銀行融資の審査とは?審査規準と難易度・通らないときの対処法を解説

銀行融資の審査に通らないと、必要な資金を調達できずに事業が停止してしまうリスクを高めます。

銀行融資は他の資金調達方法よりも金利が低いため、審査は厳格で時間もかかります。

特に中小企業は大手と異なり銀行融資の審査を通過することは容易ではなく、銀行の融資担当者に相談しても通らないことはめずらしくありません。

そこで、銀行融資の審査について、審査規準と難易度や、通らないときの対処法を解説していきます。

銀行融資とは

「銀行融資」とは銀行からお金を借りることですが、資金ニーズはいろいろあるため対応できる次のような金融商品が用意されています。

  1. プロパー融資
  2. 信用保証付き融資
  3. 不動産担保融資
  4. 売掛債権担保融資
  5. ビジネスローン

それぞれの金融商品について説明していきます。

プロパー融資

「プロパー融資」とは、銀行が事業に対し資金を貸し付ける際、全額銀行独自の責任で実行することです。

保証なしで銀行が貸倒れリスクを引き受けた上で資金を貸し付けるため、信用力の高い企業などでなければプロパー融資を受けることはできません。

そのため銀行に資金を貸し付けてもよいと認めさせることができる実績や事業規模などが求められることになり、審査のハードルはかなり高めです。

信用保証付き融資

「信用保証付き融資」とは、第三者機関の信用保証協会が保証した上で銀行が行う貸し付けです。

万一、返済が滞った場合には、信用保証協会が立て替えて支払ってくれるため、銀行は貸倒れリスクを抑えることができます。

プロパー融資では審査に通らない企業でも、信用保証協会の信用保証付き融資であれば借りることができる可能性はあるといえます。

不動産担保融資

「不動産担保融資」とは、所有する不動産を担保として差し入れることで、銀行が資金を貸し付けることです。

不動産の価値は比較的安定しているため、信用力に不安がある場合でも借入れできる可能性は高くなります。

売掛債権担保融資

「売掛債権担保融資」とは、商品やサービスを販売したものの、まだ回収していない売掛債権を担保として提供することで、銀行が資金を貸し付けることです。

ただし、売掛債権の回収状況や、信用力によって融資可能額が少なくなる場合もあります。

ビジネスローン

「ビジネスローン」は、通常の銀行融資による借入れが難しい事業者向けのローン商品です。

審査のハードルは低い分、金利が高めに設定され、融資上限も少なくなります。

ただし即日から3営業日など、すぐにお金が欲しいときには素早い資金調達が可能となり、担保や保証人なしでも借入れできるため、信用力の低い個人事業者や中小企業でも利用しやすいといえるでしょう。

ビジネスローンとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

銀行融資の特徴0銀行の赤い看板

銀行融資は、お金を借りる資金調達の方法の中でも、便利で大きな額の借入れが可能となる方法です。

低金利での借入れが可能となる分、審査に時間がかかることや、中小企業などでは担保や保証人を求められやすいといった特徴があります。

そこで、銀行融資の特徴である以下の4つを説明します。

  1. 金利が低い
  2. 融資限度額が大きめ
  3. 審査に時間がかかる
  4. 担保や保証人を求められやすい

金利が低い

銀行融資は、金利が低く設定されやすいという特徴があります。

資金調達にかかるコストや返済負担を抑えることができます。

多額の資金が必要な事業用資金の融資では、特に金利が低いことで借入れしやすいと感じる経営者も少なくありません。

融資限度額が大きめ

銀行融資は、融資限度額が大きめであるため、多額の資金を必要とするときにも対応しやすい特徴があります。

実績や信用力によるものの、不動産や有価証券を担保に1千万円や億単位の融資を受けることができる可能性もゼロではありません。

審査に時間がかかる

銀行融資は、低い金利で高額な融資限度額による借入れが可能となる反面、審査に時間がかかるといった特徴が見られます。

審査には複数名が関わることとなり、細かく事業計画書の内容を確認され、信用調査なども実施されます。

申し込みから実行まで1か月以上かかる場合もあるため、特に借入希望額が大きいときなどは、審査で確認する事項が増えると留意しておきましょう。

保証や担保を求められやすい

銀行融資は、不動産を担保として差し入れることや、代表者が保証人になることを求められるといった特徴が見られます。

特に中小企業の場合、信用力は大企業より劣るため、債務を返済できなくなったときの事態に備えて担保や保証人を求められやすいといえます。

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銀行融資の流れ

銀行融資を受けるときは、以下の流れで審査などが行われます。

  1. 相談・申し込み
  2. 必要書類の提出
  3. 担当者との面談
  4. 銀行による審査
  5. 融資契約の締結

それぞれの流れについて説明します。

1.相談・申し込み

銀行融資を受けるときには、まず窓口で相談し、申し込みを行いましょう。

事前に相談しておけば、融資条件や承認されやすい傾向、必要な資料などを紹介してもらえます。

2.必要書類の提出

銀行融資を受けるときには、必要書類の提出が必要です。

何の書類が必要になるのかは、銀行や金融商品で異なるものの、一般的には以下の書類の提出を求められます。

本人確認書類(個人事業主)
商業登記簿謄本(法人)
決算書(法人)
確定申告書(個人事業主)
登記簿謄本
印鑑証明書
納税証明書
試算表
資金使途明細
受注明細
事業計画書
資金繰り表
銀行取引明細書
許認可証の写し(許認可を必要とする事業)

漏れや不備があると、審査に通過できなくなる恐れがあるため、準備は確実に行いましょう。

3.担当者との面談

銀行融資を受けるときには、担当者との面談が必要です。

事業資金の融資を受けるときは、銀行担当者との面談で、借りたお金の使途や返済方法などを質問されます。

そのため根拠を示すことができる書類や資料などを準備しておくとよいでしょう。

4.銀行による審査

銀行融資を受けるときは、銀行による審査が行われます。

融資の可否だけでなく、融資限度額なども審査で決まります。

審査の内容や基準は非公開であるものの、審査中に追加書類などの提出を求められたとき、迅速に対応することで印象はよくなると考えられます。

金額により、支店長決済で決定するケースもあれば、本部決済になる場合もあります。

5.融資契約の締結

銀行融資を受けるときには、審査通過後に融資契約を結びます。

このとき、複数の契約書を作成することになるため、不備のないようにしっかりと確認しながら記載しましょう。

契約締結後は、指定口座に入金されます。

銀行融資の審査に通らない理由

調査の文字を虫眼鏡で見る人

銀行融資の審査に通らないときには、お金を貸しても返済が遅れたり返ってこなかったりなど、契約において不安な要素があると判断されています。

返済能力が低く貸し倒れリスクが高いと判断されている状態であるといえますが、主に次の9つの理由が関係しています。

  1. 金融事故歴がある
  2. 決算書が赤字である
  3. 債務超過である
  4. 消費者金融から借入れがある
  5. 差し入れる担保がない
  6. 自己資金に不安要素がある
  7. 税金・公共料金を滞納している
  8. 資金の使途と必要額が合っていない
  9. 返済原資を捻出する見込みがない

それぞれどのような理由か説明していきます。

①金融事故歴がある

銀行は個人信用情報機関に加盟しているため、審査では信用情報を照会することになりますが、金融事故歴が記録されていれば審査には通りません。

借金返済の滞納や債務整理など、信頼を著しく損ねていないか思い返してみましょう。

②決算書が赤字である

決算書が赤字の場合、銀行融資の審査に通らないと留意しておきましょう。

赤字でも創業時に初期投資がかさんでおりまだ実績が出ておらず投資分を回収できていない場合や、社会的要因や災害など、一過性のケースなどは融資を受けることができる場合もあります。

しかし単に売上があがらず赤字経営が続いている場合、事業に問題があると銀行から判断されると考えられ、審査には通りにくくなるでしょう。

③債務超過である

債務超過とは、負債総額が資産総額を超えている財務状況であり、現在所有する資産をすべて換金しても借金返済や固定費支払いの合計額に足りていない状態です。

すぐに倒産になるとは言い切れないものの、早めに解消しなければ純資産が減少する危険な状態であるため、銀行融資の審査には通らないと考えられます。

④消費者金融から借入れがある

消費者金融からお金を借りていれば、高金利による利子を返すことになるため、資金繰りに影響を及ぼします。

仮に消費者金融から借金があっても、他の要素が良好なら審査に通る可能性はあるものの、そもそも金利の低い金融機関ではなく金利の高いノンバンクからお金を借りていることで信用力に問題があると疑われる可能性があります。

そのため消費者金融からの借入れの残債があれば、返済能力や負債状況に関してより慎重に評価することになり、審査に通らなくなる場合もあるといえます。

⑤差し入れる担保がない

銀行にとって、担保や保証人は万一のリスクヘッジにつながる存在であるため、担保として差し入れることのできない不動産など資産がない状態では、審査に通らない可能性は高くなると考えられます。

特に中小企業は資金体力が不十分と判断されやすく、銀行融資においては不動産を担保として差し入れることを求められやすくなるといえます。

⑥自己資金に不安要素がある

自己資金とは自由に動かすことのできるお金であり、借りたお金は該当しません。

開業資金について銀行などの金融機関から融資を受ける場合、着々と開業準備をしてきたことを証明するためも自己資金を用意しておくことが必要です。

しかし金額が少額すぎる場合や、一時期的にどこからか借りて所有していたお金のように見せる見せ金は、自己資金として認められません。

自己資金にこれらの不安要素がある場合、銀行融資の審査には通りにくくなるでしょう。

⑦税金・公共料金を滞納している

税金や社会保険料、公共料金を滞納していても、信用情報機関にはその事実が記録されることはありません。

しかし税金は納税証明書から未払いがないか確認することができ、社会保険料は決算書で預り金に計上されている金額の多寡で支払い状況の推察が可能です。

公共料金に関しても、年度内にいつからいつまでの料金が支払われているかによって、確認することができれば、滞納していたことを知られてしまいます。

そのためこれらの支払いを滞納している場合、返済能力が足りていないと判断され、銀行融資の審査には通らなくなります。

⑧資金の使途と必要額が合っていない

資金使途や必要額が合っていないと、銀行融資の審査には通らないと考えられます。

示された使い道と見積もり額が合わなければ、事業以外の使途に使用される可能性があるからです。

⑨返済原資を捻出する見込みがない

決算書から返済原資を捻出できる見込みがないと判断されると、銀行融資の審査に通りません。

借りたお金を返すための資金となる原資が確認できなければ、たとえお金を貸しても返済が滞ったり貸し倒れになったりするからです。

銀行融資の審査基準

書類を分析する男女

銀行融資の審査基準は、実際には明確には提示されていないものの、事業内容や返済能力などを詳しく確認されます。

提出した書類などから、事業状況・実績・借入希望金額・返済期間などを確認し、融資可否を総合的に判断します。

提出書類のうち、特に審査で注意深く確認されるのは以下の書類です。

決算書 法人の一定期間の経営成績や財務状態を明確にした書類
確定申告書 個人事業主の1年間の所得を申告するための書類
事業計画書 事業の目的・必要な資金・調達方法・事業の見通しなどの計画を記した書類
資金繰り表 一定期間の資金の収入と支出を表にした書類
見積書 設備や備品などを購入する上で必要な費用を予め見積もった書類

決算書や資金繰り表は財務や収支状況を確認する上で必要な書類となるため、必ず提出を求められます。

事業計画書に関しても、今後の事業計画や展望を説明する上で必要となるため、根拠を示す重要書類として説明できる準備をしておきましょう。

銀行の視点では、融資担当者→融資担当課長→副支店長→支店長と決裁が進み、その後、本部でも複数の融資担当者・融資部でも複数名が書類を確認し最終的に融資実行の可否を決めます。

借入れしたい金額と、使用目的、明確な返済計画などを伝えることが大切です。

希望する借入金額と、その金額を提示した根拠を、事業計画書などで明確に提示しましょう。

また、どのように返済資金を捻出するか、安心してもらえる返済計画も伝えることも大切です。

銀行融資の審査に通らない場合の対処法

評価のパネルと説明する人のフィギュア

銀行融資の審査に通らなかったものの、いずれは借入れを希望する場合には、次の7つの対処法を実行しましょう。

  1. 信用格付けを上げる
  2. 資金使途を明確に表示する
  3. 事業計画・返済計画を適切に立てる
  4. 消費者金融の借金を完済する
  5. 税金・公共料金は滞納しない
  6. 担保を用意する
  7. 銀行融資以外の方法を検討する

それぞれどのような対処法か説明していきます。

信用格付けを上げる

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として「信用格付け」を上げることを検討しましょう。

信用格付けとは、銀行が行う信用力や返済能力の評価をランク付けしたもので、決算書の分析結果と経営者の姿勢や経営方針の評価で決まります。

資金使途を明確に表示する

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として「資金使途」を明確に表示することをしましょう。

借りたお金を何に使うのか、たとえば収益や生産性を高めることを目的とする前向きな理由なら、審査通過率は高まります。

事業計画・返済計画を適切に立てる

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として「事業計画」や「返済計画」を適切に立てるようにしましょう。

収益の増加に関する具体的な裏付けとなる計画表を作成できれば、信ぴょう性が増し審査も有利になります。

消費者金融の借金を完済する

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として「消費者金融」の借金を完済することが必要です。

消費者金融からの借入れが残っている場合でも、銀行融資の審査に通ることはありますが、残債が多く安全性や返済能力が疑われると審査に落ちるリスクは高くなります。

そのため銀行融資の審査に通りたいのなら、先に消費者金融の借金は終わらせておくことが重要といえます。

税金・公共料金は滞納しない

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として「税金」や「公共料金」は滞納しないように心がけましょう。

税金や公共料金を支払わずに滞納していると、返済能力が欠けているとみなされるため、銀行融資の審査に通りにくくなります。

特に税金は納税義務のある支払いであるため、遅れず支払うことが大切です。

担保を用意する

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として「担保」を用意しましょう。

中小企業が銀行融資を受ける場合、所有する不動産を担保として差し入れることなど求められます。

また、代表者が連帯保証人にとなる人的保証を求められることも一般的です。

資金体力が十分でない中小企業にお金を貸すことは、銀行にとってもリスクの高い行動となるため、リスクヘッジのために返済不能となったときに備えて担保を求めるといえます。

そのため銀行から融資を受けたいのなら、担保として差し入れることのできる資産など用意しておくと審査に通りやすくなるでしょう。

銀行融資以外の方法を検討する

銀行融資の審査に通らない場合、対処法として銀行融資「以外」の方法を検討しましょう。

資金調達の方法は、銀行融資だけではありません。

政府系金融機関から融資を受けることや、売掛債権を現金化するファクタリングなどもあります。

銀行融資以外の資金調達方法|全5種類のメリット・デメリットを徹底解説

まとめ

銀行融資の審査に通らないケースは、信用力や返済能力に不安があると判断されている状態です。

必要な金額などによるものの、資金調達の手段は銀行融資だけではありません。

たとえば保有する売掛債権を担保にするのではなく、売ってお金に換えるファクタリングも検討できます。

ファクタリングなら銀行融資の審査に通らないなど、信用力に不安があるときでも、信頼できる売掛先の売掛債権があれば利用できる可能性があるため、検討してみることをおすすめします。