個人事業主でもファクタリングは使える?利用時の7つのポイントを解説

個人事業主でもファクタリングを資金調達に活用したいと考えるケースはめずらしくありませんが、実際には中小企業など法人向けのイメージが強い印象です。

しかし個人事業主やフリーランスでも、条件さえ合えばファクタリングで資金を調達することはできます。

そこで、個人事業主でも本当にファクタリングを利用できるのか、利用するときのポイントについて解説していきます。

個人事業主でもファクタリングは利用可能

ファクタリングとは、個人事業主や中小企業などが保有している売掛債権を、ファクタリング会社に売却して現金化する資金調達のサービスです。

そのため個人事業主でも、売掛債権である売掛金を保有しているのなら、ファクタリングを利用することはできます。

通常、売掛債権である売掛金は、売掛先と事前に取り決めた期日にならなければ支払ってもらえず、現金化まで時間がかかります。

しかしファクタリングを活用することによって、入金される期日までの1〜2か月という期間を短縮することが可能です。

売上は上がっていて入金される予定の売掛金はあるものの、現金として入金されるまで数か月待たなければならないという場合、厳しい資金繰りをクリアするための方法としてファクタリングが注目されています。

特に資金力が中小企業よりも劣る個人事業主の場合、資金繰りが厳しくなることはめずらしくないため、早く売掛金を入金してほしいと考えてしまうこともあるでしょう。

売掛先に頼んで早めに入金してもらうこともできるでしょうが、資金繰りが厳しいことを相手に知られてしまいます。

ファクタリングであれば、売掛先に知られることなく、困窮している資金繰りは隠したまま売掛金を現金化することが可能です。

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ファクタリングの種類

 

個人事業主が利用できるファクタリングには、次の2つの種類があります。

  1. 2社間ファクタリング
  2. 3社間ファクタリング

それぞれ種類ごとの仕組みについて解説していきます。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングとは、

  • 個人事業主など利用者
  • ファクタリング会社

の2者が契約を結べば完結するファクタリングです。

売掛先に対し、ファクタリング会社に売掛金を譲渡することを伝えにくいと感じる個人事業主もいるでしょうが、その必要はありません。

利用者である個人事業主はファクタリング会社に売掛金の売却代金を受け取った後、債権の期日に売掛先から売掛金を回収し、そのままファクタリング会社に支払う流れとなります。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングは、

  • 個人事業主など利用者
  • ファクタリング会社
  • 売掛先

の3者で契約するファクタリングです。

そのため売掛先には、個人事業主からファクタリング会社に債権譲渡することを伝え、承諾を得ることが必要になります。

個人事業主がファクタリング会社から買い取り代金を受け取った後、債権の期日には売掛先からファクタリング会社に直接売掛金が支払われます。

2社間ファクタリングでは個人事業主がファクタリング会社に代わって売掛金を回収しなければなりませんが、3社間ではこの流れが必要ありません。

そのためファクタリング会社は、途中で個人事業主に回収した売掛金を使い込まれることも何かの支払いに流用されるリスクは防げます。

さらに売掛先に対し、本当に売掛金が存在しているのか確認することも可能です。

ファクタリング会社にとってリスクの低い契約となるため、3社間ファクタリングは2社間よりも手数料が低く設定されることがメリットといえます。

ファクタリングの流れ

個人事業主がファクタリングを利用した場合、主に次の5つの流れで売掛金を現金化することになります。

  1. 相談
  2. 必要書類提出
  3. 審査・見積もり
  4. 契約
  5. 入金

それぞれの流れを説明していきます。

①相談

まずはファクタリング会社に相談することが必要です。

方法はインターネットの公式サイトにフォームが用意されていることもあれば、電話やメールなどいろいろあります。

中にはファクタリングを装う悪徳なヤミ金融業者も紛れている可能性があるため、信頼できる業者にコンタクトを取るようにしてください。

②必要書類提出

ファクタリングの申し込みには、

  • 決算書(個人事業主は確定申告書)2~3期分
  • 請求書
  • 取引履歴の確認できる通帳の写し
  • 身分証明書(運転免許証など)

が必要になります。

売掛先との基本契約書などもあるとよいでしょう。

特に個人事業主の場合、法人よりも社会的な信用力が低いため、本当に売掛金が存在しているのか証明する書類はできるだけ多いほうがよいといえます。

③審査・見積もり

相談・申し込み後にファクタリング会社が審査を行い、その後、売掛金の買取可否やどのくらいの金額で買取可能か見積もりを出してもらいます。

審査では売掛債権の信用力が重視されることとなり、実際に売掛先から入金されるまでの期間や債権額など様々なことを考慮した上で手数料が決まります。

④契約

ファクタリング会社から提示された見積もりに双方が納得すると、いよいよ契約を締結することになります。

2社間ファクタリングではこの時点で契約ですが、3社間ファクタリングの場合には売掛先に対する通知や承諾が必要となるため、契約までにある程度の時間がかかることは留意しておきましょう。

⑤入金

契約完了後、2社間ファクタリングであれば売掛債権から手数料を差し引いた金額が個人事業主の指定した銀行口座に入金となります。

その後、売掛先から期日に売掛金の支払いを受けたら、そのままファクタリング会社に送金して完了です。

3社間ファクタリングの場合、売掛金の回収はファクタリング会社が行うため、売掛金の売却代金が入金されれば終了となります。

個人事業主におけるファクタリング利用時の7つのポイント

個人事業主がファクタリングを利用する場合、個人事業主だからこそといえる次の7つのポイントを押さえた上で契約しましょう。

  1. 債権譲渡登記なしで利用可能な業者を選ぶ
  2. 少額債権買取に積極的な業者を選ぶ
  3. 償還請求権の有無を確認する
  4. 入金スピードのはやい業者を選ぶ
  5. 手数料には注意する
  6. 契約方法を確認する
  7. 信用力の高い売掛金を売却する

それぞれ説明します。

①債権譲渡登記なしで利用可能な業者を選ぶ

個人事業主の場合、債権譲渡登記なしで利用できるファクタリング会社を選ぶことが必要です。

債権譲渡登記は、主に2社間ファクタリングでファクタリング会社から求められる登記制度ですが、その理由は他にも債権の権利者を主張する者があらわれたときに困るからといえます。

二重に債権が譲渡されることを防ぐため、誰が債権の権利者か証明するために債権譲渡登記を求められることとなりますが、この登記制度は法人しか利用できません。

そのため2社間ファクタリングを利用するときに、債権譲渡登記を必須とするファクタリング会社では、個人事業主は契約できないということを意味します。

②少額債権買取に積極的な業者を選ぶ

個人事業主がファクタリングを利用する場合、少額債権買取に積極的な業者を選ぶようにしましょう。

法人と違って、個人事業主が保有する売掛金は額も小さいことがほとんどです。

ファクタリング会社が負担するファクタリング契約における経費は、債権の金額に左右されずほぼ変わりません。

そのため同じ手間でできるだけ多く利益を出したいと考えるのなら、買い取る債権額は大きいほうが望ましいといえます。

買取可能とする金額に下限を設けているファクタリング会社もあるため、売掛金の額が低ければ利用できないケースもあると留意しておき、少額債権でも可能なファクタリング会社を選ぶようにしましょう。

③償還請求権の有無を確認する

個人事業主がファクタリングを利用する場合には、償還請求権の有無を確認するようにしてください。

償還請求権の有無によって、万一ファクタリング利用後に売掛先が倒産し、売掛金が回収できなくなったときにその責任を誰が負うか変わってきます。

仮に償還請求権ありの契約を結んでしまうと、未回収となった売掛金の弁済義務は利用者が負うこととなってしまいます。

償還請求権ありの契約のほうがファクタリング会社のリスクは抑えることができるため、手数料は低く抑えることはできるものの、この場合の契約は融資とみなされるため貸金業登録している業者でなければ扱うことができないことも特徴です。

もしも貸金業登録済でない業者が償還請求権ありで契約を結ぼうとする場合、その相手はヤミ金融業者であるため、絶対に契約しないようにしてください。

④入金スピードのはやい業者を選ぶ

個人事業主がファクタリングを利用する場合、入金スピードのはやい業者を選びましょう。

ファクタリング会社によって、売掛金を買い取り入金されるまでのスピードはバラバラです。

2社間ファクタリングの場合、即日や3営業日以内など早めであることが特徴ですが、やはり業者によって異なります。

いつまでに資金が必要なのか、そのタイミングまでに入金してくれるファクタリング会社を選ぶようにしましょう。

⑤手数料には注意する

個人事業主がファクタリングを利用する場合、手数料には注意するようにしてください。

ファクタリング利用で発生する手数料はファクタリング会社ごとに異なりますが、中には法外な手数料を請求するケースもあります。

初めて利用する場合には、ファクタリング会社もリスクを負わなければならないため、手数料は高めに設定される傾向が見られます。

特に個人事業主の場合、法人のように登記簿などで事業実態の確認ができないことなども踏まえて、手数料は高くなりがちです。

ただ、長期的な継続利用で期日に遅れず支払いができている場合などは、手数料も下がる可能性があります。

⑥契約方法を確認する

個人事業主がファクタリングを利用する場合、契約方法は確認するようにしましょう。

遠方で窓口までいけないという場合でも、オンラインで手続できるファクタリング会社も増えています。

郵送や出張対応など、いろいろな方法で手続できるケースが多いため、ニーズに合った契約方法は可能か確認してみてください。

⑦信用力の高い売掛金を売却する

個人事業主がファクタリングを利用する場合、信用力の高い売掛金を売却するようにしましょう。

ファクタリングの審査では、何よりも売掛金の信用力が重視されます。

個人事業主は法人よりも社会的な信用力が劣るといえますが、その分、信用力の高い売掛先の債権があれば審査では有利になると考えられるでしょう。

ファクタリングの注意点

ファクタリングは個人事業主でも利用できる資金調達の方法ですが、次の5つには注意が必要です。

  1. 手数料は審査で決まる
  2. 売掛債権額面までの調達金額に留まる
  3. 回収後は速やかに一括で支払いが必要
  4. 給与ファクタリングは利用しない
  5. 契約書控えは必ず受け取る

それぞれの注意点について説明します。

手数料は審査で決まる

個人事業主がファクタリングを利用する場合、手数料はあくまでも審査で決まることに注意してください。

相談・申し込みをして、審査を受けなければどのくらいの手数料を支払うことになるか確認できません。

審査では売掛先の信用力以外にも、債権額や回収までの期間、個人事業主の信用力など複数の要素で判断されます。

さらに2社間と3社間のどちらで契約するかなどによっても異なるため、手数料をできるだけ下げたいのなら、信用力の高い債権を売ることとファクタリング会社が安心できる取引であることが必要です。

ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負うリスクによって大きく変わってくることに注意しておいてください。

売掛債権額面までの調達金額に留まる

個人事業主がファクタリングを利用する場合、売掛債権額面までの調達金額に留まることにも注意しておきましょう。

必要な金額を超える売掛金を保有していなければ、たとえファクタリングを利用して売掛金が現金化されたとしても、十分な資金調達につながらないと考えられます。

ファクタリングは売掛金の売買よるサービスのため、銀行融資のように担保や保証人を付ければ、保有する資産を超えるお金が準備されるわけではないことを理解しておく必要があります。

回収後は速やかに一括で支払いが必要

個人事業主がファクタリングを利用する場合、売掛金の回収後は速やかに一括でファクタリング会社に支払いが必要であることも留意しておきましょう。

この流れは2社間ファクタリングでのみ発生しますが、個人事業主の場合、特に回収した売掛金を使い込んでしまいがちです。

売掛先から売掛金を回収するのは、あくまでもファクタリング会社に代行する形であることをあらためて理解し、回収した代金もすでにファクタリング会社に渡っているものであることを認識しておく必要があります。

ファクタリング会社に対する支払いを延期することや、分割による支払いは認められません。仮に認めてしまうと、融資と見されるからです。

そのため回収した売掛金は速やかに、一括でファクタリング会社に支払わなければならないことを念頭に置いておきましょう。

給与ファクタリングは利用しない

個人事業主の場合、間違って給与ファクタリングを利用しないようにしてください。

給与ファクタリングとは、勤務先から支払われる給与を債権として買い取るサービスですが、対象となるのは事業者ではなく会社員などの個人です。

この給与ファクタリングは、名称にファクタリングとあるものの、事業者向けの一般的なファクタリングサービスとは異なります。

金融庁から注意喚起されているサービスで、給与を賃金債権として扱い給料日を期日に金銭を貸し付けるサービスです。

貸金業登録済でなければ提供できないサービスで、上限金利など守って利息を請求することが必要ですが、実際には貸金業未登録のヤミ金融業者が違法な金利で契約を結ぶケースなどが存在します。

そのため個人事業主は、間違って給与ファクタリングを利用してしまわないように注意してください。

契約書控えは必ず受け取る

個人事業主がファクタリングを利用する場合、契約書の控えは必ず受け取るようにしてください。

そもそも正規のファクタリング契約であれば、契約書の控えが渡されないということはありません。

ただ、悪質な業者などの場合、契約書を作成しないケースや控えを渡さないケースなどがあり、後々トラブルが発生したときにどのような契約を結んだか証明できなくなる可能性があります。

万一のためにも、必ず契約書の控えは渡してもらうようにし、受け取ることができないときには直ちに契約を取りやめるようにしてください。

まとめ

ファクタリングは個人事業主でも利用できますが、法人が利用するときと違って一定の要件など満たすことが必要です。

債権譲渡登記がなく、少額債権にも積極的に対応しているファクタリング会社であれば、個人事業主の相談にも快く応じてもらえるでしょう。

また、ファクタリングは売掛金を現金化するサービスであるため、個人事業主であっても売掛金が発生していなければ利用できません。

うまく活用することで、資金繰りを改善すること急な資金ニーズに対応することが可能となるでしょう。