資金調達にファクタリングを利用したいものの、手数料が多く発生するのなら別の方法を検討したほうがよいだろうか…と悩むこともあるでしょう。
中には悪徳な業者も存在し、法外といえるような手数料を請求されてしまうケースもあるため、実際にファクタリングを利用したときにどのくらいの手数料が発生するのか、そもそも手数料としての支払いはどのような費用が必要になるのか知っておく必要があります。
そこで、ファクタリングを利用する上で発生する手数料の詳細や、どのくらいの金額なら相場といえるのかなどご説明します。
目次
資金が必要になったときは?
資金繰りに困ったとき、融資を受けて資金を確保しようと考える方が多いかもしれませんが、政府系金融機関、民間の銀行などから融資を受けるには利用する上での条件をクリアし、求められる多岐に渡る書類などを準備することが必要です。
さらに金融機関では提出された書類などをもとにして審査が行われるため、その審査で融資できないと判断されれば資金調達に繋げることはできません。仮に審査で融資可能と判断されたとしても、申し込みをしてから審査を経て、融資が実行されるまで時間がかかります。
それなら審査が厳しくなく、即日融資も可能とするノンバンクのビジネスローンなどから借りるといった方法も考えられますが、その場合、金利が高く設定されるので、支払う利息が財務を圧迫するなど後の返済負担が心配です。
このような場合、借り入れで資金を調達するのではなく、保有する売掛金を売却して現金化することが可能であるファクタリングを検討してみましょう。
有効な資金調達の方法であるファクタリングとは
ファクタリングは、商取引で発生した売掛金(売掛債権)を、ファクターと呼ばれるファクタリング専門の業者に売却して資金を調達する方法です。
融資ではないため利息は発生しませんが、利用する上で手数料がかかります。
手数料が発生することで、売却する売掛債権の額面金額をそのまま受け取ることはできませんが、それでも急いで資金が必要という場面で、負債を増やさず即日現金化できることは大きなメリットとなるはずです。
ファクタリングでかかる手数料の相場
ファクタリングでは手数料が発生しますが、どのくらいの手数料が発生するのかは、売却対象となる売掛債権によります。
売掛債権の金額が大きく、信用力の高いものであり、契約の方法が3社間ファクタリングであればかなり手数料を抑えることができるでしょう。
2社間ファクタリングのほうが手数料の相場は高め
2社間ファクタリングでは、ファクタリングを利用する事業者とファクタリング専門業者でのみ契約を結ぶことになります。それに対し、3社間ファクタリングは事業者とファクタリング専門業者の間に売掛先企業も含んだ契約となりますが、なぜ2社間ファクタリングのほうが手数料相場は高めなのでしょうか。
これにはファクタリング専門業者が抱えるリスクの大きさが関係します。
ファクタリング会社の抱えるリスクとは
ファクタリングとは事業者から売却したいと持ち込まれた売掛債権をファクタリング業者が買い取り、実際に売掛先企業から入金される期日よりも先に現金化させる資金調達の方法です。
ファクタリング専門業者が売掛債権を買い取った後、もし売掛先企業が倒産して期日に売掛金分の代金が支払われなかったとしても、その弁済を求められることもありません。
ここがファクタリングと似た手法である、受取手形を売却して現金化させる手形割引とは大きく異なる点です。
ファクタリング専門業者は貸し倒れリスクを背負う形で売掛債権を買い取ることになるため、売掛先企業の信用力次第で手数料は高めに設定されます。
2社間はファクタリング専門業者にとってさらに高リスク
3社間ファクタリングなら、ファクタリング契約を結ぶ際に売掛先企業も取引に交わります。そのため、売掛先企業は自社の売掛金が売却されることを知った上で契約が結ばれることになり、当初の売掛金の入金期日には売掛先企業からファクタリング専門業者に直接支払いが行われる形です。
しかし2社間ファクタリングの場合、売掛先企業は取引には加わりません。売掛先企業は自社の売掛金が売却することを知らない状態なので、売掛金の入金期日にはファクタリングを利用する事業者がファクタリング専門業者に代行して回収することが必要になります。
ただ注意したいのは、もし事業者がこのタイミングで資金繰りに困っていたらどうでしょう。売掛先企業から回収した売掛金を使いこんでしまう可能性も否定できません。
もし使い込みを行った場合、横領罪に該当することになるので絶対に行ってはいけませんが、このようなリスクも踏まえた上で2社間ファクタリングの手数料は3社間よりも高めに設定されます。
売掛債権を二重に譲渡されるリスクも
売掛債権は目に見えない資産なので、誰が回収する権利を所有しているのか、そのままでは証明することができません。
ファクタリング専門業者に持ち込み、ファクタリングを利用して現金化させ、さらに別のファクタリング専門業者に同じ売掛債権を買い取って欲しいと話を持ちかけ現金化させるという二重譲渡が発生しないとも限らないのです。
この二重譲渡が発生することを防ぐためには、売掛先企業に債権を譲渡する旨を通知するか承諾を得て対抗要件を具備することが必要ですが、それでは3社間ファクタリングを行うことになってしまいます。
そこで、同じように第三者への対抗要件に備えるために用いられるのが債権譲渡登記です。
不動産登記や商業登記と同じように、売掛債権も誰がその権利を所有しているのか登記によって証明することで、第三者への対抗要件に具備することが可能となります。
ただ、登記を行うには実費で費用が発生しますので、2社間ファクタリングの場合はこの費用も含まれることになるわけです。
ファクタリング専門業者のすべてが2社間ファクタリングで債権譲渡登記を行うわけではないので、なるべく費用を抑えたいなら未登記で対応してくれる業者を利用したほうがよいでしょう。
債権譲渡登記にかかる費用
債権譲渡登記が必要な場合、登記を行う上で発生する登録免許税や証明書を交付するための費用以外に、司法書士に対する報酬が発生することを理解しておくべきです。
登記は設定だけでなく、いずれ抹消することも必要なのでどちらにも登録免許税が発生します。
・債権譲渡登記の登録免許税 7,500円
・抹消登記の登録免許税 1,000円
・登記事項証明書 500円
・振込手数料 金融機関による
といった費用が司法書士に対する報酬以外にかかると理解しておきましょう。
司法書士に対する報酬は債権の個数により異なるようですが、4万円くらいという場合もあれば、7万円という場合もあるようです。
2社間と3社間の手数料相場
2社間ファクタリングの手数料相場は、ファクタリング専門業者によって異なるものの10~20%、場合によっては30%程度であることが多く、3社間ファクタリングは1~5%、中には9%という場合もあるようです。
ファクタリング手数料を決める要因と内訳
ファクタリングを利用する際に支払う手数料は、すべてがファクタリング専門業者の儲け分というわけではありません。
手数料の中にはファクタリング専門業者が事業を営む上での事務的な経費なども含まれています。
もし2社間ファクタリングで債権譲渡登記を行うことが必要となれば、登記にかかる費用なども必要ですし、面談の際に忙しくて窓口まで行けないので訪問対応してもらうのなら、こちらも実費で交通費が発生します。
仮に2社間ファクタリングを利用した場合で、発生する手数料が売掛債権金額の20%だったとします。この場合の内訳は、
- 事業者に支払われる買取代金 80%
- 登記費用 8%
- 紹介料 3%
- 印紙代 2%
- ファクタリング専門業者の利益 7%
といった内容で、実際にはそれほどファクタリング専門業者の儲け分は発生していない状態です。
さらに手数料は、
- 2社間と3社間どちらを選ぶか
- 売却する売掛債権の金額
- 売掛先企業の信用力の高さ
- 利用する事業者の人柄や信頼性の高さ
- 初回利用か2回目以降か
などで変わってきます。
日本の商習慣ではファクタリングはまだ一般的なものになっているといえませんので、ファクタリング専門業者によってどこを審査で重視し、設定する手数料の幅なども異なるので、優良な業者選びが手数料を抑えるためにより重要になるといえます。
なお、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの手数料が異なる点は先に述べましたが、その他の要因についても知っておきましょう。
売却する売掛債権の金額
仮に100万円の売掛債権をファクタリングに利用する場合で、手数料が30%で設定されたとします。そうなるとファクタリング専門業者が受け取る手数料は30万円でありながら、登記費用など実費を差し引けば利益として残るのは10万円ほどになるでしょう。
これがもし1千万円の売掛債権だったとしたら、手数料を10%で設定してもファクタリング専門業者は100万円の手数料を受け取ることができます。必要となる諸費用分を差し引いても、利益として80万円程度残ります。
ファクタリングの経費は売掛債権の金額によって左右されにくいため、少額の売掛債権でも多額の債権でもかかる費用は同じと考えると、金額の高い売掛債権のほうが手数料を抑えてサービスを提供することが可能になるのです。
そのためできるだけ大きな金額の売掛債権を売却したほうが、手数料は低く抑えることができると理解しておきましょう。
なお、買取額の受け取り方法としては、全額前払いで受け取るのか、一部は前払いで支払期日後に残りを受け取るのかなど違いがあります。
一部を前払いして残りをファクタリング専門業者に留保する留保金が発生する場合、売掛金が回収できた後でその留保金が返還される形です。
売掛先企業の信用力の高さ
ファクタリングは売掛債権を売却して現金化させる資金調達の方法ですので、売掛先企業の経営状況が良好で財務状態にも問題なければ、信用力は高いとみなされ確実に期日に買い取った売掛金を回収できると判断されます。
信用力が高ければその分、貸し倒れリスクは低くなるので手数料が抑えられるという流れです。
ファクタリングの審査では売掛先企業の信用調査は必ず行われるため、発生する手数料にはこの経費も含まれると理解しておきましょう。
利用する事業者の人柄や信頼性の高さ
売掛先企業の信用力が重視されるのなら、利用する事業者の人柄や信頼性など関係ないのでは?と思うかもしれません。
しかし、2社間ファクタリングなどではファクタリング専門業者に代わって事業者が売掛先企業から売掛金の回収を行います。
もし人柄が悪く信頼できる事業者でなければ、あっさり回収した売掛金を使い込まれてしまう可能性も高くなるのです。
そのため、必ずファクタリング契約を結ぶ前には面談を行い、事業者との対話の中でどのような人物か、人柄や信頼性の高さなどが確認されると理解しておきましょう。
初回利用か2回目以降か
初めてファクタリングを利用する場合よりも、2回目以降のほうが手数料は低く抑えられる可能性が高いといえます。
たとえば同じ売掛先企業の売掛債権を売却するのなら、初回よりも信用調査にかかる費用を抑えることができるでしょうし、すでに初回の取引でファクタリング利用の実績ができていることが理由です。
ファクタリングに消費税はかかる?
商品やサービスを販売したり提供するときには消費税が発生することが多いですが、ファクタリングを利用して売掛債権を譲渡する際には消費税はかかりません。
もし消費税を見積書に記載し、請求しようとする業者があるのなら悪徳業者である可能性がありますので注意しましょう。
悪質業者を利用しないことが重要!
ファクタリングを利用するときに手数料はできるだけ安いほうがよいと考えるのは当然のことです。あまりに高額の手数料が設定されてしまうと十分な資金調達に繋がらなくなりますし、資金繰りを改善させやすいというファクタリングのメリットを打ち消してしまうことになります。
ただ、悪徳な業者などは見積もり段階で、2社間ファクタリングなのに3社間ファクタリング並みの低い手数料を設定し、契約のタイミングで一気に手数料を引き上げてくるといったこともあるようです。
先に述べたとおり、2社間ファクタリングで契約する際にファクタリング専門業者が抱えるリスクは低くありません。3社間ファクタリング並みの手数料を設定してサービスを提供することは、利益を出すことができないだけでなく、むしろ赤字経営をすることになってしまうのです。
あまりに手数料にこだわりすぎ、破格といえる手数料だから…と、安い手数料に飛びついてしまうと、悪徳業者に騙される可能性もありますので注意してください。
まとめ
ファクタリングを資金調達で活用することで、負債を増やすこともなく返済負担に追われることもないので、安心して本業に集中できるようになります。
利用する際には手数料が発生しますが、法律で明確な規制や制限がされておらず、ファクタリング専門業者次第というところなので、良心的な対応をしてくれるファクタリング千も業者を利用することが重要です。
ただ、法律で決まりはなくても、2社間ファクタリングと3社間ファクタリング、どちらにも相場というものは存在しますので、あまりに相場からかけ離れた手数料を設定してくる業者は悪徳業者である可能性があります。
悪徳業者を利用してしまうと、十分な資金調達に繋がらないだけでなく資金繰りがますます悪化し、事業を継続できなくなる可能性も出てきますので絶対に利用しないようにしてください。