「売掛金元帳」とは、取引先ごとに売掛金を管理する補助簿です。
「得意先元帳」や「得意先帳簿」と呼ばれ、売掛金が増減する取引が発生したときには、総勘定元帳の「売掛金勘定」と一緒に記帳することになります。
売掛金の回収漏れを防ぐための管理においては、売掛金元帳を作成し、記帳していくことが重要です。
そこで、売掛金元帳について、回収・管理における重要性やメリットをわかりやすく解説していきます。
目次
売掛金元帳とは
「売掛金元帳」とは、売上代金が売掛金となった場合、その発生や回収状況を取引先ごとに記録・管理する帳簿です。
事業を営んでいれば色々な取引が発生しますが、その中で売掛金に関する取引のみを日付順に記録していきます。
売上を上げても、売掛金のまま残った状態では手元の現金は増えません。
そこで、取引先ごとの売掛金の発生と回収状況をすぐに把握できるように、売掛金元帳を作成しておきます。
売掛金の回収漏れを防ぐ上で重要な帳簿といえますが、次の2つを確認した上で作成しましょう。
- 記載する項目
- 売掛金元帳以外の帳簿との違い
それぞれ説明します。
記載する項目
売掛金元帳は、取引先ごとに発生した取引順でその内容を記録していきます。
総勘定元帳の売掛金勘定の内訳明細をあらわす帳簿であり、補助簿の中の補助元帳の1つとして扱われています。
その売掛金元帳に記載する項目は以下のとおりです。
- 取引日
- 商品名
- 個数
- 単価
- 売上金額(個数×単価)
- 売掛金回収の受入金額
- 売掛金残高
売掛金元帳以外の帳簿との違い
会計処理を行う上で、売掛金元帳以外にも次のような帳簿を作成します。
- 総勘定元帳
- 買掛金元帳
- 補助元帳
- 売上台帳
売掛金元帳との違いを理解するため、それぞれどのような理由で作成するのか確認しておきましょう。
総勘定元帳
「総勘定元帳」とは、すべての取引を勘定科目ごとに管理する帳簿です。
売掛金においては、発生と回収のたびに「売掛金勘定」に記帳し、同時に売掛金元帳にも記帳することになります。
買掛金元帳
「買掛金元帳」とは、仕入先ごとの買掛金の増減を管理する補助元帳です。
売掛金元帳は販売先の売掛金の増減を記録するのに対し、買掛金元帳では掛取引による仕入で発生し、まだ払っていない買掛金を管理するために作成します。
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補助元帳
「補助元帳」とは、特定の勘定科目を取引先・品目ごとに分けて記録する帳簿です。
売掛金元帳は、補助元帳の1つとして扱われています。
売上台帳
「売上台帳」とは、売上の取引に限定し集計した帳簿です。
売上にかかわる情報をまとめるために作成する帳簿であるため、売上日付・商品内容・販売数・単価・売上金額・売上合計など、売上に関する情報を記録します。
主に飲食店や小売店など、現金取引による事業で用いることの多い帳簿です。
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売掛金発生から管理までの流れ
売掛金は、商品やサービスを販売したとき、その代金を購入者側からその場で受け取っておらず、後日入金される予定の代金です。
後払いの掛取引によって発生する売掛債権であり、売上は確定しているものの未入金状態の代金といえます。
そのため売掛金が発生し、入金されるまでの管理における流れは、主に次の4つです。
- 請求書を発行・送付する
- 売掛金元帳に記入する
- 売掛金が入金されたか確認する
- 売掛金の消込・元帳に記入をする
それぞれの流れについて説明します。
請求書を発行・送付する
売掛金が発生したときは、販売先に売上代金に関する請求書を発行し、送付しましょう。
販売先との契約において取り決めた締め日に発行することになるため、取引開始の際に営業担当者を通して認識をすり合わせておく必要があります。
また、契約内容によるものの、取引発生の都度に個別で請求書を作成してほしいといった要望を受けることもあるため、互いの認識に差異が出ないように注意しておく必要があります。
売掛金元帳に記入する
売掛金が発生した後は、売掛金元帳にその内容を記入しましょう。
売掛金元帳には、総勘定元帳の売掛金勘定に記帳すると同時に記すことになります。
その上で、取引先の代金支払い方法が振込であれば、どの口座に入金するのか確認しておきましょう。
取引が発生した日付を記載し、摘要欄には売上・回収など、何の取引があったのか簡潔に記載します。
納品書番号やいつの回収分か記載することで、未回収等をより防ぎやすくなるでしょう。
売掛金が入金されたか確認する
期日までに販売先から売掛金が入金されたら、どの取引先からいつの取引分の代金が入金されたのか、請求書額と入金額は合致しているか確認しましょう。
売掛金の消込・元帳に記入をする
取引先と振込名義人、売掛金と入金額が一致していれば入金消込を行います。
案件ごとの入金消込が必要となるため、ミスすることなく手続しましょう。
売掛金元帳を作成するメリット
売掛金元帳は、売掛金を管理する上で欠かせない帳簿といえますが、作成することによるメリットは主に次の2つです。
取引先ごとに売掛金を管理できる
会計業務を効率化できる
それぞれどのようなメリットがあるのか説明します。
取引先ごとに売掛金を管理できる
売掛金元帳を作成することで、取引先ごとの売掛金管理が可能となり、請求や回収の漏れを防ぐことができます。
掛取引では、先に売上を計上し、後でその代金が入金されます。
その時間差により、売上分を回収できているかわからなくなってしまうと、商品を販売しているのに代金が支払われてない状況のままとなり、時効が成立すれば請求できなくなってしまいます。
どのくらい売掛金が発生しているかについては総勘定元帳でも確認できるものの、取引先ごとの売掛金まで把握できません。
取引先ごとの売掛金の発生・回収を適切に管理するためにも、売掛金元帳を作成することが重要です。
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会計業務を効率化できる
売掛金元帳を作成することで、会計業務を効率化できます。
売掛金に関する業務が円滑化されるため、会計処理における作業自体が効率的に進むようになるでしょう。
未回収を防ぎ、確実に売掛金を回収するためにも、売掛金元帳を作成することが重要です。
売掛金の効率的な管理方法
売掛金元帳を作成し、管理しなければならない帳簿を増やしたくないという経理担当者もいます。
現在はパソコンで会計ソフトに入力し、帳簿を作成する事業者がほとんどといえるものの、まだ紙媒体で帳簿を作成しているケースもあるからです。
しかし紙媒体での帳簿作成は、転記ミスなども起こりやすく、記載漏れなどで未回収の売掛金を発生させかねません。
そのようなミスを防ぐためにも、次の2つのデジタル技術等を使った売掛金管理を行うことが望ましいといえます。
- エクセルで管理表を作成する
- 会計ソフトを活用する
それぞれの管理方法について説明します。
エクセルで管理表を作成する
売掛金は、パソコンでエクセル(Excel)活用をした管理表作成でも適切な管理が可能です。
取引先ごとに売掛金に関するデータを入力します。
また、より効率的に作業を進めていくのなら、既存のシステムからCSV形式でデータを取り込むとよいでしょう。
売掛金管理表を作成する際の項目も、売掛金元帳と同じです。
また、入金済の売掛金についてはチェックできるように「☑」項目も作成しておくとよいでしょう。
取引先件数が多い場合は、判別番号を振って番号を入力することで取引先ごとの売掛金が表示される関数なども組むとよいですが、知識がないと作成が難しいためシンプルな管理表でも問題ありません。
会計ソフトを活用する
売掛金は、会計ソフトを活用するとより簡単に管理できます。
すでに多くの会計ソフトで売掛金元帳が利用できるようになっているため、取引先ごとの入出金の状況を把握することが可能です。
クラウド型の会計ソフトなどの場合、入金額や出金額を入力することで、そのまま売掛金管理を可能とする機能が備わっているシステムもあります。
ただし売掛金管理が主な目的で作られたソフトではないたえ、補完的にエクセルを使うことで、より管理を強化できるといえるでしょう。
まとめ
売掛金元帳は、取引先ごとの売掛金の発生や回収を管理するために重要な帳簿です。
まだ回収していない売上代金が回収されないまま、貸倒れになることは避けなければなりません。
そのため売掛金元帳を作成し、得意先との間で取引が発生する都度、しっかりと記帳していきましょう。
売掛金元帳による売掛金管理を行うことで、請求書作成や支払催促などもスムーズに行うことができるようになります。
販売先から入金されたときの消込にも役立つため、会計処理業務を効率化することにもつなげることができるでしょう。