ることが必須となります。
ファクタリング会社にとって3社間ファクタリングは安心できる取引といえるため、支払う売買手数料は安く設定されます。
債権譲渡登記の有無
2社間ファクタリングでは、売掛金は利用者が一旦回収し、その後ファクタリング会社に渡すという流れになります。
期日になっても持ち逃げや流用で売掛金が引き渡さなかった場合、ファクタリング会社は大きな損失を負います。
そのため、2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社によっては債権譲渡登記を求められます。
債権譲渡登記は、すでに別のファクタリング会社に譲渡済の売掛債権を売却する「二重譲渡」があった場合でも、権利者であることを第三者に主張する対抗要件を得るための手続です。
3社間ファクタリングは売掛先に対する通知と承諾を得る手順を踏むため、債権譲渡登記を行う必要はありません。
しかし、2社間ファクタリングでは売掛先への通知等はないため、債権譲渡登記を求められることもあると認識しておきましょう。
売買手数料の負担の大きさ
3社間ファクタリングの方がファクタリング会社の抱えるリスクが低いため、売買手数料は安く設定されます。
2社間ファクタリングは売買手数料が高めであるものの、債権譲渡登記が必要な場合は通常よりは引き下がる可能性はあると考えられます。
現金化までのスピード
2社間ファクタリングでは売掛先に対する通知や承諾を得る流れは必要ないため、売掛金を現金化まで3社間ファクタリングよりもスピーディーです。
最近ではオンラインによる電子契約を可能とするファクタリング会社も増えたことから、早ければ即日現金化が可能になるケースもめずらしくありません。
ただし債権譲渡登記が必要となった場合、登記所は東京法務局のみの扱いとなるため、都心部以外の企業は時間がかかることもあります。
2社間ファクタリングのメリット
2社間ファクタリングのメリットは、 上手に利用することで、資金繰りは改善されキャッシュ・フロー安定につながることです。
取引先が関与しない手続となるため、入金期日を前倒しし、スムーズに買取代金が支払われます。
不足する事業資金の調達まで時間がかからず、倒産リスクを低減できます。
請求書を買い取るサービスともいえるため、弁済負担に追われることもありません。
2社間ファクタリングのデメリット
2社間ファクタリングのデメリットは、ファクタリング会社と売掛債権の売買契約を結ぶことで発生する売買手数料の負担が重いことです。
ファクタリング会社から売掛先に対し、直接回収や督促はできないため、そのリスクの高さ分費用は高めに設定されます。
また、審査は3社間ファクタリングよりも厳しくなる傾向があることや、悪徳業者も潜んでいる恐れがあるため、買取依頼するファクタリング会社は慎重に選ぶことが必要です。
2社間と3社間の使い分け
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングはそれぞれメリットとデメリットがありますが、どちらを選んだほうがよいか迷ったときには、次の3つのケースで使い分けましょう。
- 売掛先に知られたくない場合
- 売買手数料を安く抑えたい場合
- すぐにでもお金が必要な場合
それぞれ説明します。
売掛先に知られたくない場合
中小企業の多くは2社間ファクタリングを選んでいることからもわかる通り、ファクタリング利用で企業が気にすることは売掛先に利用が知られないかということです。
ファクタリング利用を知られることで、その後の取引に影響が及ぶことを心配する経営者も少なくありません。
ただ、長年付き合いがあり、なんでも相談できる売掛先などある場合には、3社間ファクタリングを選びやすいといえます。
売掛先に知られたくないときは2社間ファクタリングを選び、知られても大丈夫という場合には3社間ファクタリングを選ぶとよいでしょう。
売買手数料を安く抑えたい場合
3社間ファクタリングのほうが、2社間ファクタリングよりも売買手数料を安く抑えることができます。
売買手数料相場は、以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング 10~20%
- 3社間ファクタリング 1~9%
資金調達にかかるコストを抑えたい場合は、3社間ファクタリングを選ぶべきといえます。
すぐにでもお金が必要な場合
売掛金を現金化するスピードは、圧倒的に2社間ファクタリングのほうが早いといえます。
3社間ファクタリングでは、売掛先に対する通知や承諾を得ることが必要であることがその理由です。
すぐにでもお金が必要なときには、2社間ファクタリングを選んだほうがよいでしょう。
売掛先が民間ではない場合
3社間ファクタリングは売掛先に知られてしまうリスクを許容できるときにしか選ぶことができませんが、民間企業などの場合には認めてもらえるとも限りません。
何よりも、その後の取引に影響が及ぶことが懸念されます。
ただ、売掛先が国や地方公共団体に対する売掛金の場合には、ファクタリング利用によるその後の取引や風評被害などを心配せずに3社間ファクタリングを利用しやすくなります。
売掛先が国や地方公共団であるケースは、以下のとおりです。
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国や地方公共団体が破綻しない限り売掛金も確実に回収できるため、ファクタリング会社にとっても低リスクの契約となり、売買手数料を安く抑えられます。
ファクタリングを選ぶポイント
ファクタリングを利用している中小企業の9割以上が2社間ファクタリングを選択しています。
それは、売掛先に知られたくないという理由があるからです。
また、ファクタリング利用を希望する中小企業の多くは、以下の事情を抱えていることが多いといえます。
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資金不足をすぐにでも解消したいなどの事情を抱えていることが多く、スピード感のある資金調達のニーズに対応できる方法として2社間ファクタリングを選んでいます。
3社間ファクタリングの魅力は売買手数料の安さですが、資金調達まで時間をかけることができない中小企業のニーズに対応できるのは2社間ファクタリングといえます。
まとめ
ファクタリング契約の種類は、2社間と3社間の2つですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
多くの中小企業は2社間ファクタリングを選んでいますが、事業内容や売掛先との関係などによっては、3社間ファクタリングを選ぶこともできます。
どちらを選んだ場合でも銀行から融資を受けるときのような厳しい審査はなく、資金調達までのスピードは早いといえるため、ケースに応じて選択しましょう。
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