法人が納める国税には、法人税と法人地方税がありますが、違いがわからないまま支払っていないでしょうか。
会社として事業を始める上で、納税する必要がある法人税等には、法人税・法人事業税・法人住民税など種類があるものの、地方法人税は2014年に新設された税金です。
法人税を納めている法人は、地方法人税も課税されることになるため、納税義務を負います。
そこで、法人税と地方法人税の違いや計算の仕方、納付期限・納付方法について詳しく解説していきます。
目次
法人税等とは
「法人税等」とは、法人税その他利益に関係する金額を課税標準とした税金であり、次の税金が含まれます。
- 法人税
- 法人事業税
- 法人住民税
それぞれの税金について説明していきます。
法人税
「法人税」は、法人の課税所得にかかる税金であり、国税の1つです。
株式会社や有限会社など一般的な法人に対する税率は、所得や会社規模に応じた2段階に分けられ適用されます。
たとえば資本金1億円以下の中小法人の場合、以下の税率となります。
- 年800万円以下の所得部分…15%
- 800万円超部分…23.2%
所得に対して課税されるため、赤字であればかかりません。
法人事業税
「法人事業税」とは、法人の事業自体に課される税金であり、所得に対して課税されます。
事業活動を行う上で利用する各種行政サービスの必要経費を分担する目的で制定されている税金であるため、納税分は次の事業年度で損金算入できます。
適用される税率は、法人の種類・事業区分・資本金・所得・都道府県などに応じて、軽減税率・標準税率・超過税率のいずれかが適用されます。
都道府県に事業所があれば納税義務者となるものの、すべての法人が納税義務を負うわけではありません。
納税義務の有無については、以下の法人の種類で分けられます。
法人の種類 | 法人格 | 納税義務の有無 |
普通法人 | 株式会社・特例有限会社・合名会社・合資会社・医療法人など | あり |
公益法人 | 財団法人・社団法人・学校法人・宗教法人など | あり |
協同組合等 | 信用金庫・農業協同組合・労働者協同組合など | あり |
人格のない社会団体 | 同窓会・PTAなど | 収益事業を行わない限りは納税義務がない |
公共法人 | 国立大学法人・国民金融公庫・地方公共団体など | なし |
たとえば学校のPTAや同窓会などで会費を支払うこともあるでしょう。
この場合、PTAや同窓会が収益性のある事業を行っている場合には課税されることはあるものの、単に会費を集めているのみであれば対象ではありません。
また、国立大学法人や地方公共団体など、公共法人は納税義務がないため、事業運営や収益発生の有無に関係なく非課税として扱われます。
法人住民税
「法人住民税」とは、事業所の所在地である自治体に対して支払う地方税です。
都道府県民税と市町村民税があり、次の2つで構成されています。
- 法人税割
- 均等割
それぞれ説明していきます。
法人税割
「法人税割」とは、法人税額を基準とした税率で計算し、課税される税金です。
そのため法人税の納税義務がない場合には、法人税割も発生しません。
また、法人税割の税率は、国が目安として以下の「標準税率」を定めているものの、自治体ごとに自由に設定できます。
都道府県税=法人税額×1.0% 市町村税=法人税額×6.0% |
そのため標準税率の一定基準を超える法人については、超過税率を適用する自治体もあるため確認しておきましょう。
均等割
「均等割」とは、資本金額や従業者数など、会社規模によって税額が変わる税金です。
都道府県民税の場合、資本金等の金額で税額が区分されます。
市町村民税では、資本金等の金額だけでなく従業者数も税額に関係します。
資本金等の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割(従業者数50人超) | 市町村民税均等割(従業者数50人以下) |
1千万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
1千万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
50億円超 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
法人税割は法人税の納税義務がなければ課税されないのに対し、均等割は課税所得に関係なく計算されます。
そのため、赤字で法人税を納める必要がなかったとしても、均等割は納税することが必要です。
地方法人税とは
「地方法人税」とは、法人税の1つであり、会社の課税所得に対してかかる税金であり、法人税額に「10.3%」の税率を乗じることで算出できる税金です。
地方財源の偏りをなくし、納税額の地域格差を調整することを目的として制定されました。
名称に「地方」とあるため、地方自治体に納める税金と思われがちですが、国税であるため国に納めます。
従来までは地方税を自治体に納めていたものの、その一部を国に納税するように変更されています。
法人が国に地方法人税を納めた後、国からそれぞれの自治体に地方交付税として交付する財源となります。
法人税と地方法人税の違い
法人税と地方法人税はどちらも国税ですが、主な違いとして次の2つが挙げられます。
- 使い道
- 計算方法
それぞれの違いについて説明していきます。
使い道
法人税と地方法人税の大きな違いとして、税金の使い道が挙げられます。
法人税は国債費や社会保障関係費として使われるのに対し、地方法人税はそれぞれの地方自治体に交付金として分配されるという違いがあります。
計算方法
法人税と地方法人税は、計算方法も違います。
法人税は、以下の計算式で算出します。
法人税額=課税所得×法人税率-控除額 |
法人税率は、先に説明したとおり所得や会社の規模によって異なる割合が適用されます。
詳しくは、国税庁の公式サイト「No.5759 法人税の税率」を参考にするとよいでしょう。
また、課税所得は、収益から費用を差し引いた企業会計上の税引前当期利益とは必ずしも一致しません。
益金から損金を差し引いた法人税法上の所得を意味するため、当期利益から次の加算・減算をした上で算出します。
加算 会計上は費用であるものの税務上は損金としないものを加える(一部引当金の繰入・一定額を超える交際費・寄付金・法人税等など)
減算 会計上は費用ではないものの税務上は損金とするものを差し引く(欠損金の繰戻還付・減価償却超過額の当期認容額・受取配当等など)
地方法人税の計算方法は、以下のとおりです。
地方法人税=法人税額×税率(10.3%) |
地方法人税は法人税額を基準として算出するため、先に法人税額を割り出すことが必要となります。
法人事業税と法人住民税の違い
法人が納める法人税等は、法人税以外にも法人事業税と法人住民税がありますが、この2つの税金の違いは以下のとおりです。
- 課税対象
- 分割基準
- 納税先
- 納税義務
- 損金算入
それぞれの違いについて説明していきます。
課税対象
法人事業税と法人住民税は、課税される対象が異なります。
まず法人事業税は、会社の事業に対して課税される税金です。
これに対し法人住民税は、地域社会の一構成員として会社そのものに課されます。
分割基準
法人事業税は、業種の特徴を考慮しつつ、従業員数など様々な分割基準が設けられています。
これに対し、法人住民税は従業者数のみが基準であるといった違いがあります。
納税先
法人事業税と法人住民税はどちらも地方税ですが、納税先が異なります。
法人事業税は事業に対して都道府県に納める税金です。
対する法人住民税は、会社が地域の一構成員であるという考え方であるため、東京23区を除いては都道府県と市町村のそれぞれに納めます。
納税義務
法人事業税と法人住民税は、納税義務についても違いがあります。
まず法人事業税は、赤字の場合や収益事業を行わない公益法人などは納税義務がありません。
対する法人住民税は、赤字の場合でも会社を運営していれば納める義務があり、所得に関係なく均等割を支払うことが必要です。
損金算入
法人事業税と法人住民税は、納めた税金の損金算入についても違いがあります。
まず法人事業税は、納税分を次の事業年度で損金に算入できますが、法人住民税は損金算入できません。
なお、法人税についても納めた分を損金算入できないとされています。
法人税・地方法人税の納付期限
法人税と地方法人税はどちらも国税であり、納付期限はどちらも決算日翌日から2か月以内です。
どちらも同じ書面を使って確定申告するため、いずれか一方のみを納めることはできないことは理解しておきましょう。
法人税・地方法人税の納付方法
法人税と地方法人税は、決算期の前後に税務署から送られてくる納付書で納めます。
金額欄が空欄の場合、決算申告するときに金額を記入して納めるようにしてください。
なお、納付方法としては次の4つがあります。
- 現金
- 電子納付
- ペイジー
- クレジットカード
それぞれの納付方法について説明します。
現金
法人税と地方法人税は、金融機関や管轄の税務署で現金による支払いができます。
申告書を税務署窓口に提出したとき、同時に税金を納めることができるため、後日訪問する必要がなく手間を省くことができるでしょう。
ただし金融機関や税務署は、営業時間や開庁時間が限られていることは注意が必要です。
また、納税額が30万円以下である場合には、事前に国税庁ホームページからQRコードを作成するか、税務署にバーコード付の納付書を依頼することでコンビニでの納付も可能です。
電子納税
窓口に出向くことが煩わしい場合、オンラインでも納付できます。
国税庁の公式ホームページにアクセスし、電子納税システム「e-Tax」のフォームで確定申告を利用登録することで、納付手続が可能です。
簡易な操作で税金を納めることができるのはメリットである反面、24時間使用できないことはデメリットといえます。
なお、2016年からはマイナンバー制度が導入されたことにより、申告書には法人番号を記載することが必要となっています。
ペイジー
ATMやネットバンキングから納めることもできますが、振込ではなく「ペイジー(税金・各種払込)」で手続しましょう。
ペイジー(Pay-easy)とは、請求書などに通知されている番号を入力することで自動的に支払い金額が表示され、簡単な操作で支払いができるシステムです。
e-Taxで登録申請情報が必要となることと、納付書の控えを受け取れないことは注意が必要といえます。
金融機関によって異なるものの、国税の納付については次の納付情報が必要となります。
- 収納機関番号(国税庁の収納機関番号「00200」)
- 納付番号(e-Tax申請による利用者識別番号)
- 確認番号(e-Tax申請による納税用確認番号)
- 納付区分(e-Tax申請による納付区分番号)
クレジットカード
法人の納める税金の中で、国税(法人税・地方法人税・消費税・各種加算税・延滞税)はクレジットカードによる納付も可能です。
この場合、専用サイト「国税クレジットカードお支払サイト」から手続することが必要となります。
納付情報とクレジットカード情報を入力し、手続を行うことで支払い完了となります。
24時間いつでも納付できるため便利な方法であり、利用明細書によって納税額を一元管理できることもメリットですが、1万円ごとに76円手数料がかかります。
まとめ
法人税は、会社経営で稼いだ所得に対して課税される税金です。
法人の所得金額は益金額から損金額を差し引いた金額となりますが、益金は商品などの売上収入・土地などの売却収入などで、損金は売上原価・販売費・災害損失など費用や損失になどです。
地方法人税は法人税の1つともいえ、地方財源が偏らないようにするために作られました。
これまで地方自治体に納めていた地方税の一部を国に納め、地方法人税として支払われた税金から、国がそれぞれの自治体に交付する流れとなります。
どちらも所得に対してかかる国税でありながら、徴収する目的に違いがあるといえます。
地方法人税額は法人税額に10.3%をかけて算出するため、法人税を先に割り出さなければ税額はわかりません。
納付方法は、金融機関や税務署で直接納める方法や、オンラインやクレジットカードなどいろいろあります。
法人税等の確定申告と納税の期限は、事業年度終了日の翌日から2か月以内という決まりがあります。
もしも納期限に法人税を納めることができず、滞納してしまった場合には次のような影響を受けることになります。
- 延滞税が発生する
- 税務調査の対象になる
- 社会的信用力が低下する
- 銀行融資を受けられなくなる
- 財産差し押さえで事業が停止する
遅れず支払うようにしましょう。