法人の節税対策とは?脱税との違いや調整方法・対策18選をわかりやすく解説

法人の節税対策は、事業を継続させる上でも大切なことです。

株式会社や合同会社などの法人は法人税を納める義務があるものの、できる限り税負担を抑えることで、事業用の資金を多く確保しやすくなります。

そのため適切な方法で税負担を抑えることのできる節税対策を知っておくことは、法人が会社経営する上で重要なことといえるでしょう。

そこで、法人の節税対策について、脱税との違いや調整方法・対策18選をわかりやすく解説していきます。

法人税とは

「法人税」とは、法人の事業活動による所得に対して課税される税金です。

税金には、国に納める「国税」と都道府県または市町村に納める「地方税」がありますが、法人税は国税の1つに含まれます。

法人の納める税金は、法人税以外にも地方税に含まれる法人住民税と法人事業税があります。

法人税と法人住民税、法人事業税の3つをまとめて「法人税等」と呼びます。

法人税は、定款で定めた事業年度ごとに計算し、事業年度終了日の翌日から2か月以内に税務署に申告・納付が必要です。

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法人税が課税される所得

法人税が課税されるのは、益金から損金を引いた「所得」です。

「益金」とは法人税を計算するときの収益であり、商品を販売したときや資産を譲渡したとき、役務を提供したときの収益を指しています。

「損金」は、税法上認められた法人資産を減少させる原価・費用・損失などのうち、一定額を差し引いた額です。

法人税の課税対象となる所得は、以下の計算式で算出できます。

所得=益金(売上収入・売却収入)-損金(売上原価・販売費・損失費用)

益金と損金は法人税法上の考え方であるため、会計上の収益や費用と必ず一致するわけではありません。

収益から費用を差し引いた利益に、法人税法の規定による税務調整を行って、課税所得を算出します。

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法人の税務調整方法

「税務調整」とは、法人の会計上の利益をもとに、法人税の課税所得を計算するための調整です。

先にも述べた通り、法人税は法人税法上と会計処理上の考え方が異なるため、適正な損益計算のもとで利益を正しく把握するための税務調整が必要となります。

税法では公平に課税されることを重視するのに対し、企業会計では適正な損益計算を行うことで利益を正しく把握することを重視しています。

重視する部分の違いから、企業会計上は費用に含まれるのにもかかわらず、税法上は損金に計上できない費用などもあるため、そのズレを税務調整によりコントロールします。

税務調整が行われるのは、主に以下のケースです。

交際費 法人の場合の企業会計上の上限はないものの、法人税法上では中小企業の交際費を年間800万円超える部分について損金不算入としています。
寄附金 法人の寄附金は、内容によって法人税法上の損金上限額が変わり、損金上限額を超えた分は課税所得に加算されます。
減価償却費 法人の減価償却費として費用計上した金額で、損金として認められるのは法人税法上の償却限度額までであるため、償却限度額を超えた分は課税所得に加算されます。

節税と脱税の違い

「節税」と「脱税」を混同しがちといえますが、節税は税法のルール上で認められた行為により、納める税金を抑えることです。

これに対し脱税は、税法のルールでは認められていない行為を使い、意図的に納税を免れることといえます。

税負担を軽減させる行為が、正規のルールに沿って行われているかといった違いがあります。

架空の費用を計上するための領収書偽造や、申告するべき手続を怠っているなど、法令に逸脱した行為が脱税であり、罰則の対象です。

節税する理由は、合理的に税金を抑えることで、事業運営に使えるお金を増やすためといえます。

税を免れるための損金計上で無駄なお金を使い、会社のお金を減少させては意味がありません。

効果が期待できる法人の節税対策18選

法人の利益を増やすためには、適切な費用計上などで法人税の負担を抑えることが必要です。

主に法人の節税対策として効果が期待できるものは、次に紹介する18選といえます。

  1. 役員報酬の増額
  2. 法人名義の社用車所有
  3. 経営者宅の社宅化
  4. 経営セーフティ共済への加入
  5. 法人保険への加入
  6. 事務所家賃の前払い
  7. 福利厚生の拡充
  8. 決算賞与の実施
  9. 出張旅費規程の作成
  10. 赤字の繰り越し
  11. 貸倒引当金の損金計上
  12. 固定資産の修繕
  13. 不良在庫の処分
  14. 廃棄漏れの確認
  15. 少額減価償却資産の特例活用
  16. 税金等の未払い計上
  17. 別会社の設立
  18. 雇用促進税制の活用

それぞれの節税対策を説明します。

①役員報酬の増額

法人の節税対策として効果が期待できることとして、役員報酬を増額することが挙げられます。

役員報酬は賞与も含め、一定要件を満たすことにより損金計上できます。

現在の役員の報酬を増やすことや、新たな役員を追加することで役員報酬を増額でき、課税所得を減額できます

ただし、役員報酬の増額は、役員個人の所得税・住民税・社会保険料を増やすため、納税額が増えることはあります。

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②法人名義の社用車所有

法人の節税対策として効果が期待できることとして、法人名義の社用車を所有することが挙げられます。

法人名義の自動車を所有すれば、取得費用・維持費・保険料などが損金計上できます

ただし、社用車のプライベート使用に関して、利用規定作成のもと利用料を徴収するといった手続も必要です。

③経営者宅の社宅化

法人の節税対策として効果が期待できることとして、経営者の自宅を社宅として使うことが挙げられます。

経営者の自宅を役員住宅として扱えば、家賃のうち最低50%程度は経費として計上できます。

ただし対象物件を会社所有とする必要があるため、資金準備など早期に進めておきましょう。

また、一定の賃料を受け取ることが必要となりますが、その額は小規模住宅かそれ以外かによって計算方法が異なります。

④経営セーフティ共済への加入

法人の節税対策として効果が期待できることとして、経営セーフティ共済へ加入することが挙げられます。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)とは、取引先が倒産したときにその影響を受け、経営難に陥ったり連鎖倒産したりといったことを防ぐ制度です。

無担保・無保証人で、倒産したときの被害額と掛金総額の10倍のどちらか少ない金額を上限8千万円まで借入れできます。

取引先の倒産で売掛金が回収できなくなった場合などに備えて、資金調達手段として加入しておくと安心です。

詳しくは中小機構の公式サイト「経営セーフティ共済とは」を参考にするとよいでしょう。

⑤法人保険への加入

法人の節税対策として効果が期待できることとして、保険料の一部または全部を損金計上できる法人保険へ加入することが挙げられます。

保険として保障される以外にも、解約したとき返戻金を受け取ることができるなど、節税対策以外のメリットもあります

ただし税法の改正などで、法人向けの生命保険で行う節税対策は効果が薄くなっているため、加入後のシミュレーションをした上で検討しましょう。

⑥事務所家賃の前払い

法人の節税対策として効果が期待できることとして、事務所家賃を前払いすることが挙げられます。

事務所の家賃を一定条件のもとで前払いすると、「短期前払費用」として扱われ、損金計上できます。

本来、前払費用はサービスなどの提供を受けたときに経費として計上しますが、1年以内に提供されるサービスへの支払いは短期前払費用として計上可能であり、支払いの際にまとめて経費にすることができるメリットがあります。

ただし最初の1年しか効果がなく、翌期以降は前年同様に年払いすることが必要となるため、税金を繰り延べできる対策としての検討に留めておきましょう。

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⑦福利厚生の拡充

法人の節税対策として効果が期待できることとして、福利厚生を拡充することが挙げられます。

たとえば以下の方法で福利厚生を充実させれば、支払った費用を損金計上できます

社員旅行 社員旅行費用を福利厚生費で計上するためには、従業員一人あたり10万円以内、宿泊日数4泊5日以内、従業員の50%以上が参加などの条件を満たすことが必要です。
健康診断 従業員のうち一定年齢以上の希望者がすべて健診を受けることができる健康診断費用であれば損金計上できます。さらに希望者全員を対象とする人間ドック費用も損金に含まれます。
社宅 会社所有の不動産を従業員の社宅にすることで必要経費を損金計上できます。なお、従業員から一定の家賃(社宅の固定資産税の課税標準額や総床面積で計算)を徴収しなければ、賃料相当額が給与として課税されます。また、住宅手当の支給は給与となるため注意しましょう。
団体定期保険 従業員も加入できる団体定期保険を契約することで保険料を損金計上できます。
社内イベント 新年会・忘年会・送別会など、従業員を対象とする食事会などにかかった費用は一定要件を満たすことで損金計上できます。

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⑧決算賞与の実施

法人の節税対策として効果が期待できることとして、決算賞与を実施することが挙げられます。

決算前後に支給した賞与も損金計上できます。

業績が上がり、想定していたよりも利益を得たときなどに実施されることが多い決算賞与ですが、未払いでも以下の要件を満たせば当期の損金として扱うことができます

  • 賞与支給額を従業員全員に同時期に通知している
  • 決算から1か月以内に通知した金額を従業員全員に支払っている

決算賞与は社員のモチベーションアップにもつながるため、実施するとよいでしょう。

⑨出張旅費規程の作成

法人の節税対策として効果が期待できることとして、出張旅費規程を作成することが挙げられます。

出張が多く発生する場合、交通費・宿泊費などの費用を経費計上できるように、出張旅費規程を定めておきましょう。

出張の定義・交通費規程など、何に対して利用可能な金額など細かく定めておくことが大切です。

⑩赤字の繰り越し

法人の節税対策として効果が期待できることとして、赤字を繰り越すことが挙げられます。

赤字を翌年度以降に繰り越すことで翌年度以降の所得と相殺が可能です。

法人であれば10年は繰り越しが可能であり、所得金額の50%を限度に損金算入できます。

⑪貸倒引当金の損金計上

法人の節税対策として効果が期待できるのは、貸し倒れ引当金を損金計上することです。

回収が見込みのない売掛金は貸倒引当金として計上することで損金として扱うことができます

ただし貸倒引当金には繰越限度額があることは注意してください。

⑫固定資産の修繕

法人の節税対策として効果が期待できることとして、固定資産を修繕することが挙げられます。

現状維持のための修繕であれば、修繕費用のすべてを損金計上できます

資産価値を高める修繕の場合は、資本的支出として扱われることになり、減価償却が必要となるため注意してください。

⑬不良在庫の処分

法人の節税対策として効果が期待できることとして、不良在庫を処分することが挙げられます。

売れずに残った在庫を処分したとき、原価よりも安く売ることになり、売却損が発生すればその額を損金計上できます

売却できずに廃棄した場合の廃棄損であれば、全額損金計上可能です。

ただしいずれも損金算入に関する一定の基準があるため、要件を確認しておきましょう。

⑭廃棄漏れの確認

法人の節税対策として効果が期待できることとして、廃棄漏れを確認することが挙げられます。

支払いが次期以降の未払費用を当期に損金計上できれば、納税額を節税できます

未払費用として計上するケースとして、以下が挙げられます。

  • 従業員の給与・賞与(当期が締日で支払いは次期の給与・賞与)
  • 固定資産税(市町村から課税通知済の固定資産税)

⑮少額減価償却資産の特例活用

法人の節税対策として効果が期待できることとして、少額減価償却資産の特例を活用することが挙げられます。

青色申告の中小企業者等で、常時使用する従業員の数が500人以下の場合、30万円未満の減価償却資産を一括で費用計上できます。

ただし20万円以上の資産については、300万円までを限度とします。

詳しくは、国税庁の公式サイト「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を参考にするとよいでしょう。

⑯税金等の未払い計上

法人の節税対策として効果が期待できることとして、税金などを未払い計上することが挙げられます。

資金的な事情で支払いが遅れている社会保険料・労働保険料の未払い分は、その年の費用として計上できます

固定資産税の支払い分は、経理処理を簡略化することを目的とし、納めた事業年度に費用計上されることが多いといえますが、実際には賦課決定のあった事業年度に計上することもできます

納税通知書がすでに届いている未払い分は、その年の費用に計上できるため、活用するとよいでしょう。

⑰別会社の設立

法人の節税対策として効果が期待できることとして、別会社を設立することが挙げられます。

子会社やグループ会社を設立すれば、以下の制度等の適用で節税につながる可能性があります。

  • 軽減税率の適用
  • 消費税免除
  • 特例の適用効果

ただし別会社の設立は、業績が伸び経営が順調な場合でなければ検討できないため、節税対策のみを理由に無理な法人設立はおすすめできません。

そもそも節税対策のみを目的とした別会社設立は、租税回避となり脱税とみなされることもあるため注意してください。

⑱雇用促進税制の活用

法人の節税対策として効果が期待できることとして、雇用促進税制を活用することが挙げられます。

一定の地域で無期・フルタイムの雇用者を1人増やせば、法人税から一定割合が税額控除される制度です。

事業拡大を検討している場合などに活用しやすい制度といえますが期限などがあるため、厚生労働省の公式サイト「雇用促進税制」などで確認しておきましょう。

法人の節税対策のポイント

法人が節税対策を行う場合、時期などでとるべき行動など変わってきます。

そこで、法人の節税対策においては以下の5つをポイントとして押さえた上で実行しましょう。

  1. 納税・節税計画を立てる
  2. 節税対策の漏れを確認
  3. 会計状況を把握できる資料を用意する
  4. ペーパーカンパニー設立はしない
  5. 専門家に相談する

それぞれのポイントを説明します。

納税・節税計画を立てる

法人の節税対策のポイントとして、納税・節税計画を立てることが挙げられます。

年間の納税スケジュールを確認し、いつどのくらいの税金を納めなければならないか把握しておくことで、納税資金不足に悩まされることはなくなります。

また、節税する必要のある税金の種類も見極めやすくなるでしょう。

節税対策の漏れを確認

法人の節税対策のポイントとして、節税対策の漏れはないか確認することが挙げられます。

特に確認しておきたいのは以下の3つです。

  • できるけれどやっていない節税対策はないか
  • 自社独自の節税対策はないか
  • 実行または反映が漏れている節税対策はないか

会計状況を把握できる資料を用意する

法人の節税対策のポイントとして、会計状況を把握できる資料を用意することが挙げられます。

税務調査で帳簿などを確認されたとき、指摘されても納得させることのできる根拠資料を用意しておきましょう。

経営管理資料を別途作成しておくと、1年間の会計資料だけではなく月次の予算管理や経費管理などで、会計状況がより把握しやすくなります。

財務状況の把握・分析により、新たな節税対策を発見できる可能性もあるため、できる限り細かいものを作成することをおすすめします。

ペーパーカンパニー設立はしない

法人の節税対策のポイントとして、ペーパーカンパニーは設立しないことが挙げられます。

ペーパーカンパニーとは、事業実態のない会社であり、登記簿など書類の上のみで存在する会社です。

発生した利益をペーパーカンパニーに分散させることで、税負担を軽減させることはできます。

ペーパーカンパニー自体は違法ではないものの、実際にはグレーゾーンであり、今後は規制強化などで脱税と判断される恐れが高いため、節税で利用しないことが望ましいといえます。

専門家に相談する

法人の節税対策のポイントとして、専門家に相談することが挙げられます。

節税なのか、それとも脱税に該当するか、その判断基準は「悪質性」や「故意性」などが含まれます。

経営者本人は脱税ではないと考えていても、実際には脱税や過少申告とみなされることもあるため、税理士などの専門家に相談したほうが安心です。

顧問税理士がいないときや、解決方法に悩む場合などは、総合的な面で事業支援を行う経営コンサルティングを活用することをおすすめします。

まとめ

法人の節税対策は、主に以下の3つに分けることができます。

  • 益金を減らす
  • 損金を増やす
  • 特別控除制度を利用する

益金を減らす節税方法は多くないため、実際には損金を増やすか、特別控除制度を利用するための以下の方法が活用しやすいでしょう。

  • 控除制度などを利用して納税額を抑える
  • コスト削減による節税を検討する
  • 設備・環境整備などの消費活用または投資を行う

法人の節税対策の多くは中小企業を対象としていることが多く、特に少額減価償却資産の特例を活用することや、決算賞与の実施などはその対象と考えられます。

売れない在庫や固定資産を処分することや、固定資産税の未払い分を計上することなどもあわせて検討し、判断が難しい場合などは経営コンサルタントなど専門家に相談することをおすすめします。